崩落編
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詠師トリトハイムの元へ行くと、彼は驚いたように少女の名を呼んだ。
「唱師明寺!導師の捜索に向かって以降、行方不明になったと聞いていたが、無事だったか」
「はい。しかし、六神将の面々とはぐれてしまいました」
「お前だけでも無事でよかった。早く大詠師に顔を見せておあげなさい。唱師ティア、唱師タトリン、導きの少女の護衛、ご苦労だった」
トリトハイムは、少女に快く通行許可の木札を渡した。これで神託の盾本部に入ることができる。
「なんか、あっけなかったな」
大詠師モースがイオンとナタリアを捕らえたことで、ダアトは今警戒状態だ。それにしては、いとも簡単に通行許可証を手に入れてしまった。一同は呆気にとられながら、本部に繋がる廊下を歩いていた。
「導きの少女様なら顔パスもできたかもね〜」
「その、導きの少女って何なんだ?そんなにすごいのか?」
ルークが純粋な疑問を口にすると、残りの面々が呆れ顔を彼に向ける。ルークが「ご、ごめん、何も知らなくて……」と肩をすぼめると、ティアが説明を始めた。
ND2017
異世界からの使者、砂の地に降りし
其は黒髪の少女なり
彼女は誰よりも速く成長し
やがて、世界を導くこととなるだろう
「彼女は、ユリアの預言にそう詠まれているの。世界を導く……未曾有の繁栄には欠かせない存在なのよ」
ティアが預言の一句一句を紡ぐ姿は、どこか幻想的だった。ルークはそれに見惚れていたが、ガイは口元に手を当てて、何かを考え込んでいる。
「教団の重要人物にしては、アッシュの部下になったりして、波瀾万丈だよな」
「大詠師モースは、菜真絵に多くの経験を積ませたいのではないかしら。いずれ世界を導くのだから」
「だからって特務師団なんて危険な所……」
全員が菜真絵に視線を集める。
ガイの疑問はもっともだ。そもそも、守りたい人物であるならば、教会に幽閉したほうが安全だ。ましてや、危険な任務の多い六神将に配属させるなど。
少女は、これまでのことを思い出しながら、回答を練った。
「経験を積ませたい、というのはその通りだと思います」
「でも、特務師団ってヤバ〜い任務もしてるんですよね?」
思い出したくもない、預言を振りかざすあの任務。少女の脳裏に血の海が広がる。あんなこと、やらなくて済んだのならやりたくなかった。世界を導くために、世界の嫌なところを見せられる。それも経験なのだとしたら、とんだ皮肉だ。
少女は心を落ち着けるように、言葉を紡ぐ。
「私の配属先は、ヴァン様が決めたのです。何か思惑があったのだとは思いますが、今となっては……」
少女と少年を引き合わせたのは、あの男だ。彼は少女を、同じ思想を持つ者として引き入れたと言っていた。それは本当なのだろうか?
「さしずめ、教団に対しての人質、と言ったところでしょうかねぇ」
ジェイドが少女の処遇について考察を落とす。それにガイやアニスが同調した。
彼は預言の無い世界を目指している。いずれ、教団を裏切る日が来るだろう。自分はそのときに利用される駒だったのかもしれない。少女も納得し、頷いた。
ティアは話を聞きながら、黙って俯いていた。自分の兄のことだ、思うところがあるのかもしれない。
ふいに、ルークの明るい声が沈黙を破る。
「ヴァン師匠が菜真絵を人質だと思ってたなら、今は時間稼ぎできてるってことだよな」
「ゔぇ?前向きすぎるご意見で……」
「前向きで悪いってことは無いだろ。ただそれなら、菜真絵もヴァンやモースから守らないとな」
ガイが振り向いて、少女にウィンクする。ウィンクをかます成人男性なんて初めて見た。菜真絵が目をぱちぱちとさせていると、横でアニスがため息をつく。
「女の子をたぶらかしてるのは、ルークだけじゃないですよねぇ」
「そうですねぇ。これで女性に触れないのですから、罪な男です」
「守らなきゃいけないのは事実だろ!?」
少女は、真っ赤になった顔を冷ますために頬をつねった。
経験だ。経験が足りない。モースが与えてくれた試練だけじゃ、不十分だったのだ。
こんなことで顔を紅くしないように、修行を積まなければ。少女はそう強く思った。
神託の盾本部は暗く、どこか重い空気を感じさせる空間だった。決して居心地が良いとはいえない。
この場所で、ほとんどの神託の盾兵が訓練を行う。寄宿舎などもあり、無数の兵士がここに滞在している。少女は専用の部屋を使っていたため、たまに訪れる程度だったが。
神託の盾兵をおびき出し、気絶させ、空いた部屋をしらみつぶしに捜索する。そんな途方もない作業を繰り返し、少女たちはイオンとナタリアの捕らえられた部屋を突き止めた。
「イオン!ナタリア!無事か?」
駆け込んで、ルークは声をかける。それを見たナタリアはハッと表情をこわばらせた。
「……ルーク……ですわよね?」
「アッシュじゃなくて悪かったな」
「誰もそんなこと言ってませんわ!」
ルークとナタリアのやり取りを、少女はただ見つめる。ルークはアッシュとの通信で、何を見ていたのだろう。少女がそれを知る術はない。ただ、このやり取りから、ナタリアがレプリカよりもオリジナルに強い執着を持っていると見て取れた。
少女は声をかけることもできず、その場に立ち尽くしていた。
「イオン様、兄は誘拐に関わっていましたか?」
「いえ。ただ、六神将が僕を連れ出す許可を取ろうとしていました」
イオンの声を聞いて、少女はハッとする。イオンの居所は知れているのだ。いつここに六神将が来て、彼を攫うかわからない。
「セフィロトの封咒を解かせるために、六神将がすぐにでもイオン様を連れ去りに来ます。早くダアトを離れましょう」
「なら、第四石碑だっけ?あれがあった丘まで逃げようぜ」
「はい。急ぎましょう」
ごちゃごちゃと考えている場合ではない。
少女は声色を低くして、覚悟を決めたように走り出した。
「唱師明寺!導師の捜索に向かって以降、行方不明になったと聞いていたが、無事だったか」
「はい。しかし、六神将の面々とはぐれてしまいました」
「お前だけでも無事でよかった。早く大詠師に顔を見せておあげなさい。唱師ティア、唱師タトリン、導きの少女の護衛、ご苦労だった」
トリトハイムは、少女に快く通行許可の木札を渡した。これで神託の盾本部に入ることができる。
「なんか、あっけなかったな」
大詠師モースがイオンとナタリアを捕らえたことで、ダアトは今警戒状態だ。それにしては、いとも簡単に通行許可証を手に入れてしまった。一同は呆気にとられながら、本部に繋がる廊下を歩いていた。
「導きの少女様なら顔パスもできたかもね〜」
「その、導きの少女って何なんだ?そんなにすごいのか?」
ルークが純粋な疑問を口にすると、残りの面々が呆れ顔を彼に向ける。ルークが「ご、ごめん、何も知らなくて……」と肩をすぼめると、ティアが説明を始めた。
ND2017
異世界からの使者、砂の地に降りし
其は黒髪の少女なり
彼女は誰よりも速く成長し
やがて、世界を導くこととなるだろう
「彼女は、ユリアの預言にそう詠まれているの。世界を導く……未曾有の繁栄には欠かせない存在なのよ」
ティアが預言の一句一句を紡ぐ姿は、どこか幻想的だった。ルークはそれに見惚れていたが、ガイは口元に手を当てて、何かを考え込んでいる。
「教団の重要人物にしては、アッシュの部下になったりして、波瀾万丈だよな」
「大詠師モースは、菜真絵に多くの経験を積ませたいのではないかしら。いずれ世界を導くのだから」
「だからって特務師団なんて危険な所……」
全員が菜真絵に視線を集める。
ガイの疑問はもっともだ。そもそも、守りたい人物であるならば、教会に幽閉したほうが安全だ。ましてや、危険な任務の多い六神将に配属させるなど。
少女は、これまでのことを思い出しながら、回答を練った。
「経験を積ませたい、というのはその通りだと思います」
「でも、特務師団ってヤバ〜い任務もしてるんですよね?」
思い出したくもない、預言を振りかざすあの任務。少女の脳裏に血の海が広がる。あんなこと、やらなくて済んだのならやりたくなかった。世界を導くために、世界の嫌なところを見せられる。それも経験なのだとしたら、とんだ皮肉だ。
少女は心を落ち着けるように、言葉を紡ぐ。
「私の配属先は、ヴァン様が決めたのです。何か思惑があったのだとは思いますが、今となっては……」
少女と少年を引き合わせたのは、あの男だ。彼は少女を、同じ思想を持つ者として引き入れたと言っていた。それは本当なのだろうか?
「さしずめ、教団に対しての人質、と言ったところでしょうかねぇ」
ジェイドが少女の処遇について考察を落とす。それにガイやアニスが同調した。
彼は預言の無い世界を目指している。いずれ、教団を裏切る日が来るだろう。自分はそのときに利用される駒だったのかもしれない。少女も納得し、頷いた。
ティアは話を聞きながら、黙って俯いていた。自分の兄のことだ、思うところがあるのかもしれない。
ふいに、ルークの明るい声が沈黙を破る。
「ヴァン師匠が菜真絵を人質だと思ってたなら、今は時間稼ぎできてるってことだよな」
「ゔぇ?前向きすぎるご意見で……」
「前向きで悪いってことは無いだろ。ただそれなら、菜真絵もヴァンやモースから守らないとな」
ガイが振り向いて、少女にウィンクする。ウィンクをかます成人男性なんて初めて見た。菜真絵が目をぱちぱちとさせていると、横でアニスがため息をつく。
「女の子をたぶらかしてるのは、ルークだけじゃないですよねぇ」
「そうですねぇ。これで女性に触れないのですから、罪な男です」
「守らなきゃいけないのは事実だろ!?」
少女は、真っ赤になった顔を冷ますために頬をつねった。
経験だ。経験が足りない。モースが与えてくれた試練だけじゃ、不十分だったのだ。
こんなことで顔を紅くしないように、修行を積まなければ。少女はそう強く思った。
神託の盾本部は暗く、どこか重い空気を感じさせる空間だった。決して居心地が良いとはいえない。
この場所で、ほとんどの神託の盾兵が訓練を行う。寄宿舎などもあり、無数の兵士がここに滞在している。少女は専用の部屋を使っていたため、たまに訪れる程度だったが。
神託の盾兵をおびき出し、気絶させ、空いた部屋をしらみつぶしに捜索する。そんな途方もない作業を繰り返し、少女たちはイオンとナタリアの捕らえられた部屋を突き止めた。
「イオン!ナタリア!無事か?」
駆け込んで、ルークは声をかける。それを見たナタリアはハッと表情をこわばらせた。
「……ルーク……ですわよね?」
「アッシュじゃなくて悪かったな」
「誰もそんなこと言ってませんわ!」
ルークとナタリアのやり取りを、少女はただ見つめる。ルークはアッシュとの通信で、何を見ていたのだろう。少女がそれを知る術はない。ただ、このやり取りから、ナタリアがレプリカよりもオリジナルに強い執着を持っていると見て取れた。
少女は声をかけることもできず、その場に立ち尽くしていた。
「イオン様、兄は誘拐に関わっていましたか?」
「いえ。ただ、六神将が僕を連れ出す許可を取ろうとしていました」
イオンの声を聞いて、少女はハッとする。イオンの居所は知れているのだ。いつここに六神将が来て、彼を攫うかわからない。
「セフィロトの封咒を解かせるために、六神将がすぐにでもイオン様を連れ去りに来ます。早くダアトを離れましょう」
「なら、第四石碑だっけ?あれがあった丘まで逃げようぜ」
「はい。急ぎましょう」
ごちゃごちゃと考えている場合ではない。
少女は声色を低くして、覚悟を決めたように走り出した。