崩落編
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「菜真絵はアッシュの部下だったんだよな」
外殻大地へ向かうべく、ユリアロードへの道を歩いていると、ふと、ルークがつぶやいた。
少女はアッシュの補佐として神託の盾騎士団に勤めている。「はい」と少女が肯定の意を示せば、ルークがバチリと目を合わせてきた。
「アッシュって、どんな奴だった?」
興味津々、といった様子だ。
「どんな、と申されましても……」
「菜真絵からこんな風に見えてた、とかさ」
ルークの言葉を受けて、少女は、アッシュの姿を思い浮かべた。
いつもしかめっ面のあの上司。最後に見た彼は、少女に軽蔑の目を向けていた。とても冷たくて、怖かった。
でも、それはきっと、少年が真っ直ぐだからだ。
夢のために手段を選ばないヴァンや少女と違って、少年は全てを救おうとしていた。立ち止まらず進み続けていた。だからこそ、動かない少女を軽蔑したのだ。
「優しくて、真っ直ぐな人です」
いつの間にか声に出ていた。
少女はハッとなってルークの顔を見る。すると、彼は顔を真っ赤に染めていた。チーグルの子供、ミュウも耳をパタパタさせている。
「アッシュさんと菜真絵さんは、仲良しですの?」
「……大げさに言い過ぎました。真面目で頼れる上司です」
「信頼しているのね」
「上司ですから、当然です」
少女は表情を失くして、冷たく呟く。
そんな少女の姿を見て、ミュウはみゅうぅぅと情けない声をあげた。
少女は、少年に対する淡い感情を表に出してはいけないと思っていた。そんなことをしたって、少年や周囲の人を困らせてしまうだけだからだ。
否、困らせるだけには留まらないだろう。
少女がアクぜリュスの崩落を止められなかったのは、少年に執着したからだ。
執着は、多大な犠牲を生む。少女はそれを10日前に学んだばかりだった。
少年へ抱いてしまった感情を、消さなければ。
そう考えながら、少女は足を早める。しかし、ルークの手がそれを阻んだ。
「あの、さ、どうして、アッシュは俺に見せてくれたのかな、自分の見てるものを……」
「同調フォンスロットを介して、アッシュ様の視界を見たのですか?」
「どうちょう……。ああ。他の皆と旅をしてた。アッシュは、俺を恨んでるんじゃないのか?」
ルークは何かを訴えかけるように少女を見ている。不安そうな、縋るような表情だ。
『あんなグズが俺の身代わりだと思うと、許せないだけだ』
以前、少年がそう零したことがあった。
そのときに少女は理解した。少年は、レプリカに期待しているのだと。自分の身代わりであるレプリカルークが、ルーク・フォン・ファブレに相応しく成長することを望んでいるのだと。
アッシュはレプリカルークに、できるだけ情報を与えようとしているのだ。成長の糧にさせるために。
「貴方が、自分のレプリカに相応しくなるようにって」
「そうか、そうだよな」
ルークは目を伏せて、苦笑いをしてみせた。その声色はどこか寂しげだ。しかし、少女にはその理由がわからなかった。今の言葉の何が、彼を悲しませたのだろう。
「あの、でも、アッシュ様の思惑がどうであれ、ルークさんが誘いに来てくれて、私は嬉しかったです」
少女はなんとかフォローしようと、一生懸命ルークに話しかける。
自分がこうして再出発を果たせたのは、ルークとティアの誘いがあったからだ。そしてそれは、アッシュがルークを通してセントビナーの崩落を教えてくれたから。悪気の有無に関係なく、少女にとっては良い結果となったのだ。少女はそれを伝えようとした。
しかし、ルークの表情は曇ったままだった。
「俺、アッシュの代わりになれるかわからないけど、頑張るよ」
「代わり……」
アッシュの代わり。
ルークはそう言って、少女から視線を外した。地面を歩いていたミュウが、心配そうにルークの足に寄り添う。
確かに、彼はアッシュの身代わりだ。ヴァンはオリジナルルークを救うためにレプリカを作った。見た目だって、声だって、ほとんど変わらない。紛れもない複製品だ。
しかし、少女にとってはどうだろう。
(私、アッシュ様に見放されたから、代わりにルークさんを頼っているの?そんなのって……)
最低だ。
少女はこれまで、オリジナルの代わりにレプリカが死ぬことを、当たり前だと思っていた。あくまでもレプリカは代用品で、そのために作られたものだからだ。しかし、それは現実を言葉だけで捉えていたからである。実際のレプリカルークは、喋るし、瞬きもするし、手も温かい。そんな彼を見て、代用品などと言えるだろうか?
「私が共に旅をするのは、アッシュ様ではなくルークさんです。確かに、頼ってしまうかもしれませんが、それはティアさんやミュウさんも同じで……」
少女はルークの後ろ姿に向かって、矢継ぎ早に声をかけた。
何を言えばいいのか、全くわからない。この世界に来てから、仕事以外で人と話す機会などなかった。剣や学術は習っても、優しい言葉のかけ方なんて習わなかった。
ふいにルークが振り返った。かと思えば、ぷはっと音をあげて、破顔させる。どうやら、笑っているようだ。
「菜真絵、スゲー必死」
「ごめんなさい。だって私、ルークさんに失礼なことを……」
「いいんだ。俺がレプリカなのはホントだし。ありがとな、元気づけてくれて」
ルークは、本当に嬉しそうに笑っている。
アッシュのこんな顔は見たことがない。少女はそう思った。彼は微笑むことはあっても、声を出して笑うことなどなかったのだ。
まるで、全く別の人間みたいだった。
外殻大地へ向かうべく、ユリアロードへの道を歩いていると、ふと、ルークがつぶやいた。
少女はアッシュの補佐として神託の盾騎士団に勤めている。「はい」と少女が肯定の意を示せば、ルークがバチリと目を合わせてきた。
「アッシュって、どんな奴だった?」
興味津々、といった様子だ。
「どんな、と申されましても……」
「菜真絵からこんな風に見えてた、とかさ」
ルークの言葉を受けて、少女は、アッシュの姿を思い浮かべた。
いつもしかめっ面のあの上司。最後に見た彼は、少女に軽蔑の目を向けていた。とても冷たくて、怖かった。
でも、それはきっと、少年が真っ直ぐだからだ。
夢のために手段を選ばないヴァンや少女と違って、少年は全てを救おうとしていた。立ち止まらず進み続けていた。だからこそ、動かない少女を軽蔑したのだ。
「優しくて、真っ直ぐな人です」
いつの間にか声に出ていた。
少女はハッとなってルークの顔を見る。すると、彼は顔を真っ赤に染めていた。チーグルの子供、ミュウも耳をパタパタさせている。
「アッシュさんと菜真絵さんは、仲良しですの?」
「……大げさに言い過ぎました。真面目で頼れる上司です」
「信頼しているのね」
「上司ですから、当然です」
少女は表情を失くして、冷たく呟く。
そんな少女の姿を見て、ミュウはみゅうぅぅと情けない声をあげた。
少女は、少年に対する淡い感情を表に出してはいけないと思っていた。そんなことをしたって、少年や周囲の人を困らせてしまうだけだからだ。
否、困らせるだけには留まらないだろう。
少女がアクぜリュスの崩落を止められなかったのは、少年に執着したからだ。
執着は、多大な犠牲を生む。少女はそれを10日前に学んだばかりだった。
少年へ抱いてしまった感情を、消さなければ。
そう考えながら、少女は足を早める。しかし、ルークの手がそれを阻んだ。
「あの、さ、どうして、アッシュは俺に見せてくれたのかな、自分の見てるものを……」
「同調フォンスロットを介して、アッシュ様の視界を見たのですか?」
「どうちょう……。ああ。他の皆と旅をしてた。アッシュは、俺を恨んでるんじゃないのか?」
ルークは何かを訴えかけるように少女を見ている。不安そうな、縋るような表情だ。
『あんなグズが俺の身代わりだと思うと、許せないだけだ』
以前、少年がそう零したことがあった。
そのときに少女は理解した。少年は、レプリカに期待しているのだと。自分の身代わりであるレプリカルークが、ルーク・フォン・ファブレに相応しく成長することを望んでいるのだと。
アッシュはレプリカルークに、できるだけ情報を与えようとしているのだ。成長の糧にさせるために。
「貴方が、自分のレプリカに相応しくなるようにって」
「そうか、そうだよな」
ルークは目を伏せて、苦笑いをしてみせた。その声色はどこか寂しげだ。しかし、少女にはその理由がわからなかった。今の言葉の何が、彼を悲しませたのだろう。
「あの、でも、アッシュ様の思惑がどうであれ、ルークさんが誘いに来てくれて、私は嬉しかったです」
少女はなんとかフォローしようと、一生懸命ルークに話しかける。
自分がこうして再出発を果たせたのは、ルークとティアの誘いがあったからだ。そしてそれは、アッシュがルークを通してセントビナーの崩落を教えてくれたから。悪気の有無に関係なく、少女にとっては良い結果となったのだ。少女はそれを伝えようとした。
しかし、ルークの表情は曇ったままだった。
「俺、アッシュの代わりになれるかわからないけど、頑張るよ」
「代わり……」
アッシュの代わり。
ルークはそう言って、少女から視線を外した。地面を歩いていたミュウが、心配そうにルークの足に寄り添う。
確かに、彼はアッシュの身代わりだ。ヴァンはオリジナルルークを救うためにレプリカを作った。見た目だって、声だって、ほとんど変わらない。紛れもない複製品だ。
しかし、少女にとってはどうだろう。
(私、アッシュ様に見放されたから、代わりにルークさんを頼っているの?そんなのって……)
最低だ。
少女はこれまで、オリジナルの代わりにレプリカが死ぬことを、当たり前だと思っていた。あくまでもレプリカは代用品で、そのために作られたものだからだ。しかし、それは現実を言葉だけで捉えていたからである。実際のレプリカルークは、喋るし、瞬きもするし、手も温かい。そんな彼を見て、代用品などと言えるだろうか?
「私が共に旅をするのは、アッシュ様ではなくルークさんです。確かに、頼ってしまうかもしれませんが、それはティアさんやミュウさんも同じで……」
少女はルークの後ろ姿に向かって、矢継ぎ早に声をかけた。
何を言えばいいのか、全くわからない。この世界に来てから、仕事以外で人と話す機会などなかった。剣や学術は習っても、優しい言葉のかけ方なんて習わなかった。
ふいにルークが振り返った。かと思えば、ぷはっと音をあげて、破顔させる。どうやら、笑っているようだ。
「菜真絵、スゲー必死」
「ごめんなさい。だって私、ルークさんに失礼なことを……」
「いいんだ。俺がレプリカなのはホントだし。ありがとな、元気づけてくれて」
ルークは、本当に嬉しそうに笑っている。
アッシュのこんな顔は見たことがない。少女はそう思った。彼は微笑むことはあっても、声を出して笑うことなどなかったのだ。
まるで、全く別の人間みたいだった。