外殻大地編
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陸艦から逃げ出して、峠を歩く。急いでも、急いでも、キッチリと時間は経過する。
「岩を破壊した跡がある。……誰かが前を通ったのだろう」
親善大使は自分達よりも前を歩いている。その事実が、2人を焦らせた。
1日かけて峠を越えると、そこには、ティア・グランツの姿があった。少女と少年が探していた女だ。しかし、神託の盾兵に囲まれている。
その奥、遠くの景色には、降りたはずのタルタロスの姿があった。あの後、ヴァンの部隊がタルタロスを掌握したのだ。もしあのまま乗っていても、無理矢理に降ろされたのだろう。
「何故私を捕まえようとするの!?」
「ヴァン総長のご命令なのです!」
少女は理解した。ヴァンは妹を逃がそうとしているのだと。それは紛れもなく、アクぜリュス崩落に向けた準備だ。
少年と少女は顔を見合わせて頷く。少女は剣で、少年は魔術で、瞬く間に兵士たちを薙ぎ払った。
「あなた達は……」
「一緒に来てください。あなたのお兄様を止めるために!」
「兄は……兄は一体、何を……」
「アクぜリュスを崩落させようとしている。お前は逃がされたんだよ!」
少女は、走りながらティアの質問に答えていった。
少年は、フォンスロットでレプリカルークに声を掛け続けた。しかし、断続的にしか声が届かないようだ。ただ、少年の切迫した様子を見るに、レプリカは既に、アクぜリュスの中心部にいるようだった。
「ひどい……先遣隊が……」
坑道に着くと、ヴァン率いる先遣隊は全滅していた。もちろん、ヴァンに殺されたのだろう。その周りには、息も絶え絶えな市民が転がっている。障気にやられ、目の前で惨劇が繰り広げられ、どんな気持ちだっただろう。もっと早く来れていたら、違ったのだろうか?
少女の頭の中に靄がかかる。進まなければならないのに。
キェー……
突然、空から大きな鳴き声が聴こえた。ヴァンが普段から操っているグリフィンだ。
「く……っ俺たちを遠ざけに来たか!」
狙っているのは少年のようだった。少女はグリフィン目掛けて短刀を投げつけ、ティアは走る。先に行くと、死霊使いジェイドがいた。ティアはジェイドに状況を説明するが、簡潔に話すのは難しい。何度も問答を続けた後、痺れを切らしたように少年が叫ぶ。
「おい!そんなとこで喋ってる暇があるなら、あの屑をどうにかしろ!死ぬぞ!」
「兄さんは、アクぜリュスを滅ぼそうとしているんです!」
「奥に行け。ということは理解できました。今は急ぎましょう」
ジェイドはその身を翻して走り出した。障気のうずまく坑道の奥を、4人が駆け抜ける。
早く、早く!
どれだけ願っても、足は一定のスピードでしか動かない。どれだけ力を入れても、うまく足先に伝わらない。
坑道の奥、セフィロトの扉の先、パッセージリングの前には、
倒れ込むレプリカルークがいた。
「くそっ!間に合わなかった!」
間に合わなかった。
既に、パッセージリングは破壊されている。
アクぜリュスは、消滅するのだ。
自分が、少年を引き留めていなければ、
わがままを言わなければ、
少年への執着など、持っていなければ、
もっと賢ければ、
こんなに、愚かじゃなければ、
誰も死ななかったかもしれないのに。
少女の目の前は真っ暗になった。
頭上から少年の声がきこえる。グリフィンに連れて行かれたのだろう。でも、地響きの音が耳を覆って、言葉を認識することはできなかった。
「明寺奏長!はやくこちらへ!」
ティアが呼んでいる。
少女の目の前が開けたときには、崩落する足元と、目まぐるしく上に吸い込まれていく景色が見えた。
ティアのまわりには防御壁が作られている。しかし少女は、その中にいなかった。
「明寺奏長!」
手を伸ばしてくれたのはジェイドだった。少女の左手首を掴んで、引っ張る。少女は咄嗟に剣を抜いて、地面に刺した。その剣に体重を乗せる。そうしているうちに、地面は魔界に落ちた。
「…………ぁ」
剣を掴んだまま踏ん張ると、地面に上がることができた。面々が、安堵の表情を浮かべている。
「よかった。あなただけでも救うことができて」
「でも、明寺奏長の足……」
ティアのそばにいなかったせいで、足が泥だらけだ。泥を拭ってみれば、皮膚がただれていた。鈍い痛みが、脳を支配する。障気の海に浸かったのだ、無理もない。
「早急な手当が必要ですね」
「ごめんなさい、私……」
ぼうっとしていた。そんなこと、情けなくて言えなかった。
自分の行動が災いして、アクぜリュスは崩落した。少女はその事実に気を取られ、ただただ立ち尽くしていたのだ。今は満足に立つこともできない。なんて、役立たずなんだろう。
「誰かいるわ!」
ティアが叫ぶ。
全てを飲み込んだ障気の海に、一人だけ浮かぶ少年がいた。
「父ちゃ……ん……。痛いよぅ……父ちゃ……」
戸板に捕まり呻く少年は、顔を青く染めていた。今この場に引き上げれば、いずれ。
少女は自分のベルトを抜いた。しかし少年には届きそうにない。ティアとナタリアは回復術を唱え始める。
「おい!まずいぞ!」
「いかん!」
戸板ごと、少年の身体が、海に沈んでいく。
「母……ちゃん……助け……て……。父ちゃん……たす……け……」
うつろな目で、少年はその手を伸ばす。しかし、誰の手も届かない。ガイが駆け寄るが、地面が大きく揺れて、弾みで少年は海に消えていった。
「くそっ!」
ガイは地面を殴りつけ、顔をうつ伏せる。他の面々も、声を出すことができない。
助けられなかった。底のない無力感が、その場を支配する。
「……こっ」
アニスが身を震わせて、なんとか声を紡ごうとする。果てしない障気の海の上を、甲高い声が駆け抜けた。
「ここも、壊れちゃうの!?」
「幸いにも、あそこにタルタロスが落下しています。そこに行きましょう。緊急用の浮標が作動して、この泥の上でも持ちこたえています」
一同は重い気持ちを振り払うように、タルタロスへ向かった。
「岩を破壊した跡がある。……誰かが前を通ったのだろう」
親善大使は自分達よりも前を歩いている。その事実が、2人を焦らせた。
1日かけて峠を越えると、そこには、ティア・グランツの姿があった。少女と少年が探していた女だ。しかし、神託の盾兵に囲まれている。
その奥、遠くの景色には、降りたはずのタルタロスの姿があった。あの後、ヴァンの部隊がタルタロスを掌握したのだ。もしあのまま乗っていても、無理矢理に降ろされたのだろう。
「何故私を捕まえようとするの!?」
「ヴァン総長のご命令なのです!」
少女は理解した。ヴァンは妹を逃がそうとしているのだと。それは紛れもなく、アクぜリュス崩落に向けた準備だ。
少年と少女は顔を見合わせて頷く。少女は剣で、少年は魔術で、瞬く間に兵士たちを薙ぎ払った。
「あなた達は……」
「一緒に来てください。あなたのお兄様を止めるために!」
「兄は……兄は一体、何を……」
「アクぜリュスを崩落させようとしている。お前は逃がされたんだよ!」
少女は、走りながらティアの質問に答えていった。
少年は、フォンスロットでレプリカルークに声を掛け続けた。しかし、断続的にしか声が届かないようだ。ただ、少年の切迫した様子を見るに、レプリカは既に、アクぜリュスの中心部にいるようだった。
「ひどい……先遣隊が……」
坑道に着くと、ヴァン率いる先遣隊は全滅していた。もちろん、ヴァンに殺されたのだろう。その周りには、息も絶え絶えな市民が転がっている。障気にやられ、目の前で惨劇が繰り広げられ、どんな気持ちだっただろう。もっと早く来れていたら、違ったのだろうか?
少女の頭の中に靄がかかる。進まなければならないのに。
キェー……
突然、空から大きな鳴き声が聴こえた。ヴァンが普段から操っているグリフィンだ。
「く……っ俺たちを遠ざけに来たか!」
狙っているのは少年のようだった。少女はグリフィン目掛けて短刀を投げつけ、ティアは走る。先に行くと、死霊使いジェイドがいた。ティアはジェイドに状況を説明するが、簡潔に話すのは難しい。何度も問答を続けた後、痺れを切らしたように少年が叫ぶ。
「おい!そんなとこで喋ってる暇があるなら、あの屑をどうにかしろ!死ぬぞ!」
「兄さんは、アクぜリュスを滅ぼそうとしているんです!」
「奥に行け。ということは理解できました。今は急ぎましょう」
ジェイドはその身を翻して走り出した。障気のうずまく坑道の奥を、4人が駆け抜ける。
早く、早く!
どれだけ願っても、足は一定のスピードでしか動かない。どれだけ力を入れても、うまく足先に伝わらない。
坑道の奥、セフィロトの扉の先、パッセージリングの前には、
倒れ込むレプリカルークがいた。
「くそっ!間に合わなかった!」
間に合わなかった。
既に、パッセージリングは破壊されている。
アクぜリュスは、消滅するのだ。
自分が、少年を引き留めていなければ、
わがままを言わなければ、
少年への執着など、持っていなければ、
もっと賢ければ、
こんなに、愚かじゃなければ、
誰も死ななかったかもしれないのに。
少女の目の前は真っ暗になった。
頭上から少年の声がきこえる。グリフィンに連れて行かれたのだろう。でも、地響きの音が耳を覆って、言葉を認識することはできなかった。
「明寺奏長!はやくこちらへ!」
ティアが呼んでいる。
少女の目の前が開けたときには、崩落する足元と、目まぐるしく上に吸い込まれていく景色が見えた。
ティアのまわりには防御壁が作られている。しかし少女は、その中にいなかった。
「明寺奏長!」
手を伸ばしてくれたのはジェイドだった。少女の左手首を掴んで、引っ張る。少女は咄嗟に剣を抜いて、地面に刺した。その剣に体重を乗せる。そうしているうちに、地面は魔界に落ちた。
「…………ぁ」
剣を掴んだまま踏ん張ると、地面に上がることができた。面々が、安堵の表情を浮かべている。
「よかった。あなただけでも救うことができて」
「でも、明寺奏長の足……」
ティアのそばにいなかったせいで、足が泥だらけだ。泥を拭ってみれば、皮膚がただれていた。鈍い痛みが、脳を支配する。障気の海に浸かったのだ、無理もない。
「早急な手当が必要ですね」
「ごめんなさい、私……」
ぼうっとしていた。そんなこと、情けなくて言えなかった。
自分の行動が災いして、アクぜリュスは崩落した。少女はその事実に気を取られ、ただただ立ち尽くしていたのだ。今は満足に立つこともできない。なんて、役立たずなんだろう。
「誰かいるわ!」
ティアが叫ぶ。
全てを飲み込んだ障気の海に、一人だけ浮かぶ少年がいた。
「父ちゃ……ん……。痛いよぅ……父ちゃ……」
戸板に捕まり呻く少年は、顔を青く染めていた。今この場に引き上げれば、いずれ。
少女は自分のベルトを抜いた。しかし少年には届きそうにない。ティアとナタリアは回復術を唱え始める。
「おい!まずいぞ!」
「いかん!」
戸板ごと、少年の身体が、海に沈んでいく。
「母……ちゃん……助け……て……。父ちゃん……たす……け……」
うつろな目で、少年はその手を伸ばす。しかし、誰の手も届かない。ガイが駆け寄るが、地面が大きく揺れて、弾みで少年は海に消えていった。
「くそっ!」
ガイは地面を殴りつけ、顔をうつ伏せる。他の面々も、声を出すことができない。
助けられなかった。底のない無力感が、その場を支配する。
「……こっ」
アニスが身を震わせて、なんとか声を紡ごうとする。果てしない障気の海の上を、甲高い声が駆け抜けた。
「ここも、壊れちゃうの!?」
「幸いにも、あそこにタルタロスが落下しています。そこに行きましょう。緊急用の浮標が作動して、この泥の上でも持ちこたえています」
一同は重い気持ちを振り払うように、タルタロスへ向かった。