崩落編
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最後のときは突然訪れた。
ロニール雪山のセフィロトに向かうと、予想していた通り、リグレット、ラルゴ、アリエッタが待ち構えていた。
外郭大地の降下を阻止するためか、はたまた、少女たちを全滅させるためか。彼らは少女たちを襲撃した。
しかし戦闘中、雪崩が発生した。
ティアの譜歌は間に合わず、少女たちを守ったのは、ジェイドが譜術で作った炎の障壁だった。
しかし敵の3人は、そのまま雪の波にのみ込まれていった。
こんな別れ方になるなんて。
命を奪うつもりで挑んだ戦いだったとはいえ、そのあっけない最期に、皆、言葉を失った。
少女は大きく息を吸う。氷の粒が喉を通って、ちくちくとした痛みを感じる。
同士だと思っていた。同じ未来を描いているつもりだった。彼らがいて、少年がいて、自分で自分の未来を決められる、自由な世界を夢見ていた。
だがそれは叶わなかった。もう二度と、彼らと笑い合うことはできない。いや、最初からそんな未来はなかったのかもしれない。自分もきっと、ただの捨て駒だったのだろうから。
少女がティアを見やると、じっと崖下を見つめている。彼女の慕っていた教官は、どこへ流されていったのだろう。今頃寒さに震えて、命の終わりに怯えているのだろうか。
ティアが傷ついているのは、リグレットの優しさをよく知っているからだ。だからこそ、その死を心から悲しむことができる。
自分は違う。彼らの本当の姿を知らない。彼らと心を通わせることのないまま、終わりのときを迎えた。だから、悲しいのではなくて、虚しい。少女は、ティアのことを少し羨ましく思った。もちろん、決して口には出さないが。
セフィロトの入口のダアト式封呪をイオンが解く。しかし、たちまち膝から崩れ落ちて、アニスに抱き抱えられた。ティアだけでなく、彼の体も限界なのだ。
皆の命をすり減らしながら、ここまで来た。そんな日々も、もうすぐ終わる。アブソーブゲートでのリング操作を以て、外郭大地は魔界に降下し、オールドラントは創世紀時代の姿に戻る。
セフィロトに入ってすぐの場所に、パッセージリングは存在していた。何も言わずに進んでいくティアを、ルークが呼び止める。
「ティア。大丈夫か?」
「……教官のことなら、大丈夫」
「それだけじゃないよ。障気が……」
「……忘れたの?やれることをやるしかないのよ」
そう言うと、ティアは棒状の譜石の前に立った。操作盤が開き、上空に図像が浮かび上がる。十個の円のうち、今やプロテクトを示す赤い枠に囲まれているのは上下と右下の三つだけだ。
「さあ、ルーク。後は全てのセフィロトを、アブソーブとラジエイトのゲートへ連結して下さい」
「分かった」
ルークは操作盤の前に立って両手を掲げる。やがて周囲に譜陣が輝いて回転し、下方から記憶粒子が立ち昇り始めた。
うまくいった。そう思ったのもつかの間、突然、地面が震え始める。地震や雪崩ではない。震源はおそらく、目の前のセフィロトだ。
「……まさか、俺、しくじったのか!?」
操作盤には警告文が表示されていた。ジェイドが駆け寄ってその内容を確認する。その様子は、珍しく焦っているように見えた。
「アブソーブゲートのセフィロトから記憶粒子が逆流しています。連結した全セフィロトの力を利用して、地核を活性化させているんです!」
アブソーブゲートは本来、記憶粒子が流れ込んでいく場所である。それが反転することの意味を、少女は瞬時には理解できなかった。しかし、誰がそれを目論んだかはわかる。
「ヴァン様が仕掛けていたんですね……」
「どうして……!記憶粒子を逆流させたら、兄さんのいるアブソーブゲートのセフィロトツリーも逆転して、ゲートのあるツフト諸島ごと崩落するわ!」
「いえ、今は私たちによって各地のセフィロトの力がアブソーブゲートに流入しています。その余剰を使ってセフィロトを逆流させているのでしょう。むしろ落ちるなら、アブソーブゲート以外の大陸だ」
つまり、アブソーブゲートから逆流した記憶粒子が、今度は各セフィロトに戻ってくるのだ。それが上から下への圧力となり、大地は崩落する。
ヴァンが外郭降下作戦を「意味がない」と一蹴していたのはこういうことだったのだろう。つくづく、用意周到な人物である。
「ねぇ、地核はタルタロスで震動を中和してるんでしょ。活性化なんてしたら……」
「タルタロスが壊れますわ!」
「くそっ!師匠を止めないと!」
ヴァンはアブソーブゲートにいる。外郭降下作戦の完遂のためにも、ヴァンの愚行を止めるためにも、急がなければならない。
ついに、決戦のときが来るのだ。
走り出したルークの背中から、アニスが釘を刺す。
「総長を止める前に、イオン様を街で休ませるのも忘れないでよ」
「……すみません……」
イオンの声は小さく、見れば顔色は雪よりも白い。いつもは強がって笑っているが、もうその元気もないらしい。
「謝るなって」
ガイがイオンに笑いかける。
イオンの協力が無ければ、この旅は成立しなかった。感謝こそすれ、責め立てるような者は一人もいない。
幸い、記憶粒子が逆流していたとしても、大陸がディバイディングラインを超えるまでは大地は崩落せずに済むらしい。一日二日の休息であれば、取ることができるだろう。
ルーク一行はケテルブルクに戻ることにした。
ロニール雪山のセフィロトに向かうと、予想していた通り、リグレット、ラルゴ、アリエッタが待ち構えていた。
外郭大地の降下を阻止するためか、はたまた、少女たちを全滅させるためか。彼らは少女たちを襲撃した。
しかし戦闘中、雪崩が発生した。
ティアの譜歌は間に合わず、少女たちを守ったのは、ジェイドが譜術で作った炎の障壁だった。
しかし敵の3人は、そのまま雪の波にのみ込まれていった。
こんな別れ方になるなんて。
命を奪うつもりで挑んだ戦いだったとはいえ、そのあっけない最期に、皆、言葉を失った。
少女は大きく息を吸う。氷の粒が喉を通って、ちくちくとした痛みを感じる。
同士だと思っていた。同じ未来を描いているつもりだった。彼らがいて、少年がいて、自分で自分の未来を決められる、自由な世界を夢見ていた。
だがそれは叶わなかった。もう二度と、彼らと笑い合うことはできない。いや、最初からそんな未来はなかったのかもしれない。自分もきっと、ただの捨て駒だったのだろうから。
少女がティアを見やると、じっと崖下を見つめている。彼女の慕っていた教官は、どこへ流されていったのだろう。今頃寒さに震えて、命の終わりに怯えているのだろうか。
ティアが傷ついているのは、リグレットの優しさをよく知っているからだ。だからこそ、その死を心から悲しむことができる。
自分は違う。彼らの本当の姿を知らない。彼らと心を通わせることのないまま、終わりのときを迎えた。だから、悲しいのではなくて、虚しい。少女は、ティアのことを少し羨ましく思った。もちろん、決して口には出さないが。
セフィロトの入口のダアト式封呪をイオンが解く。しかし、たちまち膝から崩れ落ちて、アニスに抱き抱えられた。ティアだけでなく、彼の体も限界なのだ。
皆の命をすり減らしながら、ここまで来た。そんな日々も、もうすぐ終わる。アブソーブゲートでのリング操作を以て、外郭大地は魔界に降下し、オールドラントは創世紀時代の姿に戻る。
セフィロトに入ってすぐの場所に、パッセージリングは存在していた。何も言わずに進んでいくティアを、ルークが呼び止める。
「ティア。大丈夫か?」
「……教官のことなら、大丈夫」
「それだけじゃないよ。障気が……」
「……忘れたの?やれることをやるしかないのよ」
そう言うと、ティアは棒状の譜石の前に立った。操作盤が開き、上空に図像が浮かび上がる。十個の円のうち、今やプロテクトを示す赤い枠に囲まれているのは上下と右下の三つだけだ。
「さあ、ルーク。後は全てのセフィロトを、アブソーブとラジエイトのゲートへ連結して下さい」
「分かった」
ルークは操作盤の前に立って両手を掲げる。やがて周囲に譜陣が輝いて回転し、下方から記憶粒子が立ち昇り始めた。
うまくいった。そう思ったのもつかの間、突然、地面が震え始める。地震や雪崩ではない。震源はおそらく、目の前のセフィロトだ。
「……まさか、俺、しくじったのか!?」
操作盤には警告文が表示されていた。ジェイドが駆け寄ってその内容を確認する。その様子は、珍しく焦っているように見えた。
「アブソーブゲートのセフィロトから記憶粒子が逆流しています。連結した全セフィロトの力を利用して、地核を活性化させているんです!」
アブソーブゲートは本来、記憶粒子が流れ込んでいく場所である。それが反転することの意味を、少女は瞬時には理解できなかった。しかし、誰がそれを目論んだかはわかる。
「ヴァン様が仕掛けていたんですね……」
「どうして……!記憶粒子を逆流させたら、兄さんのいるアブソーブゲートのセフィロトツリーも逆転して、ゲートのあるツフト諸島ごと崩落するわ!」
「いえ、今は私たちによって各地のセフィロトの力がアブソーブゲートに流入しています。その余剰を使ってセフィロトを逆流させているのでしょう。むしろ落ちるなら、アブソーブゲート以外の大陸だ」
つまり、アブソーブゲートから逆流した記憶粒子が、今度は各セフィロトに戻ってくるのだ。それが上から下への圧力となり、大地は崩落する。
ヴァンが外郭降下作戦を「意味がない」と一蹴していたのはこういうことだったのだろう。つくづく、用意周到な人物である。
「ねぇ、地核はタルタロスで震動を中和してるんでしょ。活性化なんてしたら……」
「タルタロスが壊れますわ!」
「くそっ!師匠を止めないと!」
ヴァンはアブソーブゲートにいる。外郭降下作戦の完遂のためにも、ヴァンの愚行を止めるためにも、急がなければならない。
ついに、決戦のときが来るのだ。
走り出したルークの背中から、アニスが釘を刺す。
「総長を止める前に、イオン様を街で休ませるのも忘れないでよ」
「……すみません……」
イオンの声は小さく、見れば顔色は雪よりも白い。いつもは強がって笑っているが、もうその元気もないらしい。
「謝るなって」
ガイがイオンに笑いかける。
イオンの協力が無ければ、この旅は成立しなかった。感謝こそすれ、責め立てるような者は一人もいない。
幸い、記憶粒子が逆流していたとしても、大陸がディバイディングラインを超えるまでは大地は崩落せずに済むらしい。一日二日の休息であれば、取ることができるだろう。
ルーク一行はケテルブルクに戻ることにした。