崩落編
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シェリダンの街は比較的穏やかだった。
どこの国の人間ともわからないルーク一行を、街の人たちは訝しむ様子もない。
国境から離れているからだろうか。
セントビナーは、今にも崩落しそうだというのに。
「見てみろルーク!譜業の山だぞこの街!」
暢気なのは街の人だけではなかった。
譜業や音機関に目のないガイは、街に入るなりずっとあの調子だ。
好きな物を目の前にすると、人はああなってしまうのか。
少し面白い姿だが、今はそんな彼を見るよりも、大切なことがある。少女ははしゃぎまわるガイの背後に立って、声をかけた。
「ガイさん、目的は飛行艇ですよ」
「うわぁぁ!」
近付きすぎたのか、ガイは情けない悲鳴をあげる。
その姿に少女は動じることもなく、小さく首を傾げた。
「飛行艇、早く見てみたいですね」
「あ、ああ……そうだな。どこで研究しているか、街の人に聞いてみないと」
たじろぐガイを見て、ルークは楽しげに笑う。
「操縦されてら」
「…………」
ガイは不服そうに黙ってしまった。
楽しそうにしていたのに、悪いことをした。少女は心の隅でそう思ったが、謝ることはできなかった。
街の住民に聞けば、「め組」という技術集団が、飛行艇の開発を行っているらしい。
「め組」を探して街の奥に向かうと、三人の老人が騒がしく走り回っていた。
「どうじゃった!?んん?どうじゃったんじゃい!」
「間違いない!メジオラ突風に巻き込まれて今にも落ちそうじゃ」
「マズイの。このままでは浮遊機関もぱぁじゃ」
「何言うんだい、イエモン!アルビオールに閉じ込められてるのはあんたの孫のギンジだろう!心配じゃないってのかい!」
彼らが指差す先を見れば、砂の柱が立っているのがわかる。砂嵐だ。
「何かあったんですか?」
彼らに近づいて、ルークが話しかける。
すると、老人の一人が、背筋をピンと伸ばして答えた。
「……アルビオールがメジオラ高原に墜落したんじゃ」
「アルビオールって、古代の浮遊機関を積んだ、あれか!」
ガイが叫ぶ。
つまり、少女たちが探している飛行艇そのものである。
それが、先の突風に巻き込まれてしまったのだ。ここからでは、機体が無事かどうかわからない。
「確か浮遊機関は二つ発掘されたって聞いてるが……」
「よく知っとるな。じゃが第二浮遊機関はまだ起動すらしとらんのじゃ」
「そんなことより、イエモン。すぐにでも救助隊を編成してギンジと浮遊機関の回収を!」
ガイが食い下がるが、技術者たちはそれどころではない。墜落した飛行艇とそのパイロットを助けるべく、三人の老人はその場から立ち去ろうとする。
それをルークが大声で呼び止めた。
「待ってくれ! あの、頼みたいことがあるんです」
ルークはめ組に、これまでの出来事を話した。マルクトとキムラスカが和平条約を結ぼうとしたこと、レプリカのルークがセフィロトツリーを消してしまったこと、そのためにルグニカ大陸が崩落の危機に陥っており、今もセントビナーが崩落しかかっていて、住民を救うために空を飛べる乗り物が必要であること……。
め組の面々は驚いた様子だったが、存外、真剣に話を聞いてくれた。
「協力したいところですがねぇ、こっちも困ってるんですよ」
め組のひとり、パメラが唸るように言う。
「中に操縦士が閉じ込められた状態でメジオラ突風が吹いての。今にも崖から落ちそうなんじゃ。救助隊を派遣しようにも、マルクトと戦争が始まるってんで軍人さんは出払っててのぅ」
「だったら俺が行くっ!」
アストンの言葉を遮るように、ルークは叫んだ。
今から向かえば、浮遊機関も、操縦士も、助けられるかもしれない。
他に頼るあてもない。ルークの目を見つめながら、め組の面々は強く頷いた。
「その代わり……じゃないですが、俺たちが浮遊機関を持ち帰ったら、二号機を貸して欲しいんです」
ガイが付け加える。
しかし、イエモンは首を振った。
「二号機は未完成じゃ。駆動系に一部足りない部品がある。戦争にあわせて、大半の部品を陸艦製造にまわしてしもうた」
皆が顔を見合わせる。
2台の飛行艇が、方や未完成、方や突風に巻き込まれて破損しているとなると、どうしようもない。
ルークが肩を落として、ため息を吐きかけたとき、ジェイドが言った。
「タルタロスも元は陸艦です。使える素材があるなら使って下さい」
「ジェイド! いいのか!?」
部品を使ってしまえば、タルタロスは二度と動かない。他の面々も驚いてジェイドを見るが、返事をすることなく、イオンに向き直った。
「イオン様、ここに残ってタルタロスの案内をお願いできますか? 我々が浮遊機関を回収する間に二号機を完成させて欲しいのです」
「僕は承知しました。後は……」
「……部品さえあれば、わしら、命がけで完成させてやるぞい」
イオンの視線を受け、イエモンは胸を張って頷いた。
ルーク一行は、メジオラ高原に向かった。
高原といっても、高所に広がるような地形ではなく、いくつもの崖が連なり、土砂崩れが頻繁に起きていた。街から離れているため、魔物も出現する。
菜真絵たちは魔物を倒しながら、荒れた砂の地を進んだ。
飛行艇を挟んで立つ崖の両側に、ガイとジェイドが立つ。
両脇からワイヤーで飛行艇を固定して、操縦士と浮遊機関を回収しようという算段だ。
難しい作業ではないが、人の命がかかっている。ワイヤーの発射装置を操作する間、残りの面々は固唾をのんで見守った。
しばらくすると、固定された飛行艇のコックピットが開き、銀髪の少年が現れた。
「助けていただいてありがとうございます」
彼、ギンジの体にはいくつかの擦り傷があったが、大きな怪我はしていないようだ。
ルーク一行は飛行艇に積まれた浮遊機関を回収し、シェリダンへ戻った。
「おお!帰ってきおった!浮遊機関は無事だったか!」
飛行艇ドックに入ると、イエモンはギンジを見て目を輝かせた。
口には出さないが、孫の帰還を喜んでいるのだろう。
ドックを見渡せば、メジオラ高原で見た飛行艇と同じものが置かれている。
メジオラ高原に向かい、戻ってくるまで、1日も経っていない。その間に、ここまで作ったのか。
関心する一同を後目に、アストンが高らかに叫ぶ。
「さっそく浮遊機関を取り付けて、飛行させるぞ!」
飛行艇に乗り込むと、一人の女性が少女たちを出迎えた。
少女よりも、2つ3つ歳上だろうか。ずいぶんと年若いが、その服装を見るに、彼女はパイロットなのだろう。
「私は二号機専属操縦士ノエル。初号機操縦士ギンジの妹です。兄に代わって皆さんをセントビナーへお送りします」
そう言うなり、彼女はコックピットに座った。
すぐにアルビオール二号機は揺れ始め、海に向けて開いた出口から、機体が放り出された。
こちらに向かって手を振るめ組の面々の姿は、ものの数秒で見えなくなった。数日前に自分たちが歩いた道の上を、瞬く間に通り過ぎていく。
少女の住んでいた世界に飛行機はあったが、乗ったのは初めてだった。テレビの中で見た、航空写真のような景色。
こんなものが、2000年も昔に存在していたのだ。
ルーク一行が初めての体験に感嘆しているうちに、アルビオールはセントビナーに到着した。
どこの国の人間ともわからないルーク一行を、街の人たちは訝しむ様子もない。
国境から離れているからだろうか。
セントビナーは、今にも崩落しそうだというのに。
「見てみろルーク!譜業の山だぞこの街!」
暢気なのは街の人だけではなかった。
譜業や音機関に目のないガイは、街に入るなりずっとあの調子だ。
好きな物を目の前にすると、人はああなってしまうのか。
少し面白い姿だが、今はそんな彼を見るよりも、大切なことがある。少女ははしゃぎまわるガイの背後に立って、声をかけた。
「ガイさん、目的は飛行艇ですよ」
「うわぁぁ!」
近付きすぎたのか、ガイは情けない悲鳴をあげる。
その姿に少女は動じることもなく、小さく首を傾げた。
「飛行艇、早く見てみたいですね」
「あ、ああ……そうだな。どこで研究しているか、街の人に聞いてみないと」
たじろぐガイを見て、ルークは楽しげに笑う。
「操縦されてら」
「…………」
ガイは不服そうに黙ってしまった。
楽しそうにしていたのに、悪いことをした。少女は心の隅でそう思ったが、謝ることはできなかった。
街の住民に聞けば、「め組」という技術集団が、飛行艇の開発を行っているらしい。
「め組」を探して街の奥に向かうと、三人の老人が騒がしく走り回っていた。
「どうじゃった!?んん?どうじゃったんじゃい!」
「間違いない!メジオラ突風に巻き込まれて今にも落ちそうじゃ」
「マズイの。このままでは浮遊機関もぱぁじゃ」
「何言うんだい、イエモン!アルビオールに閉じ込められてるのはあんたの孫のギンジだろう!心配じゃないってのかい!」
彼らが指差す先を見れば、砂の柱が立っているのがわかる。砂嵐だ。
「何かあったんですか?」
彼らに近づいて、ルークが話しかける。
すると、老人の一人が、背筋をピンと伸ばして答えた。
「……アルビオールがメジオラ高原に墜落したんじゃ」
「アルビオールって、古代の浮遊機関を積んだ、あれか!」
ガイが叫ぶ。
つまり、少女たちが探している飛行艇そのものである。
それが、先の突風に巻き込まれてしまったのだ。ここからでは、機体が無事かどうかわからない。
「確か浮遊機関は二つ発掘されたって聞いてるが……」
「よく知っとるな。じゃが第二浮遊機関はまだ起動すらしとらんのじゃ」
「そんなことより、イエモン。すぐにでも救助隊を編成してギンジと浮遊機関の回収を!」
ガイが食い下がるが、技術者たちはそれどころではない。墜落した飛行艇とそのパイロットを助けるべく、三人の老人はその場から立ち去ろうとする。
それをルークが大声で呼び止めた。
「待ってくれ! あの、頼みたいことがあるんです」
ルークはめ組に、これまでの出来事を話した。マルクトとキムラスカが和平条約を結ぼうとしたこと、レプリカのルークがセフィロトツリーを消してしまったこと、そのためにルグニカ大陸が崩落の危機に陥っており、今もセントビナーが崩落しかかっていて、住民を救うために空を飛べる乗り物が必要であること……。
め組の面々は驚いた様子だったが、存外、真剣に話を聞いてくれた。
「協力したいところですがねぇ、こっちも困ってるんですよ」
め組のひとり、パメラが唸るように言う。
「中に操縦士が閉じ込められた状態でメジオラ突風が吹いての。今にも崖から落ちそうなんじゃ。救助隊を派遣しようにも、マルクトと戦争が始まるってんで軍人さんは出払っててのぅ」
「だったら俺が行くっ!」
アストンの言葉を遮るように、ルークは叫んだ。
今から向かえば、浮遊機関も、操縦士も、助けられるかもしれない。
他に頼るあてもない。ルークの目を見つめながら、め組の面々は強く頷いた。
「その代わり……じゃないですが、俺たちが浮遊機関を持ち帰ったら、二号機を貸して欲しいんです」
ガイが付け加える。
しかし、イエモンは首を振った。
「二号機は未完成じゃ。駆動系に一部足りない部品がある。戦争にあわせて、大半の部品を陸艦製造にまわしてしもうた」
皆が顔を見合わせる。
2台の飛行艇が、方や未完成、方や突風に巻き込まれて破損しているとなると、どうしようもない。
ルークが肩を落として、ため息を吐きかけたとき、ジェイドが言った。
「タルタロスも元は陸艦です。使える素材があるなら使って下さい」
「ジェイド! いいのか!?」
部品を使ってしまえば、タルタロスは二度と動かない。他の面々も驚いてジェイドを見るが、返事をすることなく、イオンに向き直った。
「イオン様、ここに残ってタルタロスの案内をお願いできますか? 我々が浮遊機関を回収する間に二号機を完成させて欲しいのです」
「僕は承知しました。後は……」
「……部品さえあれば、わしら、命がけで完成させてやるぞい」
イオンの視線を受け、イエモンは胸を張って頷いた。
ルーク一行は、メジオラ高原に向かった。
高原といっても、高所に広がるような地形ではなく、いくつもの崖が連なり、土砂崩れが頻繁に起きていた。街から離れているため、魔物も出現する。
菜真絵たちは魔物を倒しながら、荒れた砂の地を進んだ。
飛行艇を挟んで立つ崖の両側に、ガイとジェイドが立つ。
両脇からワイヤーで飛行艇を固定して、操縦士と浮遊機関を回収しようという算段だ。
難しい作業ではないが、人の命がかかっている。ワイヤーの発射装置を操作する間、残りの面々は固唾をのんで見守った。
しばらくすると、固定された飛行艇のコックピットが開き、銀髪の少年が現れた。
「助けていただいてありがとうございます」
彼、ギンジの体にはいくつかの擦り傷があったが、大きな怪我はしていないようだ。
ルーク一行は飛行艇に積まれた浮遊機関を回収し、シェリダンへ戻った。
「おお!帰ってきおった!浮遊機関は無事だったか!」
飛行艇ドックに入ると、イエモンはギンジを見て目を輝かせた。
口には出さないが、孫の帰還を喜んでいるのだろう。
ドックを見渡せば、メジオラ高原で見た飛行艇と同じものが置かれている。
メジオラ高原に向かい、戻ってくるまで、1日も経っていない。その間に、ここまで作ったのか。
関心する一同を後目に、アストンが高らかに叫ぶ。
「さっそく浮遊機関を取り付けて、飛行させるぞ!」
飛行艇に乗り込むと、一人の女性が少女たちを出迎えた。
少女よりも、2つ3つ歳上だろうか。ずいぶんと年若いが、その服装を見るに、彼女はパイロットなのだろう。
「私は二号機専属操縦士ノエル。初号機操縦士ギンジの妹です。兄に代わって皆さんをセントビナーへお送りします」
そう言うなり、彼女はコックピットに座った。
すぐにアルビオール二号機は揺れ始め、海に向けて開いた出口から、機体が放り出された。
こちらに向かって手を振るめ組の面々の姿は、ものの数秒で見えなくなった。数日前に自分たちが歩いた道の上を、瞬く間に通り過ぎていく。
少女の住んでいた世界に飛行機はあったが、乗ったのは初めてだった。テレビの中で見た、航空写真のような景色。
こんなものが、2000年も昔に存在していたのだ。
ルーク一行が初めての体験に感嘆しているうちに、アルビオールはセントビナーに到着した。