崩落編
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ユリアロードの向こう側は、アラミス湧水洞に繋がっていた。見た目はいたって普通の泉だが、ここが外殻大地とユリアシティを繋ぐ、唯一の道だ。
2000年も前、創世歴時代に設置されたこの道の原理は、未だに解明されていないらしい。
「ようやくお出ましかよ。待ちくたびれたぜ、ルーク」
湧水洞を進んで行くと、坂の途中に、見覚えのある男の姿があった。
「へー、髪を切ったのか。いいじゃん。さっぱりしててさ」
「ガ……ガイ!」
ガイと呼ばれた男は、笑顔を浮かべてこちらに歩いてくる。彼はアクぜリュスの崩落に巻き込まれた人物の中で、少女が唯一、その素性を知らない相手だ。
ルークは先頭に立って、彼に近付こうとする。しかし、ふと足を止めたかと思えば、その場に縫い付けられたかのように動かなくなった。
「あん?どうした?」
「……お、俺……。ルークじゃないから……」
そう呟くルークの足は震えていた。
「いいじゃねぇか。あっちはルークって呼ばれるのを嫌がってんだ。名前、貰っちまえよ」
「貰えって……。お前、相変わらずだなー」
彼らの間に流れる空気は独特だ。少女が忘れ去っていた、あたたかい何か。まるで、雷にうたれる前に、雨の中で交わした冗談のような。おそらくこの男は、ルークの友人なのだろう。
少女は2人の様子を、立ち尽くして見ていた。
「今更名前なんて何でもいいだろ。……せっかく待っててやったんだから、もうちょっと嬉しそうな顔しろって」
「うん。……ありがとう」
「ルークがありがとうだって……!?」
「彼、変わるんですって」
なんとも楽しそうに、後ずさりするガイ。
ルークがありがとうと言うのは、そんなに珍しいことなのか。彼とまともに話をしたのは今日が初めてだから、比較できない。元々は、どんな性格だったのだろう。少女は、レプリカルークという人物に思いを馳せた。
「導きの少女様も一緒なんだな」
ふいに、ガイの冷たい視線が少女に向けられる。少女が会釈をしても、先程のような温かい笑みは見られない。
「神託の盾騎士団 特務師団 団長補佐 菜真絵・明寺奏長と申します。あなたは……」
「ガイ・セシル、ルークの使用人だ」
「よろしくお願いします」
「…………」
ガイは、少女に近寄ることもなく歩き出した。見たこともないようなガイの態度に、ティアが苦言を呈す。
「挨拶くらいしたらどうなの?」
「ガイ、菜真絵は俺たちに協力してくれるんだ。いくら女嫌いだからって……」
「女性は大好きだ!」
ルークが諭すと、ガイはいつものように明るい口調で話し出す。少女が震える目を向ければ、ふぅ、とため息をついた。
「アッシュから、俺の事は?」
「聞いていません。昔の事は、あまり……」
ガイはアッシュに対して、何か確執を抱えている。少女はそれを読み取ったが、理由まで訊くことはできなかった。
自分は、アッシュのことを何も知らない。それを思い知らされているようで、いい気分ではない。
「ごめんな、俺、女性恐怖症で。握手もできないんだ」
少女がうつむいていると、ガイが手を差し出してきた。
それに応じるように、少女は離れた距離から手を差し出してみせた。握手のふりだけして、微笑み合う。隣でその様子を見ていた2人と1匹も、同様に微笑んだ。
洞窟を出ると、そこにはジェイド・カーティスの姿があった。
「ガイに頼み事です。イオン様とナタリアがモースに軟禁されました」
「何だって!」
ジェイドが言うには、モースが戦争を起こす材料として「ナタリアの死」を利用しようとしている、とのことだった。
キムラスカの人々は、ナタリアが生きていることを知らない。王女がマルクトの領土で死んだとあれば、キムラスカは黙っていないだろう。預言の通り、戦争が始まってしまう。
「おや、ルーク。あなたもいらっしゃいましたか」
「……いたら悪いのかよ」
ジェイドは、タルタロスで見たような冷ややかな視線をルークに向ける。
現実に引き戻されたような気持ちだ。ティアが、ガイが、ミュウがルークを許し、アクぜリュスの崩落を割り切っていても、それは彼らがルークに近い人間だからだ。世間が彼を許したわけではない。それは少女に対しても同じことだ。自分が許される日は、永遠に来ないのだ。そう思うと、体が重くなる。
「明寺奏長は大詠師派のはずですが。ご協力頂けるのですか?」
ジェイドは少女に向き直って、業務的な態度で問う。
大詠師モースに保護され、教育を受けてきた少女は、世界的に見れば大詠師派を象徴する存在だった。
「私はアッシュ様と同様に、戦争や外殻大地の崩落を望んでいません」
「ふむ。モースやヴァンに懐柔されている訳ではないのですね」
「まだ、この世界に来て1年ですから」
「あなたにとっては2年でしょう。いや、それでも短いですか」
ジェイドは少女の足を見ながら言った。さすがは天才科学者といったところか。少女の周りを流れる時間の事を、完全に理解しているようだ。
他の面々は、首を傾げながらその様子を見ている。
「ともかく、戦力が増えて心強い限りです」
「そうだな。イオンとナタリアを助けるには、できるだけ人数が多いほうがいい」
「でもでもでも、セントビナーには行かないですの?」
ミュウが足元で、ぴょこぴょこと飛び跳ねる。彼の言葉を受けて、ルークは「う……そうだった」と嘆いた。
「ルーク。焦っても仕方ないわ。とにかく、まずはダアトに行って導師イオンとナタリアを助けましょう」
「……そうだよな。できることからやらないと」
ティアに諌められ、ルークは前を向く。問題は山積みだが、やるべきことがあるだけ、幸せなのかもしれない。
少女も姿勢を正して、その後を追った。
2000年も前、創世歴時代に設置されたこの道の原理は、未だに解明されていないらしい。
「ようやくお出ましかよ。待ちくたびれたぜ、ルーク」
湧水洞を進んで行くと、坂の途中に、見覚えのある男の姿があった。
「へー、髪を切ったのか。いいじゃん。さっぱりしててさ」
「ガ……ガイ!」
ガイと呼ばれた男は、笑顔を浮かべてこちらに歩いてくる。彼はアクぜリュスの崩落に巻き込まれた人物の中で、少女が唯一、その素性を知らない相手だ。
ルークは先頭に立って、彼に近付こうとする。しかし、ふと足を止めたかと思えば、その場に縫い付けられたかのように動かなくなった。
「あん?どうした?」
「……お、俺……。ルークじゃないから……」
そう呟くルークの足は震えていた。
「いいじゃねぇか。あっちはルークって呼ばれるのを嫌がってんだ。名前、貰っちまえよ」
「貰えって……。お前、相変わらずだなー」
彼らの間に流れる空気は独特だ。少女が忘れ去っていた、あたたかい何か。まるで、雷にうたれる前に、雨の中で交わした冗談のような。おそらくこの男は、ルークの友人なのだろう。
少女は2人の様子を、立ち尽くして見ていた。
「今更名前なんて何でもいいだろ。……せっかく待っててやったんだから、もうちょっと嬉しそうな顔しろって」
「うん。……ありがとう」
「ルークがありがとうだって……!?」
「彼、変わるんですって」
なんとも楽しそうに、後ずさりするガイ。
ルークがありがとうと言うのは、そんなに珍しいことなのか。彼とまともに話をしたのは今日が初めてだから、比較できない。元々は、どんな性格だったのだろう。少女は、レプリカルークという人物に思いを馳せた。
「導きの少女様も一緒なんだな」
ふいに、ガイの冷たい視線が少女に向けられる。少女が会釈をしても、先程のような温かい笑みは見られない。
「神託の盾騎士団 特務師団 団長補佐 菜真絵・明寺奏長と申します。あなたは……」
「ガイ・セシル、ルークの使用人だ」
「よろしくお願いします」
「…………」
ガイは、少女に近寄ることもなく歩き出した。見たこともないようなガイの態度に、ティアが苦言を呈す。
「挨拶くらいしたらどうなの?」
「ガイ、菜真絵は俺たちに協力してくれるんだ。いくら女嫌いだからって……」
「女性は大好きだ!」
ルークが諭すと、ガイはいつものように明るい口調で話し出す。少女が震える目を向ければ、ふぅ、とため息をついた。
「アッシュから、俺の事は?」
「聞いていません。昔の事は、あまり……」
ガイはアッシュに対して、何か確執を抱えている。少女はそれを読み取ったが、理由まで訊くことはできなかった。
自分は、アッシュのことを何も知らない。それを思い知らされているようで、いい気分ではない。
「ごめんな、俺、女性恐怖症で。握手もできないんだ」
少女がうつむいていると、ガイが手を差し出してきた。
それに応じるように、少女は離れた距離から手を差し出してみせた。握手のふりだけして、微笑み合う。隣でその様子を見ていた2人と1匹も、同様に微笑んだ。
洞窟を出ると、そこにはジェイド・カーティスの姿があった。
「ガイに頼み事です。イオン様とナタリアがモースに軟禁されました」
「何だって!」
ジェイドが言うには、モースが戦争を起こす材料として「ナタリアの死」を利用しようとしている、とのことだった。
キムラスカの人々は、ナタリアが生きていることを知らない。王女がマルクトの領土で死んだとあれば、キムラスカは黙っていないだろう。預言の通り、戦争が始まってしまう。
「おや、ルーク。あなたもいらっしゃいましたか」
「……いたら悪いのかよ」
ジェイドは、タルタロスで見たような冷ややかな視線をルークに向ける。
現実に引き戻されたような気持ちだ。ティアが、ガイが、ミュウがルークを許し、アクぜリュスの崩落を割り切っていても、それは彼らがルークに近い人間だからだ。世間が彼を許したわけではない。それは少女に対しても同じことだ。自分が許される日は、永遠に来ないのだ。そう思うと、体が重くなる。
「明寺奏長は大詠師派のはずですが。ご協力頂けるのですか?」
ジェイドは少女に向き直って、業務的な態度で問う。
大詠師モースに保護され、教育を受けてきた少女は、世界的に見れば大詠師派を象徴する存在だった。
「私はアッシュ様と同様に、戦争や外殻大地の崩落を望んでいません」
「ふむ。モースやヴァンに懐柔されている訳ではないのですね」
「まだ、この世界に来て1年ですから」
「あなたにとっては2年でしょう。いや、それでも短いですか」
ジェイドは少女の足を見ながら言った。さすがは天才科学者といったところか。少女の周りを流れる時間の事を、完全に理解しているようだ。
他の面々は、首を傾げながらその様子を見ている。
「ともかく、戦力が増えて心強い限りです」
「そうだな。イオンとナタリアを助けるには、できるだけ人数が多いほうがいい」
「でもでもでも、セントビナーには行かないですの?」
ミュウが足元で、ぴょこぴょこと飛び跳ねる。彼の言葉を受けて、ルークは「う……そうだった」と嘆いた。
「ルーク。焦っても仕方ないわ。とにかく、まずはダアトに行って導師イオンとナタリアを助けましょう」
「……そうだよな。できることからやらないと」
ティアに諌められ、ルークは前を向く。問題は山積みだが、やるべきことがあるだけ、幸せなのかもしれない。
少女も姿勢を正して、その後を追った。