崩落編
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ユリアシティ。そこは、地上のどの街にも似つかない、闇と光に包まれた都市だった。
少女は陸艦にいる間、ベッドに横たわっていた。足の痛みが思考を支配して、話すことすらできない。今もジェイドに抱えられ、情けなくうなだれている。
市長の家を目指して歩くと、道中に赤髪の少年――アッシュの姿があった。
「!、アッシュ様、……生きて……」
「どうした、その様は」
少年がジェイドをギロリと睨むが、ジェイドは動揺する様子を見せない。
「明寺奏長は脚を怪我されています。市長に面会後、治療院に預けます」
「命に別条は?」
「わかりません。脚が障気にやられています」
「障気に……」
少年は、心底心配そうな表情をした。
少女はその口元を緩める。少年が生きていた。自分のことを心配してくれた。こんなに嬉しいことはない。
しかし、少女はすぐに自分の表情に気がついて、嫌になった。何千人もの人が亡くなったのに、笑っているなんて。自分は、なんて身勝手なんだろう。
「レプリカはどこにいる」
レプリカ。
その言葉を聞いて、一同はたじろぐ。勘付いてはいた。同じ顔の人間が2人いるなど、フォミクリーの技術によるものとしか考えられない。
しかし、改めて真実を突きつけられると、言葉が出ない。
「レプリカ……ルークは、どこにいると聞いている」
「ルークとティアなら、船の出口に……」
オリジナルの少年は、街の入口へと走って行った。
「アッシュ……彼は、7年前、ヴァンに誘拐されるまでの、ルーク・フォン・ファブレなのですね?」
ジェイドは言葉を空中に放った。それは確かに、少女に投げかけられた質問だった。
少女は、胸の前で手を組む王女の顔を見ながら、力なく頷いた。
「ね、ルークとティア、危ないんじゃない?アッシュ、すごい勢いだったし……」
「追いかけよう。ジェイドの旦那は、導きの少女様を治療院へ」
「そうですね。あまり放置しておく訳にはいきません」
少女はジェイドに連れられて、治療院へ向かった。
治療院では泥が洗い流され、包帯が巻かれ、気休めの第七譜術がかけられた。
怪我は、全治3週間と診断された。
少女は出された栄養剤を飲みながら、ジェイドを見る。体が楽になり、周りが見えるようになった。
「助けていただいて、ありがとうございます」
「導きの少女様を見殺しにする訳にはいきませんからねぇ 」
「見殺し……」
ジェイドはおどけて言った。しかし、その言葉が少女の胸を絞めつける。
自分はアクぜリュスの民を見殺しにした。その事実が、改めて少女を襲った。自分はなんてひどいことを。
少女の濁っていく瞳を見て、ジェイドが声をかける。
「相当お疲れのようですね。ティアが部屋を貸してくれるそうですから、そこで休んでください」
どうやらあの後、アッシュとレプリカルークは交戦し、レプリカルークが気を失ったらしい。
彼はティアの部屋で休んでいるようだ。菜真絵は、教団員の臨時宿泊施設に案内された。導師や幹部がユリアシティを訪れた際に泊まる部屋だ。
コンコンコン、とノックの音がして、扉が開く。
そこには、ルークを除く全員の姿があった。導師も、赤髪の上司も、キムラスカの王女もいる。
「……何か、用ですか?」
「様子を見に来たんです。ひどい怪我でしたから」
「症状はどうだ」
イオンの言葉を遮るように、アッシュが強い語気で問う。
「今は歩けません。ですが、表皮だけの汚染で済んでいるようです。10日程で治るかと」
「おや、医者は3週間と言っていましたが?」
「誰よりも早く成長するって、本当なんだな」
少女は人の2倍早く歳をとる。つまり、少女は2倍速で生きている。回復までの時間や、物を憶えるまでの時間は2分の1だ。人々から見れば、少女は言葉通りの超人。だからこそ、ここまで生き延びることができたといえるだろう。
「ごめんなさいアッシュ様。このような痛手を負ってしまって」
「いや、いい。生きていただけでも……」
少年が優しく目を細めると、アニスが明るい声で茶々を入れる。
「あれれぇ?やっぱり、噂はホントなの?」
「噂?」
「特務師団長とその補佐官が、デキてるって……」
「おい、アニス」
井戸端会議のような調子のアニスを、ガイが制する。彼はわかりやすく、視線をナタリアに向けていた。
当のナタリアは眉を下げて、ただアッシュを見ている。
「あ…………、ごめんなさぁい」
アッシュはナタリアの婚約者だ。
いや、現時点ではレプリカルークが婚約者なのだが、仲間たちは「あの日の約束」に固執するナタリアの姿を何度も見てきた。
ナタリアの愛するルークは、記憶を失う前の彼だ。全員がそう感じていた。
そんな彼と別の女性に色恋の疑いをかけるのは、タブー中のタブーである。
「心配しないでください。噂は噂です。ナタリア殿下」
少女ははりつけたような笑顔で、ナタリアに声をかけた。しかし姫君は「私のことも、アッシュはあなたに話していたのですね……」と、呟くだけだった。
少女は少年を見る。話の中心となっていた少年だが、ここまで一言も話さずにいた。その目は、少女でもない、ナタリアでもない、どこか遠くを見ているようだった。
「俺は、過去を捨てたんだ」
それだけ言い放って、部屋を出ていく。
ナタリアは、ぎゅっと、自分の服を掴んだ。
少女は陸艦にいる間、ベッドに横たわっていた。足の痛みが思考を支配して、話すことすらできない。今もジェイドに抱えられ、情けなくうなだれている。
市長の家を目指して歩くと、道中に赤髪の少年――アッシュの姿があった。
「!、アッシュ様、……生きて……」
「どうした、その様は」
少年がジェイドをギロリと睨むが、ジェイドは動揺する様子を見せない。
「明寺奏長は脚を怪我されています。市長に面会後、治療院に預けます」
「命に別条は?」
「わかりません。脚が障気にやられています」
「障気に……」
少年は、心底心配そうな表情をした。
少女はその口元を緩める。少年が生きていた。自分のことを心配してくれた。こんなに嬉しいことはない。
しかし、少女はすぐに自分の表情に気がついて、嫌になった。何千人もの人が亡くなったのに、笑っているなんて。自分は、なんて身勝手なんだろう。
「レプリカはどこにいる」
レプリカ。
その言葉を聞いて、一同はたじろぐ。勘付いてはいた。同じ顔の人間が2人いるなど、フォミクリーの技術によるものとしか考えられない。
しかし、改めて真実を突きつけられると、言葉が出ない。
「レプリカ……ルークは、どこにいると聞いている」
「ルークとティアなら、船の出口に……」
オリジナルの少年は、街の入口へと走って行った。
「アッシュ……彼は、7年前、ヴァンに誘拐されるまでの、ルーク・フォン・ファブレなのですね?」
ジェイドは言葉を空中に放った。それは確かに、少女に投げかけられた質問だった。
少女は、胸の前で手を組む王女の顔を見ながら、力なく頷いた。
「ね、ルークとティア、危ないんじゃない?アッシュ、すごい勢いだったし……」
「追いかけよう。ジェイドの旦那は、導きの少女様を治療院へ」
「そうですね。あまり放置しておく訳にはいきません」
少女はジェイドに連れられて、治療院へ向かった。
治療院では泥が洗い流され、包帯が巻かれ、気休めの第七譜術がかけられた。
怪我は、全治3週間と診断された。
少女は出された栄養剤を飲みながら、ジェイドを見る。体が楽になり、周りが見えるようになった。
「助けていただいて、ありがとうございます」
「導きの少女様を見殺しにする訳にはいきませんからねぇ 」
「見殺し……」
ジェイドはおどけて言った。しかし、その言葉が少女の胸を絞めつける。
自分はアクぜリュスの民を見殺しにした。その事実が、改めて少女を襲った。自分はなんてひどいことを。
少女の濁っていく瞳を見て、ジェイドが声をかける。
「相当お疲れのようですね。ティアが部屋を貸してくれるそうですから、そこで休んでください」
どうやらあの後、アッシュとレプリカルークは交戦し、レプリカルークが気を失ったらしい。
彼はティアの部屋で休んでいるようだ。菜真絵は、教団員の臨時宿泊施設に案内された。導師や幹部がユリアシティを訪れた際に泊まる部屋だ。
コンコンコン、とノックの音がして、扉が開く。
そこには、ルークを除く全員の姿があった。導師も、赤髪の上司も、キムラスカの王女もいる。
「……何か、用ですか?」
「様子を見に来たんです。ひどい怪我でしたから」
「症状はどうだ」
イオンの言葉を遮るように、アッシュが強い語気で問う。
「今は歩けません。ですが、表皮だけの汚染で済んでいるようです。10日程で治るかと」
「おや、医者は3週間と言っていましたが?」
「誰よりも早く成長するって、本当なんだな」
少女は人の2倍早く歳をとる。つまり、少女は2倍速で生きている。回復までの時間や、物を憶えるまでの時間は2分の1だ。人々から見れば、少女は言葉通りの超人。だからこそ、ここまで生き延びることができたといえるだろう。
「ごめんなさいアッシュ様。このような痛手を負ってしまって」
「いや、いい。生きていただけでも……」
少年が優しく目を細めると、アニスが明るい声で茶々を入れる。
「あれれぇ?やっぱり、噂はホントなの?」
「噂?」
「特務師団長とその補佐官が、デキてるって……」
「おい、アニス」
井戸端会議のような調子のアニスを、ガイが制する。彼はわかりやすく、視線をナタリアに向けていた。
当のナタリアは眉を下げて、ただアッシュを見ている。
「あ…………、ごめんなさぁい」
アッシュはナタリアの婚約者だ。
いや、現時点ではレプリカルークが婚約者なのだが、仲間たちは「あの日の約束」に固執するナタリアの姿を何度も見てきた。
ナタリアの愛するルークは、記憶を失う前の彼だ。全員がそう感じていた。
そんな彼と別の女性に色恋の疑いをかけるのは、タブー中のタブーである。
「心配しないでください。噂は噂です。ナタリア殿下」
少女ははりつけたような笑顔で、ナタリアに声をかけた。しかし姫君は「私のことも、アッシュはあなたに話していたのですね……」と、呟くだけだった。
少女は少年を見る。話の中心となっていた少年だが、ここまで一言も話さずにいた。その目は、少女でもない、ナタリアでもない、どこか遠くを見ているようだった。
「俺は、過去を捨てたんだ」
それだけ言い放って、部屋を出ていく。
ナタリアは、ぎゅっと、自分の服を掴んだ。