外殻大地編
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「俺は船で待機して、監視することにする」
「珍しいね。そんなにあの出来損ないに会いたくないの?」
「うるせぇ」
シンクに煽られたものの、アッシュは冷静だった。確かにレプリカには会いたくない。だが、船に残る目的はそれではなかった。
「アッシュ様」
部屋へ戻ると、少女はお茶菓子を用意していた。一体どこから。少年がそう尋ねると、倉庫を物色したと話した。少女はとぼけた顔して意外と素早い。
2人で茶を飲んで、菓子を食べる。血まみれの船の中で。
「……今は、ヴァン様の動向を追うしかありませんね」
「ああ。そのために、ディストに同調フォンスロットの解放を頼んだ」
「同位体同士なら、遠隔地にいても連絡が取れるのですね」
少年がヴァンへの疑念を吐露したのは、つい先程のこと。レプリカルーク一行の強襲で途切れたが、まだ話は途中だった。
「この資料は燃やす。誰にも言うな」
「へ……?せっかく調べてきたのに」
「俺がこれを持っていると知れたら怪しまれるだろう」
少年は迷う事なく書類を燃やした。船内には第五音素を使ったコンロがある。紙は瞬く間に燃え広がり、散り散りになって消えた。
少年が1人旅に出て、ヴァンの調べていることを調査した、その結晶。
少女は、何故少年がこうも簡単に資料を燃やすのかと考えた。すると、結論は1箇所にしか辿り着かなかった。少年は自分に教えるためだけに、あの資料を持ち帰ったのだ。自分が知りたいだけなら、何も持ち帰る必要はない。
「…………」
嬉しかった。ただ純粋に、嬉しかった。
少女は瞳に浮かんだ涙を、気付かれる前に拭った。
「……お前は、どうしてそんなに従順なんだ」
ふと、少年が呟く。
前から不思議だった。どんなにひどい仕打ちをしても、どんなに辛い任務を任せても、少女は文句一つ言わず、自分の後をついてきた。
少女と話をしていても、意志が弱いとは思えない。頭もそれなりに回る。逃げ出す力が無いわけではない。
少女はぐっと首を傾げて、考え込む素振りをした。
少年は回答を待つ間、不安になった。自分はどんな答えが欲しいのだろう。「貴方が好きだから」とでも言われたいのだろうか?いや、そうではない。
少年はただ安心したかった。自分の考えを全て話してしまったのだ。いつの間にか、この部下を信用してしまっているのだ。もしもそれが間違っていたとしたら?少女がモースやヴァンのスパイだったとしたら?最初から全て演技だったとしたら?
そんな思いを払拭したかったのだ。
「……最初は、居場所が欲しかったんだと思います」
少女の回答は難解なものだった。以前、少女は少年と言い争った際、「居場所はモースが用意してくれる」と言い切った。
頑張る必要はない、誰かが護ってくれる。預言がある限り、ここがオールドラントである限り、居場所はどこにでもある。
それが導きの少女様のはずだ。少女も、そう思っていたはずだ。
「預言に頼らずに生きたかった。だから、預言が無くても生きているアッシュ様に認められれば、私も……って」
少女の純粋な瞳が、少年には痛かった。
自分はまだ何もできていない。預言から逃げ切ることも、1人で生きていくことも。
「いや、俺はまだ……」
同時に、安心感もあった。少女の言い淀まない姿勢は、嘘をついているようには見えなかった。これまでに少女が言ったことは、全部本心だ。そう思うと心が軽くなって、つい、また自分の話をしてしまいそうになる。
「アッシュ様は頑張っています。自分で未来を選ぼうとしています。それはきっと報われます。私は……」
その先の、幸せな結末を一緒に見たい。だから、貴方の後を追うんだ。
その言葉が出そうになって、少女は息を呑んだ。いけない。こんな甘い台詞は、自分達には似合わない。
彼には婚約者がいる。家族もいる。自分とは違って、大切な誰かがまだ目と鼻の先にいる。
彼の望む未来は、元の鞘に戻ることかもしれない。彼が一番幸せになれる道は、ここから一人で逃げ出すことかもしれない。
それなのに、彼と一緒の未来を望んではいけない。望んでいても言ってはいけない。
少女は言葉を変えて、続ける。
「私は、そんなアッシュ様を、応援したいと思っているんです」
「応援?」
「ごめんなさい、あつかましいですよね」
苦し紛れに言った台詞だが、少年は目を見開いて、その言葉を反復した。
そんなことを言われたのは初めてだった。そして、そう言う少女の声は、とても柔らかかった。
初めての言葉に、返す返事なんて持っていない。
少年は何も言わずに、紅茶に口をつける。砂糖を入れていないはずなのに、甘く感じた。
「珍しいね。そんなにあの出来損ないに会いたくないの?」
「うるせぇ」
シンクに煽られたものの、アッシュは冷静だった。確かにレプリカには会いたくない。だが、船に残る目的はそれではなかった。
「アッシュ様」
部屋へ戻ると、少女はお茶菓子を用意していた。一体どこから。少年がそう尋ねると、倉庫を物色したと話した。少女はとぼけた顔して意外と素早い。
2人で茶を飲んで、菓子を食べる。血まみれの船の中で。
「……今は、ヴァン様の動向を追うしかありませんね」
「ああ。そのために、ディストに同調フォンスロットの解放を頼んだ」
「同位体同士なら、遠隔地にいても連絡が取れるのですね」
少年がヴァンへの疑念を吐露したのは、つい先程のこと。レプリカルーク一行の強襲で途切れたが、まだ話は途中だった。
「この資料は燃やす。誰にも言うな」
「へ……?せっかく調べてきたのに」
「俺がこれを持っていると知れたら怪しまれるだろう」
少年は迷う事なく書類を燃やした。船内には第五音素を使ったコンロがある。紙は瞬く間に燃え広がり、散り散りになって消えた。
少年が1人旅に出て、ヴァンの調べていることを調査した、その結晶。
少女は、何故少年がこうも簡単に資料を燃やすのかと考えた。すると、結論は1箇所にしか辿り着かなかった。少年は自分に教えるためだけに、あの資料を持ち帰ったのだ。自分が知りたいだけなら、何も持ち帰る必要はない。
「…………」
嬉しかった。ただ純粋に、嬉しかった。
少女は瞳に浮かんだ涙を、気付かれる前に拭った。
「……お前は、どうしてそんなに従順なんだ」
ふと、少年が呟く。
前から不思議だった。どんなにひどい仕打ちをしても、どんなに辛い任務を任せても、少女は文句一つ言わず、自分の後をついてきた。
少女と話をしていても、意志が弱いとは思えない。頭もそれなりに回る。逃げ出す力が無いわけではない。
少女はぐっと首を傾げて、考え込む素振りをした。
少年は回答を待つ間、不安になった。自分はどんな答えが欲しいのだろう。「貴方が好きだから」とでも言われたいのだろうか?いや、そうではない。
少年はただ安心したかった。自分の考えを全て話してしまったのだ。いつの間にか、この部下を信用してしまっているのだ。もしもそれが間違っていたとしたら?少女がモースやヴァンのスパイだったとしたら?最初から全て演技だったとしたら?
そんな思いを払拭したかったのだ。
「……最初は、居場所が欲しかったんだと思います」
少女の回答は難解なものだった。以前、少女は少年と言い争った際、「居場所はモースが用意してくれる」と言い切った。
頑張る必要はない、誰かが護ってくれる。預言がある限り、ここがオールドラントである限り、居場所はどこにでもある。
それが導きの少女様のはずだ。少女も、そう思っていたはずだ。
「預言に頼らずに生きたかった。だから、預言が無くても生きているアッシュ様に認められれば、私も……って」
少女の純粋な瞳が、少年には痛かった。
自分はまだ何もできていない。預言から逃げ切ることも、1人で生きていくことも。
「いや、俺はまだ……」
同時に、安心感もあった。少女の言い淀まない姿勢は、嘘をついているようには見えなかった。これまでに少女が言ったことは、全部本心だ。そう思うと心が軽くなって、つい、また自分の話をしてしまいそうになる。
「アッシュ様は頑張っています。自分で未来を選ぼうとしています。それはきっと報われます。私は……」
その先の、幸せな結末を一緒に見たい。だから、貴方の後を追うんだ。
その言葉が出そうになって、少女は息を呑んだ。いけない。こんな甘い台詞は、自分達には似合わない。
彼には婚約者がいる。家族もいる。自分とは違って、大切な誰かがまだ目と鼻の先にいる。
彼の望む未来は、元の鞘に戻ることかもしれない。彼が一番幸せになれる道は、ここから一人で逃げ出すことかもしれない。
それなのに、彼と一緒の未来を望んではいけない。望んでいても言ってはいけない。
少女は言葉を変えて、続ける。
「私は、そんなアッシュ様を、応援したいと思っているんです」
「応援?」
「ごめんなさい、あつかましいですよね」
苦し紛れに言った台詞だが、少年は目を見開いて、その言葉を反復した。
そんなことを言われたのは初めてだった。そして、そう言う少女の声は、とても柔らかかった。
初めての言葉に、返す返事なんて持っていない。
少年は何も言わずに、紅茶に口をつける。砂糖を入れていないはずなのに、甘く感じた。