プロローグ編
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少女の1日は、今日も変わりなく始まった。
勉強して、剣の稽古をして、勉強して、その報告をする。そんな1日が。
教会の中では同世代の友達などできず、遊び相手もいない。兵士との交流もなくはないが、尊重されるばかりで、対等に話せる人間はいない。幹部と話をすればまた逆で、神経をすり減らすだけ。
少女は日記を開いて、ため息をついた。
今日は少女の誕生日である。あくまでも、元の世界の暦では、だが。
オールドラントの1年は、地球の2年に相当する。しかし、オールドラントの平均寿命は少女の知っているものとそう変わらない。
少女は、自分が倍の速度で成長している、すなわち、急速に歳をとっているということに気づいていた。せっかくの誕生日なのに、何も嬉しくない。
もちろん、元の世界に戻ることができれば、この悩みはなくなるだろう。しかし、それは叶いそうになかった。
少女がどんな世界から来たのか。心細くないのか。家族に会いたくないのか。そんなことを気にする人は、どこにもいなかった。
少女は日記を抱きしめた。しかしすぐに、自分が感傷に浸っていることが恥ずかしくなって、日記を投げた。自分は元々、こういうタイプではない。
日記を拾おうとすると、ドアが開いた。もう勉強の時間か。
「菜真絵様、今すぐにいらして下さい、導師がお待ちです」
「導師イオンが?」
教育係から伝えられた言葉は、想像と違うものだった。
導師イオンといえば、教団の最高指導者である。すなわち、世界一の権力者。そんな人が、何故自分に?少女は疑問に思ったが、それよりも、導師に会うことのできるわくわくのほうが大きかった。
13歳になったばかりの少女は、新しい出来事に渇望している。
少女は部屋を出て、見たことのない広間に連れて行かれた。そこには導師イオンと、小さな少女が立っていた。
導師イオンは優しそうな少年だった。少女と年齢も近いように見える。
モースのような出で立ちの男を想像していたため、少女はその出で立ちに驚いた。
「おはようございます、菜真絵」
「はっ、私、菜真絵・明寺奏長であります。本日はお日柄もよく、えと、えっと」
少女は慌てていた。他の教団幹部と話しているときは、ただ相手に同調しているだけでよかった。しかし目の前にいる少年は、にこにこと笑うだけで何も話さない。
「不思議なポーズですね」
そう言われて少女は、自分の手の行き先を見た。ただの敬礼である。何がおかしかったのかわからず、何もできずにいると、小さな少女が飛んできた。
「あ、あのぅ、気にしないでくださいっ!この人ちょっと世間に疎いんですっ!」
彼女が跳ね回る度に、ツインテールがぴょこぴょこ揺れる。
どうやら導師は世間に疎いらしい。導師の役職というのは、預言の導きで、生まれながらにつくものだ。だから、世間に疎いというのも納得がいく。
少女はひとりでうんうんとうなずいた。
「気にしていませんので、大丈夫ですよ」
「は、はいっ、ありがとうございますぅっ!」
小さな少女はえへへ、と気まずそうに笑った。おそらく彼女は、導師の護衛なのだろう。教団での正式名は導師守護役、フォンマスターガーディアン。
「それで、本日はどういったご用件で……」
「モースに会っておけと言われていましたから、教団の視察も兼ねて」
なんだそれだけか。少女はほっとしたように息を吐き、それを慌てて押さえた。世界一の権力者に、不躾な振る舞いは見せられない。
「勉強も訓練も、よく励んでいるようですね」
「はいっ、全ては未曾有の繁栄の為、全力で預言を実現します」
少女は声を大にして言った。この台詞はいつも、教団幹部を相手に言う台詞である。これを言うと、笑って、頑張れと言ってもらえる。少女は得意気に導師の言葉を待った。しかし導師は表情ひとつ変えず、少女に向かって喋り出した。
「あなたは、預言のない世界から来たのですよね」
「はい」
「預言はひとつの可能性でしかありません。そう気張らずとも、好きなように過ごしていいのですよ」
それを聞いた少女は、導師の言葉を頭の中で反復した。預言はひとつの可能性でしかない。少女とっては、意外な言葉であった。ローレライ教団の最高指導者が、そんなことを言うなんて。
「自分で選んだ未来のほうが、楽しく過ごすことができますよ」
にこりと微笑む導師の姿は、まばゆく、輝いて見えた。目から鱗、度肝を抜かれた、少女はそんな心境だった。
教団にいる限り、預言を守ることが仕事だと思っていた。しかし、そうではないと、自由に生きていいのだと、この少年は説いている。そんな素晴らしい考え方があったとは。
「ありがとうございますっ!私、頑張ります!」
少女は、この人に着いて行きたいと感じた。
威勢よく敬礼しようとして、途中でやめた。導師は敬礼を知らないのだった。その代わりに、ガッツポーズをして見せる。
「ええ、貴女にユリアの加護があらんことを」
導師イオンは菜真絵のポーズを真似て、返事をした。とてもチャーミングな人だ。
導師が広間から出ると、導師守護役もついていく。
「いいんですかぁ?あんなこと言っちゃって」
「彼女は肩に力が入りすぎていましたから」
もう、優しいんですから。そう言って守護役の少女はため息をつく。しかし導師と目が合うと、すぐに微笑んだ。
「それがイオン様のいいところなんですけどねっ!」
勉強して、剣の稽古をして、勉強して、その報告をする。そんな1日が。
教会の中では同世代の友達などできず、遊び相手もいない。兵士との交流もなくはないが、尊重されるばかりで、対等に話せる人間はいない。幹部と話をすればまた逆で、神経をすり減らすだけ。
少女は日記を開いて、ため息をついた。
今日は少女の誕生日である。あくまでも、元の世界の暦では、だが。
オールドラントの1年は、地球の2年に相当する。しかし、オールドラントの平均寿命は少女の知っているものとそう変わらない。
少女は、自分が倍の速度で成長している、すなわち、急速に歳をとっているということに気づいていた。せっかくの誕生日なのに、何も嬉しくない。
もちろん、元の世界に戻ることができれば、この悩みはなくなるだろう。しかし、それは叶いそうになかった。
少女がどんな世界から来たのか。心細くないのか。家族に会いたくないのか。そんなことを気にする人は、どこにもいなかった。
少女は日記を抱きしめた。しかしすぐに、自分が感傷に浸っていることが恥ずかしくなって、日記を投げた。自分は元々、こういうタイプではない。
日記を拾おうとすると、ドアが開いた。もう勉強の時間か。
「菜真絵様、今すぐにいらして下さい、導師がお待ちです」
「導師イオンが?」
教育係から伝えられた言葉は、想像と違うものだった。
導師イオンといえば、教団の最高指導者である。すなわち、世界一の権力者。そんな人が、何故自分に?少女は疑問に思ったが、それよりも、導師に会うことのできるわくわくのほうが大きかった。
13歳になったばかりの少女は、新しい出来事に渇望している。
少女は部屋を出て、見たことのない広間に連れて行かれた。そこには導師イオンと、小さな少女が立っていた。
導師イオンは優しそうな少年だった。少女と年齢も近いように見える。
モースのような出で立ちの男を想像していたため、少女はその出で立ちに驚いた。
「おはようございます、菜真絵」
「はっ、私、菜真絵・明寺奏長であります。本日はお日柄もよく、えと、えっと」
少女は慌てていた。他の教団幹部と話しているときは、ただ相手に同調しているだけでよかった。しかし目の前にいる少年は、にこにこと笑うだけで何も話さない。
「不思議なポーズですね」
そう言われて少女は、自分の手の行き先を見た。ただの敬礼である。何がおかしかったのかわからず、何もできずにいると、小さな少女が飛んできた。
「あ、あのぅ、気にしないでくださいっ!この人ちょっと世間に疎いんですっ!」
彼女が跳ね回る度に、ツインテールがぴょこぴょこ揺れる。
どうやら導師は世間に疎いらしい。導師の役職というのは、預言の導きで、生まれながらにつくものだ。だから、世間に疎いというのも納得がいく。
少女はひとりでうんうんとうなずいた。
「気にしていませんので、大丈夫ですよ」
「は、はいっ、ありがとうございますぅっ!」
小さな少女はえへへ、と気まずそうに笑った。おそらく彼女は、導師の護衛なのだろう。教団での正式名は導師守護役、フォンマスターガーディアン。
「それで、本日はどういったご用件で……」
「モースに会っておけと言われていましたから、教団の視察も兼ねて」
なんだそれだけか。少女はほっとしたように息を吐き、それを慌てて押さえた。世界一の権力者に、不躾な振る舞いは見せられない。
「勉強も訓練も、よく励んでいるようですね」
「はいっ、全ては未曾有の繁栄の為、全力で預言を実現します」
少女は声を大にして言った。この台詞はいつも、教団幹部を相手に言う台詞である。これを言うと、笑って、頑張れと言ってもらえる。少女は得意気に導師の言葉を待った。しかし導師は表情ひとつ変えず、少女に向かって喋り出した。
「あなたは、預言のない世界から来たのですよね」
「はい」
「預言はひとつの可能性でしかありません。そう気張らずとも、好きなように過ごしていいのですよ」
それを聞いた少女は、導師の言葉を頭の中で反復した。預言はひとつの可能性でしかない。少女とっては、意外な言葉であった。ローレライ教団の最高指導者が、そんなことを言うなんて。
「自分で選んだ未来のほうが、楽しく過ごすことができますよ」
にこりと微笑む導師の姿は、まばゆく、輝いて見えた。目から鱗、度肝を抜かれた、少女はそんな心境だった。
教団にいる限り、預言を守ることが仕事だと思っていた。しかし、そうではないと、自由に生きていいのだと、この少年は説いている。そんな素晴らしい考え方があったとは。
「ありがとうございますっ!私、頑張ります!」
少女は、この人に着いて行きたいと感じた。
威勢よく敬礼しようとして、途中でやめた。導師は敬礼を知らないのだった。その代わりに、ガッツポーズをして見せる。
「ええ、貴女にユリアの加護があらんことを」
導師イオンは菜真絵のポーズを真似て、返事をした。とてもチャーミングな人だ。
導師が広間から出ると、導師守護役もついていく。
「いいんですかぁ?あんなこと言っちゃって」
「彼女は肩に力が入りすぎていましたから」
もう、優しいんですから。そう言って守護役の少女はため息をつく。しかし導師と目が合うと、すぐに微笑んだ。
「それがイオン様のいいところなんですけどねっ!」