崩落編
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マルクト軍のグレン将軍と、その父あるマクガヴァン元元帥の力を借り、ルーク一行は、セントビナーの住民をエンゲーブに避難させることになった。
二十五万人もの住民を避難させるのは容易ではなく、誘導するだけでも骨の折れる作業だった。
住み慣れた家を離れる事を拒む住民もおり、街は混乱していた。
「急に家を出ろなんて、どういうつもりだ!」
力仕事のできない少女は、鍵の閉まった家を周り、住民を案内していた。
「このままではセントビナーが地盤沈下し、住めなくなってしまうのです」
「でも、そんな事預言には詠まれていなかった!」
「………っ、それは、」
人々が混乱してしまうような預言は、教団によって秘匿されている。もしかしたら、このことも預言に記されていたかもしれない。少女はそう言いかけて、やめた。教団員がそれを一般人に告げてはいけない規則になっているし、なにより、それを知ったところで少女への不信感が増すだけだからだ。
「どうした?菜真絵」
玄関先で佇んでいた少女に、ルークが声を掛ける。すぐに、少女の向かいに立つ家主の姿を確認して、あ、と呟いた。
「この街に馬車が無いか探してるんだけど、なかなか見つからなくてさ。……探してくれないか?」
住人が怒った様子だったからだろうか、それとも、少女よりも一回りも二回りも大きい男性だったからだろうか。どちらにせよ、ルークが優しさでこの場を引き受けようとしていることは明白だ。
少女はルークに一礼して、馬車を探しに走り出した。
「ジェイドさん、使えそうな馬車を持ってきました。馬舎も見つけたので、今から馬を連れてきます」
「おや。ルークも馬車を探しに行ったようですが?」
「私が市民の説得に手こずってしまっていて……、代わってもらったんです」
少女の言葉を聞いて、ジェイドはほう、と呟いた後、アニスに目配せした。
「レディーに重いモノ運ばせるなんて、まだまだだなぁ」
アニスはそう言いながらも、どこか嬉しそうだ。
少女は、いつものやつだ、と思った。ルークが以前に比べて成長したとからかうくだり。
だが、今日は少し違った。大袈裟に驚くでもなく、昔の彼を引き合いに出すでもなく、ただ、ジェイドとアニスは笑っている。まるで子の成長を見守る親のように。
もしかしたら、皆のルークを見る目も変わってきたのかもしれない。そう思うとなんだか嬉しくて、少女もつられて笑った。
「お〜い菜真絵、連れてきたぜ!」
しばらくして、ルークは先程の男性を連れてきた。説得はうまくいったようだ。
なんて頼もしいんだろう。少女はそう思って、ルークに深々と頭を下げる。
「ありがとうございます。助かりました」
「えっ!?いや、そんな、礼を言われるようなことしてないって。そっちこそ、馬車見つけてくれたんだろ?」
頭を上げない少女に、うろたえるルーク。生まれて7年の2人の会話は、いつもぎこちない。
そんな2人を引き裂くかのように、突如、轟音が響いた。
光線のような攻撃が、少女たちに向かって飛んでくる。咄嗟に、ジェイドとティアが譜術障壁を作って防御した。
その向こうには、巨大なロボットの姿があった。まるで児童向けのアニメに出てくるロボットのような、どこかコミカルな様相をしている。
少女はその姿に見覚えがあった。そう、天才科学者、六神将・死神ディストの作ったロボットだ。
「ハーッハッハッハッ。ようやく見つけましたよ、ジェイド!」
「この忙しい時に……。昔からあなたは空気が読めませんでしたよねぇ」
ディストは今まで通り、イオンを狙っているようだった。ヴァンの計画は、少年と少女がおらずとも、計画通りに進んでいるらしい。
しかしなぜか、ディストの視線は、ジェイドしか捉えていない。
「そこをどきなさい。ディスト」
「へぇ? こんな虫けら共を助けようというんですか? ネビリム先生のことは諦めたくせに」
ネビリムという名前を、少女は聞いたことがあった。以前、ケテルブルクを訪れたときに、街の人が教えてくれた噂話に登場した女性だ。ジェイドとディストが殺したという、師の名前。
「……お前はまだそんな馬鹿なことを!」
「さっさと音を上げたあなたに、そんなことを言う資格はないっ!さあ導師を渡しなさい!」
ディストの言葉を合図に、巨大ロボットが腕を振り上げる、しかし次の瞬間、ジェイドが譜術で大量の水を浴びせると、ロボットは全身から放電し、呆気なく倒れた。
「あああああ!私の可愛いカイザーディスト号RXがぁ!」
ディストが悲鳴をあげる。
「覚えてなさい! 今度こそお前たちをギッタギタにしてやりますからねっ!」
まるで悪役が倒されたときのようなベタな台詞を吐いて、ディストは空気椅子に乗り、上空へと飛んでいった。
死神ディストと敵対すると、ああいう姿が見られるのか。普段の彼は、もう少し落ち着いていて、冷たい人なのに。
ジェイドにとっては飽きるほど繰り返したやり取りだったが、少女にとっては新鮮で、少女は、空の彼方に消えるまで、ディストの姿を目で追いかけた。
その時だ。地響きと共にセントビナーの街が大きく揺らぎ、傾いたのは。
「街が沈むぞ!」
ガイが叫ぶ。
門の内側を覗けば、地面が小刻みに振動しながら、沈んでいくのが見えた。
まずい、このままでは。
全員の脳裏に、アクゼリュスの悲劇がよぎる。為す術なく、泥の海に飲み込まれる人々の姿。あんなこと、二度と繰り返したくない。
沈下を始めたばかりの街に、ルークが飛び降りようとする。それを止めたのはティアだった。
「待って、ルーク!それなら私が飛び降りて譜歌を歌えば……!」
「待ちなさい。まだ相当数の住人が取り残されています。あなたの譜歌で全員を護るのはさすがに難しい。もっと確実な方法を考えましょう」
ジェイドがティアを制止する。
ティアは譜歌を歌うことで、瘴気を防ぐことができる。しかし、守れるのはティアを中心とした限られた範囲のみ。街全体を救う事はできないだろう。
徐々に遠ざかっていく街の中から、老マクガヴァンが手を振っている。
「わしらのことは気にするなーっ!それより街のみんなを頼むぞーっ!」
「くそっ!どうにかできないのか!」
アクゼリュスの時とは違い、大地はゆっくりと降下している。まだ住民は元気に生きているのに、見ていることしかできないなんて。悔しさからルークは地面を叩きつけた。
「空を飛べればいいのにね」
「……空、か」
アニスの声を聞いて、ガイが呟いた。
「そういえばシェリダンで飛行実験をやってるって話を聞いたな」
「この世界にも、飛行機が……」
飛行譜石が見つかったことをきっかけに、シェリダンで飛行実験が開始されたらしい。ユリアの時代には、その乗り物で大陸を行き来していた記録もある。
「菜真絵のいた世界にも、そんな代物があったんだな。どうだ、救出に使えると思うか?」
険しげな表情の中に、少しだけ興奮を混ぜて、ガイが問う。
「そう、ですね。私の世界では、数百人規模の輸送が可能でした。もし、古代文明と同等のものが作られているのであれば、もしかしたら……」
「その飛行実験に使ってる奴を借りてこよう!」
藁にもすがる思いで、ルークが飛びつく。しかし、ジェイドは懐疑的だった。
「しかし間に合いますか? アクゼリュスとは状況が違うようですが、それでも……」
シェリダンに向かい、戻ってくるとなれば、数日、いや、もっとかかるかもしれない。その間に街が沈んでしまっては、どうしようもない。
すると、ティアがジェイドに顔を向けた。
「兄の話では、ホドの崩落にはかなりの日数がかかったそうです。魔界クリフォトと外殻大地の間にはディバイディングラインという力場があって、そこを越えた直後、急速に落下速度が上がるとか……」
「やれるだけやってみよう! 何もしないよりマシだろ!」
ルークが叫ぶ。
その真摯な瞳に見つめられたジェイドは少し間を置いて、ふっ、と笑った。
「シェリダンはラーデシア大陸のバチカル側にありましたね。キムラスカ軍に捕まらないよう、気をつけていきましょう」
「よし、急いでタルタロスへ戻ろう!」
ガイが促した。ラーデシア大陸へ渡るには、船を使わなければならない。
少女たちは、タルタロスでシェリダンを目指した。
二十五万人もの住民を避難させるのは容易ではなく、誘導するだけでも骨の折れる作業だった。
住み慣れた家を離れる事を拒む住民もおり、街は混乱していた。
「急に家を出ろなんて、どういうつもりだ!」
力仕事のできない少女は、鍵の閉まった家を周り、住民を案内していた。
「このままではセントビナーが地盤沈下し、住めなくなってしまうのです」
「でも、そんな事預言には詠まれていなかった!」
「………っ、それは、」
人々が混乱してしまうような預言は、教団によって秘匿されている。もしかしたら、このことも預言に記されていたかもしれない。少女はそう言いかけて、やめた。教団員がそれを一般人に告げてはいけない規則になっているし、なにより、それを知ったところで少女への不信感が増すだけだからだ。
「どうした?菜真絵」
玄関先で佇んでいた少女に、ルークが声を掛ける。すぐに、少女の向かいに立つ家主の姿を確認して、あ、と呟いた。
「この街に馬車が無いか探してるんだけど、なかなか見つからなくてさ。……探してくれないか?」
住人が怒った様子だったからだろうか、それとも、少女よりも一回りも二回りも大きい男性だったからだろうか。どちらにせよ、ルークが優しさでこの場を引き受けようとしていることは明白だ。
少女はルークに一礼して、馬車を探しに走り出した。
「ジェイドさん、使えそうな馬車を持ってきました。馬舎も見つけたので、今から馬を連れてきます」
「おや。ルークも馬車を探しに行ったようですが?」
「私が市民の説得に手こずってしまっていて……、代わってもらったんです」
少女の言葉を聞いて、ジェイドはほう、と呟いた後、アニスに目配せした。
「レディーに重いモノ運ばせるなんて、まだまだだなぁ」
アニスはそう言いながらも、どこか嬉しそうだ。
少女は、いつものやつだ、と思った。ルークが以前に比べて成長したとからかうくだり。
だが、今日は少し違った。大袈裟に驚くでもなく、昔の彼を引き合いに出すでもなく、ただ、ジェイドとアニスは笑っている。まるで子の成長を見守る親のように。
もしかしたら、皆のルークを見る目も変わってきたのかもしれない。そう思うとなんだか嬉しくて、少女もつられて笑った。
「お〜い菜真絵、連れてきたぜ!」
しばらくして、ルークは先程の男性を連れてきた。説得はうまくいったようだ。
なんて頼もしいんだろう。少女はそう思って、ルークに深々と頭を下げる。
「ありがとうございます。助かりました」
「えっ!?いや、そんな、礼を言われるようなことしてないって。そっちこそ、馬車見つけてくれたんだろ?」
頭を上げない少女に、うろたえるルーク。生まれて7年の2人の会話は、いつもぎこちない。
そんな2人を引き裂くかのように、突如、轟音が響いた。
光線のような攻撃が、少女たちに向かって飛んでくる。咄嗟に、ジェイドとティアが譜術障壁を作って防御した。
その向こうには、巨大なロボットの姿があった。まるで児童向けのアニメに出てくるロボットのような、どこかコミカルな様相をしている。
少女はその姿に見覚えがあった。そう、天才科学者、六神将・死神ディストの作ったロボットだ。
「ハーッハッハッハッ。ようやく見つけましたよ、ジェイド!」
「この忙しい時に……。昔からあなたは空気が読めませんでしたよねぇ」
ディストは今まで通り、イオンを狙っているようだった。ヴァンの計画は、少年と少女がおらずとも、計画通りに進んでいるらしい。
しかしなぜか、ディストの視線は、ジェイドしか捉えていない。
「そこをどきなさい。ディスト」
「へぇ? こんな虫けら共を助けようというんですか? ネビリム先生のことは諦めたくせに」
ネビリムという名前を、少女は聞いたことがあった。以前、ケテルブルクを訪れたときに、街の人が教えてくれた噂話に登場した女性だ。ジェイドとディストが殺したという、師の名前。
「……お前はまだそんな馬鹿なことを!」
「さっさと音を上げたあなたに、そんなことを言う資格はないっ!さあ導師を渡しなさい!」
ディストの言葉を合図に、巨大ロボットが腕を振り上げる、しかし次の瞬間、ジェイドが譜術で大量の水を浴びせると、ロボットは全身から放電し、呆気なく倒れた。
「あああああ!私の可愛いカイザーディスト号RXがぁ!」
ディストが悲鳴をあげる。
「覚えてなさい! 今度こそお前たちをギッタギタにしてやりますからねっ!」
まるで悪役が倒されたときのようなベタな台詞を吐いて、ディストは空気椅子に乗り、上空へと飛んでいった。
死神ディストと敵対すると、ああいう姿が見られるのか。普段の彼は、もう少し落ち着いていて、冷たい人なのに。
ジェイドにとっては飽きるほど繰り返したやり取りだったが、少女にとっては新鮮で、少女は、空の彼方に消えるまで、ディストの姿を目で追いかけた。
その時だ。地響きと共にセントビナーの街が大きく揺らぎ、傾いたのは。
「街が沈むぞ!」
ガイが叫ぶ。
門の内側を覗けば、地面が小刻みに振動しながら、沈んでいくのが見えた。
まずい、このままでは。
全員の脳裏に、アクゼリュスの悲劇がよぎる。為す術なく、泥の海に飲み込まれる人々の姿。あんなこと、二度と繰り返したくない。
沈下を始めたばかりの街に、ルークが飛び降りようとする。それを止めたのはティアだった。
「待って、ルーク!それなら私が飛び降りて譜歌を歌えば……!」
「待ちなさい。まだ相当数の住人が取り残されています。あなたの譜歌で全員を護るのはさすがに難しい。もっと確実な方法を考えましょう」
ジェイドがティアを制止する。
ティアは譜歌を歌うことで、瘴気を防ぐことができる。しかし、守れるのはティアを中心とした限られた範囲のみ。街全体を救う事はできないだろう。
徐々に遠ざかっていく街の中から、老マクガヴァンが手を振っている。
「わしらのことは気にするなーっ!それより街のみんなを頼むぞーっ!」
「くそっ!どうにかできないのか!」
アクゼリュスの時とは違い、大地はゆっくりと降下している。まだ住民は元気に生きているのに、見ていることしかできないなんて。悔しさからルークは地面を叩きつけた。
「空を飛べればいいのにね」
「……空、か」
アニスの声を聞いて、ガイが呟いた。
「そういえばシェリダンで飛行実験をやってるって話を聞いたな」
「この世界にも、飛行機が……」
飛行譜石が見つかったことをきっかけに、シェリダンで飛行実験が開始されたらしい。ユリアの時代には、その乗り物で大陸を行き来していた記録もある。
「菜真絵のいた世界にも、そんな代物があったんだな。どうだ、救出に使えると思うか?」
険しげな表情の中に、少しだけ興奮を混ぜて、ガイが問う。
「そう、ですね。私の世界では、数百人規模の輸送が可能でした。もし、古代文明と同等のものが作られているのであれば、もしかしたら……」
「その飛行実験に使ってる奴を借りてこよう!」
藁にもすがる思いで、ルークが飛びつく。しかし、ジェイドは懐疑的だった。
「しかし間に合いますか? アクゼリュスとは状況が違うようですが、それでも……」
シェリダンに向かい、戻ってくるとなれば、数日、いや、もっとかかるかもしれない。その間に街が沈んでしまっては、どうしようもない。
すると、ティアがジェイドに顔を向けた。
「兄の話では、ホドの崩落にはかなりの日数がかかったそうです。魔界クリフォトと外殻大地の間にはディバイディングラインという力場があって、そこを越えた直後、急速に落下速度が上がるとか……」
「やれるだけやってみよう! 何もしないよりマシだろ!」
ルークが叫ぶ。
その真摯な瞳に見つめられたジェイドは少し間を置いて、ふっ、と笑った。
「シェリダンはラーデシア大陸のバチカル側にありましたね。キムラスカ軍に捕まらないよう、気をつけていきましょう」
「よし、急いでタルタロスへ戻ろう!」
ガイが促した。ラーデシア大陸へ渡るには、船を使わなければならない。
少女たちは、タルタロスでシェリダンを目指した。