ふみやルート
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俺はムカついていた。
この家のやつらは面白い。どこに出しても恥ずかしいハチャメチャ動物園だ。そんな俺たちを気に入って付き纏ってくる人たちが、この世界の外側にいる。
上等だ。もっとこいつらの良さを世間に知らしめてやろう。そんでもってJPYをガッポガッポ。……と、思っていた。あの日が来るまでは。
この家に、明寺菜真絵がやって来た日。
"本物の俺たち"が住む世界が丸ごとコピーされ、この世界は完成した。明寺菜真絵ーーいわゆる夢主を迎え入れるために。
俺たちは失った。消えたわけではなく、遮断されただけではあるが。長い間俺たちを見守ってくれていた人々の大半は、これから、こっちの世界を覗くことはないだろう。
俺たちのための世界。それが一転して、一人の女のための世界になった。この彩り豊かな"俺の"同居人たちの魅力は、ほんの数人にしか届かなくなった。
金は足りている。だが、今まで信じていたものが奪われたのだ。腹が立つのも仕方ない。
しかし、だ。
「げ。ふみやさん」
この、明寺菜真絵という女のことは、嫌いになれなかった。
「げ。って何」
「あーいや。……まあいいか。見てくださいこれ」
「和菓子?大瀬みたいな色してんね」
「でしょ。これを大瀬さんに見せたくて。ふみやさんのぶんはありませんからね」
なんせ、菜真絵はいい奴なのである。
依央利の首輪は引っ張るし、テラの一人ファッションショーには付き合うし、理解と一緒に早起きするし、慧のしたいことと逆のことを言うし、よく大瀬と一緒になんか作ってるし、セクシーストリップもする。
なにより、この家での生活を、楽しんでいる。
まあ、そうなるように設定されているだけなのかもしれないが。
「もしさ」
「?」
「この世界は物語の中で、俺たちの行動は全部誰かに決められてるんだとしたら、どうする」
「なんですか藪から棒に」
それが真実だ。
今の俺は自分の意志で話しているつもりだが、それすらも操作されているのかもしれない。少なくとも、誘導はされている。
最初からそうではあった。それでいいと思っていた。なんせ、この家での生活は楽しい。だが、こんなに簡単にコピーを作られて、存在を踏みにじられるとわかった今、信じることができなくなっている。
「そうだとしたら、作者に感謝ですね」
「感謝?」
「だって、みなさんと出会えたわけですし」
菜真絵はそう言って笑う。
感謝なんてしている場合じゃない。こいつは作者の決めた設定のせいで、母親は亡くなり、父親は借金を背負わされ、本人はヤクザに売られ、スパイなんかをする羽目になったのだから。
「確かに大変でしたけど……今は有り余る幸せを享受してますから」
俺に媚びているのか、本心なのか。判別はつかないが、その笑顔は眩しい。
ああ。こういうところが、
だが、この感情も仕組まれたものなのだろう。ムカつく。ムカつく。ムカつく。素のこいつがどんな奴か知りたかった。自分の本心を疑いたくなかった。
「あ、どうするって話でしたよね。……それなら、もっとわがまま言ってみるかも」
「わがまま?」
「ちょっとくらい無理言っても、ハッピーエンドに戻してくれるかなーって」
俺は少し驚いた。今までにない考え方だったからだ。
つまり、作者を利用してやろうってわけだ。
どんな奴かはわからない。もしかしたら、俺たちが痛い目に遭って喜ぶような奴かもしれない。……いや、今日の日まで、少なくとも日常に影を落とすような出来事は起きていない。第一、あんな騒がしい奴らをバッドエンドに閉じ込められるとは到底思えない。
「わがままって何」
「んー……、ずっとここで暮らしたい、とか」
何事にも永遠はない。この世界もいずれ放棄される。しかし、それは元の世界も同じであり、むしろこの世界のほうが長く続いていく可能性だってある。
俺たちを見る人がいなくなったとしたら、俺たちはどうなるのだろう。眠りについてしまうのだろうか。それとも、本当の自由を手に入れられるのだろうか。
本当の自由を手に入れたとしたら、何をするだろう。……きっと、今と変わらない。
「ふみやさんはどうするんですか?」
「どうもしないよ」
「どうもしないんかい」
俺はこいつらと、ここで暮らしていこうとするだろう。何かに追われ、逃げることになっても、こいつらと一緒に逃げるのだろう。菜真絵のように流れ着く誰かがいたら、いいヤツなら一緒に過ごして、嫌なヤツなら追い出すのだろう。
それだけだ。それだけのことなんだ。
「今の生活で満足してるから」
「ふみやさんも作者に感謝してるってことですね」
「うん。菜真絵と出会えたし」
菜真絵の顔が赤くなっていく。
俺は初めて、この世界の創造主に感謝した。こんな顔が見られるのなら、この世界も悪くない。
俺は菜真絵のために存在していて、菜真絵のために好き勝手生きる。あいつらも好き勝手生きる。この世界が消滅するまで。
上等だ。幸せにしてやろう。この世界の構造ごと利用してでも、騒がしくて穏やかな日々を、菜真絵に……お前に、過ごさせてやる。
そう思った瞬間、少し、体が軽くなった気がした。
この家のやつらは面白い。どこに出しても恥ずかしいハチャメチャ動物園だ。そんな俺たちを気に入って付き纏ってくる人たちが、この世界の外側にいる。
上等だ。もっとこいつらの良さを世間に知らしめてやろう。そんでもってJPYをガッポガッポ。……と、思っていた。あの日が来るまでは。
この家に、明寺菜真絵がやって来た日。
"本物の俺たち"が住む世界が丸ごとコピーされ、この世界は完成した。明寺菜真絵ーーいわゆる夢主を迎え入れるために。
俺たちは失った。消えたわけではなく、遮断されただけではあるが。長い間俺たちを見守ってくれていた人々の大半は、これから、こっちの世界を覗くことはないだろう。
俺たちのための世界。それが一転して、一人の女のための世界になった。この彩り豊かな"俺の"同居人たちの魅力は、ほんの数人にしか届かなくなった。
金は足りている。だが、今まで信じていたものが奪われたのだ。腹が立つのも仕方ない。
しかし、だ。
「げ。ふみやさん」
この、明寺菜真絵という女のことは、嫌いになれなかった。
「げ。って何」
「あーいや。……まあいいか。見てくださいこれ」
「和菓子?大瀬みたいな色してんね」
「でしょ。これを大瀬さんに見せたくて。ふみやさんのぶんはありませんからね」
なんせ、菜真絵はいい奴なのである。
依央利の首輪は引っ張るし、テラの一人ファッションショーには付き合うし、理解と一緒に早起きするし、慧のしたいことと逆のことを言うし、よく大瀬と一緒になんか作ってるし、セクシーストリップもする。
なにより、この家での生活を、楽しんでいる。
まあ、そうなるように設定されているだけなのかもしれないが。
「もしさ」
「?」
「この世界は物語の中で、俺たちの行動は全部誰かに決められてるんだとしたら、どうする」
「なんですか藪から棒に」
それが真実だ。
今の俺は自分の意志で話しているつもりだが、それすらも操作されているのかもしれない。少なくとも、誘導はされている。
最初からそうではあった。それでいいと思っていた。なんせ、この家での生活は楽しい。だが、こんなに簡単にコピーを作られて、存在を踏みにじられるとわかった今、信じることができなくなっている。
「そうだとしたら、作者に感謝ですね」
「感謝?」
「だって、みなさんと出会えたわけですし」
菜真絵はそう言って笑う。
感謝なんてしている場合じゃない。こいつは作者の決めた設定のせいで、母親は亡くなり、父親は借金を背負わされ、本人はヤクザに売られ、スパイなんかをする羽目になったのだから。
「確かに大変でしたけど……今は有り余る幸せを享受してますから」
俺に媚びているのか、本心なのか。判別はつかないが、その笑顔は眩しい。
ああ。こういうところが、
だが、この感情も仕組まれたものなのだろう。ムカつく。ムカつく。ムカつく。素のこいつがどんな奴か知りたかった。自分の本心を疑いたくなかった。
「あ、どうするって話でしたよね。……それなら、もっとわがまま言ってみるかも」
「わがまま?」
「ちょっとくらい無理言っても、ハッピーエンドに戻してくれるかなーって」
俺は少し驚いた。今までにない考え方だったからだ。
つまり、作者を利用してやろうってわけだ。
どんな奴かはわからない。もしかしたら、俺たちが痛い目に遭って喜ぶような奴かもしれない。……いや、今日の日まで、少なくとも日常に影を落とすような出来事は起きていない。第一、あんな騒がしい奴らをバッドエンドに閉じ込められるとは到底思えない。
「わがままって何」
「んー……、ずっとここで暮らしたい、とか」
何事にも永遠はない。この世界もいずれ放棄される。しかし、それは元の世界も同じであり、むしろこの世界のほうが長く続いていく可能性だってある。
俺たちを見る人がいなくなったとしたら、俺たちはどうなるのだろう。眠りについてしまうのだろうか。それとも、本当の自由を手に入れられるのだろうか。
本当の自由を手に入れたとしたら、何をするだろう。……きっと、今と変わらない。
「ふみやさんはどうするんですか?」
「どうもしないよ」
「どうもしないんかい」
俺はこいつらと、ここで暮らしていこうとするだろう。何かに追われ、逃げることになっても、こいつらと一緒に逃げるのだろう。菜真絵のように流れ着く誰かがいたら、いいヤツなら一緒に過ごして、嫌なヤツなら追い出すのだろう。
それだけだ。それだけのことなんだ。
「今の生活で満足してるから」
「ふみやさんも作者に感謝してるってことですね」
「うん。菜真絵と出会えたし」
菜真絵の顔が赤くなっていく。
俺は初めて、この世界の創造主に感謝した。こんな顔が見られるのなら、この世界も悪くない。
俺は菜真絵のために存在していて、菜真絵のために好き勝手生きる。あいつらも好き勝手生きる。この世界が消滅するまで。
上等だ。幸せにしてやろう。この世界の構造ごと利用してでも、騒がしくて穏やかな日々を、菜真絵に……お前に、過ごさせてやる。
そう思った瞬間、少し、体が軽くなった気がした。
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