第一章
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『よし!報告完了っと』
夕暮れ時ー
今日はトレーナーとしてお仕事の日
依頼された暴れているポケモンを大人しくさせた報告をメールで送り、あたしは次なる戦いの場への準備へと急いだ
そう今日は……
合コンの大規模パーティに初参加するんだから!
この世界に来てから今日まであたしには彼氏というものが出来なかった
いいなぁと思う男性がいても最初はいい感じになっても結局すぐにふられてしまい三十路なのに独身
ずっとこの世界にいれるのかいつか消えるか分からないけど、一度くらい恋人との甘い時間が欲しい!
今度こそはとあたしはパーティドレスを着てお洒落をし、知り合いに紹介された会場へと急いだ
夜空に星が輝く頃、ホテルを貸し切ったパーティ会場は年齢層も広く遊び相手を探す者や婚活目的の人々もいた
特に女性陣は中々シビアな男性観察をしており見た目の採点の話し声が筒抜けだ
散々文句を言っては好みの男性を見つけるとコロリと性格が変わったように甘えた声を出す
『(どこの世界でもそのへんは同じなんだな)』
若い女性達が率先して男性に声をかける中、あたしは壁に寄りかかりジュースの入ったグラスをちびちびと飲んでいた
『(やっぱり若い女の子の方がいいよね?)』
せめて会費分だけでも食事を楽しもうかと思った時だ、女性陣のざわめきが聞こえそちらへと視線をやるとよく見た顔の人物がいた
『カブさんっ?』
「ん?やあ!君も来てたのかい?」
炎のジムリーダーであるカブさんとはキバナくんの関係で昔から親しくしてもらっている
まさかこんな場所でスーツ姿のカブさんに会えるなんて
『意外です、カブさんはこういうのに参加する方なんですね』
「いやいや違うんだ!誤解しないでくれ!実はね」
カブさんの話では同じジムのトレーナーの男性が参加する予定だったが体調を崩してしまったそうだ、会費も先に払っており当日の男性のキャンセルは何かと今後の参加へのペナルティがあるらしく代わりに来たらしい
「君に会えてよかったよ、僕には縁のない華やかな世界だから緊張していたんだ」
あたしより年上なのに、眉を八の字にさせて苦笑いするカブさんはちょっと可愛いとつい思ってしまう
『あたしこそ会えてよかったです、今回はアラサーはお呼びでなかったようで暇してたんです』
周りへと切れ長な視線を向けた彼の目にはきっと若い女性に群がる男性達が見えた事だろう
彼は数回頷くと視線を自分のグラスへと戻し呟いた
「ふむ、まだ青臭い若者には君の良さが分からないのかもしれないね」
ふふっと静かに笑いカブさんは飲み物の入ったグラスをゆっくりと傾ける
歳を重ねたからこそ出る男の渋さが彼を輝かせ遠巻きに見ている女性達を魅了してるなんて…本人は知らないんだろうな
「そういえばキバナくんには参加している事は言ってあるのかい?」
『え?言ってませんが…どうしてですか?』
「おや?君達はもしかして……いや、それなら僕が余計な事を言うべきじゃないね」
『んん?』
何かを隠す彼に小首を傾げ見上げるも、カブさんはクスクスと笑うだけで教えてくれない
どうしてキバナくんがそこで出てきたんだろうか?
ふと彼を思い出すと数日前の朝が頭に浮かんだ
体を包み込む大きくて温かい物、安心感と気持ちよさにうっとりとしながら目を開ければそこに見えたのは教え子の寝顔だった
彼はあたしを抱きしめて同じベッドに眠っており、驚いて咄嗟にキバナくんをベッドから落としてしまった
その後彼が自分のせいではないとスマホを取り出し動画を見せてきた
動画にはお酒に酔ったあたしが嫌がる彼を引き寄せ離すまいとベッドに誘ったように見え、顔が赤くなったり青くなったりとあの日は忙しかったなぁ
お酒を飲んだあたしも悪いけど、何も抱きしめなくても……あんな……大きな体で抱かれたら…
『(………意識しちゃうじゃん)』
彼の温もりを忘れたいという理由もあり今回はパーティに参加したけど、なんだか逆に恋しくなっちゃったな
ぼんやりと手に持っていたグラスを見つめているとカブさんがあたしの耳元へと口を寄せ
「少し外を歩かないかい?」
『え、あ…はいっ、いいですよ?』
「ふふ、では共に行こう」
片腕をくの字に曲げコチラを見るカブさん
どうやらエスコートしてくれるみたい、本当にガラルの紳士って感じで素敵すぎる
彼の恋人になれる人はきっと幸せ者だ
遠慮がちに彼の腕に手を添えて会場の中庭へと出ると少し冷えた空気が気持ちよかった
短く刈った芝生の庭には小さな噴水と白いベンチがあり、カブさんはあたしをベンチへと案内してくれた
「それにしても出会いの場とは熱気が凄いね、君の目に止まる男は一人もいなかったのかい?」
『はい、残念ながら…というかカブさんを見たら全員色褪せて見えちゃいましたよ』
ハハッと笑って言うとカブさんは少し照れたのか困ったように笑い返してくれた
「それは光栄だね、僕ももっと若ければ自信がついて君をすぐに口説いただろうにね」
『そ、そんなご冗談を』
「ふふ…冗談かどうかは君の想像に任せるよ」
カブさんはスーツの上着を脱ぐとあたしの肩にかけ自分も隣へと腰掛けた
温もりの残る上着は少し冷えた肌を温めてくれてなんだか…恥ずかしいような嬉しいようなという不思議な気分にさせる
カブさんはスマホを取り出すと何やら操作をし、すぐにまたスマホをポケットにしまい込むとあたしを見つめ
「今日は君に会えてよかった、可愛らしいドレス姿も見れてなんだかラッキーだったよ」
『いえいえ!それを言うならカブさんですよ!カブさんのスーツ姿本当にカッコいいです!きっと会場の女の子達もカブさんを狙ってましたよ?』
「こんなじじぃを?ハハッお世辞でも嬉しいね!」
『(いや…お世辞じゃないし、絶対狙われてたよ)』
その後も他愛ない話をしているとカブさんは何かに気が付きベンチから急に腰をあげた
「さて…漸くお迎えが来たようだね」
『え?…………って…キバナくん?』
彼が見上げた空を見ればフライゴンに乗ったキバナくんが凄いスピードでこちらに向かってくる
理解する前に彼は中庭へと降り立ちあたしとカブさんを見ながら眉を寄せた
「早かったね」
「そりゃ急ぎますよ、あんなメール見たら」
何事かと狼狽えているあたしをほっときカブさんとキバナくんは何かを話している
話終えるとキバナくんは自分のパーカーを急いで脱ぎあたしが羽織っていたカブさんのスーツを乱暴に剥ぎ取った
『っ、ちょっキバナく、むぐっ!』
地面に投げられたスーツの上着、文句を言う前にキバナくんはパーカーであたしを包み込み抱き寄せた
「女の子にはあんまり怒っちゃ駄目だよ?」
「…………うっす」
短い言葉を出し彼はあたしを抱き上げるとフライゴンへとまた乗り、あたしはパーカーにぐるぐる巻きにされたまま顔だけを必死にカブさんに向けた
『待って!カブさんがっ!』
「大丈夫だよ、僕もそろそろ帰るから」
ひらひらと片手を揺らす彼を最後に浮遊感と共に視界は変わり真っ暗な夜空へと吸い込まれていくようだった
あたしを抱きしめたキバナくんは黙ったままフライゴンを操りながら夜空を飛び、カブさんはやれやれと地面に落ちた上着を拾いながら暗闇に消えたあたし達を見上げていた
夕暮れ時ー
今日はトレーナーとしてお仕事の日
依頼された暴れているポケモンを大人しくさせた報告をメールで送り、あたしは次なる戦いの場への準備へと急いだ
そう今日は……
合コンの大規模パーティに初参加するんだから!
この世界に来てから今日まであたしには彼氏というものが出来なかった
いいなぁと思う男性がいても最初はいい感じになっても結局すぐにふられてしまい三十路なのに独身
ずっとこの世界にいれるのかいつか消えるか分からないけど、一度くらい恋人との甘い時間が欲しい!
今度こそはとあたしはパーティドレスを着てお洒落をし、知り合いに紹介された会場へと急いだ
夜空に星が輝く頃、ホテルを貸し切ったパーティ会場は年齢層も広く遊び相手を探す者や婚活目的の人々もいた
特に女性陣は中々シビアな男性観察をしており見た目の採点の話し声が筒抜けだ
散々文句を言っては好みの男性を見つけるとコロリと性格が変わったように甘えた声を出す
『(どこの世界でもそのへんは同じなんだな)』
若い女性達が率先して男性に声をかける中、あたしは壁に寄りかかりジュースの入ったグラスをちびちびと飲んでいた
『(やっぱり若い女の子の方がいいよね?)』
せめて会費分だけでも食事を楽しもうかと思った時だ、女性陣のざわめきが聞こえそちらへと視線をやるとよく見た顔の人物がいた
『カブさんっ?』
「ん?やあ!君も来てたのかい?」
炎のジムリーダーであるカブさんとはキバナくんの関係で昔から親しくしてもらっている
まさかこんな場所でスーツ姿のカブさんに会えるなんて
『意外です、カブさんはこういうのに参加する方なんですね』
「いやいや違うんだ!誤解しないでくれ!実はね」
カブさんの話では同じジムのトレーナーの男性が参加する予定だったが体調を崩してしまったそうだ、会費も先に払っており当日の男性のキャンセルは何かと今後の参加へのペナルティがあるらしく代わりに来たらしい
「君に会えてよかったよ、僕には縁のない華やかな世界だから緊張していたんだ」
あたしより年上なのに、眉を八の字にさせて苦笑いするカブさんはちょっと可愛いとつい思ってしまう
『あたしこそ会えてよかったです、今回はアラサーはお呼びでなかったようで暇してたんです』
周りへと切れ長な視線を向けた彼の目にはきっと若い女性に群がる男性達が見えた事だろう
彼は数回頷くと視線を自分のグラスへと戻し呟いた
「ふむ、まだ青臭い若者には君の良さが分からないのかもしれないね」
ふふっと静かに笑いカブさんは飲み物の入ったグラスをゆっくりと傾ける
歳を重ねたからこそ出る男の渋さが彼を輝かせ遠巻きに見ている女性達を魅了してるなんて…本人は知らないんだろうな
「そういえばキバナくんには参加している事は言ってあるのかい?」
『え?言ってませんが…どうしてですか?』
「おや?君達はもしかして……いや、それなら僕が余計な事を言うべきじゃないね」
『んん?』
何かを隠す彼に小首を傾げ見上げるも、カブさんはクスクスと笑うだけで教えてくれない
どうしてキバナくんがそこで出てきたんだろうか?
ふと彼を思い出すと数日前の朝が頭に浮かんだ
体を包み込む大きくて温かい物、安心感と気持ちよさにうっとりとしながら目を開ければそこに見えたのは教え子の寝顔だった
彼はあたしを抱きしめて同じベッドに眠っており、驚いて咄嗟にキバナくんをベッドから落としてしまった
その後彼が自分のせいではないとスマホを取り出し動画を見せてきた
動画にはお酒に酔ったあたしが嫌がる彼を引き寄せ離すまいとベッドに誘ったように見え、顔が赤くなったり青くなったりとあの日は忙しかったなぁ
お酒を飲んだあたしも悪いけど、何も抱きしめなくても……あんな……大きな体で抱かれたら…
『(………意識しちゃうじゃん)』
彼の温もりを忘れたいという理由もあり今回はパーティに参加したけど、なんだか逆に恋しくなっちゃったな
ぼんやりと手に持っていたグラスを見つめているとカブさんがあたしの耳元へと口を寄せ
「少し外を歩かないかい?」
『え、あ…はいっ、いいですよ?』
「ふふ、では共に行こう」
片腕をくの字に曲げコチラを見るカブさん
どうやらエスコートしてくれるみたい、本当にガラルの紳士って感じで素敵すぎる
彼の恋人になれる人はきっと幸せ者だ
遠慮がちに彼の腕に手を添えて会場の中庭へと出ると少し冷えた空気が気持ちよかった
短く刈った芝生の庭には小さな噴水と白いベンチがあり、カブさんはあたしをベンチへと案内してくれた
「それにしても出会いの場とは熱気が凄いね、君の目に止まる男は一人もいなかったのかい?」
『はい、残念ながら…というかカブさんを見たら全員色褪せて見えちゃいましたよ』
ハハッと笑って言うとカブさんは少し照れたのか困ったように笑い返してくれた
「それは光栄だね、僕ももっと若ければ自信がついて君をすぐに口説いただろうにね」
『そ、そんなご冗談を』
「ふふ…冗談かどうかは君の想像に任せるよ」
カブさんはスーツの上着を脱ぐとあたしの肩にかけ自分も隣へと腰掛けた
温もりの残る上着は少し冷えた肌を温めてくれてなんだか…恥ずかしいような嬉しいようなという不思議な気分にさせる
カブさんはスマホを取り出すと何やら操作をし、すぐにまたスマホをポケットにしまい込むとあたしを見つめ
「今日は君に会えてよかった、可愛らしいドレス姿も見れてなんだかラッキーだったよ」
『いえいえ!それを言うならカブさんですよ!カブさんのスーツ姿本当にカッコいいです!きっと会場の女の子達もカブさんを狙ってましたよ?』
「こんなじじぃを?ハハッお世辞でも嬉しいね!」
『(いや…お世辞じゃないし、絶対狙われてたよ)』
その後も他愛ない話をしているとカブさんは何かに気が付きベンチから急に腰をあげた
「さて…漸くお迎えが来たようだね」
『え?…………って…キバナくん?』
彼が見上げた空を見ればフライゴンに乗ったキバナくんが凄いスピードでこちらに向かってくる
理解する前に彼は中庭へと降り立ちあたしとカブさんを見ながら眉を寄せた
「早かったね」
「そりゃ急ぎますよ、あんなメール見たら」
何事かと狼狽えているあたしをほっときカブさんとキバナくんは何かを話している
話終えるとキバナくんは自分のパーカーを急いで脱ぎあたしが羽織っていたカブさんのスーツを乱暴に剥ぎ取った
『っ、ちょっキバナく、むぐっ!』
地面に投げられたスーツの上着、文句を言う前にキバナくんはパーカーであたしを包み込み抱き寄せた
「女の子にはあんまり怒っちゃ駄目だよ?」
「…………うっす」
短い言葉を出し彼はあたしを抱き上げるとフライゴンへとまた乗り、あたしはパーカーにぐるぐる巻きにされたまま顔だけを必死にカブさんに向けた
『待って!カブさんがっ!』
「大丈夫だよ、僕もそろそろ帰るから」
ひらひらと片手を揺らす彼を最後に浮遊感と共に視界は変わり真っ暗な夜空へと吸い込まれていくようだった
あたしを抱きしめたキバナくんは黙ったままフライゴンを操りながら夜空を飛び、カブさんはやれやれと地面に落ちた上着を拾いながら暗闇に消えたあたし達を見上げていた