崩落編
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ルークがパッセージリングに両手を向け、力を込める。
その様子を、少女たちは固唾を呑んで見守っていた。
ジュレーの丘のセフィロトには、ヴァンが解いたはずのユリア式封咒が施されていた。
しかし、封咒に使われていた譜石を壊し、パッセージリングの前にティアが立つことで、その咒いは解咒された。
理由はわからない。少女は、2000年前の仕組みを前に、ただ狼狽えることしかできなかった。自分は古代イスパニア語も読めなければ、譜術の心得もない。自身の無力さを嘆きながら、奮闘する仲間たちの背中を見つめていた。
ルークの両手から、細い光が放たれる。
パッセージリングには、再起動できないよう、ヴァンによって仕掛けが施されていた。それを、ルークが超振動で消してしまおうという算段だ。
超振動には物質を分解し、再構成する力があるという。パッセージリングに施された仕掛けも、消してしまうことができるかもしれない。
可能かどうかはわからないが、世界でただふたり、単身で超振動を起こすことのできる"ルーク"に頼るしかなかった。
大きな背中だ。
あのとき、瘴気の海の上で震えていた背中とは、全く違う。
皆が上空を見つめる中、少女はレプリカルークの姿を見ていた。
すると、ふいにキラキラと、光の粒が舞い始めた。
セフィロトから、記憶粒子が放出されている。
成功したのだ。これで、セントビナーは沈まずに済む。
「……やった!やったぜ!!」
ルークは大きな歓声をあげ、後方に立っていたティアを抱きしめた。
「わ、私、何もしてないわ。パッセージリングを操作したのはあなたよ」
「そんなことねーよ。ティアがいなけりゃできなかったんだ」
第七音素を扱えるようになるために、ルークが特訓していたことは皆知っていた。その師はティアである。きっと、そのことを言っているのだろう。
ルークはたじろぐティアの左手を両手で握って、ブンブンと振っている。ひとつの街を救ったのだ。大げさに喜ぶのも無理はない。
「それに、みんなも……!みんなが手伝ってくれたから。みんな……本当にありがとな!」
「何だか、ルークじゃないみたいですわね」
この喜ばしい光景を、ナタリアだけは物憂げに見つめていた。
「いいんじゃないの。こーゆー方が少しは可愛げがあるしね」
おどけながらも、ガイはナタリアを諫めるように言う。
その光景を見て、少女は思いを馳せる。彼女の思う「ルーク」とは、どんな人物なのだろう、と。皆の言うような、わがままなお坊っちゃまなのだろうか。それとも、
「ガイはルーク派ですものね」
ナタリアが小さく呟く。
その言葉で、少女は確信した。ナタリアが比較をしているのは、オリジナルルークなのだ。
被験者のルークと模造品のルークは"完全同位体"である。それは彼らを構成する物質が、すべて一致していることを指す。
しかし、まるで同じ人間とは思えない。
そう、アッシュは、こんなに感情を表に出す人間ではなかった。
「別に違うけどね」
ガイが大きな声で否定した後、ちらりと少女を見た。まるで「君はアッシュ派だろうけど」と言いたげに。少女はそれが嫌味っぽく思えて、ムっとガイを睨み返す。
「彼らは別人ですよ。どちらがどうという話ではありません」
どの口が言うのだろう。自分だって、レプリカルークを見るたびに、アッシュと比較してしまうのに。少女はそう思ったが、これは、自分に言い聞かせる意味もある。一言ずつを噛みしめるように言った後、ナタリアのほうを見やると、申し訳なさそうに、手を胸の前で握っていた。
「…………そうですわね」
それから、ナタリアが口を開くことはなかった。
「あーっ!待って下さい。まだ喜んでちゃ駄目ですよぅ!あの文章を見て下さい!」
気まずい雰囲気を他所に、上空の図像と文字列を見ていたアニスが、大きな声で騒いだ。言われて見上げたガイは、さっと表情を曇らせる。
「……おい。ここのセフィロトはルグニカ平野のほぼ全域を支えてるって書いてあるぞ。ってことは、エンゲーブも崩落するんじゃないか!?」
「ですよねーっ!?エンゲーブ、マジヤバな感じですよね!?」
その声を聞いて、一行は走り出した。誰が指示をするでもなく。
昔を思い出して感傷に浸っている暇はない。この崩れゆく大地を前に、少しでも多くの人を救わなければ。
少女たちはアルビオールに乗り込み、プラネットストームに乗って外殻大地へと浮上した。エンゲーブの住民を助けるためだ。
しかし、そこで目にしたのは、衝撃的な光景だった。
「どうして……!どうして戦いが始まっているのです!?」
ルグニカの大地を見下ろして、ナタリアが愕然とした声をあげた。アルビオールの窓から見える平野一帯に、キムラスカとマルクト、両軍の旗を掲げた兵たちがひしめき合っている。
戦争だ。
「これは……まずい。下手をすると両軍が全滅しますよ」
ジェイドが言う。その通りだ。近いうちにこの大地は崩落する。戦況にかかわらず、すべての戦士は墜死するだろう。
「これが……兄さんの狙いだったんだわ……」
「どういうことだ?」
「兄は外殻の人間を消滅させようとしていたわ。預言でルグニカ平野での戦争を知っていた兄なら……」
とんでもない作戦だ。
「預言のない未来」を手に入れるには、そこまでのことをしなければならないのだろうか。それとも、その野望さえも嘘なのだろうか?
少女が考えたところで、答えはない。
エンゲーブの住民を逃がすこと、停戦の呼びかけをすること、その2つの目的を叶えるために、少女たちは二手に分かれることにした。
その様子を、少女たちは固唾を呑んで見守っていた。
ジュレーの丘のセフィロトには、ヴァンが解いたはずのユリア式封咒が施されていた。
しかし、封咒に使われていた譜石を壊し、パッセージリングの前にティアが立つことで、その咒いは解咒された。
理由はわからない。少女は、2000年前の仕組みを前に、ただ狼狽えることしかできなかった。自分は古代イスパニア語も読めなければ、譜術の心得もない。自身の無力さを嘆きながら、奮闘する仲間たちの背中を見つめていた。
ルークの両手から、細い光が放たれる。
パッセージリングには、再起動できないよう、ヴァンによって仕掛けが施されていた。それを、ルークが超振動で消してしまおうという算段だ。
超振動には物質を分解し、再構成する力があるという。パッセージリングに施された仕掛けも、消してしまうことができるかもしれない。
可能かどうかはわからないが、世界でただふたり、単身で超振動を起こすことのできる"ルーク"に頼るしかなかった。
大きな背中だ。
あのとき、瘴気の海の上で震えていた背中とは、全く違う。
皆が上空を見つめる中、少女はレプリカルークの姿を見ていた。
すると、ふいにキラキラと、光の粒が舞い始めた。
セフィロトから、記憶粒子が放出されている。
成功したのだ。これで、セントビナーは沈まずに済む。
「……やった!やったぜ!!」
ルークは大きな歓声をあげ、後方に立っていたティアを抱きしめた。
「わ、私、何もしてないわ。パッセージリングを操作したのはあなたよ」
「そんなことねーよ。ティアがいなけりゃできなかったんだ」
第七音素を扱えるようになるために、ルークが特訓していたことは皆知っていた。その師はティアである。きっと、そのことを言っているのだろう。
ルークはたじろぐティアの左手を両手で握って、ブンブンと振っている。ひとつの街を救ったのだ。大げさに喜ぶのも無理はない。
「それに、みんなも……!みんなが手伝ってくれたから。みんな……本当にありがとな!」
「何だか、ルークじゃないみたいですわね」
この喜ばしい光景を、ナタリアだけは物憂げに見つめていた。
「いいんじゃないの。こーゆー方が少しは可愛げがあるしね」
おどけながらも、ガイはナタリアを諫めるように言う。
その光景を見て、少女は思いを馳せる。彼女の思う「ルーク」とは、どんな人物なのだろう、と。皆の言うような、わがままなお坊っちゃまなのだろうか。それとも、
「ガイはルーク派ですものね」
ナタリアが小さく呟く。
その言葉で、少女は確信した。ナタリアが比較をしているのは、オリジナルルークなのだ。
被験者のルークと模造品のルークは"完全同位体"である。それは彼らを構成する物質が、すべて一致していることを指す。
しかし、まるで同じ人間とは思えない。
そう、アッシュは、こんなに感情を表に出す人間ではなかった。
「別に違うけどね」
ガイが大きな声で否定した後、ちらりと少女を見た。まるで「君はアッシュ派だろうけど」と言いたげに。少女はそれが嫌味っぽく思えて、ムっとガイを睨み返す。
「彼らは別人ですよ。どちらがどうという話ではありません」
どの口が言うのだろう。自分だって、レプリカルークを見るたびに、アッシュと比較してしまうのに。少女はそう思ったが、これは、自分に言い聞かせる意味もある。一言ずつを噛みしめるように言った後、ナタリアのほうを見やると、申し訳なさそうに、手を胸の前で握っていた。
「…………そうですわね」
それから、ナタリアが口を開くことはなかった。
「あーっ!待って下さい。まだ喜んでちゃ駄目ですよぅ!あの文章を見て下さい!」
気まずい雰囲気を他所に、上空の図像と文字列を見ていたアニスが、大きな声で騒いだ。言われて見上げたガイは、さっと表情を曇らせる。
「……おい。ここのセフィロトはルグニカ平野のほぼ全域を支えてるって書いてあるぞ。ってことは、エンゲーブも崩落するんじゃないか!?」
「ですよねーっ!?エンゲーブ、マジヤバな感じですよね!?」
その声を聞いて、一行は走り出した。誰が指示をするでもなく。
昔を思い出して感傷に浸っている暇はない。この崩れゆく大地を前に、少しでも多くの人を救わなければ。
少女たちはアルビオールに乗り込み、プラネットストームに乗って外殻大地へと浮上した。エンゲーブの住民を助けるためだ。
しかし、そこで目にしたのは、衝撃的な光景だった。
「どうして……!どうして戦いが始まっているのです!?」
ルグニカの大地を見下ろして、ナタリアが愕然とした声をあげた。アルビオールの窓から見える平野一帯に、キムラスカとマルクト、両軍の旗を掲げた兵たちがひしめき合っている。
戦争だ。
「これは……まずい。下手をすると両軍が全滅しますよ」
ジェイドが言う。その通りだ。近いうちにこの大地は崩落する。戦況にかかわらず、すべての戦士は墜死するだろう。
「これが……兄さんの狙いだったんだわ……」
「どういうことだ?」
「兄は外殻の人間を消滅させようとしていたわ。預言でルグニカ平野での戦争を知っていた兄なら……」
とんでもない作戦だ。
「預言のない未来」を手に入れるには、そこまでのことをしなければならないのだろうか。それとも、その野望さえも嘘なのだろうか?
少女が考えたところで、答えはない。
エンゲーブの住民を逃がすこと、停戦の呼びかけをすること、その2つの目的を叶えるために、少女たちは二手に分かれることにした。