崩落編
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あれから10日が経ち、少女は歩けるようになった。
感覚はいつも通りになり、剣を振るうことも可能だ。
体はもう問題ない。
だけど、これからどうすればいいのだろう。
アッシュ達は外殻大地に旅立った。部屋を借してもらえたのは怪我をしていたからであり、いつまでも滞在できるわけではない。
「テオドーロ市長に相談するしかない、か」
どうせモースの元へ返されて、軟禁生活が始まるのだろうけど。
少女が腰を上げたとき、ドアが開いた。
「あ、その、失礼します」
レプリカとティア・グランツだ。
彼はおどおどと会釈をして、置いてある椅子に座った。ティアはその場に跪いて、少女を見上げる。
レプリカの風貌は、10日前に見たものと大きく違っていた。
「髪が……」
「ああ。その、今回のこと、反省して……」
「それにしても、バッサリと」
「これまでの自分から、変わりたくて」
アクぜリュス崩壊の引き金、愚かなレプリカルークは、10日の間に自分を見つめ直したようである。
気だるそうにしていた瞳は輝き、背筋をピンと伸ばしていた。
船では、あれほど動揺していたのに。
「その、本当にごめん。俺のせいでアクぜリュスが……」
「謝らないでください。あなたはヴァン様に操られていただけです。私のほうこそ知っていたのに……」
赤い髪の少年と、黒髪の少女が、互いに頭を垂れる。
自分のせいでアクぜリュスが崩落した。自分がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。そう考えているのは2人とも、いや、ティアまでもが同じだった。
それでも、自分は立ち止まっていて、レプリカは進もうとしている。短くなった髪からそれが感じられて、少女は情けなくなった。
「知っていた、ということは、秘預言のことも?」
「はい。ルーク・フォン・ファブレが街と共に消えることは、以前から」
「それなのに、どうしてアクぜリュスへ?」
今、淀んだ少女にできるのは、知っている事を全て話すことだけだ。
「アッシュ様の身代わりにレプリカが死ぬ。最初はそれでいいと思っていました」
「…………」
「ですが、事故ではなく、ヴァン様が自らアクぜリュスを墜とそうとしている事に気づいて。それなら止められるんじゃないかって……」
「……俺、ここで死ぬために生まれてきたんだな」
レプリカルークは顔を歪める。
少女はハッとした。彼に「死ぬために生まれてきた」という事実を突きつけてしまった。彼の生きる意味を、否定してしまった。
少女はこれまで、レプリカを人形のように思って扱ってきた。それは、ヴァンやアッシュに教えられた感性だ。
しかし今のやり取りで気づいた。レプリカもその生を否定されて悲しむ、普通の人間なのだと。
「ごめんなさい、私……」
「いいよ。菜真絵はそれを止めに来てくれたんだろ?」
「……いえ、私はアッシュ様をアクぜリュスに行かせたくなくて、引き留めて……、説得されて。その時間がなかったら、今頃、」
少女が俯くと、ルークも黙る。
お前は悪くない、悪いのは俺だ。そう声を掛けたかったが、目の前の少女は、おそらくそれを望んでいない。自分だって「悪いのはヴァンだ。預言だ」と言われても、気が晴れないのだから。
陰鬱な空気の中、ティアが口を開く。
「明寺奏長、私たちは、お願いがあって参ったのです」
「そうだ!次はセントビナーが崩落するってアッシュが言ってたんだ。それを止めに行かないといけなくて……」
「私たち2人では、戦力的に不安です。共に来て頂けませんか?」
少女には、目の前の2人が輝いて見えた。
あれだけの惨状を見たのにも関わらず、次に何をすべきか考え始めている。
自分だけだ。アッシュだって、もう走り出している。自分だけが、淀みの中にいる。
「そんなにかしこまらないでください」
「明寺奏長、いや……菜真絵。一緒に来てほしいの。神託の盾の一員としてでなく、兄さんを止めるために」
「私でお役に立てるのなら、喜んで」
このままユリアシティに滞在しても、いずれモースに回収されるだけだ。そうなれば、ヴァンの野望を、レプリカルークの行く末を、遠くから見守ることしかできない。
どうせ、行くところなどない。
でも、この2人が、必要としてくれるのなら。
少女は笑顔で、レプリカルークの手をとった。
「ありがとな。よろしく、菜真絵」
「……あたたかい」
「え?」
「なんでもありません。よろしくお願いします、……ルークさん」
彼は変わりたいと言った。そんな彼の近くにいれば、もしかしたら、自分も。
少女の新しい旅が、この地獄から始まる。
感覚はいつも通りになり、剣を振るうことも可能だ。
体はもう問題ない。
だけど、これからどうすればいいのだろう。
アッシュ達は外殻大地に旅立った。部屋を借してもらえたのは怪我をしていたからであり、いつまでも滞在できるわけではない。
「テオドーロ市長に相談するしかない、か」
どうせモースの元へ返されて、軟禁生活が始まるのだろうけど。
少女が腰を上げたとき、ドアが開いた。
「あ、その、失礼します」
レプリカとティア・グランツだ。
彼はおどおどと会釈をして、置いてある椅子に座った。ティアはその場に跪いて、少女を見上げる。
レプリカの風貌は、10日前に見たものと大きく違っていた。
「髪が……」
「ああ。その、今回のこと、反省して……」
「それにしても、バッサリと」
「これまでの自分から、変わりたくて」
アクぜリュス崩壊の引き金、愚かなレプリカルークは、10日の間に自分を見つめ直したようである。
気だるそうにしていた瞳は輝き、背筋をピンと伸ばしていた。
船では、あれほど動揺していたのに。
「その、本当にごめん。俺のせいでアクぜリュスが……」
「謝らないでください。あなたはヴァン様に操られていただけです。私のほうこそ知っていたのに……」
赤い髪の少年と、黒髪の少女が、互いに頭を垂れる。
自分のせいでアクぜリュスが崩落した。自分がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。そう考えているのは2人とも、いや、ティアまでもが同じだった。
それでも、自分は立ち止まっていて、レプリカは進もうとしている。短くなった髪からそれが感じられて、少女は情けなくなった。
「知っていた、ということは、秘預言のことも?」
「はい。ルーク・フォン・ファブレが街と共に消えることは、以前から」
「それなのに、どうしてアクぜリュスへ?」
今、淀んだ少女にできるのは、知っている事を全て話すことだけだ。
「アッシュ様の身代わりにレプリカが死ぬ。最初はそれでいいと思っていました」
「…………」
「ですが、事故ではなく、ヴァン様が自らアクぜリュスを墜とそうとしている事に気づいて。それなら止められるんじゃないかって……」
「……俺、ここで死ぬために生まれてきたんだな」
レプリカルークは顔を歪める。
少女はハッとした。彼に「死ぬために生まれてきた」という事実を突きつけてしまった。彼の生きる意味を、否定してしまった。
少女はこれまで、レプリカを人形のように思って扱ってきた。それは、ヴァンやアッシュに教えられた感性だ。
しかし今のやり取りで気づいた。レプリカもその生を否定されて悲しむ、普通の人間なのだと。
「ごめんなさい、私……」
「いいよ。菜真絵はそれを止めに来てくれたんだろ?」
「……いえ、私はアッシュ様をアクぜリュスに行かせたくなくて、引き留めて……、説得されて。その時間がなかったら、今頃、」
少女が俯くと、ルークも黙る。
お前は悪くない、悪いのは俺だ。そう声を掛けたかったが、目の前の少女は、おそらくそれを望んでいない。自分だって「悪いのはヴァンだ。預言だ」と言われても、気が晴れないのだから。
陰鬱な空気の中、ティアが口を開く。
「明寺奏長、私たちは、お願いがあって参ったのです」
「そうだ!次はセントビナーが崩落するってアッシュが言ってたんだ。それを止めに行かないといけなくて……」
「私たち2人では、戦力的に不安です。共に来て頂けませんか?」
少女には、目の前の2人が輝いて見えた。
あれだけの惨状を見たのにも関わらず、次に何をすべきか考え始めている。
自分だけだ。アッシュだって、もう走り出している。自分だけが、淀みの中にいる。
「そんなにかしこまらないでください」
「明寺奏長、いや……菜真絵。一緒に来てほしいの。神託の盾の一員としてでなく、兄さんを止めるために」
「私でお役に立てるのなら、喜んで」
このままユリアシティに滞在しても、いずれモースに回収されるだけだ。そうなれば、ヴァンの野望を、レプリカルークの行く末を、遠くから見守ることしかできない。
どうせ、行くところなどない。
でも、この2人が、必要としてくれるのなら。
少女は笑顔で、レプリカルークの手をとった。
「ありがとな。よろしく、菜真絵」
「……あたたかい」
「え?」
「なんでもありません。よろしくお願いします、……ルークさん」
彼は変わりたいと言った。そんな彼の近くにいれば、もしかしたら、自分も。
少女の新しい旅が、この地獄から始まる。