第一章
夢小説設定
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昔キバナくんがまだ小さい時喧嘩をしたことがあった
何度目かのチャンピオンリーグで負けた日、彼に控え室で初めて怒鳴られた
ガゴンッ!!
彼の蹴ったゴミ箱が壁にぶつかってゴロゴロと床を転がっていく
『キバナくん!』
「なんだよっ!また負けたじゃんかっ!アンタはオレを勝たせてくれるんじゃなかったのかよ!何の為にいるんだよ!」
大粒の涙を流しこちらを睨む青い瞳は悲しさと悔しさを孕み見ているこちらも辛い
フーッと獣が威嚇するように出しきれない怒りを込めて息を吐くと彼は勢いよくベンチに腰掛け両手で頭を抱えた
『……ごめん、でも諦めないで…次を考えて…』
「もうやめろよっ!オレはもうこれ以上強くなれないんだろ?先生も…諦めちまえよ?オレの事なんかもう捨てちまえよっ!」
自暴自棄に入ってしまった彼を宥めるのはとても大変だった
ドラゴンタイプに拘る彼を勝たせるのは思った以上に大変で上手く結果が出せない
それはあたしの責任でもある、だから気に入らなければクビにしてしまえばいいのに
優しい彼はクビとは言わず、自分を見捨ててあたしから身を引くようにと言い方を変えてくれる
『あたしはまだ諦めないよ?キバナくんだって本当は諦めたくないんでしょ?』
彼の前に両膝をつけ座り俯いた顔を覗き込むと、またポロポロと彼は涙を流し始めた
「なんでだよ……オレっ…アンタに酷い事言ってるのにっ…なんで…諦めねぇんだよっ」
『…キバナくんが勝ったところ見たいから』
へへっと笑って見せれば少年は余計に泣いてしまいあたしは自然と彼を抱きしめた
胸の中で鼻を啜りながら何度も謝る彼が可愛くて絶対勝たせたいと誓った
大人になったキバナくんは……
『ねぇ何怒ってるの?』
「別にぃ?」
素直じゃなくなった
それに何を考えてるか分からない時がある
今日はダンデくんが途中で乱入してきてしまったけど試合の後はすぐにキバナくんと特訓を続けた
なのに彼はずっと不機嫌でよく分からない、そのくせ特訓が終わった今も頼んでもないのに家まで送ってくれる
あたしの荷物を持って前を歩く彼は大きくて黒いパーカーの背中と刈り上げたうなじしか見えない
顔が見たくなって早足で彼の隣に並ぶとキバナくんは横目であたしを確認しそっぽを向いた
『なんで不機嫌か教えて欲しいんですけど?』
じぃと下から見上げ続けると彼は空いている方の手で自分の刈り上げたうなじを撫でため息を吐いた
「別に?アンタは悪くねぇよ…ただオレが勝手に気に食わねぇって思ってるだけ」
『だから何を?』
「………………バトルの後、ダンデとなんか話して盛り上がってただろ」
『あ〜』
ダンデくんと一回だけ試合をした
勝敗はあたしの勝ちで、自分が負けるとは想像もしていなかった彼は目を輝かせ前のめりにあたしにバトルの感想をぶつけてきた
一匹だけの試合なんだからフルの試合なら勝敗は分からなかったと誤魔化したけど、きっと彼のバトル魂に火をつけてしまったのだろう
次も近いうちにバトルしたいと迫られキバナくんが助けに入らなかったら大変な事になっていた
『バトルが楽しかったって感想を言われただけだよ、ダンデくんのバトルジャンキーぶりには困ったね…キバナくんが止めてくれて本当に助かったもん』
へらりと笑ってみせるもキバナくんは唇を尖らせまだ不機嫌だ
「その割には楽しそうだったじゃん、オレとバトルするよりチャンピオンさまとした方がやり甲斐もあんだろ」
『そんな事ないってば!』
「……ハッ、どうだかな」
どうしたら機嫌がよくなるのか…長年一緒にいたあたしには解決方法がちゃ〜んと分かってるんだからね?
『そうだ、キバナくんよかったらウチでご飯食べてかない?』
「え?マジッ!いいの!」
『ん、豪華なものじゃないけど…もう夕飯の時間だし食べていきなよ』
「やりぃっ!早く行こうぜ!っとその前になんか飲み物買う?オレなんでも奢るぜ?」
ころりと機嫌が良くなった彼はあたしの手を掴むと早足に家路を歩きだし長いコンパスについていけないあたしはほぼ駆け足だ
それでも表情を明るくさせてくれる彼が可愛くて文句は言えない
『(こういうところは分かりやすいんだよね)』
大きな褐色の手に掴まれた手首を見つめすっかり成長した教え子と夜の街を歩き、あたし達は二人で仲良く帰った
同じ頃シュートシティに帰ってきたダンデくんがバトルで火照った体を持て余していたとも知らず…
それが良からぬ方向へと感情を勘違いさせていたとも知らずあたしはキバナくんの事だけを考えていた
何度目かのチャンピオンリーグで負けた日、彼に控え室で初めて怒鳴られた
ガゴンッ!!
彼の蹴ったゴミ箱が壁にぶつかってゴロゴロと床を転がっていく
『キバナくん!』
「なんだよっ!また負けたじゃんかっ!アンタはオレを勝たせてくれるんじゃなかったのかよ!何の為にいるんだよ!」
大粒の涙を流しこちらを睨む青い瞳は悲しさと悔しさを孕み見ているこちらも辛い
フーッと獣が威嚇するように出しきれない怒りを込めて息を吐くと彼は勢いよくベンチに腰掛け両手で頭を抱えた
『……ごめん、でも諦めないで…次を考えて…』
「もうやめろよっ!オレはもうこれ以上強くなれないんだろ?先生も…諦めちまえよ?オレの事なんかもう捨てちまえよっ!」
自暴自棄に入ってしまった彼を宥めるのはとても大変だった
ドラゴンタイプに拘る彼を勝たせるのは思った以上に大変で上手く結果が出せない
それはあたしの責任でもある、だから気に入らなければクビにしてしまえばいいのに
優しい彼はクビとは言わず、自分を見捨ててあたしから身を引くようにと言い方を変えてくれる
『あたしはまだ諦めないよ?キバナくんだって本当は諦めたくないんでしょ?』
彼の前に両膝をつけ座り俯いた顔を覗き込むと、またポロポロと彼は涙を流し始めた
「なんでだよ……オレっ…アンタに酷い事言ってるのにっ…なんで…諦めねぇんだよっ」
『…キバナくんが勝ったところ見たいから』
へへっと笑って見せれば少年は余計に泣いてしまいあたしは自然と彼を抱きしめた
胸の中で鼻を啜りながら何度も謝る彼が可愛くて絶対勝たせたいと誓った
大人になったキバナくんは……
『ねぇ何怒ってるの?』
「別にぃ?」
素直じゃなくなった
それに何を考えてるか分からない時がある
今日はダンデくんが途中で乱入してきてしまったけど試合の後はすぐにキバナくんと特訓を続けた
なのに彼はずっと不機嫌でよく分からない、そのくせ特訓が終わった今も頼んでもないのに家まで送ってくれる
あたしの荷物を持って前を歩く彼は大きくて黒いパーカーの背中と刈り上げたうなじしか見えない
顔が見たくなって早足で彼の隣に並ぶとキバナくんは横目であたしを確認しそっぽを向いた
『なんで不機嫌か教えて欲しいんですけど?』
じぃと下から見上げ続けると彼は空いている方の手で自分の刈り上げたうなじを撫でため息を吐いた
「別に?アンタは悪くねぇよ…ただオレが勝手に気に食わねぇって思ってるだけ」
『だから何を?』
「………………バトルの後、ダンデとなんか話して盛り上がってただろ」
『あ〜』
ダンデくんと一回だけ試合をした
勝敗はあたしの勝ちで、自分が負けるとは想像もしていなかった彼は目を輝かせ前のめりにあたしにバトルの感想をぶつけてきた
一匹だけの試合なんだからフルの試合なら勝敗は分からなかったと誤魔化したけど、きっと彼のバトル魂に火をつけてしまったのだろう
次も近いうちにバトルしたいと迫られキバナくんが助けに入らなかったら大変な事になっていた
『バトルが楽しかったって感想を言われただけだよ、ダンデくんのバトルジャンキーぶりには困ったね…キバナくんが止めてくれて本当に助かったもん』
へらりと笑ってみせるもキバナくんは唇を尖らせまだ不機嫌だ
「その割には楽しそうだったじゃん、オレとバトルするよりチャンピオンさまとした方がやり甲斐もあんだろ」
『そんな事ないってば!』
「……ハッ、どうだかな」
どうしたら機嫌がよくなるのか…長年一緒にいたあたしには解決方法がちゃ〜んと分かってるんだからね?
『そうだ、キバナくんよかったらウチでご飯食べてかない?』
「え?マジッ!いいの!」
『ん、豪華なものじゃないけど…もう夕飯の時間だし食べていきなよ』
「やりぃっ!早く行こうぜ!っとその前になんか飲み物買う?オレなんでも奢るぜ?」
ころりと機嫌が良くなった彼はあたしの手を掴むと早足に家路を歩きだし長いコンパスについていけないあたしはほぼ駆け足だ
それでも表情を明るくさせてくれる彼が可愛くて文句は言えない
『(こういうところは分かりやすいんだよね)』
大きな褐色の手に掴まれた手首を見つめすっかり成長した教え子と夜の街を歩き、あたし達は二人で仲良く帰った
同じ頃シュートシティに帰ってきたダンデくんがバトルで火照った体を持て余していたとも知らず…
それが良からぬ方向へと感情を勘違いさせていたとも知らずあたしはキバナくんの事だけを考えていた