外殻大地編
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「解咒の話をしなかったのは、俺をアクぜリュスから遠ざけるため、か」
少女は船の中で、ヴァンとのやり取りを少年に話した。一語一句、正確に。少女の前でもヴァンはボロを出さない。事実、少年はその話を聞いて、心が揺らいでいた。
「俺の考えすぎだったのか……?」
「私は、信用してもいいかと」
2人だけの部屋は、沈黙に包まれる。
中身の見えないヴァンの計画に乗るか、それとも、抗って死の危機に立ち向かうか。その決断は、若い少年には難しかった。
一方の少女は、本心ではヴァンを疑っていなかった。自分の目指す未来も、アッシュの事も、わかってくれている。そんな人、他にいないのだ。目の前の少年の表情が曇っていなければ、手放しについていっただろう。
「それなら何故、ヴァンの妹は暗殺など企んだ」
「預言に抗うことを良しとしていなかったのでは?」
「それだけで実の兄を殺そうとするだろうか」
言われてみればそうだ。少女は、少年の瞳の奥に浮かぶ、公爵や王女の姿を見たような気がした。彼ならきっと、その程度の事で家族を殺そうなどと思わないのだろう。少女も同じだ。自分の家族が法を犯したとしたら?自分に刃を向けたとしたら?それでも、殺意を抱くまでのことは、ない。
果たして、ティア・グランツの目線から何が見えているのだろう。少女は想いを馳せたが、わからなかった。
「ザオ遺跡で導師を逃せば、時間は稼げます」
「ああ……。揺さぶって、ヴァンの出方を見る」
「アッシュ様、レプリカの死を見届けるまでは、アクぜリュスに向かわないでくださいね」
アッシュ様に、絶対死んでほしくありませんから。少女はそう言って笑う。こんなことを言う人間は、この世でヴァンと、この少女だけだ。少年はそれを心強くも、心許なくも思った。
バチカル付近の平野に船をつけ待っていると、漆黒の翼がやって来た。もちろん、導師も一緒だ。
「成果分の報酬です。助かりました」
「ありがと。達者でね。アッシュの旦那とお幸せに」
ノワールはニヤけた顔でそう言った。少女は首を傾げる。少年との関係を疑われるようなことは言っていないはずだ。それに、そんなんじゃないし。
少女がノワールを睨むと、彼女は背を向けて、ヒラヒラと手を振った。
「ま、女の勘ってやつよ」
当たらずとも遠からず。でも、だからこそ、やめてほしいと少女は思った。幸せにはなりたいが、少年と一緒に、などとは思っていないのだから。
「こちらです、導師イオン」
少女がイオンを船内に招こうとすると、彼はアッシュの前で足を止めた。その顔を見るなり、訝しげな表情を浮かべる。
「どうした、珍しい顔でもないだろう」
おそらく、レプリカルークと同じ顔をしているから驚いているのだろう。
導師イオンはついこの間まで、レプリカルークと旅をしていたのだ。それを知っている少年は皮肉っぽく、導師に語りかけた。
その時だ。
「イオンを……返せぇ~っ!」
噂をすればなんとやら、聞き馴染みのある声が、一同の耳をかすめる。声の主は、左手に剣を携えていた。
少年は咄嗟に剣を抜いて、対峙した。同じ顔が2つ並ぶ。
「……お前かぁっ!」
少年は普段通りに戦っている。そのはずなのに、剣を振るタイミングも、繰り出す技も、全てが同じだった。まるで、鏡のように。
「これが、レプリカ……」
少女は感嘆の声を漏らした。雨で少年の髪が降りているから、見た目も全く同じだ。
向かい側に立っているレプリカルークの仲間たちも、その光景に驚いているようだった。
しかし、全く同じ振る舞いをしているとはいえ、鮮血のアッシュのほうが力は強いようだ。しだいにレプリカルークは押され、仲間の元まで後退した。
「アッシュ!今はイオンが優先だ!」
「わかっている!」
背後からシンクの声がする。
少年は剣を鞘に収めて身を翻した。しかし、一度だけレプリカルークを睨むと、言い捨てる。
「いいご身分だな!ちゃらちゃら女を引き連れやがって」
その声は少女の耳にも届いた。
向こうには、ナタリア王女がいる。導師守護役も、ヴァンの妹も。それが少年にとってはうらやましいのだろう。少なくとも、つい口走ってしまうくらいには。
自分は仲間ではあっても、女ではないのかもしれない。少女はそう考えながら、髪のリボンをほどいてみた。ちゃんと髪は長いし、腕も華奢だ。
「ノワールさんは見る目がないって、次会ったときに教えてあげなくちゃ」
誰にも聴こえないように、少女はそうつぶやいた。
少女は船の中で、ヴァンとのやり取りを少年に話した。一語一句、正確に。少女の前でもヴァンはボロを出さない。事実、少年はその話を聞いて、心が揺らいでいた。
「俺の考えすぎだったのか……?」
「私は、信用してもいいかと」
2人だけの部屋は、沈黙に包まれる。
中身の見えないヴァンの計画に乗るか、それとも、抗って死の危機に立ち向かうか。その決断は、若い少年には難しかった。
一方の少女は、本心ではヴァンを疑っていなかった。自分の目指す未来も、アッシュの事も、わかってくれている。そんな人、他にいないのだ。目の前の少年の表情が曇っていなければ、手放しについていっただろう。
「それなら何故、ヴァンの妹は暗殺など企んだ」
「預言に抗うことを良しとしていなかったのでは?」
「それだけで実の兄を殺そうとするだろうか」
言われてみればそうだ。少女は、少年の瞳の奥に浮かぶ、公爵や王女の姿を見たような気がした。彼ならきっと、その程度の事で家族を殺そうなどと思わないのだろう。少女も同じだ。自分の家族が法を犯したとしたら?自分に刃を向けたとしたら?それでも、殺意を抱くまでのことは、ない。
果たして、ティア・グランツの目線から何が見えているのだろう。少女は想いを馳せたが、わからなかった。
「ザオ遺跡で導師を逃せば、時間は稼げます」
「ああ……。揺さぶって、ヴァンの出方を見る」
「アッシュ様、レプリカの死を見届けるまでは、アクぜリュスに向かわないでくださいね」
アッシュ様に、絶対死んでほしくありませんから。少女はそう言って笑う。こんなことを言う人間は、この世でヴァンと、この少女だけだ。少年はそれを心強くも、心許なくも思った。
バチカル付近の平野に船をつけ待っていると、漆黒の翼がやって来た。もちろん、導師も一緒だ。
「成果分の報酬です。助かりました」
「ありがと。達者でね。アッシュの旦那とお幸せに」
ノワールはニヤけた顔でそう言った。少女は首を傾げる。少年との関係を疑われるようなことは言っていないはずだ。それに、そんなんじゃないし。
少女がノワールを睨むと、彼女は背を向けて、ヒラヒラと手を振った。
「ま、女の勘ってやつよ」
当たらずとも遠からず。でも、だからこそ、やめてほしいと少女は思った。幸せにはなりたいが、少年と一緒に、などとは思っていないのだから。
「こちらです、導師イオン」
少女がイオンを船内に招こうとすると、彼はアッシュの前で足を止めた。その顔を見るなり、訝しげな表情を浮かべる。
「どうした、珍しい顔でもないだろう」
おそらく、レプリカルークと同じ顔をしているから驚いているのだろう。
導師イオンはついこの間まで、レプリカルークと旅をしていたのだ。それを知っている少年は皮肉っぽく、導師に語りかけた。
その時だ。
「イオンを……返せぇ~っ!」
噂をすればなんとやら、聞き馴染みのある声が、一同の耳をかすめる。声の主は、左手に剣を携えていた。
少年は咄嗟に剣を抜いて、対峙した。同じ顔が2つ並ぶ。
「……お前かぁっ!」
少年は普段通りに戦っている。そのはずなのに、剣を振るタイミングも、繰り出す技も、全てが同じだった。まるで、鏡のように。
「これが、レプリカ……」
少女は感嘆の声を漏らした。雨で少年の髪が降りているから、見た目も全く同じだ。
向かい側に立っているレプリカルークの仲間たちも、その光景に驚いているようだった。
しかし、全く同じ振る舞いをしているとはいえ、鮮血のアッシュのほうが力は強いようだ。しだいにレプリカルークは押され、仲間の元まで後退した。
「アッシュ!今はイオンが優先だ!」
「わかっている!」
背後からシンクの声がする。
少年は剣を鞘に収めて身を翻した。しかし、一度だけレプリカルークを睨むと、言い捨てる。
「いいご身分だな!ちゃらちゃら女を引き連れやがって」
その声は少女の耳にも届いた。
向こうには、ナタリア王女がいる。導師守護役も、ヴァンの妹も。それが少年にとってはうらやましいのだろう。少なくとも、つい口走ってしまうくらいには。
自分は仲間ではあっても、女ではないのかもしれない。少女はそう考えながら、髪のリボンをほどいてみた。ちゃんと髪は長いし、腕も華奢だ。
「ノワールさんは見る目がないって、次会ったときに教えてあげなくちゃ」
誰にも聴こえないように、少女はそうつぶやいた。