short short short!
短編にすらならない夢。ただの会話文とか。
更新履歴にも載らない。
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隣人のリゾット・ネエロ
20201229(火)09:25※病んでるリゾット
空き部屋だった右隣の部屋に、男の人が引っ越して来た。壁の薄いこのアパートでも全くと言って良いほど生活音が聞こえてこないため、部屋に入って行く姿を見るまではそもそも引っ越して来たことにもわたしは気付いていなかった。何度か後ろ姿を見たことはあるけれど、話したことはない。名前も知らない。ただ、背が高いためか、ドアをくぐる時に少し屈む仕草をよくしていた。
わたしが住むアパートは、困ってしまう住人が多い。夜中に隣に響くほどの音量で音楽を掛ける人、ドアポストから覗こうとする人、用もないのにノックをして悪戯する人などなど。金額も安いし仕方ないと思っていた。しかし大学生という立場では、今より高いアパートに引っ越すのも経済的に無理がある。就職するまでは我慢をしなければと思っていた。
ある日、警官がうちに来た。左隣の部屋の住人が遺体で発見されたらしく、事件の可能性が高いだとか。夜中に大音量で音楽を掛けていた人だ。わたしも隣として騒音には困っていたが、その人は前に注意をした他の住人に暴力を振るったことで、管理人さんも怖がって近付こうとしなかった。しかし、殺人事件とは騒音よりも怖い。何かと恨まれていそうな人だったが、殺されてしまうまでとは思ってもいなかった。
別の日にも、アパートに警官が来ていた。また殺人事件が起こったらしい。今度は上の階の住人。わたしの部屋のドアポストから中を覗こうとした人だ。管理人さんに頼んで注意をしてもらったが、それ以降も覗きは続き、何日か前には投函口に挟まったままの郵便物を引き抜こうとしていたところを見てしまった。わたしを見るなり逃げたけれど……。相手がそんな人でも、続けて人が殺されるというのはなんだか気味が悪い。
それから一週間後には、ノックをする悪戯をしていた人が殺された。そして、また暫くすると別の人が。連続殺人事件の噂が広まって、引っ越してくる人がいなくなり、元々住んでいた人たちも出て行ってしまった。
気付けば、このアパートにはわたしと右隣の男の人しかいなくなっていた。
「……こ、こんにちは」
「……」
「あの、このアパート、取り壊すじゃあないですか。ひ、引っ越し先って決めました?」
「……」
大学から帰って来た時、まだ外が明るい時間帯に初めて彼と顔を合わせた。背が高いせいもあるが、迫力のある顔と雰囲気に思わず後退る。しかし目が合って無視なんて出来るはずもなく、挨拶をしたが彼はこちらを数秒見ただけで中に入って行ってしまった。馴れ馴れしかっただろうか。そう思いながらわたしも部屋に入り、掻き集めた物件の資料を広げた。金額と睨めっこをしている最中、どうも背後になにかがいる気がしてならなかった。
それから数か月後、わたしは引っ越した先で彼と再び隣人になる。
リゾット
隣人のギアッチョ
20201228(月)01:22わたしの部屋の隣には、二か月前からとてつもなく目付きの悪い人が住んでいる。おまけにキレ易く部屋でも暴れているようで、「クソ」「ムカつく」などと叫んで壁を殴っているような音が響いていた。あまり関わらない方がいいなと、わたしは彼と極力会わないように、そして視線も合わせないようにしていた。そりゃあ、まあ、会ったら会ったで挨拶はする。しかしそれだけで、それ以上の関りを持とうとはしなかった。
が、ここ最近、妙なくらいに彼と会う。仕事に行こうと部屋を出れば、隣の部屋の扉がほんの少し遅れて開き、中から彼が出てくる。そしてこちらを睨み付ける。彼はただわたしを睨むだけで話しかけてくることはないが、無視をするのもなんだか悪い気がして挨拶をしてしまう。それに対して彼が「ああ」と短く返して終わるのだが、わたしが階段を下りて通りに出て行くまでをずっと見ているのが気になって仕方がない。理由を聞けるはずもなく、わたしはそんな生活をもう一か月も続けていた。
「……お、おはようございます」
「ああ」
今日もそうだった。今日も彼は、わたしが扉を開けた後に出てくる。そして今日も鋭い目でこちらを睨んだ。そういえば昨日も何かにキレていて、ドタバタと暴れていたなあ。下の階の人は彼の怖さの前に文句も言えず、耐えかねて引っ越して行ったらしい。
挨拶も終えたし早く仕事に行こう。そう思って足を一歩踏み出した時、彼は先程よりも低い声でこう言った。
「おい、待て」
「ひっ!」
「……」
「な、何ですか?」
「……」
「すみま……せん。もしかして、わたし何かしましたか?」
「……」
「あの……ッ」
「何でもねえ」
舌打ちをした後、彼は部屋に戻ってしまった。やはり何かしてしまったのだろうか。もしかして、昨日の夜にお皿を落とした音が煩かっただろうか。何にせよ、彼は相変わらず……。
「……怖かった」
次の日も、わたしは彼に呼び止められた。何か言いたいのだろうが、こちらから聞くのもやはり怖い。
ギアッチョ
隣人のペッシ
20201225(金)03:24「ペッシくん!」
「ゲッ!」
ゴミを出すために扉を開けたら、タイミングよく隣の部屋の扉も開き、そこからペッシくんが出て来た。数か月前に越して来たペッシくん。見た目こそは派手だけれど、性格は控えめな方だと思う。騒ぐことはないし、賃貸特有のルールも守るし。どこで買ったのかと聞きたくなるスーツを着た人を「兄貴」と呼んでいるところを見たことがあるけれど……兄弟なのかな。まあ、とにかく、わたしはそのペッシくんを好きになってしまった。
買い過ぎてしまって重くなった荷物と戦っていると、そこに帰宅したペッシくんが通りかかって助けてくれたのが始まりだった。ペッシくん、オドオドしているところが目立つけれど力持ちだし、荷物を持った時の上腕筋がとても魅力的だった。釣りが好きだと聞いて納得。
まあ、部屋に向かうための階段をトロトロ上っていたわたしが邪魔だったんだろうけれど、わたしにはその時の姿が格好いいものに映ってしまった。それ以来、わたしはペッシくんにアプローチをしている。
「ねえ、ペッシくん。空いてる日、ある?デートしようよ」
「オレは暇じゃねーんだよッ」
「ペッシくんの行きたいところに行くから」
「なんでオレがおまえと行かなきゃあいけねーんだ」
「お金も出すから」
「女に奢られるほどオレは困ってねえよ!」
「何でも言うこと聞くよ」
「何なんだよ、おまえ……ッ!」
友人にはよく「変な男を好きなる」と言われる。確かに、わたしの恋愛は褒められたものではない。前に付き合った人にはかなりの額を貢いだ挙句にフラれてしまったし、その前は濡れ衣を着せられて警官のお世話になったこともあった。好きになると周りが見えなくなるのは子供の時からだ。好きになった相手にならどんなことでもしてしまう。「尽くしてるんじゃなく、それは病的」と友人に指摘されているが、やはり好きな人が目の前にいると欲が抑えられない。
「ねー、ペッシくん。無視しないで~」
「つ、付いて来るなよ!」
「だったらいつ暇か教えてよ」
「だから……ッ!」
後で知った。ペッシくんはギャングだった。そのことを友人に報告したら「またか」と言われた。ペッシ
隣人のメローネ
20201224(木)00:03隣人はとても変わった人だった。何が変わっているのかというと、全てが変わっている。まずは服装。片目が開いたアイマスクを付けていて、身体なんて上半身の半分が殆ど見えてしまっているくらいに布がない。挨拶をすれば返してくれる丁寧さはあるが、時々、話していると夢中になっているのか興奮しているのか、こちらの話など聞かずに語り出して止まらなくなる。更に、女の人が目の前を通れば必ず全身を舐め回すように見つめ、笑ったり舌なめずりをしていた。
そんな人だがそれ以外に特に問題はなく、住人トラブルなんて起こすような人ではなかった。しかし、最近は少し違う。いや少しどころか、わたしはこの人に困っていた。
「やあ。仕事帰りか?」
「は、はい。メローネさんも……ですか?」
「まあな」
ああ、会ってしまった。わたしはこの隣人・メローネさんを避けている。可能な限り会わないように。
「なあ。この前のこと、考えてくれたかい?」
「……ええ、と」
「オレは本気なんだぜ」
「す、すみません。わたし、急いでいるのでッ」
部屋の中に入ってしまおうとドアノブを握ると、メローネさんがわたしの手首を掴んで止めてしまった。手袋に包まれたメローネさんの手は、手首から甲へと這って指に絡み付く。メローネさんは元から人に触ることに抵抗のない性格なようで、会った当初から肩に触れたりはしていたが、今ではそんなものではなくなった。
わたしの耳元に迫ったメローネさんの唇。舌なめずりをする音が間近から聞こえ、わたしは身震いをした。
「シャンプーでも変えたのか?それとも香水か?いつもと違う匂いがする」
「あ、の……ッ」
「その表情……ベリッシモいい。そういう反応は好みだ」
両脚の間に、メローネさんの脚が割り込んでくる。背中にはゴツゴツとした身体が押し付けられ、思わず息を呑んでしまった。
「気の強い女は『母親』としてはいいが、君みたいな気の弱い女は別の意味でいい」
メローネ
隣人のプロシュート
20201223(水)18:20大学入学を期に一人暮らしをするため、アパートを借りた。そしてわたしは一日目にして後悔をした。隣がどんな人か調べなかったことを。わたしの隣の部屋には、派手なスーツを着た金髪の男の人が住んでいた。どこか迫力のある人で、引っ越した当日に顔を合わせた際、挨拶をしたら睨まれてしまった。何だあの人。怖い。
その人は時々、女性を連れ込んでいた。初めて見た時は恋人かと思っていたが違うらしい。毎回、連れ歩く女性は変わっていた。同じ人だったことなんて一度もない。どの人も美人であることに変わりはないけれど全くの別人。今日もそんな女性を連れていた隣人は、慣れたように腰に手を回して女性を部屋に引き入れる。まあ、隣の人の恋愛事情なんてわたしには関係のない事。「ああ、今日も違う人だな」とぼんやりと考えながら、わたしは遅れて自分の部屋に入った。
しかし、こう何回も見てしまうと気まずいもの。特にわたしが悪いことをしているわけでもないのに、そんな気分になってしまう。とにかく忘れようとさっさとシャワーを浴びてベッドに潜ると、薄い壁越しに呻き声が聞こえて来た。
「な、なに?」
苦しんで藻掻いているような声だった。そしてそれに続き、隣の部屋とわたしの部屋を仕切る壁を誰かが殴りつけた。何度も何度も。だが、その音は次第に小さくなって間隔が長くなると、やがては消えてしまった。まるでこちらに助けを求めているかのようだった。
すると、呼び鈴が鳴り響く。三回ほど押され、意を決してスコープを覗くと、そこには隣の人が立っていた。わたしは躊躇った。扉を開けることを。しかし、彼はわたしがいることを知っているだろう。先程、彼が女性を連れて部屋に入るとき、わたしと目が合ったのだから。居留守を使うのもあまりに都合が悪く、控え目に扉を開けてそこから覗き込んだ。
「悪いな。壁を叩いちまって」
「あっ、い、いえ」
「今度からは気を付ける」
「……はい」
な、なんだ謝りに来たのか。安堵して扉を閉めようとした瞬間。わたしはある事に気付いた。そういえば、今までの女性が彼の部屋から出て行くところを見たことがない。一度も。入って行くところは見ているのに。
偶然だろう。いや、偶然であって欲しい。わたしが見ていないだけであって欲しい。
プロシュート
隣人のイルーゾォ
20201222(火)20:58※病んでるイルーゾォ
知らない間に、隣の部屋に人が住んでいた。少し前までは空き部屋だったそこ。部屋に入って行くところを二回ほどしか見ていないが、髪を幾つかに束ねた背の高い男の人だった。いつ引っ越して来たんだろう。ゴミを捨てに行った時、もう一方の隣の部屋に住んでいる人と会ったため聞いてみたところ、その人は誰かが住んでいたこと自体を知らなかったようだ。
それから一週間。部屋の中に自分以外の誰かがいるような気がしてならない。見られている気がしてならない。だけど、気がするというだけで特に変わったことはなく、わたしはそのまま過ごしていた。気のせいだと、そう言い聞かせて。
「……えッ」
一瞬だった。いつも通りシャワーを浴びて洗面台で髪を整えていた時、閉まっていたはずの背後の扉がゆっくりと開いていった。扉はほんの少し開いたところでピタリと止まる。わたしの身体はその光景に固まってしまった。一呼吸してから擦り歩くように扉に近づき、向こう側の様子を確認したが、そこには誰もいなかった。
さらに数日。わたしは目を疑った。鏡の中に人がいたのだ。物陰からこちらを見つめているその人は、間違いなく隣に引っ越して来たあの背の高い男の人。信じられない出来事に動けずにいると、鏡の中にいる彼はどんどんこちらに迫り、鏡に映るわたしの肩に手を伸ばして来た。
「隣のヤツと仲がいいんだな」
「……ッ」
「楽しそうに話してただろ?オレは見てたんだぜ」
「あっ……!」
「そんなに嫉妬させたいのか?オレに。ああ、してやるよ。おまえがそうして欲しいならな」
次の瞬間には、わたしは鏡の中にいた。
イルーゾォ
隣人のホルマジオ
20201219(土)06:01「猫……?」
部屋の前に猫がいた。わたしはペットを飼っていない。ここはペットの飼育が許可されているアパートだから特に不思議というわけではないが、そもそも飼い猫なのだろうか。野良猫なのだろうか。野良猫にしては綺麗な猫だなと思って眺めていると、隣の部屋の扉が開いた。
「なんだ?オメー、そんなところにいたのかよ。あー……そいつ、オレの猫なんだ」
「そ、そうだったんです……か」
初めて見た気がする、お隣さん。なんだか怖い感じの人だな。たまに隣から猫の声がするとは思っていたが、この猫だったのか。お隣さんが猫を連れて行こうと近付いたその時、猫は伸ばされた右手をするりと躱すと、わたしの脚に擦り寄って来た。
「ったくよォ~、オレには懐かねえってのに」
か、可愛い。なでなでしてあげたい。そう思うも、他人のペットにベタベタと触れるのも悪い気がして、その気持ちをぐっと堪える。お隣さんは逃すまいと、今度は両手を伸ばして猫に絡めた。ああ、もう少しだけそのままでも良かったのに。お隣さんの腕の中でニャアニャアと鳴いて暴れる猫に別れを向けつつ、わたしは自分の部屋のドアノブを握った。
「おまえ、隣のヤツだったのか」
「え、あ、はい」
「音が全然しねえから、空き部屋かと思ってたぜ」
「……」
まあ、わたしもお隣さんが男の人であることを初めて知ったけれど。強面であることも今まさに知ったばかりだけれど。今まで「猫を飼っているのかな」くらいの認識だった。
「部屋からは出さねえようにしてるんだけどよ、さっきドアを開けた時に飛び出しちまったんだ。で、帰って来たと思えば別の部屋の前」
「ああ、そうだったんですね」
「またこいつが行くかもしれねえが、その時は捕まえておいてくれ」
「は、はあ」
「じゃあな」
暴れる猫と共に部屋へと帰っていったお隣さん。わたしは暫くの間、その扉を見つめていた。よし、明日は仕事帰りに猫缶を買いに行こう。ホルマジオ
隣人のレオーネ・アバッキオ
20201217(木)04:19引っ越した先のお隣さん、レオーネ・アバッキオさん。こう言ってはあれだが……ちょっぴり怖い感じの人だった。顔は……いや、正直に言おう。顔も雰囲気も怖い。しかし、前のアパートのお隣さんよりは比べ物にならないくらいマシだった。
前のお隣さんとはトラブルになり、わたしはここに引っ越してきたのだ。トラブルというのも生活音だとかゴミ出しルールを守らないだとかそんなことではなかった。前のお隣さんは、第一印象ではとてもいい人だった。挨拶もするし、旅行へ行けば必ずお土産を買って来てくれて、わたしが重い荷物を運んでいれば助けてくれていた。
しかし、次第に付き纏うようになり、わたしが男の人と話していれば怒って問い詰めて来るようにもなった。わたしが出したゴミを回収していると他の人から聞き、さすがにどうにかしないとダメだと警察に駆け込んだが相手にされなかった。怖くて住んでいられずに引っ越してきたが、わたしの認識は甘かったらしい。今まさに、前のお隣さんがわたしの新しい部屋の呼び鈴をしつこく鳴らしていた。
「どうしよう……」
部屋の中にいるが応えようとしないわたしに苛立ったのか、扉を殴り蹴って脅し始める。わたしが恐怖心から何もできずにいると、アバッキオさんの声が扉越しに伝わって来た。
「うるせーんだよ、てめー」
アバッキオさんに凄まれた彼はその場から逃げ、暫くしてから呼び鈴が一回だけ鳴り、スコープで確認をするとそこにはアバッキオさんがいた。
「さっきのヤツは何なんだ」
「ああ、ええっと……」
助けてもらったことのお礼を交え、わたしは正直に答えた。すると「オメーは変なヤツに目ェ付けられそうだよな」と笑われてしまった。それから数週間が過ぎた頃。あれ以来、あの人が現れなくなったことに気付き、わたしは諦めてくれたと思っていた。しかし、どうやら違ったらしい。諦めたには諦めたらしいが、そこにはアバッキオさんが関わっていたようだ。アバッキオさんは元警官だったらしい。ぶっきら棒であるが根はいい人と、古くからいる住人が教えてくれた。
人を見かけで判断してしまったことを反省した。アバッキオさんはとても優しい人なのだ。
そして後日、わたしは更に知ってしまった。アバッキオさんは今ではギャングであることを。アバッキオさんは優しい。優しいのだろうが、やっぱり少し怖い。アバッキオ
隣人のパンナコッタ・フーゴ
20201216(水)00:15隣に男の子が引っ越してきた。パンナコッタ・フーゴくんというらしい。第一印象は礼儀正しい子だなというもの。十六歳とは思えないほどだ。言葉遣いも丁寧で、会えば必ず挨拶をしてくれるし、このアパートのルールもしっかりと守っていた。そして頭も良く、様々な知識を持っていて、困ったことは彼に相談すれば大抵のことが片付いてしまっていた。わたしの方が年上だというのに、恥ずかしい事だが彼にはかなりお世話になっている。たまにはお礼をということで彼への贈り物を探していると、お店で下の階に住む男性に会った。
「あ、上の階の。こんにちは、買い物ですか?」
「はい」
「そういえば、君の隣に引っ越してきた……パンナコッタ・フーゴ、だっけ?彼とトラブルとか起きてない?」
「いえ、むしろ色々と助けてもらっていて」
わたしの返答に、彼は目を見開いた。
「本当?あいつ、他の住人とたまに揉めてたりするんだよ。街でも誰かと喧嘩になってたり。オレ、何回か見てるんだ」
「そうなんですか?わたしには凄くいい人に見えますが……」
「いや、あいつ……キレるとスゲーんだ。手は出るわ、足も出るわで」
「……」
「気を付けた方がいいよ」
何かの間違いじゃあないか。わたしはそう思っていたが、数日後にフーゴくんがもう片方の隣人を怒鳴り付け、殴っているところを見てしまった。あまりの荒れっぷりにわたしは言葉を発することができずにいた。
「こんにちは」
「こ、こんにちは、フーゴくんッ」
「どうかしましたか?なんかちょっと……変ですよ?」
「ううん。何でもないの」
「そうですか。あ、この前のお菓子の詰め合わせ、美味しかったです。ありがとうございます」
「いや、その……わたしがいつも助けられてるから」
「また何かありましたら、いつでも」
「う、うんッ」
今後、何かを頼んで怒らせてしまったらどうしよう。彼本人にはあの日の出来事を見ていたと言えないが、わたしはフーゴくんがちょっぴり怖くなった。フーゴ
隣人のナランチャ・ギルガ
20201215(火)00:20隣に住んでいるナランチャくんは、十七歳という年齢で一人暮らしをしている。ちょっと幼いところがあるが、意外にもしっかりした部分も持っていて、たまに驚かされてしまう。なんでも人生で一番尊敬する人のために働いているらしい。仕事の内容こそは知らないが、時々怪我をして帰って来るところを見ると、安全とは言い難いことをしているんだろうな。どれだけ怪我をしても「自分がやりたいと思ったことをやってるから、別にいい」と言っていたナランチャくん。本人がそれでいいなら部外者のわたしが口を出す事ではない。ただ、包帯だらけで帰って来たところに遭遇してしまうと、やはり心配はしてしまう。
そんなナランチャくんだが、一人暮らしの中でもあることを苦手としていた。
「ナランチャくん、またご飯を買って来たの?」
「だってオレ、飯とか作れないもん」
「作る気がないだけじゃないの?」
「いいんだよ。飯なんて美味くて腹に入ればそれで」
自炊が苦手らしく、ご飯が外食やテイクアウト、インスタントばかりだ。それに仕事が多忙であることもあり、手が付けられないのだろう。
「おまえは今から買い物?」
「うん。調味料が切れてたのを忘れてて……。さっきソースを作ってたら気付いたの」
「相変わらずだな~」
「ナランチャくんには言われたくないよ」
「なに作ってたの?」
「ピッツァ。生地から作ってみたの。窯なんてないから、オーブンで焼くんだけどね」
「おまえ、料理は上手いよな。普段はボーッとしてて、変なところで転んだりしてるけど」
「別にボーッとなんて……」
「なあ、そのピッツァ、余ったりする?」
「え、うん、まあ。……た、食べる?」
「いいの?」
「初めて作ったから、そんなに美味しくないよ」
「おまえってそう言うけど、作る物みんな美味いよ。調味料ってことは、まだ焼いてねーんだよな?」
「うん」
「じゃあ、キノコ乗せてくれよ」
「キノコ~?ナランチャくん、自分の好きな物を作らせようとしてない?」
「バレた?」
「別にいいけどさ。買い物してくるから待っててね」
「オレも行くよ。女の子に一人で買いに行かせるなんて、男じゃあねーし」
「あはは!なにそれ」
「オレだって男だからなッ」
「じゃあ、荷物持ってね。キノコも買うから」
「分かってるよ」
ナランチャ