外殻大地編
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「アッシュ、お前は頭を冷やしていろ」
リグレットがそう言うと、少年は椅子に腰掛けた。船で待機していろという意味だ。
既にこの船の中に敵はジェイド、ルーク、その付き添いの女、チーグルの子供しかいない。彼らは捕らえられている。ここに居ても危険ということはないだろう。少年と少女は図々しくも湯沸かし室で茶を淹れ、飲むことにした。
「……大丈夫ですか、アッシュ様」
「何がだ」
大丈夫な訳がない。あのレプリカに会ったのだ。 あの時の少年は、憎しみを抑えきれない様子だった。もう落ち着いたか、少女はそう問うたつもりだったが、少年の態度は冷たい。
「アッシュ様のほうがハンサムでしたね」
少女がそう言うと、少年に睨まれる。さすがに冗談か過ぎただろうか。少女はそう思ったが、少年はフッと笑った。狼狽える少女を見て、可笑しくなったのだ。
「当たり前だ」
少年がそう言うと、少女も笑う。
落ち着いてなどいない。あの顔を見たら、情けない出来損ないを見たら、また斬りかかってしまうかもしれない。それでも少年は、少女に落ち込んだ姿を見せたくなかった。
「レプリカが城を出るのは、予定外の出来事なんですよね。ヴァン様の計画に支障が出ないといいのですが」
少女が茶をすすりながらそう言うと、少年は訝しげに声を掛ける。
「ヴァンからどこまで聞いている」
「預言を覆すために計画を立てていると……、ただ、それだけ」
「そうか」
少年は少し迷った後、持っていた書類を少女に見せた。その書類を少女はまじまじと見つめるが、何が書いてあるのか、正確にはわからない。
「セフィロトで、導師イオンにダアト式封咒を解かせているらしい」
「……今回の任務は、モース様の命令ではなく、ヴァン様の計画の一部だと?」
ヴァンが何かを隠している。少女は少年の疑いを感じ取った。しかし、少女はそれを飲み込めない。預言を覆す。その考えさえ変わらなければ、どんな手順を踏もうと関係ないはずだ。
「何かお考えがあるのでは?」
「セフィロトには、大地を支える柱がある。預言とそれが、関係あると思うか?」
「………」
大地を破壊して、世界を無くすことで預言を壊す。そんな筋書きを少女は思い浮かべたが、現実味がなさすぎる。きっと、もっと高度な事をしようとしているのだろう。少女はそう思った。
しかし、少年の瞳は揺れていた。ヴァンを信用していない。そう取れるような、不安げな瞳。
「もし、よからぬことを考えているのだとしたら、どうすれば……」
少女は決め切れなかった。ヴァンを信用していいのかどうか。ついこの間、彼と握手を交わしたばかりじゃないか。彼の思想に未来を感じたじゃないか。ついて行くと、決めたじゃないか。
それでも、少年の碧い瞳を見ると、心が揺れた。
「今は、何もできない」
少年は震えているようだった。動き出した計画に、怖気づいているからなのかもしれない。ヴァンを怖がっているからなのかもしれない。少女は、その震えを止めたいと思った。
彼が不安になっていると、自分まで怖くなる。彼の悲しそうな顔を見ると、胸が締め付けられる。
(そうだ。今私が一番欲しいのは、預言の無い未来じゃない)
少女は少年の拳に、自分の手を重ねた。
「…………」
「私は、アッシュ様が決めた場所へ向かいます」
パチリ、と目が合う。少年は驚いているようだ。少女も、この手を乗せてよかったのかと後悔した。しかし少年は抵抗することもなく、すぐに目を細めた。
少年は、自分に信頼を置いて話してくれたのだ。まだ確証も持てないような事を、自分だけに。少女はそれを誇らしく思った。
自分達がどこへ向かっているのか、まだ何もわからない。それでも、選ぶとしたら彼だ。彼が幸せになることが、自分の幸せだ。
少女は少年から目を逸らさずに、にこりと微笑んだ。
ガチャン
突然、数多の機械音が鳴り、船内の照明が切れた。
突然のことだが、理由はわかる。レプリカルーク一行が逃げ出したのだ。しかし、出口は全て閉ざされており身動きが取れない。
「クソ……っ、仕掛けてあったのか」
「アリエッタさんがライガと共にいます。助けを待つしか……」
船内を探索すると、壁に穴を見つけた。おそらく、アリエッタが壁を破壊したのだろう。
そこから顔を覗かせると、全ては終わった後だった。導師は相手の手に渡り、リグレットは武器を捨てて船内に戻って来ていた。また扉が閉まり、船から出られなくなる。
レプリカルーク一行にしてやられた。
「リグレット様、すみません。みすみす逃してしまって」
「いや、こちらも油断していた」
「失礼ですが……、彼らと共にいた女性は、ティア・グランツ響長なのですか?」
「…………」
騒動の中、少女はしっかりとその言葉を聞いた。レプリカルークと共にいた女を、リグレットは「ティア・グランツ」と呼んだのだ。それは、ヴァンの妹の名前だった。
「ああ。そうだ」
「彼女はヴァン謡将に対して暗殺を企てたと聞いていますが」
「……」
それは道中で聞いた噂だった。詳しい事はわからない。だが、ヴァンが無事であったのは確かなようだ。ヴァンを見かけた神託の盾兵から、無事を知らせる報告があった。
「アッシュ様」
少女は小声で少年に話しかける。
「なんだ」
「ティア・グランツ響長なら、ヴァン謡将の動向を知っているかもしれません。連携が取れれば……」
「ああ!っやっと出られましたよ!」
すると、背後から男の声がした。ディストだ。
「機関室を探索していたのですが、あそこは独自で鍵が掛かるようで」
なるほど。少女はそう思ったが、他の面々は呆れ顔だ。一人閉じ込められていたのが、それほどかっこ悪いだろうか。確かに、この男はいつもタイミングが合わないけれど。
少年はしばらく何かを考えた後、ディストに声を掛ける。
「あの出来損ないを、コーラル城に呼べないか」
「何をなさるのですか?」
「同調フォンスロットを解放させたい、お前もフォミクリーのデータが取れていいだろう」
「それは名案です!また逃げられても見つけられますしね」
レプリカルークが城を出ている以上、彼を利用しない手はない。
ディストが鼻歌を歌いながら船をいじり出す。船を復旧させようとしているのだ。しばらくすると、全ての出入口が開いた。
「セントビナーとエンゲーブを探す。行くとすればそこしか無いはずだからね」
シンクがそう言うと、生き残った部隊は散り散りになった。
まだまだ旅は続きそうだ。
そして、2人が悩む時間もありそうだ。少女はそう思って、少しだけ安堵した。
リグレットがそう言うと、少年は椅子に腰掛けた。船で待機していろという意味だ。
既にこの船の中に敵はジェイド、ルーク、その付き添いの女、チーグルの子供しかいない。彼らは捕らえられている。ここに居ても危険ということはないだろう。少年と少女は図々しくも湯沸かし室で茶を淹れ、飲むことにした。
「……大丈夫ですか、アッシュ様」
「何がだ」
大丈夫な訳がない。あのレプリカに会ったのだ。 あの時の少年は、憎しみを抑えきれない様子だった。もう落ち着いたか、少女はそう問うたつもりだったが、少年の態度は冷たい。
「アッシュ様のほうがハンサムでしたね」
少女がそう言うと、少年に睨まれる。さすがに冗談か過ぎただろうか。少女はそう思ったが、少年はフッと笑った。狼狽える少女を見て、可笑しくなったのだ。
「当たり前だ」
少年がそう言うと、少女も笑う。
落ち着いてなどいない。あの顔を見たら、情けない出来損ないを見たら、また斬りかかってしまうかもしれない。それでも少年は、少女に落ち込んだ姿を見せたくなかった。
「レプリカが城を出るのは、予定外の出来事なんですよね。ヴァン様の計画に支障が出ないといいのですが」
少女が茶をすすりながらそう言うと、少年は訝しげに声を掛ける。
「ヴァンからどこまで聞いている」
「預言を覆すために計画を立てていると……、ただ、それだけ」
「そうか」
少年は少し迷った後、持っていた書類を少女に見せた。その書類を少女はまじまじと見つめるが、何が書いてあるのか、正確にはわからない。
「セフィロトで、導師イオンにダアト式封咒を解かせているらしい」
「……今回の任務は、モース様の命令ではなく、ヴァン様の計画の一部だと?」
ヴァンが何かを隠している。少女は少年の疑いを感じ取った。しかし、少女はそれを飲み込めない。預言を覆す。その考えさえ変わらなければ、どんな手順を踏もうと関係ないはずだ。
「何かお考えがあるのでは?」
「セフィロトには、大地を支える柱がある。預言とそれが、関係あると思うか?」
「………」
大地を破壊して、世界を無くすことで預言を壊す。そんな筋書きを少女は思い浮かべたが、現実味がなさすぎる。きっと、もっと高度な事をしようとしているのだろう。少女はそう思った。
しかし、少年の瞳は揺れていた。ヴァンを信用していない。そう取れるような、不安げな瞳。
「もし、よからぬことを考えているのだとしたら、どうすれば……」
少女は決め切れなかった。ヴァンを信用していいのかどうか。ついこの間、彼と握手を交わしたばかりじゃないか。彼の思想に未来を感じたじゃないか。ついて行くと、決めたじゃないか。
それでも、少年の碧い瞳を見ると、心が揺れた。
「今は、何もできない」
少年は震えているようだった。動き出した計画に、怖気づいているからなのかもしれない。ヴァンを怖がっているからなのかもしれない。少女は、その震えを止めたいと思った。
彼が不安になっていると、自分まで怖くなる。彼の悲しそうな顔を見ると、胸が締め付けられる。
(そうだ。今私が一番欲しいのは、預言の無い未来じゃない)
少女は少年の拳に、自分の手を重ねた。
「…………」
「私は、アッシュ様が決めた場所へ向かいます」
パチリ、と目が合う。少年は驚いているようだ。少女も、この手を乗せてよかったのかと後悔した。しかし少年は抵抗することもなく、すぐに目を細めた。
少年は、自分に信頼を置いて話してくれたのだ。まだ確証も持てないような事を、自分だけに。少女はそれを誇らしく思った。
自分達がどこへ向かっているのか、まだ何もわからない。それでも、選ぶとしたら彼だ。彼が幸せになることが、自分の幸せだ。
少女は少年から目を逸らさずに、にこりと微笑んだ。
ガチャン
突然、数多の機械音が鳴り、船内の照明が切れた。
突然のことだが、理由はわかる。レプリカルーク一行が逃げ出したのだ。しかし、出口は全て閉ざされており身動きが取れない。
「クソ……っ、仕掛けてあったのか」
「アリエッタさんがライガと共にいます。助けを待つしか……」
船内を探索すると、壁に穴を見つけた。おそらく、アリエッタが壁を破壊したのだろう。
そこから顔を覗かせると、全ては終わった後だった。導師は相手の手に渡り、リグレットは武器を捨てて船内に戻って来ていた。また扉が閉まり、船から出られなくなる。
レプリカルーク一行にしてやられた。
「リグレット様、すみません。みすみす逃してしまって」
「いや、こちらも油断していた」
「失礼ですが……、彼らと共にいた女性は、ティア・グランツ響長なのですか?」
「…………」
騒動の中、少女はしっかりとその言葉を聞いた。レプリカルークと共にいた女を、リグレットは「ティア・グランツ」と呼んだのだ。それは、ヴァンの妹の名前だった。
「ああ。そうだ」
「彼女はヴァン謡将に対して暗殺を企てたと聞いていますが」
「……」
それは道中で聞いた噂だった。詳しい事はわからない。だが、ヴァンが無事であったのは確かなようだ。ヴァンを見かけた神託の盾兵から、無事を知らせる報告があった。
「アッシュ様」
少女は小声で少年に話しかける。
「なんだ」
「ティア・グランツ響長なら、ヴァン謡将の動向を知っているかもしれません。連携が取れれば……」
「ああ!っやっと出られましたよ!」
すると、背後から男の声がした。ディストだ。
「機関室を探索していたのですが、あそこは独自で鍵が掛かるようで」
なるほど。少女はそう思ったが、他の面々は呆れ顔だ。一人閉じ込められていたのが、それほどかっこ悪いだろうか。確かに、この男はいつもタイミングが合わないけれど。
少年はしばらく何かを考えた後、ディストに声を掛ける。
「あの出来損ないを、コーラル城に呼べないか」
「何をなさるのですか?」
「同調フォンスロットを解放させたい、お前もフォミクリーのデータが取れていいだろう」
「それは名案です!また逃げられても見つけられますしね」
レプリカルークが城を出ている以上、彼を利用しない手はない。
ディストが鼻歌を歌いながら船をいじり出す。船を復旧させようとしているのだ。しばらくすると、全ての出入口が開いた。
「セントビナーとエンゲーブを探す。行くとすればそこしか無いはずだからね」
シンクがそう言うと、生き残った部隊は散り散りになった。
まだまだ旅は続きそうだ。
そして、2人が悩む時間もありそうだ。少女はそう思って、少しだけ安堵した。