short short short!
短編にすらならない夢。ただの会話文とか。
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記事一覧
モブから見た恋人たち~フーゴ~
20200520(水)06:18モブ視点から見た様子
※ちょっと病んでるフーゴ
ぼくが雇われている店には、ある常連客がいた。口調や振る舞いは丁寧な男。一見は、だが。恋人と思われる女に「パンナコッタ」と呼ばれていたその男は、気に食わないことがあればそこが店の中であろうと道であろうと、静かだった声を荒げ、丁寧だった言葉を汚し、紳士な振る舞いを乱暴なものにしていた。それは主に、気の弱そうな恋人に近付いた男や、言いがかりを付けたり、スリをしようとした相手に向けられていた。確かにそれは、相手が悪い。しかし、やり過ぎるんだ。相手が血を吐こうが気絶しようが、構うことのない男の姿に、ぼくは恐怖を感じていた。
そんな中、恋人はただ見ているだけではなかった。暴れる男に縋って、暴走を止めるように言い聞かせていた。男は決して、恋人に手をあげることはなく、宥められれば直ぐに大人しくなって謝罪をしていた。殴り蹴った相手にではなく、恋人に対して。そこで疑問を抱いてしまうのだが、なぜその男は出入り禁止にならないのか。店長に聞いてみたところ、どうやら男はギャングで、ここ一帯を管轄としているらしい。年齢を聞いて驚いた。ぼくよりも年下だった。
今日もその男は暴れていた。恋人が少しぶつかっただけで、相手が治療費を求めて来たから……らしい。そして今日も恋人が止めていた。まるで空気の抜けていく風船のように怒りを鎮めた男は、恋人に無事を確認する。己が殴り倒した相手を、足元に転がしたまま。
「さあ、出ましょうか。また変なヤツが絡んで来たら面倒なので」
「あ、う、うん」
「どうかしましたか?」
「いや、何でも……ない」
倒れたままの相手を心配そうに見つめる恋人の肩を包んだ男は、促すようにその身体を抱き寄せてこちらへと来る。会計中、男が落としたお金を拾おうと、恋人が屈んだ。その時に見えた胸元。そこには、夥しい印が付けられていた。まるで、白い肌を埋め尽くすように。
「はい、パンナコッタ。落としたお金」
「すみません、ありがとうございます。……金額、これでいいんですよね?」
「あ、ああ、はい。丁度、いただきます」
胸元だけじゃあなかった。手を伸ばした時に見えた、袖に隠れていた腕。そこにも、噛み痕があった。男の異常ともいえる恋人への執着心を目の当たりにし、ぼくは男の顔を見ることが出来なかった。そして分かった。こんな二面性のある男と、なぜこの恋人が別れないのかを。別れないんじゃあない。別れられないんだ。
フーゴ
モブから見た恋人たち~ナランチャ~
20200519(火)08:18モブ視点から見た様子
兄妹かと思った。手を繋ぐほど仲の良い兄妹。商品棚に陳列されたお菓子に真剣な眼差しを向けながら、「これも美味しそうだよ」「あれ美味かったぜ」なんて話し合っているんだもの。そんな二人がカップルだなんて思うはずがないでしょ。
男の子の方は、ナランチャくんというのは知っている。うちの店を守ってくれているブチャラティさんのところのチームに入っていて、時々、徴収に来るから。ナランチャくんに、「妹さん?可愛いわね」と聞いてしまった。彼よりも背が低く、幼い顔立ちをしていたから。ナランチャくんは「違うよ」と直ぐに否定した。不満をこれでもかと表情に出して。
「見た目で決めつけるなよ」
「ごめんね。じゃあ、まさか恋人?」
「悪いかよ」
「イタリア人……じゃあないわよね。アジア人?」
「ああ、日本人だよ」
ナランチャくんよりも年下だろうと思われた恋人は、どうやら同い年らしい。ナランチャくんもどちらかといえば実年齢よりも幼く見えるけれど、その原因は彼の素直過ぎる性格もあるはずだ。女の子と繋いでいる手は、しっかりとした男性の手になりつつある。そんなナランチャくんの手に絡まる女の子の手は、彼よりも細くて小さく、性別の差というものを感じた。
ナランチャくんは少し不器用だけど、彼なりに女の子をエスコートしているのが見ていて分かった。歩幅は合わせているし、女の子が悩めばちゃんと待っていてくれる。棚や人にぶつからないように、スペースを作ってあげたり。
ああ、ナランチャくんは女の子のことが大好きなんだな。
「はい、これ。チョコレート。ナランチャくんの好きなやつ。可愛いカップルにおまけよ」
「……い、いいよ。ちゃんとその分、払うから」
女の子の前で『男』であろうとしているのか。袋に詰めたおまけに、ちょっぴり顔を綻ばせたと思うと直ぐにそれを解いて、財布からチョコレートのお金を取り出す。
「いいの、いいの。いつもお世話になってるし。可愛い彼女さんの分も入れておいたからね。ナランチャくんをよろしくね。彼、とてもいい子だから」
「は、はい……ッ」
頬を赤く染めて答える女の子は、とても愛らしかった。うん、ナランチャくんが好きになっちゃうわけだ。商品の入った袋を女の子に手渡そうとすると、それを横から奪ったナランチャくん。
「余計なこと、言うなよな!」
照れ隠しか。耳まで赤くして、女の子の手を引いて店を出るナランチャくんを見送りながら、あたしは「この二人ならずっと続くんだろうな」と感じていた。
ナランチャ
モブから見た恋人たち~ミスタ~
20200518(月)05:54モブ視点から見た様子
うちの店には、不思議な男のお客さんが来る。お客さん本人の見た目の派手さもあるが、何より食事中に一人で何かと……あたしの目には見えない何かと話しているのだ。それ以外では特に問題はない。ちゃんと注文はしてくれるし、料金も支払ってくれる。そのお客さんは度々、女の人を一人連れて来ていた。女の人が「ミスタ」と呼んでいるころから、お客さんはミスタさんというのだろう。ミスタさんは、たぶん……きっと、彼女のことが好きだ。肝心の相手は気付いていないようだけど、ミスタさんは彼女の肩を抱こうとして悩みに悩んで結局やめたり、手に触れようとして引っ込めてしまったりしている。そのじれったさは、見ていてイライラしてしまった。これは、本気の相手に対しては奥手なタイプだな。あたしは、いつの間にかその二人の仲を見ているのが楽しみになってしまっていた。
女の人は、ミスタさんが見えているモノを、同じく見ることができるらしい。まるで子供へ向けるような眼差しで、それに微笑んでいる。その様子を、ミスタさんが決まって緩みきった顔で眺めていた。でも、女の人がそれに集中してしまうと、どこか寂しそうに視線を逸らすミスタさんは、彼女の気を引こうと名前を繰り返し呼んだり、子供のような悪戯を始める。すると女の人は、一旦はミスタさんに反応するのだが、慌てたようにまたすぐに目に見えない何かへ意識を向ける。何が見えているのかは分からないし、そもそも『見えている』なんて頭のおかしい人たちではないかと思えてしまうが、二人の様子はなぜだかとても微笑ましかった。
最近、あたしは男の人のフルネームを知った。グイード・ミスタというらしい。なぜ知っているかって?女の人のミスタさんの呼び方に、変化があったからだ。今では「グイード」と呼んでいる。普通、後からファミリーネームを呼ぶなんてありえないでしょ?それを聞いて、「ああ、この二人はとうとう結ばれたんだな」と思った。ミスタさんはやっと女の人の肩を抱くことも、手を握ることも出来るようになったようだ。時々、控え目にキスをしては笑い合っているミスタさんと女の人。幸せそうな二人に、あたしは「おめでとう」と心の中で拍手を向けた。
「グラッツェ。今日も美味かったぜ」
「いつも美味しい料理を、ありがとうございます」
「こちらこそ」
「帰り、どこかに寄って行くか?」
「うん。グイードに選んで欲しい物があるの」
「おーおー、任せろよ」
お幸せに。モブから見た恋人たち~ブチャラティ~
20200517(日)05:54モブ視点から見た様子
この街で店をやっているヤツなら、殆どが知ってるだろ。ブローノ・ブチャラティさんを。ギャングだと思えないほどに優しくて、誰もが信頼を寄せているんだ。何かに困れば、警官や家族や友人よりも、ブチャラティさんに相談するなんてこともよくあった。それくらい、みんなブチャラティさんに対して心を開いてたんだよ。
そんなブチャラティさんに最近、恋人が出来たって話を聞いた。オレはまだ見ていないが……。ただ、むしろ今まで、いない方が不思議だったんだ。あれだけの魅力を持った人だ。いて当たり前だろう。ブチャラティさんに恋心を抱いていた若い女たちの中には泣いちまうのもいたらしいが、二人を見ていると仕方がねえって思うくらいに熱いようだ。
「やあ、ブチャラティさん。今日は買い物かい?」
「ああ。少し早く仕事が終わったんだ。その帰りに」
「ゆっくり選んで行ってくれよ」
買い物にとオレの店に立ち寄ったブチャラティさんの横には、噂の恋人がいた。なんで恋人か分かったかって?ブチャラティさんがその子を見る目が、他のヤツを見る目とは違ったからだよ。愛情に溢れた目で見つめて、手なんか握っていれば、誰だって恋人だって分かるだろ。
「ブローノ、何が食べたい?」
「君が作るなら何でも」
「じゃあ、ブローノが苦手なリンゴを使おうかな」
「それは勘弁してくれ」
悪戯っぽく笑う恋人に、ブチャラティさんが口元を緩める。こんな風に笑うブチャラティさんは、初めて見た。恋人が食材を求めて奥へと進む。それに続こうとするブチャラティさんを呼び止めて、声を抑えて聞いてみた。
「可愛い子だね。恋人かい?」
「そう思ってくれて構わない」
「どこで知り合ったんだ?」
「オレのチームの新人だったんだ」
「へえ。女の子のギャングなんて、珍しいな」
「ああ。だが、根性は人一倍だ。だから、だろうな。少し心配で、色々と面倒を見ていたんだ。彼女は、オレと同じで両親がいないのもあって」
「それでいつの間にか、惚れちまったと」
「そんなところだ」
「いいね。幸せそうで」
「そうだな、彼女となら幸せだ」
ブチャラティさんが幸せだってなら、オレたちも幸せだ。
「ブローノ!チョコレート買っていい?」
「ああ。…………少し子供っぽいところがまた可愛いんだ」
意外と、ブチャラティさんは惚気るらしい。
ブチャラティ
モブから見た恋人たち~ジョルノ~
20200516(土)07:22モブ視点から見た様子
※病んでるジョルノ
オレの同級生には、ジョルノ・ジョバァーナという日本出身のヤツがいる。妙に落ち着いたヤツで、顔がイイためか女子にスゲーモテていた。だけど、正直なところ浮いた存在だった。普通、オレたちくらいの年齢なら特定の友達ってのを作って、そいつと行動するだろ。あいつは、そんなことをしなかった。誰とでも話すが誰とも深く関わらない。一部で、ヤバいことをしているなんて噂もあった。その噂が本当かなんて知らねえが。
そんなジョルノだったが、意外にも恋人はいた。好意を向ける女子に対して素っ気ない態度ばかり取っていたから、興味がねえのかなって思っていた。オレがそれを知ったのは一ヶ月前で、偶然、街でジョルノに会った時だった。「女と一緒って珍しいな。彼女か?」と聞くと、「ええ。ぼくの大切な人です」とあっさりと答えた。ちょっぴり意外だった。同じく日本出身らしい彼女の肩を抱いて引き寄せる姿は、学校で見るあいつとは違って見えた。女の方は恥ずかしそうに俯いて、肩に絡まるジョルノの腕をそっと外そうとしている。「歩き難いよ」と。ジョルノのことを別な名前で呼んで。オレじゃあ分からないその名前は、きっと日本の発音なんだろう。それだけで、二人の仲が特別なものだってのは分かった。
ある日、街のある店の前でジョルノの恋人を見かけた。柄の悪い数人の男に話しかけられて戸惑う女。日本人の……特に女は、ああやって話しかけられることが多い。金を持ってそうとか、簡単に引っ掛かりそうとか、そんな理由だ。すると店からジョルノが出て来て、男との間に割って入った。ジョルノよりも遥かに年上に見えた男たちは、直ぐにその場を離れる。怯える女を抱き寄せて、ジョルノは何も言わず男たちを見つめていた。その目が、震えるほどに冷たいものだった。
それから数日経って、男数人が行方不明になっているというニュースが流れていた。そいつらは、ジョルノの恋人に話しかけていた男たちだった。
「よ、よお、ジョルノ。相変わらず、仲が良さそうだな」
「『良さそう』じゃあなく、いいんだ。恐らく、ぼく以上に彼女を愛せるヤツはいませんよ」
そうだろうな。女を見るジョルノの表情は柔らかかったが、目が何より……直視できねえくらいに怖かった。
ジョルノ
ジョルノ・ジョバァーナの幼馴染は恋をした
20200515(金)13:35ジョルノの幼馴染夢主がブチャラティに惚れてしまったようだ
「ジョルノくん。昨日、こういう感じに切り揃えた黒髪の……白いスーツを着た男の人と話してなかった?」
「ええ……。見ていたんですか?」
「うん。お使いの帰りにジョルノくんを見かけて、話しかけようとしたんだけど、凄く真剣そうだったから止めておいたの」
「なるほど」
「あの人、凄く格好いいね」
「……ああいう感じのタイプが好きなんですか?」
「タイプっていうか、その……何度か街で見かけたことがあるの。困ってるおばあさんを助けてたり、泣いてる子供に声を掛けてたり。優しい感じ……ううん、優しいからそんなことが出来るんだなって」
「……」
「ジョルノくんが話しているところを見て、知り合いかなって思ったの。あの……名前を教えて欲しくて……」
「すみません。ただ話しかけられただけで、名前までは」
「そ、そっか。ごめんね、勝手に知り合いだと思ってた」
「あなたが、ああいう人が好みだというなら、ぼくもなれるように努力をします」
「ジョルノくんは、今も優しいよ。あ、ちょっぴりジョルノくんと似てるよね。雰囲気が」
「そうでしょうか」
「うん、似てる」
「(なら、なぜぼくでなくブチャラティに惹かれているんだ)」
ジョルノ
グイード・ミスタの同僚は問題児7
20200514(木)06:26ミスタの同僚シリーズ
「オメーは確かにオレとの約束は守った。『何かあったらオレに連絡しろ』って約束をな」
「うん!」
「だけど、オレは敢えて言うぜ。オメー……またかよ」
「違うの、ミスタ!この人、ストーカー!」
「はあ?ストーカー?」
「一か月くらい前から、毎日電話を掛けてきて、ポストに手紙を何枚も入れて、後を付けてきて……。今日、後ろから抱き付かれたの。咄嗟にスタンドで殴っちゃって。死んでるかな?隠さなきゃダメ?」
「生きてるぜ。生きてるから落ち着け。直ぐに隠そうとするクセを直せよ。それよりもオメーよォ、そういう目に遭ってたなら、もっと早く言えよ。何かがあってからじゃあ遅ェんだ。オメーは女だろ?いくらスタンドが使えるからって、こういう危険な野郎を野放しにするなよ」
「……ごめんなさい」
「顔色、良くねーな。怖かったんだろ?知らねえ野郎に後ろからって、そりゃビビるよな」
「……うん。あのね、ミスタ」
「どうした?」
「まだ帰らないでね。もうちょっとだけ傍にいて欲しいの」
「……」
「ミスタがいると、安心するから」
「……あ、ああ、分かった。オメーが満足するまで一緒にいてやるよ。だから、そんな顔するな」
「手、握ってくれる?ミスタの手を握ると、落ち着くから」
「ほら」
「ありがとう、ミスタ」
「オメーの世話は慣れてるぜ」
ミスタ
チョコラータは渡したくない
20200513(水)06:00「わたしの恋人、やったでしょ」
「さあ、何のことだろうな」
「とぼけないで。チョコラータしかいないんだから」
「おまえの知り合いの少なさには驚きを隠せないな」
「わたしの知り合いを少なくしたのは、チョコラータなのを忘れてない?」
「覚えがない」
「恋人を作れば毎回毎回、邪魔をして。そもそも、わたしは誰にも恋人ができたって言ってないのに、どこから情報を仕入れてくるの?」
「おまえを好きになる野郎がいることがまず凄い。ギャングをやっている女に惚れるヤツも、世の中にはいるのだな」
「その貴重な男を次々に殺されて、わたしは未だに恋人とキスすら出来てないんだけど」
「欲求不満か。わたしが相手をしてやろうか?」
「いらない」
「そうか。残念だな」
「わたしの邪魔ばかりしてないで、チョコラータも早く相手を見つければ?」
「おまえに心配をされる必要はない。もう見つけている」
「へえ。チョコラータに惚れられる女なんて可哀相」
「そうだな。人類の中で最も不幸だろうな」
親衛隊
リゾット・ネエロは見届ける
20200512(火)06:23※夢主死ネタ
帰りが遅いと思ってはいた。しかし、オレたちの仕事に「予定」はあってないようなもの。予想外の出来事はあるし、そっちの方がむしろ普通だった。「あいつ、遅ェな」というホルマジオの呟きに、全員が顔を上げる。そして一斉に、オレの方へと視線が向いた。オレと彼女の関係を知っているからだろう。催促するようなそれに、携帯電話を取り出して通話ボタンを押してみるが、彼女が応答することはなかった。二度、三度と掛けてはみるが、流れて来るのは規則的な音だけ。オレは上から届けられた彼女の任務内容を確認し、「あいつ、ターゲットの家でやるって言ってたぜ」というギアッチョの言葉を頼りにそこへ向かった。
行った先は、白を基調とした豪邸には似つかわしくない血に塗れていた。血液の臭いが漂い、嗅覚を麻痺させる。所々に転がる死体は、家主であるギャング組織の幹部の部下だろうか。既に息のないそいつらの間を縫って歩けば、見慣れた色の塊が伏せていた。それに触れて隠れていた顔を覗けば、虚ろな目がオレを映し、色を失いかけた唇が名前を呟いた。
「……リゾット」
「遅い」
「……仲間に、スタンド使いがいたの」
「そいつはどうした」
「殺した。ターゲットも、ちゃんとやったよ。任務は、終わった」
「……帰るぞ」
「動きたくない。怠い」
「おまえが動きたくなくても、連れて行く」
頭部からも腹部からも、オレたちがよく知る赤黒い液体を垂れ流す彼女を抱き起こせば、「痛い」「もっと優しくして」と文句を言う。彼女の身体は、こんなにも小さかっただろうか。こんなに狭い肩だったか。腕は、こんな細さだったか。
メタリカで傷口を塞ぎ、失われた鉄分を戻すが、彼女はぼんやりとオレを見上げ、緩やかな口調で呟き始めた。
「ヘマしちゃった。プロシュートに怒鳴られる」
「そうだな」
「ペッシのこと、揶揄えなくなる」
「そうだな」
「ホルマジオに笑われる」
「そうだな」
「イルーゾォにバカにされる」
「そうだな」
「メローネに嫌味を言われる」
「そうだな」
「ギアッチョに呆れられる」
「そうだな」
「ソルベとジェラートに見下される」
「そうだな」
「リゾット……」
「なんだ」
「この家、豪邸のくせにエアコンが効いてない。電気代、ケチってる。寒い」
「おまえ、我が儘な性格は変わらないな。最期まで」
「それでも、リゾットは好きになってくれた」
寒いと言う彼女の身体を抱き寄せてやれば、子供のそれと同じくらいの力でオレの服を握った。
「……リゾット、今日は温かい。いつもは、わたしより体温が低いのに」
「今日は、おまえが低いだけだ」
「ねむい」
「ここで寝るな」
「かえって、ベッドにはいりたい。ふかふかの、リゾットのにおいがする……」
「連れて行ってやるから、それまで起きていろ」
「……うん」
携帯電話を取り出し、登録されている番号の中の一つに電話を掛ける。ワンコールで出た相手に、オレはひと呼吸置いてから口を開いた。
「メローネか。見付けた。今日は直帰させる。……いつもの我が儘だ。眠いらしい」
全てを察したメローネは、「分かった。あいつらに伝えておく」と言い、少しの間をあけて通話を切った。
「帰ったら、存分に寝ろ」
「……うん。リゾット、いっしょにねようね」
「ああ」
家に着く前に、彼女は眠った。呼吸すら忘れて、深く。リゾット
ディアボロは愛されている
20200511(月)20:12※義妹夢主、ドッピオ視点
ボスは、自分に関わる全てを隠している。ぼくでさえ知っているのは、ボスの声くらいだ。ボスから電話を受けるのは、この組織でも二人しかいない。ぼくと、ボスの義理の妹といわれる彼女。その二人だけ。彼女がボスの義妹というのを知っているのは、ぼくだけだ。ボスから「わたしがいない間は、妹を頼む」と言われていた。任務は確実に遂行する彼女だが、それも殺すという単純なものばかり。年齢のわりに幼い性格なうえに、一般常識に関して大きな欠落があった。身の回りの最低限のことは出来るけど、物の名前も知らないことの方が多く、ボスとぼく以外の人間の顔や名前を覚えることが出来なかった。覚えられない、のは少し違うかな。任務の時はしっかりとターゲットのことを覚えているが、終わった途端に忘れてしまう。彼女曰く、覚えておく必要がないらしい。
「ドッピオくん。お兄ちゃんと電話したい」
「ダメだよ。任務の途中だし」
「……したい」
「ダメ。終わったらボスから連絡があるはずだから、それまでは我慢してね」
「……」
「そういう顔をしてもダメ」
鞄から携帯電話を取り出そうとする手を掴んで止めて、鞄を遠ざける。不満そうにする彼女の頭を撫でれば、少しだけ表情を緩ませた。彼女はいつも言う。「ドッピオくんは、お兄ちゃんと似てる」と。
「ボスが本当に好きだね、君は」
「うん。だってお兄ちゃんは、わたしの全部だから」
「ぜんぶ?」
「お兄ちゃんがいなかったら、わたしはいないもん」
「……」
「お兄ちゃんが大好き。お兄ちゃんだけが、わたしの家族なの。……だから、お兄ちゃんが『あいつは邪魔だ』って言うなら、わたしはそれを殺すの。そうすればお兄ちゃん、褒めてくれる」
時々、彼女は酷く冷たい目と声でどこかを見つめている。周囲の温度を一気に下げてしまう程のそれに、ぼくは唾を呑む。ぼくにとってもボスは唯一の存在だ。だけど彼女は、ぼくがボスに向ける尊敬や忠誠とはまた違った、もっと重い何かを抱いているんだろう。
「ねえ、ドッピオくん。これが終わったら、ケーキを買って帰りたい。お兄ちゃんのお土産にするの」
「君が食べたいだけでしょ?」
「うん。でも、お兄ちゃんと一緒に食べたいの」
ドッピオ&ディアボロ