第一章
夢小説設定
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土埃と湿った匂い
錆が目立ってきた冷たい鉄の檻を掴み額を狭い隙間に押し付け外を眺める少女の瞳は太陽の光を浴びてなくても輝き外への好奇心に満ち溢れていた
いつか狭い檻から出してもらえる日を夢に思いながらも似たように閉じ込められたポケモン達と過ごし何年も似たような日々を送る
偶に現れる自分やポケモンを指差し笑う大人達
彼らの目に止まった物から外へと連れ出される
それは良い事なのか悪い事なのか分からない
それでも外を夢見る少女は願っていた
この狭い檻から出してくれる誰かと出会う事を……
そんな願いを胸の内に秘めていたある日
「おいおいっ!こんな子供まで…っ、くそがっ!」
その人は突如空から現れた
太陽の光を背中に浴びながら建物の影に隠れた薄暗い檻の前に足を落とした白髪の彼は少女には何よりも輝いて見えた
「ちょっと!その子どうしたの!」
依頼を受け仕事をしにいった青年は自分のジャケットに包んだ少女を抱いて飛行船に帰ってきた
歳はまだ十代半ばと言ったところだろうか?
仲間のドットよりは年上に見えたがどうにも様子がおかしい
彼の仲間であるオリオを始めモリーやマードック達は青年の連れてきた汚れた少女の存在に驚き訳を聞こうとするが、青年…フリードは眉を険しくさせ言葉を詰まらせる
「……今はこの子の体調の方が先だ、モリー悪いが診てくれないか?」
「あ、ああそれはいいけど」
抱いていた少女を降ろすと彼女はジャケットを頭から被ったまま不安そうにフリードを見上げる
「大丈夫だ、怪我がないか診てもらうだけだからな」
小さな子供に言い聞かせるようにゆっくりと話しかけモリーへと背中を軽く押してやると少女は漸く分かったらしくモリーへとヨロヨロと歩き出した
初めて歩き出した赤ん坊のような足取りにモリーは驚き慌てて駆け寄ると少女の手をとりぎょっと目を見開いた
「……フリードっ」
あまりに細い手首、ボロボロの爪にカサついた唇や肌
モリーが何か言いたそうにフリードを睨むが彼は鋭い瞳で睨み返した
「モリーには後で話す、皆は先にミーティングルームに集まってくれ」
仲間達はそれぞれの顔を見合わせ先にミーティングルームへと歩き出したフリードの背中を眺めながら無言でついていき、モリーは最優先すべき事に意識を向け直し少女を治療室へと連れて行く
ミーティングルームに集められた仲間達はそれぞれ席につき、テーブルの上で両手を強く握りしめ機嫌の悪そうなフリードが口を開くのを待ち暫し沈黙が流れた
「………あの子は人身売買に出されていたんだ、他のポケモン達と同じように檻に閉じ込められてな」
「なっ!人間をか!」
マードックは信じられないとばかりに大声をあげ、フリードは思い出すように自分の手をより強く握りしめた
「ああ、ポケモンだけでも許せねぇのに…まさかあんな女の子まで商品扱いする奴らがいるとはな」
依頼は最近ポケモンを裏で違法に売り捌くハンターがいるとの事だった
真実を確認する事、もし可能ならポケモン達を解放してやってほしい…それが依頼主からの願いだったが
檻に閉じ込められた彼女を見た途端フリードは我を忘れ、ハンターに掴みかかり自ら拳を殴りつけてしまった
「(頭に血がのぼったとは言え…あんな場面見せるべきじゃなかったよな)」
暴言を吐きながら何度も拳を振り上げた
ハンターが許しを請うまで殴ったというのに檻に手を伸ばしたフリードを少女は怖がらなかった
泣かれるより随分ましだ、ある意味救いではあったが落ち着いて考えれば逆に違和感も感じた
「多分だが…あの子は随分長い事あんな生活をしてたんだと思う」
「それってどういう事?なんでそう思ったわけ?」
オリオの問いかけにフリードは握りしめていた両手へと視線を落としたまま重い口を開いた
「…………喋れねぇんだ」
「は?」
「自分の名前さえ喋れなかったんだ」
檻から解放したフリードは彼女を元いた場所に帰してやろうと話しかけたが…少女の言葉は幼児レベルのものだった
あー、うーとしか言わず一生懸命に喋り何かを伝えようとする彼女にフリードは酷い悲しみを覚え気がつけば少女を抱きしめていた
早く見つけてやれなくてすまなかった
フリードが悪いわけではないが、言わずには居られず何度も謝り強く抱きしめたが少女はただ大人しく身を任せてるだけだった
「ハンターに聞いたが…彼女は幼い頃に売り飛ばされて来たらしくてな、色んな奴らに買われては捨てられてあの街に商品として流れ着いたらしい」
静かに黙って聞いているランドウ、今にもテーブルを殴りつけそうなマードックやオリオにスマホで皆の会話を聞いているドット
その中でも一番怒りを纏わせているとは現場を見たフリードだろう
ハンターを殴った拳を強く握り込み歯を食いしばり、腹の奥から込み上げる不快な感情が暴れだすのをぐっと耐える
「……親にも捨てられた子だ、俺としちゃほっとけねぇし街に戻したくもない!あの街にいたらまた商品にされちまうかもしれない……だから!」
「ウチで保護したいって……事ね?」
「ああ…どう思う?」
やっと顔をあげたフリードが見たのは真剣な顔でこちらを見る仲間達の顔だった
誰も嫌だとは思っていない
寧ろ賛成だと言わんばかりに頷き、マードックは我慢の限界だったのか大量の涙を流し始めた
「ぅ、当たり前だろっ!オレらが守ってやら、やらねぇと!可哀想すぎんだろーが!」
「そうよ!ていうかそのハンター何処にいんの!私も一発殴ってやりたい気分だわ!」
大泣きする大男と怒りに席から立ち上がる女
なんとも真逆な二人の反応に驚きつつフリードは最年長のランドウへと視線を流す
すると彼は静かに頷き誰も反対する者がいない事にフリードはホッと肩の力を抜いた
錆が目立ってきた冷たい鉄の檻を掴み額を狭い隙間に押し付け外を眺める少女の瞳は太陽の光を浴びてなくても輝き外への好奇心に満ち溢れていた
いつか狭い檻から出してもらえる日を夢に思いながらも似たように閉じ込められたポケモン達と過ごし何年も似たような日々を送る
偶に現れる自分やポケモンを指差し笑う大人達
彼らの目に止まった物から外へと連れ出される
それは良い事なのか悪い事なのか分からない
それでも外を夢見る少女は願っていた
この狭い檻から出してくれる誰かと出会う事を……
そんな願いを胸の内に秘めていたある日
「おいおいっ!こんな子供まで…っ、くそがっ!」
その人は突如空から現れた
太陽の光を背中に浴びながら建物の影に隠れた薄暗い檻の前に足を落とした白髪の彼は少女には何よりも輝いて見えた
「ちょっと!その子どうしたの!」
依頼を受け仕事をしにいった青年は自分のジャケットに包んだ少女を抱いて飛行船に帰ってきた
歳はまだ十代半ばと言ったところだろうか?
仲間のドットよりは年上に見えたがどうにも様子がおかしい
彼の仲間であるオリオを始めモリーやマードック達は青年の連れてきた汚れた少女の存在に驚き訳を聞こうとするが、青年…フリードは眉を険しくさせ言葉を詰まらせる
「……今はこの子の体調の方が先だ、モリー悪いが診てくれないか?」
「あ、ああそれはいいけど」
抱いていた少女を降ろすと彼女はジャケットを頭から被ったまま不安そうにフリードを見上げる
「大丈夫だ、怪我がないか診てもらうだけだからな」
小さな子供に言い聞かせるようにゆっくりと話しかけモリーへと背中を軽く押してやると少女は漸く分かったらしくモリーへとヨロヨロと歩き出した
初めて歩き出した赤ん坊のような足取りにモリーは驚き慌てて駆け寄ると少女の手をとりぎょっと目を見開いた
「……フリードっ」
あまりに細い手首、ボロボロの爪にカサついた唇や肌
モリーが何か言いたそうにフリードを睨むが彼は鋭い瞳で睨み返した
「モリーには後で話す、皆は先にミーティングルームに集まってくれ」
仲間達はそれぞれの顔を見合わせ先にミーティングルームへと歩き出したフリードの背中を眺めながら無言でついていき、モリーは最優先すべき事に意識を向け直し少女を治療室へと連れて行く
ミーティングルームに集められた仲間達はそれぞれ席につき、テーブルの上で両手を強く握りしめ機嫌の悪そうなフリードが口を開くのを待ち暫し沈黙が流れた
「………あの子は人身売買に出されていたんだ、他のポケモン達と同じように檻に閉じ込められてな」
「なっ!人間をか!」
マードックは信じられないとばかりに大声をあげ、フリードは思い出すように自分の手をより強く握りしめた
「ああ、ポケモンだけでも許せねぇのに…まさかあんな女の子まで商品扱いする奴らがいるとはな」
依頼は最近ポケモンを裏で違法に売り捌くハンターがいるとの事だった
真実を確認する事、もし可能ならポケモン達を解放してやってほしい…それが依頼主からの願いだったが
檻に閉じ込められた彼女を見た途端フリードは我を忘れ、ハンターに掴みかかり自ら拳を殴りつけてしまった
「(頭に血がのぼったとは言え…あんな場面見せるべきじゃなかったよな)」
暴言を吐きながら何度も拳を振り上げた
ハンターが許しを請うまで殴ったというのに檻に手を伸ばしたフリードを少女は怖がらなかった
泣かれるより随分ましだ、ある意味救いではあったが落ち着いて考えれば逆に違和感も感じた
「多分だが…あの子は随分長い事あんな生活をしてたんだと思う」
「それってどういう事?なんでそう思ったわけ?」
オリオの問いかけにフリードは握りしめていた両手へと視線を落としたまま重い口を開いた
「…………喋れねぇんだ」
「は?」
「自分の名前さえ喋れなかったんだ」
檻から解放したフリードは彼女を元いた場所に帰してやろうと話しかけたが…少女の言葉は幼児レベルのものだった
あー、うーとしか言わず一生懸命に喋り何かを伝えようとする彼女にフリードは酷い悲しみを覚え気がつけば少女を抱きしめていた
早く見つけてやれなくてすまなかった
フリードが悪いわけではないが、言わずには居られず何度も謝り強く抱きしめたが少女はただ大人しく身を任せてるだけだった
「ハンターに聞いたが…彼女は幼い頃に売り飛ばされて来たらしくてな、色んな奴らに買われては捨てられてあの街に商品として流れ着いたらしい」
静かに黙って聞いているランドウ、今にもテーブルを殴りつけそうなマードックやオリオにスマホで皆の会話を聞いているドット
その中でも一番怒りを纏わせているとは現場を見たフリードだろう
ハンターを殴った拳を強く握り込み歯を食いしばり、腹の奥から込み上げる不快な感情が暴れだすのをぐっと耐える
「……親にも捨てられた子だ、俺としちゃほっとけねぇし街に戻したくもない!あの街にいたらまた商品にされちまうかもしれない……だから!」
「ウチで保護したいって……事ね?」
「ああ…どう思う?」
やっと顔をあげたフリードが見たのは真剣な顔でこちらを見る仲間達の顔だった
誰も嫌だとは思っていない
寧ろ賛成だと言わんばかりに頷き、マードックは我慢の限界だったのか大量の涙を流し始めた
「ぅ、当たり前だろっ!オレらが守ってやら、やらねぇと!可哀想すぎんだろーが!」
「そうよ!ていうかそのハンター何処にいんの!私も一発殴ってやりたい気分だわ!」
大泣きする大男と怒りに席から立ち上がる女
なんとも真逆な二人の反応に驚きつつフリードは最年長のランドウへと視線を流す
すると彼は静かに頷き誰も反対する者がいない事にフリードはホッと肩の力を抜いた