崩落編
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ここはユリアシティ。中央監視施設の会議場。
ついに、停戦協定が結ばれることとなった。
マルクト帝国側からは、ピオニー九世、ジェイド、ゼーゼマン参謀総長が。キムラスカ王国側からは、インゴベルト六世、ナタリア、ファブレ元帥、アルバイン内務大臣が参列した。
中立者としてテオドーロ市長の左右にイオンとアスターが並ぶ。
少女含む他の面々も、席は与えられていないが立ち会うことを許されていた。
モースの邪魔が入ることもなく、式は粛々と進んだ。
書類にサインが書かれ、それがイオンの手に渡る。
「それではこれをもって平和条約の締結といたします」
よかった。
これでもう戦争起きない。外殻大地の降下についても、世界中の承認を得られたことになる。全員が心から納得しているかは、別の話になるが。
「……ちょっと待った」
唐突に、聞き慣れた声が響いた。
「ガイ!」
「ガイ!何をするのです!」
次の瞬間には、ガイがインゴベルトの首筋に、刀身を押し当てていた。
ルークとナタリアが静止するが、ガイが聞き入れる様子はない。
気迫に押されてか、それとも、本気で斬りつけるつもりがないことを見抜かれているのか、他の者はガイを咎めることはしなかった。
「同じような取り決めがホド戦争の直後にもあったよな。今度は守れるのか」
「ホドの時とは違う。あれは預言による繁栄を我が国にもたらすため……」
「そんなことの為にホドを消滅させたのか!あそこにはキムラスカ人もいたんだぞ。俺の母親みたいにな」
ガイの屋敷に攻め入ったのは、ファブレ公爵だ。それは少女も聞いたことがあった。
だが、それだけではなかった。
ガイの母親はマルクトへと嫁いだ、キムラスカの貴族だったのだ。
表向きには両国の和平の証として、――実態はホド戦争の手引きをさせるためのスパイとしての婚姻だったそうだ。しかし、ガイの母はマルクト攻略の手引きを断り、その報いとして、殺された。
「復讐の為に来たのなら、私を刺しなさい。ガルディオス伯爵夫人を手にかけたのは私だ」
父の言葉に、ルークがたじろぐ。
そんな息子のレプリカを見やって、ファブレ公は言った。
「戦争だったのだ。勝つ為なら何でもする。……お前を亡き者にすることで、ルグニカ平野の戦いを発生させたようにな」
すべて、ここに来るまでに、わかっていたことだ。だが、改めて口にされると、苦しい。
ルークのそばには誰もいない。彼は支えられることなく、その場でふら、と、足音を立てた。ガイはその様子をちらりと見たが、すぐに言葉を続ける。
「だがホドを消滅させてまで他の者を巻き込む必要があったのか!?」
その時、場違いに飄々とした声がマルクト側の席から掛かった。
「剣を向けるならこっちの方かもしれないぞ。ガイラルディア・ガラン」
「……陛下?」
少女のほか数名が、皇帝に視線を向ける。だが、マルクトの席につく面々は、悠々とその場に座っているだけだった。
「どうせいずれ分かることだ。ホドはキムラスカが消滅させた訳ではない。――我々が消したのだ」
「……どういうこと!」
ホドの孤児であるティアが声をあげる。
その様子を認め、ピオニーは説明を続けた。
ホドには、マルクトの譜術研究機関が存在していた。キムラスカによるホド侵攻の際、ほとんどの研究は引き上げたが、フォミクリーの研究だけは間に合わなかった。
先代の皇帝は、敵国に機密を知られまいと、キムラスカの兵士ごとホドを消滅させる決定をしたのだという。
「でも、どうやって……?」
「当時のフォミクリー被験者を装置に繋ぎ、被験者と装置の間で人為的に超振動を起こしたと聞いています」
つまり、アクゼリュスと同じようにセフィロトを消滅させたのだ。
その方法が15年前から確立されていたことにも驚いたが、それよりも、レプリカルークのように利用された第七譜術師が存在していたことが、気にかかる。
不安げなルークの瞳に応えるように、ジェイドが言葉を紡ぐ。
「被験者はガルディオス伯爵家に仕える騎士の息子だったそうですよ。確か……フェンデ家でしたか」
「まさか……ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ!?」
ティアが顔色を変えて叫ぶ。
「ティア、知ってるのか?」
「知ってるも何も………ヴァンのことだよ。ヴァン・グランツ。奴の本名がヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ」
ガイの答えに、その場にいた殆どの人間が息を呑む。
ヴァンは自らの手で故郷を滅ぼしていたのだ。十一歳の少年が、戦争の中で、大人たちに仕向けられて。
すべてが繋がった。
彼が世界のすべてを憎んでいるのも、生物レプリカの技術を持っていたのも、ホド崩落の当事者であり、被害者だからだったのだ。
「ガイ。ひとまず剣を収めてはいかがですか? この調子では、ここにいる殆どの人間を殺さなくてはあなたの復讐は終わらない」
イオンが静かに声を落とす。
ガイは困ったように笑って、剣を鞘に収めた。最初から復讐しようとしていたわけではない。
ただ行き場のない怒りを収めるため、けじめをつけるため、ガイにとって必要なことだったのだ。
「思わぬところでヴァンの名が出たようですが、ここは一度、解散しましょう。よろしいですな」
テオドーロが言った。調印は既に終わっている。人々はそれぞれ席を立った。
衝撃の事実が告げられ、心が落ち着かない。
少女たちは何をするでもなく、広場に佇んでいた。
ルークが小さい声でつぶやく。
「……ヴァン師匠も戦争の被害者だったんだな」
「でも、兄さんがやっていることは復讐とすら言えないわ!」
何かを振り払うように、ティアが言う。
わかっていたことだ。あれだけ聡明な男が、理由もなく世界を憎み、滅ぼそうとするわけがない。
だが、それでも、世界中の人々を殺していい理由にはならない。
「そもそもの発端はホド戦争にあったのかもしれませんが、それは既に言い訳と化しています」
「うん………」
そう、必ず彼を止めなければならないのだ。
皆それを自分に言い聞かせるように、頷きあった。
ついに、停戦協定が結ばれることとなった。
マルクト帝国側からは、ピオニー九世、ジェイド、ゼーゼマン参謀総長が。キムラスカ王国側からは、インゴベルト六世、ナタリア、ファブレ元帥、アルバイン内務大臣が参列した。
中立者としてテオドーロ市長の左右にイオンとアスターが並ぶ。
少女含む他の面々も、席は与えられていないが立ち会うことを許されていた。
モースの邪魔が入ることもなく、式は粛々と進んだ。
書類にサインが書かれ、それがイオンの手に渡る。
「それではこれをもって平和条約の締結といたします」
よかった。
これでもう戦争起きない。外殻大地の降下についても、世界中の承認を得られたことになる。全員が心から納得しているかは、別の話になるが。
「……ちょっと待った」
唐突に、聞き慣れた声が響いた。
「ガイ!」
「ガイ!何をするのです!」
次の瞬間には、ガイがインゴベルトの首筋に、刀身を押し当てていた。
ルークとナタリアが静止するが、ガイが聞き入れる様子はない。
気迫に押されてか、それとも、本気で斬りつけるつもりがないことを見抜かれているのか、他の者はガイを咎めることはしなかった。
「同じような取り決めがホド戦争の直後にもあったよな。今度は守れるのか」
「ホドの時とは違う。あれは預言による繁栄を我が国にもたらすため……」
「そんなことの為にホドを消滅させたのか!あそこにはキムラスカ人もいたんだぞ。俺の母親みたいにな」
ガイの屋敷に攻め入ったのは、ファブレ公爵だ。それは少女も聞いたことがあった。
だが、それだけではなかった。
ガイの母親はマルクトへと嫁いだ、キムラスカの貴族だったのだ。
表向きには両国の和平の証として、――実態はホド戦争の手引きをさせるためのスパイとしての婚姻だったそうだ。しかし、ガイの母はマルクト攻略の手引きを断り、その報いとして、殺された。
「復讐の為に来たのなら、私を刺しなさい。ガルディオス伯爵夫人を手にかけたのは私だ」
父の言葉に、ルークがたじろぐ。
そんな息子のレプリカを見やって、ファブレ公は言った。
「戦争だったのだ。勝つ為なら何でもする。……お前を亡き者にすることで、ルグニカ平野の戦いを発生させたようにな」
すべて、ここに来るまでに、わかっていたことだ。だが、改めて口にされると、苦しい。
ルークのそばには誰もいない。彼は支えられることなく、その場でふら、と、足音を立てた。ガイはその様子をちらりと見たが、すぐに言葉を続ける。
「だがホドを消滅させてまで他の者を巻き込む必要があったのか!?」
その時、場違いに飄々とした声がマルクト側の席から掛かった。
「剣を向けるならこっちの方かもしれないぞ。ガイラルディア・ガラン」
「……陛下?」
少女のほか数名が、皇帝に視線を向ける。だが、マルクトの席につく面々は、悠々とその場に座っているだけだった。
「どうせいずれ分かることだ。ホドはキムラスカが消滅させた訳ではない。――我々が消したのだ」
「……どういうこと!」
ホドの孤児であるティアが声をあげる。
その様子を認め、ピオニーは説明を続けた。
ホドには、マルクトの譜術研究機関が存在していた。キムラスカによるホド侵攻の際、ほとんどの研究は引き上げたが、フォミクリーの研究だけは間に合わなかった。
先代の皇帝は、敵国に機密を知られまいと、キムラスカの兵士ごとホドを消滅させる決定をしたのだという。
「でも、どうやって……?」
「当時のフォミクリー被験者を装置に繋ぎ、被験者と装置の間で人為的に超振動を起こしたと聞いています」
つまり、アクゼリュスと同じようにセフィロトを消滅させたのだ。
その方法が15年前から確立されていたことにも驚いたが、それよりも、レプリカルークのように利用された第七譜術師が存在していたことが、気にかかる。
不安げなルークの瞳に応えるように、ジェイドが言葉を紡ぐ。
「被験者はガルディオス伯爵家に仕える騎士の息子だったそうですよ。確か……フェンデ家でしたか」
「まさか……ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ!?」
ティアが顔色を変えて叫ぶ。
「ティア、知ってるのか?」
「知ってるも何も………ヴァンのことだよ。ヴァン・グランツ。奴の本名がヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ」
ガイの答えに、その場にいた殆どの人間が息を呑む。
ヴァンは自らの手で故郷を滅ぼしていたのだ。十一歳の少年が、戦争の中で、大人たちに仕向けられて。
すべてが繋がった。
彼が世界のすべてを憎んでいるのも、生物レプリカの技術を持っていたのも、ホド崩落の当事者であり、被害者だからだったのだ。
「ガイ。ひとまず剣を収めてはいかがですか? この調子では、ここにいる殆どの人間を殺さなくてはあなたの復讐は終わらない」
イオンが静かに声を落とす。
ガイは困ったように笑って、剣を鞘に収めた。最初から復讐しようとしていたわけではない。
ただ行き場のない怒りを収めるため、けじめをつけるため、ガイにとって必要なことだったのだ。
「思わぬところでヴァンの名が出たようですが、ここは一度、解散しましょう。よろしいですな」
テオドーロが言った。調印は既に終わっている。人々はそれぞれ席を立った。
衝撃の事実が告げられ、心が落ち着かない。
少女たちは何をするでもなく、広場に佇んでいた。
ルークが小さい声でつぶやく。
「……ヴァン師匠も戦争の被害者だったんだな」
「でも、兄さんがやっていることは復讐とすら言えないわ!」
何かを振り払うように、ティアが言う。
わかっていたことだ。あれだけ聡明な男が、理由もなく世界を憎み、滅ぼそうとするわけがない。
だが、それでも、世界中の人々を殺していい理由にはならない。
「そもそもの発端はホド戦争にあったのかもしれませんが、それは既に言い訳と化しています」
「うん………」
そう、必ず彼を止めなければならないのだ。
皆それを自分に言い聞かせるように、頷きあった。