崩落編
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体内に流れ込む音素を計測するため、ティアは計測用の腕輪を身に着けることになった。ベルケンドの医師の提案によるものだ。しかし、あくまでもデータの取得が目的だ。彼女の体が楽になるわけではない。
ティアの体を蝕みながら、外郭降下作戦は続く。
一行は次なるセフィロトを探しに、メジオラ高原までやって来ていた。
しばらく歩いていると、少女の背後でティアが叫ぶ。
「教官!」
リグレットだ。
少女にとっては見慣れた姿。神託の盾の上司として、何度もやり取りがあった。しかし、今はシェリダンでの忌まわしい記憶が蘇る。
少女たちは剣を構えるが、リグレットに攻撃の意思はないようだった。
「ティア。これ以上無駄なことはやめろ。ヴァン総長も心配しておられる」
ヴァンはまだ、ティアを諦めていないようだ。
「こちらに来なさい。お前と、もう一人のホドの生き残りは総長も助けて下さる」
リグレットの言葉を受け、少女はルークを見やる。すると、敵意の中に悲しみを浮かべた表情を見せていた。かつての師からもう、必要とされていない。二度とわかり合うことがないと頭では理解していても、堪える。
「ああ、菜真絵も居たのだったな」
少女は自身の名を呼ばれ、心底驚いた。自分もルークのように見放されていると思っていたからだ。
少女は既に、目的を共有する仲間としても、モースに対する人質としても機能していない。しかし、ティアやガイのように親愛を抱かれているわけでもない。好かれているのなら、こんなオマケのような呼び方はされないだろうから。
それならば、ヴァンにとっての自分は何なのか。思案していると、リグレットが言葉を継ぐ。
「このままレプリカと逃げていては、預言の通りにアッシュが死んでしまうかもしれない。それでもいいのか?」
リグレットの主張は最初から変わらない。預言のない自由な世界で、六神将たちと暮らす。あの頃の少女にとって、それはとても魅力的だった。
しかし、知ってしまった。預言に頼らず、自ら明日を勝ち取らんとする人々が、この世に多くいることを。
目の前にいる彼らのことを、失ってもいいなどとは思えない。もし、フォミクリーで作り直されたとしても、それは別人だ。
「確かに、アッシュ様には生きていて欲しい。ですが、そのためにレプリカルークや外郭大地の人々を失うなど、納得できるはずがありません」
「そうだ。世界がごっそりレプリカに入れ替わるなんて、俺はごめんだね。それに、二人のルークはアクゼリュスから生還したろ?」
ホドの生き残りであるガイが問う。
少女は思い出す。そうだ。イオンも過去に「預言が書き換わっているかもしれない」という旨の話をしていた。聖なる焔の光たちは、救われたのではなかったのか。
「ユリアの預言はどこまでも正確だ。多少の歪みなどものともせず、歴史は第七譜石の預言通りに進むだろう」
しかし、リグレットはその疑問をキッパリと切り捨てた。
少女の脳裏に赤髪の少年の姿がよぎる。この先、鉱山の街で彼が消滅する可能性がある、と、リグレットは言っているのだ。そうだとしたら、彼に伝えなければならない。それとも、気づいているのだろうか。もし伝えたとして、どう回避すればよいのだろう?
少女の思考を遮るように、ティアが叫ぶ。
「第七譜石!兄さんは第七譜石を見つけたの?」
「そうか……!あれだ。あれが第七譜石だったんだ!」
ガイの大声に皆が気を取られた瞬間、リグレットは足元に小石を一つ落とし、身を翻していた。
逃げられてしまった。しかし、その事実よりも、皆はガイの言葉を気に掛ける。
第七譜石。人々が躍起になって探すその存在。ヴァンが既に見つけているとすれば、外郭降下作戦の進め方にも関わってくる。
「ガイ。あなたはどこで第七譜石を……」
「ホドだ。ガキの頃、ヴァンに連れられて一度だけ見たことがある」
ガイの話では、第七譜石はフェンデ家の敷地に隠されており、代々受け継がれてきたのだという。ユリアを守る七賢者のうちの一人と、ユリアとの間に授かった子がフェンデ家の祖先なのだそうだ。
セフィロトの「ユリア式封呪」とやらがヴァンによって解除されていたのも、パッセージリングがティアに反応したのも、彼らの持つユリアの血によるものだとすれば、説明がつく。
そして、第七譜石はホド崩落と共に地殻へ沈んでいった。
地殻突入時に少女たちが見た光こそが、第七譜石だったのだ。
「……ヴァンは第七譜石の預言を知っていたから、オリジナルを滅ぼして、新しい世界を作ろうとしているのですか?」
ナタリアが、誰に問うでもなく言う。
これまで少女も含めて、ヴァンの一連の計画の動機は「預言に踊らされる人々に絶望したから」だと考えていた。しかし、それが違ったとしたら?第七譜石に記された絶望を、回避しようとしているのだとしたら?
自分たちのしていることは、世界を救うどころか、破滅させようとしているのかもしれない。
皆の脳裏によぎる不安を払うように、ガイが言う。
「俺たちは外郭を降ろして、俺たちの世界を守るんだろ?」
そうだ。もし第七譜石の預言が破滅を示していたとしても「人類を守るために人類を滅ぼす」のでは意味がない。
誰かのために誰かを犠牲にしてはいけない。そう、この世界の人々も、アッシュも、レプリカルークも、ティアも、すべてを救いたい。
たとえ無駄になったとしても、少女たちは足掻くしかない。まずは目の前のセフィロトを操作して、外郭大地を降下させるのだ。
ルークが再び歩みを進めようとすると、ティアだけが取り残される。
「……」
「……ティア?どうかしたか?また体調悪いとか?」
「あ、いえ、ごめんなさい。大丈夫よ。ちょっとぼーっとしてたわ。行きましょ」
自身の兄について、出自について、新たな事実を知り、彼女は何を思ったのだろう。
しかしティアは弱音を吐くこともなく、再び歩き始めた。
ティアの体を蝕みながら、外郭降下作戦は続く。
一行は次なるセフィロトを探しに、メジオラ高原までやって来ていた。
しばらく歩いていると、少女の背後でティアが叫ぶ。
「教官!」
リグレットだ。
少女にとっては見慣れた姿。神託の盾の上司として、何度もやり取りがあった。しかし、今はシェリダンでの忌まわしい記憶が蘇る。
少女たちは剣を構えるが、リグレットに攻撃の意思はないようだった。
「ティア。これ以上無駄なことはやめろ。ヴァン総長も心配しておられる」
ヴァンはまだ、ティアを諦めていないようだ。
「こちらに来なさい。お前と、もう一人のホドの生き残りは総長も助けて下さる」
リグレットの言葉を受け、少女はルークを見やる。すると、敵意の中に悲しみを浮かべた表情を見せていた。かつての師からもう、必要とされていない。二度とわかり合うことがないと頭では理解していても、堪える。
「ああ、菜真絵も居たのだったな」
少女は自身の名を呼ばれ、心底驚いた。自分もルークのように見放されていると思っていたからだ。
少女は既に、目的を共有する仲間としても、モースに対する人質としても機能していない。しかし、ティアやガイのように親愛を抱かれているわけでもない。好かれているのなら、こんなオマケのような呼び方はされないだろうから。
それならば、ヴァンにとっての自分は何なのか。思案していると、リグレットが言葉を継ぐ。
「このままレプリカと逃げていては、預言の通りにアッシュが死んでしまうかもしれない。それでもいいのか?」
リグレットの主張は最初から変わらない。預言のない自由な世界で、六神将たちと暮らす。あの頃の少女にとって、それはとても魅力的だった。
しかし、知ってしまった。預言に頼らず、自ら明日を勝ち取らんとする人々が、この世に多くいることを。
目の前にいる彼らのことを、失ってもいいなどとは思えない。もし、フォミクリーで作り直されたとしても、それは別人だ。
「確かに、アッシュ様には生きていて欲しい。ですが、そのためにレプリカルークや外郭大地の人々を失うなど、納得できるはずがありません」
「そうだ。世界がごっそりレプリカに入れ替わるなんて、俺はごめんだね。それに、二人のルークはアクゼリュスから生還したろ?」
ホドの生き残りであるガイが問う。
少女は思い出す。そうだ。イオンも過去に「預言が書き換わっているかもしれない」という旨の話をしていた。聖なる焔の光たちは、救われたのではなかったのか。
「ユリアの預言はどこまでも正確だ。多少の歪みなどものともせず、歴史は第七譜石の預言通りに進むだろう」
しかし、リグレットはその疑問をキッパリと切り捨てた。
少女の脳裏に赤髪の少年の姿がよぎる。この先、鉱山の街で彼が消滅する可能性がある、と、リグレットは言っているのだ。そうだとしたら、彼に伝えなければならない。それとも、気づいているのだろうか。もし伝えたとして、どう回避すればよいのだろう?
少女の思考を遮るように、ティアが叫ぶ。
「第七譜石!兄さんは第七譜石を見つけたの?」
「そうか……!あれだ。あれが第七譜石だったんだ!」
ガイの大声に皆が気を取られた瞬間、リグレットは足元に小石を一つ落とし、身を翻していた。
逃げられてしまった。しかし、その事実よりも、皆はガイの言葉を気に掛ける。
第七譜石。人々が躍起になって探すその存在。ヴァンが既に見つけているとすれば、外郭降下作戦の進め方にも関わってくる。
「ガイ。あなたはどこで第七譜石を……」
「ホドだ。ガキの頃、ヴァンに連れられて一度だけ見たことがある」
ガイの話では、第七譜石はフェンデ家の敷地に隠されており、代々受け継がれてきたのだという。ユリアを守る七賢者のうちの一人と、ユリアとの間に授かった子がフェンデ家の祖先なのだそうだ。
セフィロトの「ユリア式封呪」とやらがヴァンによって解除されていたのも、パッセージリングがティアに反応したのも、彼らの持つユリアの血によるものだとすれば、説明がつく。
そして、第七譜石はホド崩落と共に地殻へ沈んでいった。
地殻突入時に少女たちが見た光こそが、第七譜石だったのだ。
「……ヴァンは第七譜石の預言を知っていたから、オリジナルを滅ぼして、新しい世界を作ろうとしているのですか?」
ナタリアが、誰に問うでもなく言う。
これまで少女も含めて、ヴァンの一連の計画の動機は「預言に踊らされる人々に絶望したから」だと考えていた。しかし、それが違ったとしたら?第七譜石に記された絶望を、回避しようとしているのだとしたら?
自分たちのしていることは、世界を救うどころか、破滅させようとしているのかもしれない。
皆の脳裏によぎる不安を払うように、ガイが言う。
「俺たちは外郭を降ろして、俺たちの世界を守るんだろ?」
そうだ。もし第七譜石の預言が破滅を示していたとしても「人類を守るために人類を滅ぼす」のでは意味がない。
誰かのために誰かを犠牲にしてはいけない。そう、この世界の人々も、アッシュも、レプリカルークも、ティアも、すべてを救いたい。
たとえ無駄になったとしても、少女たちは足掻くしかない。まずは目の前のセフィロトを操作して、外郭大地を降下させるのだ。
ルークが再び歩みを進めようとすると、ティアだけが取り残される。
「……」
「……ティア?どうかしたか?また体調悪いとか?」
「あ、いえ、ごめんなさい。大丈夫よ。ちょっとぼーっとしてたわ。行きましょ」
自身の兄について、出自について、新たな事実を知り、彼女は何を思ったのだろう。
しかしティアは弱音を吐くこともなく、再び歩き始めた。