アビス短編集
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「お前、笑わないよな」
そう言われたのは初めてだった。
自覚が無いわけではないけれど、誰にも指摘されたことがなかった。
私に表情の起伏がないことなんて、誰にも気にとめなかった。私だって、自分以外の人の表情なんて、ちゃんと見られない。
それなのに、今私の目の前にいる彼は、私の表情が気になるらしい。
「どうしてそんなことを?」
「どうしてって……。俺、お前が笑ってるとこ見たことねーし」
そういうことを聞いたんじゃないんだけどな。
「私、笑うのに向いてないんですよ」
「向いてないなんてあるのかよ?」
これまでの人生、笑う必要性はなかったし、毎日が楽しいことばかりなわけじゃない。
自然と笑みがこぼれてくるようなことなんて、滅多にない。
あと、たぶん表情筋も固いし。やっぱり向いていないのだろう。
彼は赤い髪をぐしゃぐしゃと引っかきまわして、なんか違えんだよな、とつぶやいた。
「……」
なんと返事をしたらいいのか、わからない。
私が黙っているあいだ、彼はずっと髪の毛をわしゃわしゃしていた。彼は沈黙が苦手なようだ。
しばらくして耐えられなくなったのか、彼は不機嫌そうに口を開いた。
「……俺が何言いたいか、わかんねぇのか?」
「申し訳ありません、わかんないです、ね」
「だーっ!もうちょっと理解力とか洞察力とかつけろよな」
「は、はい。すみません」
ルークさんは怒っているようだった。たぶん、私が悪いのだと思う。
普通の人だったら、ルークさんの伝えたいことがわかるのかもしれない。
私が苦手なのは、きっと、笑うことだけじゃないのだ。
「笑えよ」
「はい?」
「笑ってみろよ」
「どうして?」
「なんでもいいんだよっ、おらっ!」
「ちょ、わわわわっ!?」
ほっぺたをつねられた。痛い。
どうしても彼は私を笑わせたいようだ。賭けでもしているのだろうか。
「なんで笑わねえんだよ」
「なんでって……」
ルークさんは不機嫌そうだ。
「そうまでして笑わせなくても」
「なんだよ、俺の言うことがきけないってのか?」
訳がわからない。
そんなこと言われても、笑えないものは笑えないし。
何故こんなことをするのか、純粋に気になる。
「一体どうしたんですか?」
「お前、鈍いんだよ」
やっぱり、私側に問題があるらしい。彼の言葉の本意がさっぱりだ。
すると、彼はため息をついた。
「いいか、変な意味じゃねーからな?変な意味じゃねえぞ?ただ俺は、お前に笑っててほしいだけなんだよ!」
「ど、どうして?」
「その、笑うってことは幸せってことだろ?お前笑ってねーから、嫌なことでもあったんじゃないかって……」
ルークさんの声がフェードアウトしていく。
顔が真っ赤だ。その表情は、照れているように見えた。
つまり、彼は私を気にしてくれているだけでなく、心配してくれていると?
どうしよう、それはうれしい。
すごくうれしい。
「あの、」
「お前、なんて顔してんだよ」
「笑っているんですけど…」
やっぱり、笑うのには向かないみたいだ。
でもこれじゃ、私の気持ちは伝わらない。
どうしたらいいのだろう?
笑みがこぼれるような感覚はあるんだけど、ちゃんと表に出ない。
「まあお前は、そうやって目を細めるくらいが似合うのかもしんねーけどな」
そう言って彼は、私の頭をくしゃくしゃしてきた。
ルークさんは、笑っている。
「あの、私、嬉しいです。なんとかして笑いますから、その……」
「別にいいんだよ、無理すんな」
ルークさんは、とても優しい顔をした。
いつもわがままな彼にも、こういう顔ができるんだ。
私だけ、できないんだ。
いつかもう少し、目を細める以上の表情が自然にできるようになりたい。
そのためには、もう少し彼と一緒に居れば、
目を細めることが、笑顔への第一歩になるかもしれない。
そう言われたのは初めてだった。
自覚が無いわけではないけれど、誰にも指摘されたことがなかった。
私に表情の起伏がないことなんて、誰にも気にとめなかった。私だって、自分以外の人の表情なんて、ちゃんと見られない。
それなのに、今私の目の前にいる彼は、私の表情が気になるらしい。
「どうしてそんなことを?」
「どうしてって……。俺、お前が笑ってるとこ見たことねーし」
そういうことを聞いたんじゃないんだけどな。
「私、笑うのに向いてないんですよ」
「向いてないなんてあるのかよ?」
これまでの人生、笑う必要性はなかったし、毎日が楽しいことばかりなわけじゃない。
自然と笑みがこぼれてくるようなことなんて、滅多にない。
あと、たぶん表情筋も固いし。やっぱり向いていないのだろう。
彼は赤い髪をぐしゃぐしゃと引っかきまわして、なんか違えんだよな、とつぶやいた。
「……」
なんと返事をしたらいいのか、わからない。
私が黙っているあいだ、彼はずっと髪の毛をわしゃわしゃしていた。彼は沈黙が苦手なようだ。
しばらくして耐えられなくなったのか、彼は不機嫌そうに口を開いた。
「……俺が何言いたいか、わかんねぇのか?」
「申し訳ありません、わかんないです、ね」
「だーっ!もうちょっと理解力とか洞察力とかつけろよな」
「は、はい。すみません」
ルークさんは怒っているようだった。たぶん、私が悪いのだと思う。
普通の人だったら、ルークさんの伝えたいことがわかるのかもしれない。
私が苦手なのは、きっと、笑うことだけじゃないのだ。
「笑えよ」
「はい?」
「笑ってみろよ」
「どうして?」
「なんでもいいんだよっ、おらっ!」
「ちょ、わわわわっ!?」
ほっぺたをつねられた。痛い。
どうしても彼は私を笑わせたいようだ。賭けでもしているのだろうか。
「なんで笑わねえんだよ」
「なんでって……」
ルークさんは不機嫌そうだ。
「そうまでして笑わせなくても」
「なんだよ、俺の言うことがきけないってのか?」
訳がわからない。
そんなこと言われても、笑えないものは笑えないし。
何故こんなことをするのか、純粋に気になる。
「一体どうしたんですか?」
「お前、鈍いんだよ」
やっぱり、私側に問題があるらしい。彼の言葉の本意がさっぱりだ。
すると、彼はため息をついた。
「いいか、変な意味じゃねーからな?変な意味じゃねえぞ?ただ俺は、お前に笑っててほしいだけなんだよ!」
「ど、どうして?」
「その、笑うってことは幸せってことだろ?お前笑ってねーから、嫌なことでもあったんじゃないかって……」
ルークさんの声がフェードアウトしていく。
顔が真っ赤だ。その表情は、照れているように見えた。
つまり、彼は私を気にしてくれているだけでなく、心配してくれていると?
どうしよう、それはうれしい。
すごくうれしい。
「あの、」
「お前、なんて顔してんだよ」
「笑っているんですけど…」
やっぱり、笑うのには向かないみたいだ。
でもこれじゃ、私の気持ちは伝わらない。
どうしたらいいのだろう?
笑みがこぼれるような感覚はあるんだけど、ちゃんと表に出ない。
「まあお前は、そうやって目を細めるくらいが似合うのかもしんねーけどな」
そう言って彼は、私の頭をくしゃくしゃしてきた。
ルークさんは、笑っている。
「あの、私、嬉しいです。なんとかして笑いますから、その……」
「別にいいんだよ、無理すんな」
ルークさんは、とても優しい顔をした。
いつもわがままな彼にも、こういう顔ができるんだ。
私だけ、できないんだ。
いつかもう少し、目を細める以上の表情が自然にできるようになりたい。
そのためには、もう少し彼と一緒に居れば、
目を細めることが、笑顔への第一歩になるかもしれない。