外殻大地編
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少年と少女は、例によってタルタロスで茶を飲んでいた。
導師イオンを逃した。それなのに、ヴァンは何も動きを見せない。
「やはり、レプリカがアクぜリュスと共に消えるまで待つしかないのでは?」
少女がそう呟くが、少年は考えることをやめない。パッセージリングの操作は不可能だとイオンが言っていた。しかしセフィロトには、それ以外に機構はない。
ヴァンは、パッセージリングを操作しようとしているのだ。
「パッセージリングを操作すれば、大地の高度を自由に操れる。魔界に落とすことも、」
「……ああ。だが、今はそれができないはずだ」
訝しげな少年の表情を見て、菜真絵はひとつ、提案した。
「あの時は接触できませんでしたが、レプリカを通してティア・グランツ響長とお話をしてはいかがでしょうか」
フォンスロットによる通信は、それほど便利な物ではない。回線が繋がっても、レプリカルークが話を聞かなければ無意味だ。あの高慢なレプリカと、対話できるのだろうか。
しかし、今は藁にもすがる思いだ。少年はレプリカルークに話しかける。
通信の間、少女は少年の表情でしか会話内容を察することができない。しかめっ面になったと思えば、屑、と口が動く。そんな少年の姿は、やけにコミカルだ。
しかし急に、少年の表情が切迫したものに変わる。
「おい!どういうことか説明しろ!」
通信が途切れてしまったようだ。
少女は少年の服の裾を掴んで、首を傾げてみせる。少年は、重い重い口を、こじ開けるようにしてこう言った。
「超振動で障気を中和できると、ヴァンに吹き込まれているらしい」
そんなことが可能なのか。少女は質問しようとしたが、野暮だと気がついてやめた。
「奴の視界を見た。イオンは……ダアトに帰っていなかった」
ND2018
ローレライの力を継ぐ若者
人々を引き連れ鉱山の街へと向かう
そこで若者は力を災いとし
キムラスカの武器となって街とともに消滅す
情報が繋がっていく。
アクぜリュスにはセフィロトがある。導師イオンが解咒すれば、パッセージリングを操作できるようになる。超振動は、すべてを分解し、再構築する力だ。パッセージリングを破壊することくらい容易いだろう。
「つまり、ヴァン様はレプリカの超振動で、アクぜリュスを落とそうとしている?」
「アクぜリュスだけじゃねえ。他のセフィロトツリーも消そうとしてるんだ!」
少年は走り出した。陸艦から逃げ、アクぜリュスに向かおうとしているのだ。しかし、少女はその腕を掴み、止めた。
「何をするおつもりですか」
「ヴァンを止めに行くんだよ!」
「それは、アクぜリュスが消滅してからも間に合います」
少年は少女を睨んだ。一体何を言っているのだ、と。
ユリアの預言には、アクぜリュスの消滅が詠まれている。少年はこれまで、それが事故、つまり、レプリカの力の暴走によるものだと思っていた。しかし、すべてはヴァンの計画の一部だったのだ。それなら、自分の力で止められるかもしれない。
「今行けば止められるかもしねぇんだぞ!」
「今行けば、レプリカでなくアッシュ様が死ぬかもしれないんですよ!」
少女は叫んだ。これほどまでに鬼気迫る少女を、少年は見たことがなかった。こんなに大きな声で、震えながら、瞳孔を開く姿は、普段の穏やかな少女からは到底想像できない。
「ユリアの預言は絶対です。だからこそ、ヴァン様はあなたをアクぜリュスに近づけなかった」
「このままじゃ数千の人間が死ぬ。預言の通りになったとしても、俺1人増えるだけだ」
少年は遠い目をして、少女の肩を突き飛ばした。しかし少女は食い下がり、今度は少年の腰を掴む。いつの間にこんなに強くなっていたんだ。華奢だった少女が。
「お前は残って、この世界を導けばいい。俺がいなくてもやれるだろう」
少年は少女になら、未来を任せられると思っていた。預言のない、誰もが自分の未来を自分で決められる世界……、それを共に望んだ相手だ。
自分は死んででもヴァンを道連れにする。それで世界は救われるはず。少年はそう思ったのだ。
少女は、信頼されていることを嬉しく思った。
だけど、だけど、そうじゃない、
少女は涙を拭いたかったが、手は少年の腰に回されていて、動けない。ぼろぼろと涙を流しながら、硬くなった口を無理矢理に動かす。
「私……わたしは、アッシュ様がいない未来など、望んでいません!」
日本のように、争いのない世界。ずっとそれを夢見ていた。しかしいつの間にか『少年が幸せになる未来』を追い求めるようになっていた。
少女にとって、少年がいなければ意味がないのだ。
「アクぜリュスには行かせません……!私は、アッシュ様に死んでほしくない!」
駄々っ子のように泣きじゃくる少女を、少年は冷たい目で見つめる。
少女は、自分を愛している。
だからこそ引き留めるのだ。少年はそれを理解していた。嬉しかった。それを励みに、ここまで走ってきた。
だが今だけは、その気持ちが足枷になる
「お前は俺1人の為に、街を滅ぼすのか?」
「………………っ」
少女は愕然とした。
愛する人のために、何かを犠牲にする。一見美しく見える話だが、それは違う。
「…………これじゃあ、モース様と、オールドラントと、何も変わらない……?」
モースは、教団は、この世界は、未曾有の繁栄のためにルークを見殺しにしようとしている。少女が、少年が、ヴァンが嫌っていた世界の仕組みだ。
しかし少女は今、アッシュを生かすためにアクぜリュスの崩落を見届けようとしている。それは、今の世界と、何も変わらない。
少女は少年を想うあまり、本当の目的を見失っていたのだ。
「私は、なんて愚かな……」
「俺は行く、愚かなヴァンを止めにな」
少年は少女を軽蔑した。同時に、自分の心に問いかける。
少女が自ら死を選ぼうとしていたら、自分はその背中を押せるだろうか?
「俺に、お前を説教する資格などなかったな」
少年は少女を振りほどいた。先程までの力が嘘のように、すんなりと腕が解ける。少女の顔を見てみれば、涙の跡でひどく汚かった。
「アッシュ様」
「なんだ」
「私も行きます」
目に光のない、絶望に打ちひしがれたような表情の少女。しかしその口からは、希望の言葉が放たれた。
「お前も死ぬかもしれないぞ」
「私は、導きの少女ですよ?」
「皮肉か」
少女は口元を綻ばせながら、こくりと頷いた。
少年かレプリカが死んで、預言の上をなぞることになれば、少女は少なくとも、世界を導くまでは生きられる。少年の命で、少女の命が守られるのだ。
「必ず、ティア・グランツ響長と合流してください。彼女は障気をしのぐ方法を知っています。少しでも、生き延びる確率を上げるために」
少女はアリエッタ回収の際、フーブラス川で障気を跳ね除けるティアを見た。おそらく、第七音素の力なのだろう。彼女が味方になれば、魔界に落ちても死なずに済むかもしれない。
「何故心変わりした?」
「ヴァン様が愚か者だと、やっと気がついたからです」
たとえ預言を覆すためだろうと、誰かを犠牲にしていいはずがない。彼は、愚か者だったのだ。
2人はやっと、愚か者と決別する。
導師イオンを逃した。それなのに、ヴァンは何も動きを見せない。
「やはり、レプリカがアクぜリュスと共に消えるまで待つしかないのでは?」
少女がそう呟くが、少年は考えることをやめない。パッセージリングの操作は不可能だとイオンが言っていた。しかしセフィロトには、それ以外に機構はない。
ヴァンは、パッセージリングを操作しようとしているのだ。
「パッセージリングを操作すれば、大地の高度を自由に操れる。魔界に落とすことも、」
「……ああ。だが、今はそれができないはずだ」
訝しげな少年の表情を見て、菜真絵はひとつ、提案した。
「あの時は接触できませんでしたが、レプリカを通してティア・グランツ響長とお話をしてはいかがでしょうか」
フォンスロットによる通信は、それほど便利な物ではない。回線が繋がっても、レプリカルークが話を聞かなければ無意味だ。あの高慢なレプリカと、対話できるのだろうか。
しかし、今は藁にもすがる思いだ。少年はレプリカルークに話しかける。
通信の間、少女は少年の表情でしか会話内容を察することができない。しかめっ面になったと思えば、屑、と口が動く。そんな少年の姿は、やけにコミカルだ。
しかし急に、少年の表情が切迫したものに変わる。
「おい!どういうことか説明しろ!」
通信が途切れてしまったようだ。
少女は少年の服の裾を掴んで、首を傾げてみせる。少年は、重い重い口を、こじ開けるようにしてこう言った。
「超振動で障気を中和できると、ヴァンに吹き込まれているらしい」
そんなことが可能なのか。少女は質問しようとしたが、野暮だと気がついてやめた。
「奴の視界を見た。イオンは……ダアトに帰っていなかった」
ND2018
ローレライの力を継ぐ若者
人々を引き連れ鉱山の街へと向かう
そこで若者は力を災いとし
キムラスカの武器となって街とともに消滅す
情報が繋がっていく。
アクぜリュスにはセフィロトがある。導師イオンが解咒すれば、パッセージリングを操作できるようになる。超振動は、すべてを分解し、再構築する力だ。パッセージリングを破壊することくらい容易いだろう。
「つまり、ヴァン様はレプリカの超振動で、アクぜリュスを落とそうとしている?」
「アクぜリュスだけじゃねえ。他のセフィロトツリーも消そうとしてるんだ!」
少年は走り出した。陸艦から逃げ、アクぜリュスに向かおうとしているのだ。しかし、少女はその腕を掴み、止めた。
「何をするおつもりですか」
「ヴァンを止めに行くんだよ!」
「それは、アクぜリュスが消滅してからも間に合います」
少年は少女を睨んだ。一体何を言っているのだ、と。
ユリアの預言には、アクぜリュスの消滅が詠まれている。少年はこれまで、それが事故、つまり、レプリカの力の暴走によるものだと思っていた。しかし、すべてはヴァンの計画の一部だったのだ。それなら、自分の力で止められるかもしれない。
「今行けば止められるかもしねぇんだぞ!」
「今行けば、レプリカでなくアッシュ様が死ぬかもしれないんですよ!」
少女は叫んだ。これほどまでに鬼気迫る少女を、少年は見たことがなかった。こんなに大きな声で、震えながら、瞳孔を開く姿は、普段の穏やかな少女からは到底想像できない。
「ユリアの預言は絶対です。だからこそ、ヴァン様はあなたをアクぜリュスに近づけなかった」
「このままじゃ数千の人間が死ぬ。預言の通りになったとしても、俺1人増えるだけだ」
少年は遠い目をして、少女の肩を突き飛ばした。しかし少女は食い下がり、今度は少年の腰を掴む。いつの間にこんなに強くなっていたんだ。華奢だった少女が。
「お前は残って、この世界を導けばいい。俺がいなくてもやれるだろう」
少年は少女になら、未来を任せられると思っていた。預言のない、誰もが自分の未来を自分で決められる世界……、それを共に望んだ相手だ。
自分は死んででもヴァンを道連れにする。それで世界は救われるはず。少年はそう思ったのだ。
少女は、信頼されていることを嬉しく思った。
だけど、だけど、そうじゃない、
少女は涙を拭いたかったが、手は少年の腰に回されていて、動けない。ぼろぼろと涙を流しながら、硬くなった口を無理矢理に動かす。
「私……わたしは、アッシュ様がいない未来など、望んでいません!」
日本のように、争いのない世界。ずっとそれを夢見ていた。しかしいつの間にか『少年が幸せになる未来』を追い求めるようになっていた。
少女にとって、少年がいなければ意味がないのだ。
「アクぜリュスには行かせません……!私は、アッシュ様に死んでほしくない!」
駄々っ子のように泣きじゃくる少女を、少年は冷たい目で見つめる。
少女は、自分を愛している。
だからこそ引き留めるのだ。少年はそれを理解していた。嬉しかった。それを励みに、ここまで走ってきた。
だが今だけは、その気持ちが足枷になる
「お前は俺1人の為に、街を滅ぼすのか?」
「………………っ」
少女は愕然とした。
愛する人のために、何かを犠牲にする。一見美しく見える話だが、それは違う。
「…………これじゃあ、モース様と、オールドラントと、何も変わらない……?」
モースは、教団は、この世界は、未曾有の繁栄のためにルークを見殺しにしようとしている。少女が、少年が、ヴァンが嫌っていた世界の仕組みだ。
しかし少女は今、アッシュを生かすためにアクぜリュスの崩落を見届けようとしている。それは、今の世界と、何も変わらない。
少女は少年を想うあまり、本当の目的を見失っていたのだ。
「私は、なんて愚かな……」
「俺は行く、愚かなヴァンを止めにな」
少年は少女を軽蔑した。同時に、自分の心に問いかける。
少女が自ら死を選ぼうとしていたら、自分はその背中を押せるだろうか?
「俺に、お前を説教する資格などなかったな」
少年は少女を振りほどいた。先程までの力が嘘のように、すんなりと腕が解ける。少女の顔を見てみれば、涙の跡でひどく汚かった。
「アッシュ様」
「なんだ」
「私も行きます」
目に光のない、絶望に打ちひしがれたような表情の少女。しかしその口からは、希望の言葉が放たれた。
「お前も死ぬかもしれないぞ」
「私は、導きの少女ですよ?」
「皮肉か」
少女は口元を綻ばせながら、こくりと頷いた。
少年かレプリカが死んで、預言の上をなぞることになれば、少女は少なくとも、世界を導くまでは生きられる。少年の命で、少女の命が守られるのだ。
「必ず、ティア・グランツ響長と合流してください。彼女は障気をしのぐ方法を知っています。少しでも、生き延びる確率を上げるために」
少女はアリエッタ回収の際、フーブラス川で障気を跳ね除けるティアを見た。おそらく、第七音素の力なのだろう。彼女が味方になれば、魔界に落ちても死なずに済むかもしれない。
「何故心変わりした?」
「ヴァン様が愚か者だと、やっと気がついたからです」
たとえ預言を覆すためだろうと、誰かを犠牲にしていいはずがない。彼は、愚か者だったのだ。
2人はやっと、愚か者と決別する。