short short short!
短編にすらならない夢。ただの会話文とか。
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バウムクーヘンエンド~ギアッチョ~
20230823(水)06:10※病んでるギアッチョ、暴力表現あり
「いい度胸してるじゃあねーか。なあ?オレをナメてんじゃあねーのかァ~……ッ!?」
「う゛……ッ!」
頭に血が昇る。腹の中を焼くような苛立ちに、拳を固く握って女の頬に振り下ろせば、女は呻き声と共に地面に倒れた。オレの後ろには、女が明日結婚するはずだった相手の男が転がっている。もう二十分も前に凍死した男が。その男の名前を涙に濡れた声で囁き、もう息もしていないそいつに縋ろうとする女の首を片手で掴んで地面に押さえ付ける。そのまま指に力を込めれば、細い喉は激しい脈動を返してきて、オレの掌を忙しなく押し上げた。
今まで特定の女にこんな感情が湧くことはなかった。そこら辺の恋人同士がやっているようなことにも興味はなかったし、むしろ馬鹿々々しいとさえ思っていた。自分の隣にいる女がただの身体だけの関係で、オレ以外の男とどういう仲になろうが好きにすればいいと考えていた。女に執着することがなかったからだ。女なんてのは、オレをイラつかせず、面倒事を起こさなければいい。
そうだったはずが、この女は違った。情報管理チームで働く女を初めて見たあの日、どうしてか理解できねーが、目が離せなくなった。隣にいたメローネが「地味な女が好みなのか」とか言っていたが、その女がどんな見た目かなんて全く考えていなかった。女は暗殺チームのメンバーであるオレに最初こそはビビッていて、こちらの反応をいちいち窺いながら形式的なやり取りだけをしていた。それから暫くして、「今日は雨ですね」とどうでもいい天気の話をするようになって、それから好物や趣味の話に変わっていった。
初めてだった。他人と話して苛立ちを感じることなく、むしろその時間がもっと続けばいいと思ったのは。女と話していると、妙なくらいに心が落ち着いたんだ。それがある日、女の一言で一転した。女はオレにこう言った。「恋人からプロポーズされたんです」と。付き合っているヤツがいることすらオレは知らなかった。誰がどんなヤツとデキても特に興味なんてものがなかったはずが、無性に腹立たしくなり、その場で女の顎を掴んで怒鳴りつけた。なんて言ったのかはオレ自身も覚えていない。それからは女のところに行くことを止めた。そして今日、女が結婚する前日、二人でいるところを狙って近付き『ホワイト・アルバム』で男を凍死させた。だが、それだけじゃあ、オレの胸の騒めきは収まらなかった。
「……ギ、アッチョ……さんッ!」
「残念だったな?楽しみにしていた結婚式ができなくなってよォ……」
「う、ぐ……ッ!」
「相手がいねーんじゃあ、できるはずねーよな~?」
女の両手が首を掴んでいたオレの手に重なる。細っこい指が手の甲を掻いた。
「もしかして……まだ未練があるのか?懲りねーな、オメーも。そんなに結婚がしてーなら、オレがその相手になってやるよ。それなら憧れていたものに近付けるだろ」
バウムクーヘンエンドシリーズ終わり。ギアッチョ
バウムクーヘンエンド~メローネ~
20230821(月)03:00※病んでるメローネ、微裏
男は『ベイビィ・フェイス』によって始末された。別にベイビィ・フェイスを疑うわけじゃあない。今回はしっかり教育を施し、人を殺すということを徹底的に教え込んだ息子が出来たからな。ただ一応ってところだ。一応、新郎の部屋に向かって、そこが無人であることを確認する。次に、ベイビィ・フェイスに女の捕獲を指示した。次々に画面を流れていくベイビィ・フェイスの息子からの報告。ソファーに座りながらその文字を眺めていると、女を捕獲したという知らせが表示された。それに急いで立ち上がり、女がいる新婦の控室に急ぐ。そこには言葉の通り、ベイビィ・フェイスによって両腕を拘束されたウエディングドレスを着た女がいた。
「あなた誰……ッ?」
「酷いな。忘れたのか?おまえの夫になる男だろ」
「何を……言ってるの?」
女に近付き、両頬を包んでやれば、涙に揺らぐ瞳がオレを映した。
「ああ、ディ・モールトいい……。今までウエディングドレスを特に意識したことはなかったが、こうして見ると純潔さを感じる。汚し甲斐があるな」
頬を包んだ両手の母指で、震える唇を中心から端に向かって撫でる。やっぱり、いつ触れても柔らかい唇だ。この唇がオレの唾液に塗れるほど激しく濃厚な口付けをしてやりたい。興奮が身体の奥からじわじわと広がり、指先や脳天まで蝕んでいった。
「は、離して……ッ」
「なぜだ?夫と妻が触れ合うのは普通のことだろう?ああ、まさか恥ずかしいのか?おまえは結構な恥ずかしがり屋だからな。でも悪いな。止められねーんだ。ほら、おまえのせいでオレの心臓はこんなに激しく動いているんだぜ」
オレは女の頬から両手を離し、背中側で一つに纏められている手を一つ掴むと、自分の胸に掌を押し付けさせてその鼓動を伝えた。女が「止めて」と、そう叫んでオレの手を振り払おうとしたが、ベイビィ・フェイスは直ぐに女を床に仰向けに押し倒し、暴れる両腕をそこに縫い付けた。
「恥ずかしがるおまえも可愛いが、なにも初めてじゃあねーだろ。昨日の夜も愛し合ったじゃあないか。あんなに激しく、何度も」
「……え?」
「上手く受精しているといいな。オレとの子供だ。嬉しいだろ?」
今はまだ薄さを保っている女の腹を、円を描くようにして撫でてそう囁いてやる。女は目を見開き、唇を震わせながらオレを見上げた。ただただ無言で。
メローネ
バウムクーヘンエンド~ペッシ~
20230820(日)01:53※病んでるペッシ、グロテスク表現あり、微裏
「ペッシさん……ッ」
『ビーチ・ボーイ』で釣り上げた男を床や壁に何度も何度も叩きつけるペッシに、女が口元を手で押さえて膝を付いた。気付いていないのか、それともどうでも良いとさえ思っているのか。飛び散る血が肌や衣服を汚しているのにも関わらず、ペッシは只管に男を振り回した。肉体がぶつかる度、男は耳を劈くような絶叫をあげていたが、それももう聞こえない。それでもペッシの腕が休まることはなかった。撓るブランクスが漸く落ち着いた頃、ペッシは汗が伝う腕をだらりと下げ、肩で息をしながらゆっくりと女に振り返った。
「何で……ッ。何でオレじゃあねーんだよ……ッ!」
ペッシの目尻には涙の粒が浮かんでいた。すっかり恐怖に呑まれていた女の耳にはペッシの言葉などまともに入っていなかった。ここから逃げなければと、本能が発する警告に身体が無意識のうちに動き出し、荒れ狂うペッシから離れようと立ち上がる。だがその足は、床を蹴ることはなかった。踏み出した瞬間、後方へと引っ張られた足。必然的に身体は床へうつ伏せに打ち付けられ、女の唇からは悲鳴が漏れた。そして、そのまま女の身体はペッシが立つ方へと引き摺られて行く。女が視線を自身の足に落とすと、そこには足首から伸びる一本の糸があった。更に糸を辿っていけば、行きつく先にはペッシが持つ釣り竿が。血管が浮き立つ手はリールのハンドルを回し、鈍い音と共に糸を巻き取っていた。
「に、逃がさねーぜ……ッ!今度こそなァ……ッ!男より軽いんだよッ!ずっと楽なんだ、女を釣るのは……ッ!」
「ひ……いッ!」
女は床に爪を立てて抗おうとするが、そんな抵抗は空しいものに終わった。ペッシが竿の先を高く持ち上げ、ハンドルを回す手をより激しいものにすれば、女の身体は一気に彼へと引き寄せられた。
「こいつより、オレの方が先に……ッ!先に好きだったのに……ッ!」
「い、痛い……ッ!止めて……ッ!」
ペッシはビーチ・ボーイを解除して女に馬乗りになると、細い左腕を捻り上げ、薬指を抱く指輪を強引に抜き取った。
「こんな物を見せ付けやがって……ッ!」
「う、あ……ッ」
「気がねーならよ、優しくしてんじゃあねえ……ッ!この尻軽女ッ!」
「そ、そんな……つもりじゃあ……ッ」
女はペッシがよく行く喫茶店の店員だった。人目を惹く飛び切りの美女というわけではないが、物腰穏やかで優しく、親しみやすい雰囲気を持っていることから評判だった。ペッシはそんな彼女に好意を抱いていた。兄貴分であるプロシュートと共にいれば、いつも彼ばかりが目立っていて、女性たちの目にはどうしてもペッシは霞んで映ってしまっていた。そんなペッシにとって、自分にも分け隔てなく接し、柔らかな笑みを向ける彼女はあまりに眩しく、それでいて魅力的に見えてしまった。「兄貴分が人間として優れていて憧れるが、自信が持てない」と、ペッシがついつい漏らしてしまった時も、彼女は彼の甘えを受け止め、「ペッシさんにはペッシさんらしさがあって、十分素敵ですよ」と微笑んだ。ペッシは、夢にその姿を映してしまうほどに女に溺れるようになった。店に通う頻度を増やし、彼女が自分のテーブルに来るようにわざわざタイミングを見計らい、時には彼女を想って自身を慰めた。そんな彼女に結婚を約束した相手がいたと知ったのは、つい先日のことだった。
「……」
ペッシは動けないでいる女を見下ろした。暴力で捻じ伏せる興奮にすっかり取り憑かれていたペッシには、今の彼女の姿は性欲を強烈なまでに刺激する扇情的なものにしか見えなかった。右手を女の身体と床との間に滑り込ませ、服越しに胸部を弄れば、柔らかい感触が掌を刺激する。唾を呑み込んだペッシは、爪を立てるようにしてそれを鷲掴むと、女の背中に自らの身体を重ねた。
「ヘ、ヘヘ……ッ。ヤ、ヤッちまえばよ、おまえは他の野郎のところになんか行けなくなるよな……?おまえ、女だもんな?」
ペッシ
バウムクーヘンエンド~プロシュート~
20230818(金)01:36※病んでるプロシュート、グロテスク表現あり、暴力表現あり
「プロシュートさん……ッ!あ、の……ッ。こ、これは……ッ?」
「見て分からねーのか?」
『ザ・グレイトフル・デッド』で年老いてしまった男に近付いたプロシュートは、銃口を男の頭部にあてがい、そのまま何の躊躇いもなく、呼吸をするが如く引き金を引いた。たった今、プロシュートによって命を奪われた男の隣にいた女は、ひどい疲労感を訴える腕で何とか上体を支える。脱力しきった下半身で男の亡骸に這い寄り、肩を揺さぶって縋ろうとしたその左手をプロシュートが捕らえた。その時、今まで女の身体を包んでいた違和感が一瞬で消え去る。だが、唯一消えなかったのは、プロシュートへ対する恐怖だった。
「オレよりこの男の方に価値があるとおまえが思ったのは、結構効いたぜ。イラつくほどにな」
「……ッ」
「オレの誘いは断っていたくせに、この男の誘いにはほいほい付いて行きやがって。オレをナメてんのか?ええ?どうなんだよ」
「い……ッ!」
プロシュートは女の左手の薬指を掴み、手背側へと力任せに倒す。可動域の限界を超えようとするそれに苦悶する女を見下ろすプロシュートの目には、屈辱や憎悪、執着、そして愛情が粘り付いていた。
プロシュートは今まで女性から拒絶というものを受けた経験がなかった。たった一言、甘い言葉のひとつでも囁いて触れれば、相手はいとも簡単にプロシュートに心と身体を許した。自惚れも確かにあったが、事実、プロシュートという男は魅力に溢れる男だった。だが、そんなプロシュートをこの女は拒んだ。たった一人の女の拒絶は、プロシュートの自信を激しく揺さぶった。その経験はプロシュートに女への執着として根付いた。女が恋人からプロポーズを受けたと知ったプロシュートは、デートを楽しむ二人を狙い、スタンド能力を使って襲い掛かって今に至る。
「まだ指輪は貰ってなかったのか。良かったじゃあねーか。無駄にならなくてよォ。そんな物、できなくなるからな」
プロシュートは助けを乞う女の薬指の先に口付けを落とし、掴んでいたその指を勢い良く折り曲げた。瞬間、女が悲鳴を響かせて蹲った。それだけでプロシュートは止まらなかった。女の髪を掴んで顔を引き上げると、頬に平手を一度打ち込み、次に顎を鷲掴んで強引に己と視線を交わらせる。涙を浮かべる女を恍惚と見つめるプロシュートは、髪を掴んでいた方の手で自身の首に巻き付くタイを解き、それを女の口内に押し込んだ。
「そそるぜ、その表情。イイ顔だ。そして後悔することだ。選ぶ相手を間違えたって後悔を。おまえのせいでこの男は死んだんだ。しっかり目に焼き付けろ」
プロシュート
バウムクーヘンエンド~イルーゾォ~
20230817(木)02:28※病んでるイルーゾォ、微裏っぽい
偶然だった。あいつとの出会いは偶然で、次の任務のために解析チームを訪れた時、オレの依頼を受け付けたのがあいつだった。まだ新人で不慣れな様子にその時は苛立ったが、肝心の腕は確かだった。別に仕事が出来ればそれでいいと、オレはそう思ってあいつに解析を依頼することが多くなった。正直に言ってしまえば、オレがいる暗殺チームは他のチームからは嫌われている。そりゃあ無理もない。命令が下れば組織の人間ですら始末するからな。あいつも最初、オレが暗殺チームだと聞いてビビりまくっていたが、何度か依頼を続けていると、ぎこちなくだが笑うようになって、それは次第にちゃんとした形の笑顔に変わっていった。
オレは時々だがあいつに土産を持って行くようになった。解析チームは幾つかの街に拠点を持っている。どの街に配属されるかは幹部の命令次第だ。写真や文書の解析という仕事上、自分が配置された街にあるアジトから出ることは殆どないし、あっても解析結果の報告のために近隣の街に向かう程度だ。任務であちこちを回るオレたちとは違う。だから遠くの街へ行ったときや国を跨いだときには、そこでしか手に入らない物を適当に選んで渡してやった。大抵は菓子だ。甘い物が好物だと言っていたからな。あいつはオレが渡した土産をガキみてーに喜んで受け取って、「みんなと食べます」といつもそう言った。そうじゃあねーよ。それはおまえのためにわざわざ買ってやったんだ。他のよく知らねークソ野郎に分けてんじゃあねーよ。
「イルーゾォ。おまえがよく解析依頼を出してるあの女、同じチームの男と結婚するらしいぜ」と言ったのはホルマジオだった。その同じチームの男というのが、ホルマジオが解析依頼をしている相手らしい。その言葉を聞いた途端、オレの腹の奥が煮え立ったのを覚えている。むかっ腹が立つって言うのか。オレはホルマジオからその話を詳しく聞き出し、あいつが式を挙げる予定の場所を突き止めた。
式の当日、オレは『マン・イン・ザ・ミラー』であいつの控室にある鏡に潜んで待った。すると、現れたのは、ドレスを着たあいつ。その格好がオレのためじゃあなく、また別の男のためのもので、顔に浮かぶ笑顔もそいつのものだと思うと憎たらしささえ感じた。オレは鏡の世界からあいつを覗く。そしてゆっくりと近付いた。あいつが鏡に映るオレに気付き、驚きに目を見開いて自分の背後を振り向いた。だが、そこにオレの姿がないことに更に困惑する。オレは硬直したままのあいつに手を伸ばし、こっちの世界へと引き摺り込んだ。
「似合わねーな、その格好」
掴んだ腕を捻り上げれば、あいつは悲鳴を上げた。オレよりもずっと弱い力で抵抗するあいつを床にうつ伏せに押し倒し、楽しみにしていただろうドレスを引き裂き、その下にある肌に掌を滑らせた。
「結婚だァ?笑えるな。おまえ、本当に自分が結婚できると思ってたのかよ」
「イルーゾォ、さん……ッ」
「目を覚まさせてやろうか?」
小さい背中に圧し掛かれば、あいつの肩が震え、涙が目尻から落ちていった。
「他の男に犯された女を欲しがるヤツだといいな?」イルーゾォ
バウムクーヘンエンド~ホルマジオ~
20230816(水)01:55※病んでるホルマジオ
「あーあ。オメーはもっと賢い女だと思ってたのによ~」
ホルマジオはそう言って目の前の女に笑って見せ、彼女の頭を右手で乱暴に掻き撫でる。同時に、反対側の手に持つ酒瓶を顔の高さほどまで持ち上げた。その中には蠢く小さな影が一つ。それはあろうことか人の形をしていた。そう、瓶の中には、物語に出て来るような小人が入っていたのだ。ホルマジオは酒瓶を左右に揺らして中にいる人間を弄ぶ。瓶の中に響くのは微かな悲鳴。女はそれを見て「止めてッ」と、ホルマジオの手にある瓶を奪い取ろうとしたが、その行動を読んでいた彼は女の手の動きに合わせ、瓶を僅かに遠ざけることで奪われるのを避けた。それだけではない。頭を撫でていた右手で女の髪を鷲掴み、力任せに顔を引き上げたのだった。
「こいつから指輪を貰って嬉しかったか?んん?答えてみろよ、なあ」
「……ッ」
ホルマジオの足元にある指輪。飾り気のないそれを靴の先で突いたホルマジオは、踵を地面に付けたまま足先だけを浮かせ、動くことのできない指輪を見せ付けるように踏んだ。そして女の髪を手放すと、その手で足元を歩いていた小さな蜘蛛を摘まみ、瓶の中へと放った。
「兄さん……ッ!止めてッ!」
「ヒャハハハッ!止めて、かァ~。ああ、いいぜ。止めてやる。ただし、オレは止めるが、こいつはどうかな~?」
不気味なほどゆっくりとした動きで女の隣に移ったホルマジオ。筋肉が描く線が浮かぶ腕を女の肩に回して抱き寄せ、彼女の頬に己の頬を合わせたままこう囁いた。
「おまえにこんな物は似合わねーよ。オレがちゃんと似合うやつを用意してやる」
ホルマジオに女の後輩ができたのは二年前。自分を慕って付いて歩く彼女をホルマジオは心底気に入っていた。食事に誘えば嫌な顔一つせず、むしろ嬉しそうに首を縦に振り、任務のない日にどこかへ出掛けようと言っても必ずそれに付いて行った。周囲が『デキてる』と思う程の仲に見えたが、女がホルマジオに対して「結婚が決まった」と言ったのはつい先日のことだった。相手は同じ組織の男。二人が所属する暗殺チームとは別のチームにいる男だった。仕事の関係で式は挙げないと言う彼女の指には見慣れぬ指輪が絡み付いていて、小さいくせに妙な存在感を醸し出していた。ホルマジオは今まで彼女から好意の言葉の類を聞いたことはなかったが、それでも彼女の行動に先輩としてではなく男としての意識を持っていた。傍目には勘違いと映るが、ホルマジオにとっては確かな現実だった。ホルマジオ
バウムクーヘンエンド~リゾット~
20230814(月)20:50※病んでるリゾット、グロテスク表現あり
彼女はオレがシチリアにいた頃から傍にいた。父の友人家族が近くに越してきて、その娘というのが彼女であり、オレの方が二歳年上だからとそんな理由でよく遊び相手にあてがわれた。彼女は人見知りで最初は殆ど口を開かず、よく泣くし、直ぐに何かに怯えていた。だが、何回も顔を合わせていると、漸く慣れたらしく、彼女から「遊ぼう」と言って来るようになった。オレを見掛ければ走り寄って来て、オレの名前を呼んで笑い、一度だけだが「大好き」と言ってまだ化粧もしていない唇をオレの頬に押し当てた。オレがシチリアを出てからは電話で連絡を取るだけで、実際に会うことはなくなった。彼女はオレと違って学校生活があったことと、入団したばかりのギャングの下っ端ではシチリアへ行く時間もなかったからだった。
暗殺チームに配属されてからも忙しい日々は続いた。それでも彼女との連絡は欠かさなかった。大学でのこと、卒業してからの進路、シチリアを出てローマで働くことになったこと。楽しそうに、嬉しそうに話す声だけで、彼女がどんな表情を浮かべているかは想像できた。だが、ある時、彼女はこう言った。「恋人ができた」と。相手は職場の同僚だという男。付き合ってもう一年になるらしい。初めての恋人で恥ずかしくて話せなかったと言う彼女は電話越しに笑っていたが、オレの心臓は彼女が言葉を紡ぐ度に冷え込んでいった。
それ以来、彼女の話題にはその男のことが出て来るようになった。どこへ行っただとか、何を貰っただとか、礼として何を贈ろうかだとか。話している様子から、彼女と男の仲が順調であり、次第に深いものになっていることが嫌でも分かる。許せなかった。彼女が他の男に心奪われ、男を愛し、そしてその男が彼女に愛され、身体に触れていると思うと。それから更に数か月後、彼女は「結婚することになったの」と電話をして来た。式の日程と場所は決まり次第また伝える。そう話す彼女の声は、ひどく幸せそうだった。オレの胸をこんなにも掻き毟っているというのに。
式についての電話が来た時、オレは仕事の都合で出席できないと返した。だが、オレは今、彼女の式場にいる。メタリカで姿を隠して。彼女の細い指に、男が指輪を填めようとしている。オレは能力を解除して姿を現し、男の手首から刃物を作り出してそれを切断した。間を置かずに男の首に鋏を出現させて息の根を止める。式場を悲鳴が包んだが、それは長くはなかった。扉には予め鎹を打ち込んで開かないようにして退路を塞ぎ、そこにいた彼女以外の全員の喉を裂く。噴き出た血があちこちを染め、不快な鉄の臭いが充満した。その中で白いドレスを纏った彼女は、涙を流して座り込み、肩を激しく上下させて震えていた。
「会うのはシチリアを出て以来だな」
オレは彼女に近付いた。視線を合わせるように膝を付き、あの頃のように頭を撫でる。
「リゾット……?」
「ああ」
「な、んで……ッ」
「何で?それはこっちの台詞だ。なぜ、オレの心を裏切った?」
オレは彼女の左手を取り、その薬指に指輪を填めた。あの男の物じゃあない。自分の掌に忍ばせていた指輪を。
「あの男じゃあないだろ。この役目は」
涙に濡れた唇に口付けをすれば、あいつの左手はオレの手から滑り落ちた。
暗殺チームのバウムクーヘンエンドな病んでるシリーズ。リゾット
ペッシはあの子のあれが気になる
20230811(金)12:58※ちょっと下品
「暑い……ッ。あー、もうッ!暑いのって本当に嫌いッ!」
「おまえ、冬は『寒いの嫌い』って言ってただろ」
「煩いなあ。ねえ、ペッシはこの暑さ平気なの?」
「オ、オレは平気だぜ。暑い日でも海に行って釣りをするし……。それに、暑いだなんて兄貴の前で言ったら『甘ったれるな』って殴られるし……」
「ああ、なるほど。でも、今はプロシュートはいないし、別に言ってもいいんじゃあないの?」
「ま、まあ、そうだけどよ……」
「はあ……。ここにもエアコンを付けて欲しいよ。服を脱ぐのにも限界があるし、何度もシャワーを浴びないといけないし……」
「……ッ」
「どうしたの?ペッシ」
「な、何でもねえ……ッ」
「あ、ペッシもやっぱり暑いんでしょ!顔が赤いよ!」
「違ェよ……ッ!」
「違うって何が?」
「そ、それは……ッ」
「……」
「……とにかく、おまえには関係ねーだろッ。それと、服をちゃんと着ろよッ」
「着てるでしょ!さすがに素っ裸にならないよ!」
「そんな薄着、裸と変わらねーよッ!」
「暑い日も暑い日で、得をすることもあるよな。なあ、ペッシ」
「……な、何のことだよ、メローネ」
「あいつが薄着になるだろ。しかも、上はキャミソール一枚。あいつはガサツな性格だが、身体は最高だ。汗ばんだ鎖骨や胸の谷間も見えるし、汗が伝う背中や二の腕も出ている」
「……ッ」
「ペッシ。おまえ、分かり易いぜ。まあ、自然と目がいくってのは理解できる。動く度に薄い服の下で胸が揺れる様子なんてそそるからな」
「……うッ」
「そういうことなんだろ?」
巨乳の薄着って良いと思います。ペッシ
はじめてのイタリア旅行2
20230810(木)03:01「……」
明らかに『ヤバい人たち』って、こんなにもいるものなのだろうか。イタリアに旅行に来て2日目。何だかとてつもない集団が後ろのテーブル席を2つも陣取っていた。昨日の人たちといい、なぜこんなに違うタイプの人間が一つのグループを形成しているのだろうか。普通、グループといえば、だいたいは同じタイプの人たちが集まるはずだ。それなのに後ろの集団は、それぞれが色濃いのに、それぞれが違う色をしている。恐らく一番の長身であろう人は誰とも話さずただ黙り込んでいて、頭に剃り込みを入れた人と長髪を幾つもの束に纏めた人が何やら言い争っている。金髪のスーツ姿の人は緑の髪を逆立てた人に怒声を浴びせていて、アイマスクをした奇抜な服装の人はジロジロとこちらを見ているし、パーマ……と言って良いのか分からないが不思議な髪型にメガネを掛けた人は物凄く苛立った様子だ。何と話しているかは分からないけれど、空気は重たかった。わたしにとっては。
「……さっさと食べて出よう」
出て来た料理を口の中に押し込み、殆ど噛まずに飲み込む。急いで食事を終え、わたしが席を立ったと同時に、アイマスクの人がこちらを見つめたまま腰を上げかけていたが知らないふりをしよう。足早に店の出入り口を目指し、外に出て階段を下りたところで、細い路地から走って来た男の子とぶつかってしまった。
「うわあ……ッ!す、すみませんッ!」
「あの……い、いいえ、こちらこそすみません」
凄くオドオドとした男の子だったが、それに反した派手な色の髪をしていた。「すみません」くらいはわたしにも聞き取ることができる。ぶつかった衝撃でお互いに倒れてしまったが、男の子は直ぐに立ち上がってこちらに手を差し伸べてくれた。
「ありがとうございます……」
「怪我はありませんか?」
「えっと……。わ、わたし、イタリア語が殆ど分からなくて」
「じゃあ、英語は分かりますか?」
「は、はい」
イタリア語があまり話せないと英語で伝えると、男の子は英語も話せるようで「怪我は?」と問いかけてくれた。「女の子にぶつかるなんて……。本当にすみません」。心底申し訳なさそうに呟く男の子は、わたしに怪我がないことを確認した直後、まるで電話の着信音のような奇妙な声を出し、ポケットから取り出した一本のストローを自分の耳にあてがった。
「はい、もしもし。ドッピオです」
ス、ストローを耳に当てて、一人で話し込んでいる。
「え?ああ、はい。分かりました、ボス」
やっぱりイタリアはヤバいところなのかもしれない。もう今回の旅行でお腹いっぱいだ。
「では、ぼくちょっと急いでいるので……」
「はい。どうぞ、急いでください」
日本が恋しくなってきた。早く杜王町に帰りたい。いや、でもよく考えたらあっちもあっちで変な人が多いような……。
終わり。暗殺チームドッピオ&ディアボロ
はじめてのイタリア旅行1
20230809(水)01:19「ここがイタリア……ッ。い、一度来てみたかったんだよねッ」
念願だったイタリア旅行に来た。長期休暇を何とか獲得して。イタリア語は殆ど分からないけれど、最低限の英語は話せるし、比較的安全な場所や治安が悪い場所も日本にいる間に調べたから……大丈夫だろう、たぶん。そんな気持ちで空港を出たわたしが目にしたのは、日本ではなかなか見ることのできない光景だった。大人びた様子の……まだ少年だろう男の子が、警備員にお金入りのタバコの箱を渡していた。
「タクシー探してるの?どこに行くの?市内?」
「……」
「観光で来たの?」
「……」
その男の子が話しかけて来た。何を言っているか、はっきりとは分からない。所々しか聞き取れない。でも、これはたぶん『乗っちゃいけないタクシー』に誘っているやつだ。関わっちゃあダメだ。頭がそう言って、わたしは視線を逸らして行列ができている「ちゃんとした」タクシー乗り場に向かった。しつこく話しかけて来ているけれど無視だ、無視。「日本人?」と問いかけて来ているのは聞き取れたが、わたしは徹底的に彼を無視した。
タクシーでは英語と地図を見せることで目的地を伝え、なんとか市内に到着。少し疲れたなとレストランに入ってみたが、わたしは店の選択を誤ってしまったらしい。
「てめー、また間違えやがったなーッ!何度言えば分かるんだッ!」
「い、痛ェーッ!」
おかしいな。ここはまだ「比較的マシ」な場所だったはずだ。それなのに、二人の男の子がテーブルで騒ぎ立てている。教科書を広げ、そこに血を飛び散らし、一方は手にフォークを握ってそれをもう一人に突き刺して。それにしても凄い服装だ。あんな穴開きの赤いスーツ、どこに売っているのだろう。イ、イタリアでは普通なのか。更には、同じ席に座っている長身の男と帽子を被った男は、目の前で繰り広げられている喧嘩を全く気にしていない。わたし以外の客たちは何人かはチラチラと彼らを見ているが関わろうとはしていないし、店員に至っては日常の一コマのように喧嘩を無視して談笑している。すると、白いスーツを着たおかっぱ頭の男の人が店に入って来て、騒がしいテーブルへ真っ直ぐに向かっていった。
「煩いぞ、おまえらッ!」
白いスーツの男が何やら一声響かせると、静寂が訪れた。何なんだろう、あの人たち。よく分からないけれど、白いスーツの人があの中では一番偉い立場にあることだけは分かった。ま、まさか、ギャング……とかじゃあないよね。まさか……。
「……イタリアって怖いな」
想像していたよりも怖い。何だか早く帰りたくなってきた。護衛チーム