プロローグ編
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「失礼する」
部屋に戻れと言った張本人が、部屋を訪ねてきた。もう眠りにつくところだったのに。
少女は重い体を起こして、ベッドの上に正座する。しかし、なんだかふらふらしたので、自分の頬をつねった。いきなり明るくなった部屋に、目はちかちかするし、どうしてこんな時間に。
「すまない。どうしても話したいことがあったのだ」
謝られてしまっては、少女は怒れない。ヴァンの表情はいたって真剣だ。雰囲気に乗って、少女も姿勢を正した。
「話とは?」
「……アッシュのことについてだ」
夜は更けていく。
朝。少女は昨夜、色々考えた末に、頑張ろうと決心した。頬を叩いて、エネルギーを入れて、例の上司に元気良く挨拶した。が、完璧に無視されてしまった。
そのあと、山積みになった書類を処理することにした。これくらいしかできることがない。ただただ書類を種類別に分け、サインする作業。中には器物損壊だとか弁償だとか、目を背けたくなるような内容のものもある。
慣れないフォニック文字だが、勉強した甲斐あって、書類の内容はかろうじて読めた。知らない単語は勉強にもなるし、それなりに作業は楽しかった。
終わった。少女は大きく息をはく。上司が帰って来るまで、やることがない。
導きの少女には、何も課せられていることがなかった。書類を処理するのも、彼女がかってにやったこと。本当はただそこにいて、人々から尊敬されるだけでいいのだ。
だから、実戦に使われることもなければ、雑用すら任されることもない。最近は下っ端の兵士から「マスコット」と揶揄されているらしい。だからこそ、この状況を打開したかった。しっかり働いて役に立ちたかった。しかし、軍に配属されても、少女に役割は与えられないようだ。
今までしてきた勉強も、剣術の稽古も、ただの「教養」 でなのだと少女は悟った。
少女は落ち着かなくなり、部屋の掃除を始めた。
自分の部屋の掃除は瞬く間に終わり、次はアッシュの部屋を掃除しようとした。棚を開けるのは忍びないので、家具の表面を拭く程度だが、それでも何か目標があれば、虚しくない。
「何をしている!」
突然、背後から強烈な殺気が迫り、雑巾が奪われた。この長い髪は、あの人だ。
「申し訳ありません」
「勝手に部屋に入るな!」
少女は鍵の掛かっていない部屋に入っただけだった。教会の中の部屋は、開放されているものが多い。少女も何気なく、少年の部屋に入っただけ。
怒られた少女は納得がいかず、その場から動かなかった。昨日も、今日の朝も邪険に扱われたのだ。喧嘩の売り方など知らないが、全力で喧嘩を売ってみようと思った。
「棚の中身には触れていませんから、大丈夫ですよ」
「出ていけ」
これから先、共に仕事をする上司とこのままなんて嫌だ。彼女が導きの少女である限り、少女の居場所はなくならない。喧嘩をしたところで、配置転換があるだけだ。それなら、早いほうがいい。
この上司と決着をつけたい。少女は目の前の上司をキッと睨んで、笑った。
「そう怒らないでください、ルーク様」
「てめ……っ!」
昨夜聞いた必殺技だ。彼の最大の秘密。これを言えば、腹を立ててくれるかもしれない。
しかし、少女の想像以上に少年は怒っていた。少年は少女の襟を掴んで、壁に打ち付けた。少女の背中に激痛が走る。
「誰から聞いた」
「……」
「誰から聞いた!」
痛い。少年の表情は、とても怖い。
少女がこれほどの怒りを目の前にするのは、初めての出来事だった。手も足も震えて動かない。それでも、負けたくない一心で、少年の声を聞いた。
「誰から聞いたと言っている」
「ヴァン謡将からです。貴方を知るうえで必要だと言われて」
「あいつ……っ!」
少年は怒りの矛先を変え、部屋を出ていこうとする。しかし、少女はここで話を終わらせたくなかった。少女は咄嗟に少年の制服を掴み、歩みを止めさせた。
「待ってください」
少年は聞こえるように舌打ちをして、少女を睨みつける。しかし、効果はない。
「私がそんなに嫌ですか」
「離せ」
「私は貴方とちゃんと仕事がしたいんです。このままは嫌です。このままだと言うのなら、解雇してください」
少年は少女の手を振り払い、少女の顔を見た。泣きそうだ。
「解雇だと?居場所が無くなってもいいのか」
「……モース様がまた、用意してくださいます」
その一言を聞いて、少年は目を見開いた。預言に守られた少女が、自信満々に言う。それが少年には、レプリカに居場所を奪われた少年には、衝撃的であり、とても憎らしかった。
「本当は、ここを居場所にしたいのですが」
座った目で、少女は少年を見つめる。だがそれを見て、少年は恐怖さえ感じた。
「そういうところが嫌なんだよ!」
少女は突き飛ばされた。床に絨毯が敷いてあるが、それでも痛い。怖くて怖くて、少女は何もできなかった。何も考えられなかった。
少年は、歩いて行ってしまった。
部屋に戻れと言った張本人が、部屋を訪ねてきた。もう眠りにつくところだったのに。
少女は重い体を起こして、ベッドの上に正座する。しかし、なんだかふらふらしたので、自分の頬をつねった。いきなり明るくなった部屋に、目はちかちかするし、どうしてこんな時間に。
「すまない。どうしても話したいことがあったのだ」
謝られてしまっては、少女は怒れない。ヴァンの表情はいたって真剣だ。雰囲気に乗って、少女も姿勢を正した。
「話とは?」
「……アッシュのことについてだ」
夜は更けていく。
朝。少女は昨夜、色々考えた末に、頑張ろうと決心した。頬を叩いて、エネルギーを入れて、例の上司に元気良く挨拶した。が、完璧に無視されてしまった。
そのあと、山積みになった書類を処理することにした。これくらいしかできることがない。ただただ書類を種類別に分け、サインする作業。中には器物損壊だとか弁償だとか、目を背けたくなるような内容のものもある。
慣れないフォニック文字だが、勉強した甲斐あって、書類の内容はかろうじて読めた。知らない単語は勉強にもなるし、それなりに作業は楽しかった。
終わった。少女は大きく息をはく。上司が帰って来るまで、やることがない。
導きの少女には、何も課せられていることがなかった。書類を処理するのも、彼女がかってにやったこと。本当はただそこにいて、人々から尊敬されるだけでいいのだ。
だから、実戦に使われることもなければ、雑用すら任されることもない。最近は下っ端の兵士から「マスコット」と揶揄されているらしい。だからこそ、この状況を打開したかった。しっかり働いて役に立ちたかった。しかし、軍に配属されても、少女に役割は与えられないようだ。
今までしてきた勉強も、剣術の稽古も、ただの「教養」 でなのだと少女は悟った。
少女は落ち着かなくなり、部屋の掃除を始めた。
自分の部屋の掃除は瞬く間に終わり、次はアッシュの部屋を掃除しようとした。棚を開けるのは忍びないので、家具の表面を拭く程度だが、それでも何か目標があれば、虚しくない。
「何をしている!」
突然、背後から強烈な殺気が迫り、雑巾が奪われた。この長い髪は、あの人だ。
「申し訳ありません」
「勝手に部屋に入るな!」
少女は鍵の掛かっていない部屋に入っただけだった。教会の中の部屋は、開放されているものが多い。少女も何気なく、少年の部屋に入っただけ。
怒られた少女は納得がいかず、その場から動かなかった。昨日も、今日の朝も邪険に扱われたのだ。喧嘩の売り方など知らないが、全力で喧嘩を売ってみようと思った。
「棚の中身には触れていませんから、大丈夫ですよ」
「出ていけ」
これから先、共に仕事をする上司とこのままなんて嫌だ。彼女が導きの少女である限り、少女の居場所はなくならない。喧嘩をしたところで、配置転換があるだけだ。それなら、早いほうがいい。
この上司と決着をつけたい。少女は目の前の上司をキッと睨んで、笑った。
「そう怒らないでください、ルーク様」
「てめ……っ!」
昨夜聞いた必殺技だ。彼の最大の秘密。これを言えば、腹を立ててくれるかもしれない。
しかし、少女の想像以上に少年は怒っていた。少年は少女の襟を掴んで、壁に打ち付けた。少女の背中に激痛が走る。
「誰から聞いた」
「……」
「誰から聞いた!」
痛い。少年の表情は、とても怖い。
少女がこれほどの怒りを目の前にするのは、初めての出来事だった。手も足も震えて動かない。それでも、負けたくない一心で、少年の声を聞いた。
「誰から聞いたと言っている」
「ヴァン謡将からです。貴方を知るうえで必要だと言われて」
「あいつ……っ!」
少年は怒りの矛先を変え、部屋を出ていこうとする。しかし、少女はここで話を終わらせたくなかった。少女は咄嗟に少年の制服を掴み、歩みを止めさせた。
「待ってください」
少年は聞こえるように舌打ちをして、少女を睨みつける。しかし、効果はない。
「私がそんなに嫌ですか」
「離せ」
「私は貴方とちゃんと仕事がしたいんです。このままは嫌です。このままだと言うのなら、解雇してください」
少年は少女の手を振り払い、少女の顔を見た。泣きそうだ。
「解雇だと?居場所が無くなってもいいのか」
「……モース様がまた、用意してくださいます」
その一言を聞いて、少年は目を見開いた。預言に守られた少女が、自信満々に言う。それが少年には、レプリカに居場所を奪われた少年には、衝撃的であり、とても憎らしかった。
「本当は、ここを居場所にしたいのですが」
座った目で、少女は少年を見つめる。だがそれを見て、少年は恐怖さえ感じた。
「そういうところが嫌なんだよ!」
少女は突き飛ばされた。床に絨毯が敷いてあるが、それでも痛い。怖くて怖くて、少女は何もできなかった。何も考えられなかった。
少年は、歩いて行ってしまった。