崩落編
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セントビナーがディバインディングラインを超え、完全に崩落する直前、ルーク一行は、間一髪で住民たちをアルビオールに乗せることに成功した。
しかしその出発を待たずに、大地は急降下を開始した。
巻き込まれる形でアルビオールも魔界に落下し、外殻大地の下、魔界の空を飛ぶ形で、瘴気の海への落下を回避した。
一方、セントビナーの大地は、瘴気の海に落下し、原型を留めたまま浮いていた。
物が散乱しつつも、木々や家がその形を保っていることが、アルビオールの窓越し、遠巻きにも見える。
もちろん、このままにしておけば、いずれ瘴気に飲み込まれてしまうだろう。
ルーク一行は、セントビナーの住民たちをユリアシティへ運び届けることにした。
アクゼリュスの一件について事情を知るテオドーロ市長であれば、住民を受け入れてくれる可能性が高いからだ。
思惑通り、テオドーロ市長はセントビナーの住民たちを受け入れ、住居を用意してくれた。市民たちは戸惑いながらも、マクガヴァン総帥の指示の下、新しい生活を開始した。
それでも、これで終わりではない。
また他のセフィロトツリーが破壊され、崩落させられるかもしれない。また、沈みゆくセントビナーをこのまま見ているだけというのも、心が痛む。
これからのことを相談すべく、テオドーロ市長と少女たちは会議場に集まっていた。
それぞれが席につく中、ルークが話を切り出す。
「単刀直入に伺います。セントビナーを救う方法はありませんか」
「難しいですな。ユリアが使ったと言われるローレライの鍵があれば或いは……とも思いますが」
ローレライの鍵。
少女は、その存在を聞いたことがあった。この世界に来て間もなく、教育係から教わったことだ。
ローレライの剣と宝珠からなる譜術武器であり、ユリアがローレライと契約した証であるとされている。
それが、今回の件とどう関連するのか。首を傾げるルークに、ティアが説明する。
「ローレライの剣は第七音素を結集させ、ローレライの宝珠は第七音素を拡散する。鍵そのものも第七音素で構成されていると言われているわ。ユリアは鍵にローレライそのものを宿し、ローレライの力を自在に操ったとか……」
テオドーロが続ける。
「その真偽はともかく、セフィロトを自在に操る力があったそうです」
「でもローレライの鍵は、地核に沈めてしまったと伝わっているわ」
ローレライの鍵があれば、セフィロトを操り、再び外殻大地を取り戻すことができるかもしれない。しかしあくまでも、ローレライの鍵は伝承上の存在である。現存しているかどうかもわからない。
「一度崩落した以上、セントビナーを外殻大地まで再浮上させるのは無理だと思います」
「う~ん。どうしようもないのかなぁ」
アニスが眉根を寄せる。
俯く面々を眺めながら、テオドーロは小さく口を開いた。
「……いえ、液状化した大地に飲み込まれない程度なら、或いは……」
「方法があるんですか!?」
「セフィロトはパッセージリングという装置で制御されています。パッセージリングを操作してセフィロトツリーを復活させれば、泥の海に浮かせるぐらいなら……」
テオドーロの呟きで、少女は思い出した。
少し前、タルタロスの船上で、少年が燃やしたあの紙。そこには、ヴァンが解呪しようとしているセフィロトの場所が記されていた。
「イオン様がタルタロスから連れて行かれたのは、シュレーの丘でしたよね?」
少女が問いかけると、イオンが頷く。シュレーの丘はセントビナーからほど近い。あの場所にあるセフィロトが、セントビナーを支えていたのだ。
イオンを連れ去り、ザオ遺跡のときと同じように、ダアト式封咒を解かせたのだろう。
「あの時はまだ、アルバート式封咒とユリア式封咒で護られているからと心配していなかったのですが……」
「アルバート式封咒は、ホドとアクゼリュスのパッセージリングが消滅したことで消えました。しかしユリア式封咒は約束の時まで解けないはずだった」
「ですが、ヴァン様はそれを解いてパッセージリングを操作したのですよね」
少女が確認する。
「そうです。どうやったのか私たちにも分かりません」
「ヴァンは本当に色々な技術を持っていますのね」
感心したようにナタリアが息をつく。
「だよね~。知識もあるし、頭のキレもすっごいし、剣術もすごいし、第七音素も扱えるし。超人だよ、ちょーじん。髭だし」
アニスがそれに続く。
かなりくだけた表現だが、超人という言葉は、ヴァンという人間を正しく表現している。妹のティアはその言葉を聞いて、なんとも言えない表情をしているが。
少女は脳裏にヴァンの姿を思い浮かべる。優しくて、頼もしくて、正しくて、この世界で唯一信用できる大人だった。それは、少女の勘違いだったわけだが。
「能力が高いだけでなく、努力を惜しまない人です。きっと、私達がこうしている間にも、次の一手を打とうとしているでしょう」
少女が呟くと、他の面々も同調するように頷いた。今相手にしている敵は、あまりにも強大だ。
「ええ。急がねばなりません。パッセージリングの操作は、どのように行うのですか?」
ジェイドがテオドーロに尋ねる。
「第七音素を使う、と聞いています。詳しいことはわかりませんが……」
「まずは行ってみるしかないか。シュレーの丘はセントビナーと一緒に崩落しているよな?」
ガイの言葉を皮切りに、それぞれが席を立つ。迷っている暇はない。行ってみてわかることがあるかもしれない。
少女たちはテオドーロ市長に礼を伝え、ふたたびアルビオールに乗り込んだ。
「…………ヴァンと、仲が良かったんだな」
少女がアルビオール内の廊下を歩いていると、ふと後ろから、ガイに声をかけられた。
どうしてそんなことが気になるのか。少女はそう思った。
ファブレ家の使用人のガイと、ルークの剣術の師匠であるヴァンには面識がある。しかし仕事上の、しかも知り合い程度の間柄で、相手の交友関係など気になるだろうか。
少女は理由を問おうとして、やめた。目が合わないし、聞いても答えてくれなさそうだからだ。
「私が一方的に慕っていただけです」
「へえ、罪な奴だね」
「とても良くしてくださったんです。でもきっと、全部嘘だったんでしょうね」
少女は、ヴァンと初めて会った日を思い浮かべていた。魔物から自分を守ってくれた、頭を撫でてくれた、微笑んでくれた。あの日の出来事も、きっと、嘘なのだ。
少女の瞳は、どこを見つめるでもなく、濁っていた。ただ、ほんの少しの優しさをたたえている。
ガイは思った。この少女も、ルークや、ナタリアや、ティアや、……そして自分のように、ヴァンを信用していたのだと。
「…………さあ、どうかな」
ガイが呟くが、その一言が何を意味しているかを、少女は理解することができなかった。
しかしその出発を待たずに、大地は急降下を開始した。
巻き込まれる形でアルビオールも魔界に落下し、外殻大地の下、魔界の空を飛ぶ形で、瘴気の海への落下を回避した。
一方、セントビナーの大地は、瘴気の海に落下し、原型を留めたまま浮いていた。
物が散乱しつつも、木々や家がその形を保っていることが、アルビオールの窓越し、遠巻きにも見える。
もちろん、このままにしておけば、いずれ瘴気に飲み込まれてしまうだろう。
ルーク一行は、セントビナーの住民たちをユリアシティへ運び届けることにした。
アクゼリュスの一件について事情を知るテオドーロ市長であれば、住民を受け入れてくれる可能性が高いからだ。
思惑通り、テオドーロ市長はセントビナーの住民たちを受け入れ、住居を用意してくれた。市民たちは戸惑いながらも、マクガヴァン総帥の指示の下、新しい生活を開始した。
それでも、これで終わりではない。
また他のセフィロトツリーが破壊され、崩落させられるかもしれない。また、沈みゆくセントビナーをこのまま見ているだけというのも、心が痛む。
これからのことを相談すべく、テオドーロ市長と少女たちは会議場に集まっていた。
それぞれが席につく中、ルークが話を切り出す。
「単刀直入に伺います。セントビナーを救う方法はありませんか」
「難しいですな。ユリアが使ったと言われるローレライの鍵があれば或いは……とも思いますが」
ローレライの鍵。
少女は、その存在を聞いたことがあった。この世界に来て間もなく、教育係から教わったことだ。
ローレライの剣と宝珠からなる譜術武器であり、ユリアがローレライと契約した証であるとされている。
それが、今回の件とどう関連するのか。首を傾げるルークに、ティアが説明する。
「ローレライの剣は第七音素を結集させ、ローレライの宝珠は第七音素を拡散する。鍵そのものも第七音素で構成されていると言われているわ。ユリアは鍵にローレライそのものを宿し、ローレライの力を自在に操ったとか……」
テオドーロが続ける。
「その真偽はともかく、セフィロトを自在に操る力があったそうです」
「でもローレライの鍵は、地核に沈めてしまったと伝わっているわ」
ローレライの鍵があれば、セフィロトを操り、再び外殻大地を取り戻すことができるかもしれない。しかしあくまでも、ローレライの鍵は伝承上の存在である。現存しているかどうかもわからない。
「一度崩落した以上、セントビナーを外殻大地まで再浮上させるのは無理だと思います」
「う~ん。どうしようもないのかなぁ」
アニスが眉根を寄せる。
俯く面々を眺めながら、テオドーロは小さく口を開いた。
「……いえ、液状化した大地に飲み込まれない程度なら、或いは……」
「方法があるんですか!?」
「セフィロトはパッセージリングという装置で制御されています。パッセージリングを操作してセフィロトツリーを復活させれば、泥の海に浮かせるぐらいなら……」
テオドーロの呟きで、少女は思い出した。
少し前、タルタロスの船上で、少年が燃やしたあの紙。そこには、ヴァンが解呪しようとしているセフィロトの場所が記されていた。
「イオン様がタルタロスから連れて行かれたのは、シュレーの丘でしたよね?」
少女が問いかけると、イオンが頷く。シュレーの丘はセントビナーからほど近い。あの場所にあるセフィロトが、セントビナーを支えていたのだ。
イオンを連れ去り、ザオ遺跡のときと同じように、ダアト式封咒を解かせたのだろう。
「あの時はまだ、アルバート式封咒とユリア式封咒で護られているからと心配していなかったのですが……」
「アルバート式封咒は、ホドとアクゼリュスのパッセージリングが消滅したことで消えました。しかしユリア式封咒は約束の時まで解けないはずだった」
「ですが、ヴァン様はそれを解いてパッセージリングを操作したのですよね」
少女が確認する。
「そうです。どうやったのか私たちにも分かりません」
「ヴァンは本当に色々な技術を持っていますのね」
感心したようにナタリアが息をつく。
「だよね~。知識もあるし、頭のキレもすっごいし、剣術もすごいし、第七音素も扱えるし。超人だよ、ちょーじん。髭だし」
アニスがそれに続く。
かなりくだけた表現だが、超人という言葉は、ヴァンという人間を正しく表現している。妹のティアはその言葉を聞いて、なんとも言えない表情をしているが。
少女は脳裏にヴァンの姿を思い浮かべる。優しくて、頼もしくて、正しくて、この世界で唯一信用できる大人だった。それは、少女の勘違いだったわけだが。
「能力が高いだけでなく、努力を惜しまない人です。きっと、私達がこうしている間にも、次の一手を打とうとしているでしょう」
少女が呟くと、他の面々も同調するように頷いた。今相手にしている敵は、あまりにも強大だ。
「ええ。急がねばなりません。パッセージリングの操作は、どのように行うのですか?」
ジェイドがテオドーロに尋ねる。
「第七音素を使う、と聞いています。詳しいことはわかりませんが……」
「まずは行ってみるしかないか。シュレーの丘はセントビナーと一緒に崩落しているよな?」
ガイの言葉を皮切りに、それぞれが席を立つ。迷っている暇はない。行ってみてわかることがあるかもしれない。
少女たちはテオドーロ市長に礼を伝え、ふたたびアルビオールに乗り込んだ。
「…………ヴァンと、仲が良かったんだな」
少女がアルビオール内の廊下を歩いていると、ふと後ろから、ガイに声をかけられた。
どうしてそんなことが気になるのか。少女はそう思った。
ファブレ家の使用人のガイと、ルークの剣術の師匠であるヴァンには面識がある。しかし仕事上の、しかも知り合い程度の間柄で、相手の交友関係など気になるだろうか。
少女は理由を問おうとして、やめた。目が合わないし、聞いても答えてくれなさそうだからだ。
「私が一方的に慕っていただけです」
「へえ、罪な奴だね」
「とても良くしてくださったんです。でもきっと、全部嘘だったんでしょうね」
少女は、ヴァンと初めて会った日を思い浮かべていた。魔物から自分を守ってくれた、頭を撫でてくれた、微笑んでくれた。あの日の出来事も、きっと、嘘なのだ。
少女の瞳は、どこを見つめるでもなく、濁っていた。ただ、ほんの少しの優しさをたたえている。
ガイは思った。この少女も、ルークや、ナタリアや、ティアや、……そして自分のように、ヴァンを信用していたのだと。
「…………さあ、どうかな」
ガイが呟くが、その一言が何を意味しているかを、少女は理解することができなかった。