友人のそんな声に私はスタート位置へと視線をうつした。
今日は湘北高校の体育祭。
今行っている競技は3年生の借り物競争だ。

第2コースのスタート位置にいるのは、私がマネージャーをしているバスケ部の先輩の三井さん。

ピストルの音と共に一斉に走り出す生徒たち、誰よりも前に出たのは三井さんだった。

ーーーーが

三井さんは誰よりも先に先にお題が書かれている紙が置いてある場所に行ったのに、その紙をひらきその場で立ち尽くしている。

そんな事を思っていると三井さんはようやく走り出した。
ーーーなんとこっちへ向かって。

三井さんは半ば無理やり私の腕をつかみ、走り出す。

そんなこんなで必死で走ったが、結局三井さんの遅れのせいで私たちは最下位だった。

私はぜぇぜぇと息を切らしながら、三井さんが手に持っていたお題の紙をひょい、と取り上げた。

私は折りたたまれていた紙をひらき、そのお題を読み上げた。

三井さんはハッと気付いて自分の口を手で抑えた。

このドキドキは走ったせいではない。
心臓がうるさいのは走ったせいなんかじゃない。

お題の紙を三井さんの手の中へと戻しながら私は言った。