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セディル、ユーリス、ロルウェ、エリレオの四人は、凸凹とした台地を歩いていた。
ロルウェは平然と歩いているが、他の三人は歩くペースが落ちていてあまり元気がないようだ。 -
ロルウェ
おいどうした?
歩くのが遅いぞみんな。 -
いつのまにか先頭になっていたロルウェが立ち止まり、三人に話しかける。
すると、後ろを歩いていた三人も足を止めた。 -
セディル
だいぶ長く歩き続けているからなぁ。
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セディルが疲れた様子で返す。
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ユーリス
お、おれ
もう足痛い~ -
エリレオ
僕もであります~
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ロルウェ
なんだなんだ?
もう疲れたのか? -
ロルウェはまだ平気なのか余裕を見せていた。
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ユーリス
お前
密かに靴に魔強化を使ってるんじゃないよな? -
ユーリスがロルウェを疑うように見る。
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ロルウェ
使うわけないだろ。
戦闘以外で無駄な魔力を消費してどうするんだ? -
セディル
ロルウェって見た目のわりには体力あるんだな。
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エリレオ
ああ。
人は見かけによらないものでありますね。 -
そして…
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三人は一際大きな木の下まで辿り着き、休憩することになった。
早速ロルウェは、道具袋から、何やら透明な水色をした六角型の手の平に収まるくらいの石を出した。 -
ユーリス
あー!
おれそれ見たぞ!
昨日の夜、お前が何かしてたヤツだろ。 -
ロルウェ
なんだ。
お前起きてたのか? -
ユーリス
たまたま目が覚めたんだよ。
夜遅くに何やってたんだ? -
あの時、寝呆け眼でいたユーリスは、明確にはわからなかった。
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ロルウェ
みんな、受け取れ。
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ロルウェが、一人一人に水色の石を渡す。
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ユーリス
…!これ。
魔力を感じるぞ! -
ユーリスが、水色の石に宿っている魔力にいち早く気付く。
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エリレオ
う~む。
変わった物でありますね~ -
エリレオが、水色の石を眺めていた。
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セディル
これは一体なんだい?
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ロルウェ
とにかく、そいつを使ってみな。
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ロルウェは、詳しい事は言わず、ただ笑顔でいるだけだった。
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セディル
え?使うって…?
ぼくは魔強化ができないけど大丈夫なのか? -
エリレオ
僕のような魔力無き者でも使用することができるのでありますか?
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ユーリス
今、使う物なのか?
どうやるんだ? -
三人が、それぞれ疑問を口にした。
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ロルウェ
よし、
オレが手本をみせてやるか。 -
ロルウェは、水色の石を自分の頭上に放り投げた。
すると、水色の石が一瞬輝き、青白い光が複数の小さな光と共にロルウェの体を包み、吸い込まれるようにして消えていった。
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ロルウェ
これだけだ。
簡単だろう。 -
エリレオ
な、何が起こったのでありますか!?
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ユーリス
なんだよ!
勿体ぶってないで何なのか教えてくれたっていいだろ! -
セディル
まあまあ。
使ってみてのお楽しみってことだろう。 -
ユーリス
わかったよ。
こうやるんだろ。 -
ユーリスは、先程のロルウェと同じく、水色の石を自分の頭上に放り投げた。
水色の石の光がユーリスを包む。
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ユーリス
な、なんだ!?
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ユーリスは、驚いた様子で自分の体を見る。
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ロルウェ
ほら、二人も使ってみろ。
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セディル
それっ
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セディルも、水色の石を自分の頭上に放り投げた。
水色の石の光がセディルを包む。 -
セディル
これはすごいよ!
体の疲れが抜けていく。 -
エリレオ
…
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ロルウェ
どうしたエリレオ?
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ロルウェは、なかなか使おうとしないエリレオに声をかける。
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エリレオ
え~とですね。
ぼ、僕は魔法の類には全と言っていいほど触れたことがないのであります。 -
エリレオは、初めて魔法関係の物を使用するので躊躇っているようだ。
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ロルウェ
大丈夫さ。
本人の魔力は関係ないからやってみるんだ。 -
ロルウェは、エリレオを安心させるように言う。
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エリレオ
で、ではいくでありますよ!
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エリレオは緊張しながら水色の石を自分の頭上に放り投げた。
水色の石の光がエリレオを包む。 -
エリレオ
ななななんということでありますか!?
足の痛みが消えていくでありますよ! -
エリレオが目を丸くしていた。
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ロルウェ
これは、水の力を持つ特殊な石に魔力を注入して魔強化させ、回復の力を持つ石にしたんだ。
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ユーリス
それじゃ、昨日お前が夜中にやってたのは…
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ロルウェ
ああ。
この回復の石を作っていたんだ。 -
ロルウェは、水の石を軽くにぎった。
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セディル
ロルウェは魔法の力を持つ石が作れるんだね。
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ロルウェ
こういった物を作るのは昔からの趣味だったからな。
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ロルウェは楽しそうな顔をしている。
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エリレオ
いやはやすごいであります!
ここまで出来てしまうのでありますか! -
エリレオは衝撃を受けているようだ。
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ロルウェ
オレは、水系の回復魔法が不得意だから、水の石を作って持ち歩くようにしてるんだ。
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ロルウェは、そう言った後、ユーリスの方を見て再び話し出す。
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ロルウェ
みんなが戦闘中に水の石を使うようにすれば、大きなケガでもしない限り回復魔法を消費することはないから、お前はその分攻撃に専念することもできるだろう。
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ロルウェは、セディルたちの体力のことだけではなく、ユーリスの魔力のことも考えてくれていたようだ。
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ユーリス
…あ!そっか!
その分おれが回復魔法の魔力を使わなくてすむのか。 -
ユーリスは、自分の魔力の消費軽減ができるのだと気付いた。
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ロルウェ
お前たち。水の石がなくなりそうだったら早めに言えよ。
いいか。なくなる前にオレに言うんだぞ。 -
実際はレシエナの弟であるロルウェだが、今のロルウェはまるで兄のようにも見えた。
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セディル
うんわかった。
ロルウェのおかげで本当に助かるよ。
ありがとう。 -
エリレオ
僕もであります。
ロルウェ様には本当に感謝しているであります。 -
ユーリス
…
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ユーリスは、ロルウェに対して複雑な気持ちだった。
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ユーリス
ま、まあ今回だけはお前に感謝しないとな。
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本人は趣味だと言っているが、夜中に起きていて皆の分の回復の力を持つ水の石を作っていたこと――
休憩になると水の石を出して皆の体力を回復させてくれたこと――
自分の魔力の使用負担を軽くさせてくれたこと――
ユーリスは決意した。
もう今しかないと思った。 -
ユーリス
ロ、ロルウェ!
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ユーリスは戸惑いながらも、思い切ってロルウェに声をかけた。
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ロルウェ
なんだユーリス?
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ユーリス
いいか!
い、一度しか言わないからなっ!よく聞けよ! -
ユーリスはやや不自然な態度だった。
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ロルウェ
ああ。わかった。
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ロルウェはユーリスの様子からして、何かを自分に伝えたいのだろうと気付き、ユーリスを真っすぐに見て返事をする。
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ユーリス
おれは正直言って、闇の力は嫌いだし闇の者は信用できない。
…だけど、お前なら認めてもいいと思ったんだ。 -
ユーリスは、真剣な眼差しでロルウェに伝えた。
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ロルウェ
そうか。
なら、これからもよろしく頼むぞユーリス。 -
ロルウェはユーリスの予想していた反応とは違い、笑顔で答えていた。
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ユーリス
あ、うん。
よ、よろしく。 -
ユーリスは、ロルウェがさっぱりとした返し方をするとは思っていなかったので、意外な表情をしていた。
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エリレオ
おお!
ユーリス様はようやくロルウェ様を仲間として受け入れたのでありますな! -
ユーリス
仲間だとは言ってない!
認めてもいいと言っただけだ! -
セディル
ホント素直じゃないよな~
ユーリスって -
これを境に、ユーリスはロルウェに対して刺々しい雰囲気がなくなっていった。
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