偽者との戦い

  • ロルウェは崩壊している遺蹟を歩いている。
    あちこちに崩れている建物があった。

  • ロルウェ

    なんだか疲れてきたな。

  • ロルウェは建物の壁に寄り掛かる。

    ロルウェの瞳には色がなく、まるで人形のようだった。

  • ロルウェ

    オレは
    なんでこんなことしてるんだろう?

  • ロルウェの喋り方にも感情がなく、どこか機械的だ。

  • ロルウェ

    考えてみたら、もともとオレは何の関係もないよな。
    なら、あいつらだけで救えばいいじゃないか。

  • 顔つきと口調が嫌な感じになってくるロルウェ。

  • ロルウェ

    まったく、面倒なことに巻き込まれてしまったよ。
    セディル達のせいでな。

  • ロルウェの表情が邪悪な顔つきへと一変した。

  • ロルウェ

    それでオレの真似をしているつもりか?

  • ロルウェと同じ声が聞こえてきた。

    その声にロルウェが振り替えると、そこにはもう一人のロルウェが立っていた。

  • ロルウェ

    誰だお前は?

  • 現われた方のロルウェが疑いの眼差しで見ている。

    邪悪な方のロルウェは偽者で、後から現われた方が本物のロルウェだった。

  • ロルウェ

    オレの姿をして何を企んでるんだ?

  • 自分と同じ姿をしているので、ロルウェはあまりいい気分ではなかった。

  • ロルウェ

    所詮、闇の力は世間一般から見れば忌むべき力だ。
    闇の力を持つ限り差別や偏見の目から逃れることはできないんだ。

  • 偽ロルウェの恐ろしく冷たい声が響く。

  • ロルウェ

    お前、何言ってるんだ?

  • 自分の姿と自分の声で、嫌な言葉を聞かされ不愉快な気分になるロルウェ。

  • ロルウェ

    父上も母上もカシルもいない。
    だからオレは姉さんさえいればいい。
    姉さんがいなければオレがここに存在する意味なんてない。

  • 容赦のない偽ロルウェの言葉が続く。

  • ロルウェ

    おいお前。
    姉さんの事を軽々しく口にするな。

  • ロルウェは姉のことを言われ苛立った。

  • ロルウェ

    なぜ闇の力を持ちながら他国に出てきた?
    自分たちの国に引きこもっていれば、嫌な目で見られず何も起こらないですんだじゃないか。

  • ロルウェ

    中に閉じこもっておとなしくしているのは好きじゃないんでね。
    昔から屋敷を抜け出してばかりいたからな。

  • 偽ロルウェの言葉にあっさりと返すロルウェ。

  • ロルウェ

    お前は何を言っている?
    このオレこそ本当のロルウェだろう!

  • 強い口調の偽ロルウェ

  • ロルウェ

    (…そうか!
    こいつは多分、オレの心の中にある嫌な部分なんだろうな。
    それが実体化したのがこいつか?
    いや、そんなことはどうでもいい)

  • ロルウェは目の前にいる偽者のロルウェに惑わされなかった。

  • ロルウェ

    闇の力を持つオレのことなんて、この国にいる奴らは誰もわかってくれない。
    そんな奴らと関わろうとしたって無駄なんだ。

  • そんな偽ロルウェの言っていることは、ロルウェには後ろ向きで暗い考えにしか聞こえなかった。

  • ロルウェ

    お前の言いたいことはそれだけか?
    下手な真似事はいいからさっさと正体を見せろ。

  • ロルウェは興味なさそうにきっぱりと言い返す。

  • ロルウェ

    今更、何をカッコつけてるんだよ。
    本当のことを言われて悔しいんじゃないのか?

  • 偽ロルウェが嫌味のように言う。

  • ロルウェ

    悔しいのはお前だろ?
    オレに何を言っても無駄だと気付いているくせに強がるのか?

  • 挑発するように言い切るロルウェ。

  • ロルウェ

    な!?なんだと!?

  • 偽ロルウェは、姿はロルウェであっても本当のロルウェではなかった。

  • ロルウェ

    もう、くだらない愚痴は聞き飽きたな。

  • ロルウェはロッドを構えて戦闘態勢になった。

  • ロルウェ

    くっ!
    こ、こんなはずじゃ…!

  • 偽ロルウェは困惑していた。

  • ロルウェ

    計算外だったのか?
    そいつは残念だったな。
    オレを動揺させるつもりだったのなら全然ダメだな。

  • さらりと返したロルウェは、ロッドに魔強化をかける。

  • ロルウェ

    バカな!?
    そんなバカな…っ!?

  • 偽ロルウェは、逃げ腰になっている。

  • ロルウェ

    お前の茶番もこれで終わりだ!

  • ロルウェは偽ロルウェに冷めた目を向け、魔強化したロッドで攻撃した。

  • ロルウェ

    ぎゃあぁぁーー!

  • ロルウェの攻撃が偽ロルウェに直撃した。

    偽ロルウェは消滅してしまった。

  • ロルウェ

    オレの姿になるとは…
    随分な嫌がらせだな。

  • 静かに口にした後、ロルウェは歩きだした。

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