崩落編
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少女は教会に送り届けられ、すぐに軟禁状態になった。
教会の中では自由を許されているが、教会の出入り口はトリトハイムとその部下たちによって守られており、外に出ることができない。イオンの居るエリアには譜術がかけられていて、接触することもできない状態だ。
何かできることはないかと、少女はヴァンの私室を漁ったが、重要な資料は残っていなかった。
少女はなんとか逃げ出すべく、脱出経路を考えていた。トリトハイムを出し抜くだけであればそう難しくはないが、逃げ出せたとしても、単身で追跡を逃れられるとは思えない。
諦めないと誓ったものの、何もできない。そのまま、十数日が経過していった。
ある日、少女が目を覚ますと、街は騒然としていた。
「トリトハイム様、何があったのですか?」
「ルグニカ大陸のほとんどが消滅したと、戦地から戻った兵から連絡を受けた」
恐れていたことが起きた、と、少女は思った。
シュレーの丘のセフィロトが消えたことで、大地は崩落したのだ。
「キムラスカとマルクトは、一時休戦の協定を結んだそうだ」
トリトハイムは肩を落として言う。預言の通りにならなかったことに対しての反応だろう。
少女は腹が立ったが、それ以上何も話さなかった。文句を言えば、拘束が強くなるかもしれない。
ルグニカ大陸はどうなってしまったのか、ルークたちは、無事なのか。
少女は情報を集めるために、モースの元へ向かった。すると、道中にディストの姿があった。
「ディストさん!」
「おお、我が弟子よ、帰っていたのですか」
ディストは笑みをたたえて、少女に近づく。少女も駆け寄ろうとしたが、セントビナーで襲われたことを思い出して、歩みを止めた。
少女にとって、今の彼は味方ではない。
「ちょうどよかった。キムラスカの王女とレプリカが今どこにいるか、教えてください」
「……何のためにですか?」
「モースへの貢物ですよ。こうでもしないと言う事を聞いてくれませんからね」
ディストは少女を警戒することもなく、楽しげに話す。
少女は血の気が引いた。
――今度こそ、彼らの命が危ない。
ナタリアは戦争再開のために拘束され、ルークは歴史を預言の通りに修正すべく"聖なる焔の光"として殺されてしまうかもしれない。
ルークたちがケセドニアでモースと接触したときは何事もなかったようだが、キムラスカの将軍であるアルマンダインを目の前にして、手を出すことができなかっただけかもしれない。
だから、ここで本当の事を言うわけにはいかない。
「すみません。彼らと行動を別にしてしばらく経つので、何も……」
「はぁ。役に立ちませんね」
ディストはそう言い放って、少女の前から姿を消した。
あまりの冷やかな態度に、少女は一瞬動きを止める。そしてすぐに、自分で自分の頬を叩いた。好かれてるだとか嫌われてるだとか、今は気にしている場合ではない。
すぐにでもルークたちに、狙われていることを知らせなければ。
少女はすぐに引き返し、教会の出口に向かった。脱出する算段はないが、賭けに出るしかない。
すると、教会の入口には人だかりができていた。
「ルグニカ大陸が消滅したってどういうことだ!」
「預言には詠まれていなかっただろう!」
市民たちが、宥めるトリトハイムに向かって怒号を浴びせる。半日もしないうちに、市民にもこの事態が伝わったようだ。兵士たちは押し寄せる人々の侵入を防ぐのに必死で、こちらを見ていない。
今なら、混乱に乗じて逃げ出せるかもしれない。
少女は自室に置いていた私服に身を包み、教会の正面から、民衆に紛れるように外へ出た。
あれだけ脱出方法に悩んでいたのに、成功するときはあっけないものだ。
教会を出て、少女は一直線に船着き場へ走る。
ルークたちはバチカルに向かっているはずだ。自身の不在に気付かれ騒ぎになる前に、バチカル行きの船に乗ろう。そう思ってのことだった。
しかし、走る少女の腕を何者かが掴み、少女は路地裏へと連れ込まれた。
追手だ。脱出は失敗したのだ。
恐る恐る少女が顔を上げると、意外な姿がそこにあった。
赤髪の少年だ。
「アッシュ様!」
少女は少年の姿を見るなり、肩を掴んで叫ぶ。
「ルークさんとナタリアさんが狙われているんです。バチカルへ向かいます、協力してください」
少年は驚いた。
突然現れた自分の姿に驚くでもなく、再会を喜ぶでもなく、気まずそうにするでもなく、真っ先に少女口から出たのは、これまで共にいた仲間を憂う言葉だったのだから。
その必死さから、少女がこの短い旅の中で、仲間たちと何かを築いたのだとわかる。ナタリアと、そしてあのレプリカとも。
表情を歪める少年をよそに、少女は事の次第を捲し立てるように話す。少女が話し終えた後、少年は少女の手に己の手を重ねて言った。
「わかった。幸いキムラスカまでの船は出ている。行くぞ」
少年がふいに、隣に目配せする。そこには、漆黒の翼の3人の姿があった。
「ディストがここにいるなら、導師も狙われるかもしれない。ここは頼んだぞ」
「ええ、旦那、お幸せに」
にやにやしながらそう言うノワールを、少年がキッと睨む。
少女は、自身が少年の肩を掴んでいることに気付き、慌てて両手を挙げた。頬が紅く染まり、視線が泳ぐ。だがそれも数秒のことで、すぐに真剣な眼差しを少年に向けた。
「ありがとうございます」
変わらないところもある。
少年は安堵して、フッ、と笑みを溢した。
走り出した少女は、それに気が付かなかったが。
教会の中では自由を許されているが、教会の出入り口はトリトハイムとその部下たちによって守られており、外に出ることができない。イオンの居るエリアには譜術がかけられていて、接触することもできない状態だ。
何かできることはないかと、少女はヴァンの私室を漁ったが、重要な資料は残っていなかった。
少女はなんとか逃げ出すべく、脱出経路を考えていた。トリトハイムを出し抜くだけであればそう難しくはないが、逃げ出せたとしても、単身で追跡を逃れられるとは思えない。
諦めないと誓ったものの、何もできない。そのまま、十数日が経過していった。
ある日、少女が目を覚ますと、街は騒然としていた。
「トリトハイム様、何があったのですか?」
「ルグニカ大陸のほとんどが消滅したと、戦地から戻った兵から連絡を受けた」
恐れていたことが起きた、と、少女は思った。
シュレーの丘のセフィロトが消えたことで、大地は崩落したのだ。
「キムラスカとマルクトは、一時休戦の協定を結んだそうだ」
トリトハイムは肩を落として言う。預言の通りにならなかったことに対しての反応だろう。
少女は腹が立ったが、それ以上何も話さなかった。文句を言えば、拘束が強くなるかもしれない。
ルグニカ大陸はどうなってしまったのか、ルークたちは、無事なのか。
少女は情報を集めるために、モースの元へ向かった。すると、道中にディストの姿があった。
「ディストさん!」
「おお、我が弟子よ、帰っていたのですか」
ディストは笑みをたたえて、少女に近づく。少女も駆け寄ろうとしたが、セントビナーで襲われたことを思い出して、歩みを止めた。
少女にとって、今の彼は味方ではない。
「ちょうどよかった。キムラスカの王女とレプリカが今どこにいるか、教えてください」
「……何のためにですか?」
「モースへの貢物ですよ。こうでもしないと言う事を聞いてくれませんからね」
ディストは少女を警戒することもなく、楽しげに話す。
少女は血の気が引いた。
――今度こそ、彼らの命が危ない。
ナタリアは戦争再開のために拘束され、ルークは歴史を預言の通りに修正すべく"聖なる焔の光"として殺されてしまうかもしれない。
ルークたちがケセドニアでモースと接触したときは何事もなかったようだが、キムラスカの将軍であるアルマンダインを目の前にして、手を出すことができなかっただけかもしれない。
だから、ここで本当の事を言うわけにはいかない。
「すみません。彼らと行動を別にしてしばらく経つので、何も……」
「はぁ。役に立ちませんね」
ディストはそう言い放って、少女の前から姿を消した。
あまりの冷やかな態度に、少女は一瞬動きを止める。そしてすぐに、自分で自分の頬を叩いた。好かれてるだとか嫌われてるだとか、今は気にしている場合ではない。
すぐにでもルークたちに、狙われていることを知らせなければ。
少女はすぐに引き返し、教会の出口に向かった。脱出する算段はないが、賭けに出るしかない。
すると、教会の入口には人だかりができていた。
「ルグニカ大陸が消滅したってどういうことだ!」
「預言には詠まれていなかっただろう!」
市民たちが、宥めるトリトハイムに向かって怒号を浴びせる。半日もしないうちに、市民にもこの事態が伝わったようだ。兵士たちは押し寄せる人々の侵入を防ぐのに必死で、こちらを見ていない。
今なら、混乱に乗じて逃げ出せるかもしれない。
少女は自室に置いていた私服に身を包み、教会の正面から、民衆に紛れるように外へ出た。
あれだけ脱出方法に悩んでいたのに、成功するときはあっけないものだ。
教会を出て、少女は一直線に船着き場へ走る。
ルークたちはバチカルに向かっているはずだ。自身の不在に気付かれ騒ぎになる前に、バチカル行きの船に乗ろう。そう思ってのことだった。
しかし、走る少女の腕を何者かが掴み、少女は路地裏へと連れ込まれた。
追手だ。脱出は失敗したのだ。
恐る恐る少女が顔を上げると、意外な姿がそこにあった。
赤髪の少年だ。
「アッシュ様!」
少女は少年の姿を見るなり、肩を掴んで叫ぶ。
「ルークさんとナタリアさんが狙われているんです。バチカルへ向かいます、協力してください」
少年は驚いた。
突然現れた自分の姿に驚くでもなく、再会を喜ぶでもなく、気まずそうにするでもなく、真っ先に少女口から出たのは、これまで共にいた仲間を憂う言葉だったのだから。
その必死さから、少女がこの短い旅の中で、仲間たちと何かを築いたのだとわかる。ナタリアと、そしてあのレプリカとも。
表情を歪める少年をよそに、少女は事の次第を捲し立てるように話す。少女が話し終えた後、少年は少女の手に己の手を重ねて言った。
「わかった。幸いキムラスカまでの船は出ている。行くぞ」
少年がふいに、隣に目配せする。そこには、漆黒の翼の3人の姿があった。
「ディストがここにいるなら、導師も狙われるかもしれない。ここは頼んだぞ」
「ええ、旦那、お幸せに」
にやにやしながらそう言うノワールを、少年がキッと睨む。
少女は、自身が少年の肩を掴んでいることに気付き、慌てて両手を挙げた。頬が紅く染まり、視線が泳ぐ。だがそれも数秒のことで、すぐに真剣な眼差しを少年に向けた。
「ありがとうございます」
変わらないところもある。
少年は安堵して、フッ、と笑みを溢した。
走り出した少女は、それに気が付かなかったが。