プロローグ編
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少女の肩に雫が落ちた。
涙や汗といった青春を象徴するものではなく、雨の雫である。
少女は手に持った傘を眺め、開くのをやめた。まだ小降りで耐えられそうだったからだ。
一方、隣で歩く少女の友人は慌てた様子である。
「私、傘持ってきてない!」
「私の傘使う?」
「いえ結構。これくらいの雨、ものともしないのが私です」
「まだ小降りだもんね」
いわゆる閑静な住宅街。そこに響くのは二人の声だけ。鳩もそろそろ鳴くのをやめ、サラリーマンはとっくに電車の中だ。
二人の通う中学校は、この先の大通りに出てすぐにある。二人は大通りを目指し、迷路のような路地を歩いていた。まだ通い始めて数ヶ月だが、この時間も日常と化している。
「ねね、雨強くなってきてない?」
先ほどは、ぽつぽつと地面が斑点を作る程度だったが、今となっては、アスファルトが一面黒くなっている。
「そうだね、そろそろ傘さそうかな。入る?」
「ううん。耐える!」
「何意地張ってるの」
ついに遠くから雷の音が聞こえてきた。少女はそれでも傘に入らない友人を見ながら、ゆっくりと歩き続けた。
1歩踏み出すごとに雨が強くなっていくのが面白い。瞬く間に、視界が霞むほどの大雨になっていた。
もうさすがに諦めただろう。少女が友人のほうを見てみれば、友人はにこりと笑った。
「走るよ!」
そう叫んだかと思えば、彼女は既に三軒も先の家の前にいる。少女は慌てて追いかけるが、傘が邪魔になりうまく進めない。
「待ってよ!なんで走るの?速い!」
「だって濡れるから」
ここは住宅街。無論店など建っていない。だから、雨宿りする屋根もないのである。傘を持っていない場合、走って雨を回避するのが最も有効な手段だ。あくまでも傘を持っていない場合、だが。
「傘入りなよ!」
「これくらいの雨平気だよっ!」
「どしゃ降りだよ!」
小降りだったはずの雨は、今や道の上を川のごとく流れている。雷は鳴り止まない。
少女の友人は、雨を楽しんでいるみたいだ。少女は着いて行けなくなり、歩みを止めた。片方の足を水溜まりにつっこんで。雷は大きな音を立てている。
「大雨ではしゃぐなんて、子供みたい」
少女は完全に諦めて、いつもより、ゆっくり歩くことにした。風が傘に当たって、歩きづらい。走ったせいで制服がびしょ濡れだ。雷は空を明るく染めた。
少女の友人は走り続けていたが、少女の気配が無くなったことに気がつき、歩みを止めた。
大通りの入口には、小さな電気屋がある。少女の友人は、そこで屋根を借りることにした。それにしても、遅い。途中で転んだりでもしているのだろうか。雷がうるさくて、足音も聞こえない。
少女の友人は諦めて、こちらへ向かっているはずの傘を迎えに行こうとした。雷が光ると同時に、音が鳴った。
「おーい、早く早くー」
雷が光ると同時に、音が鳴った。
一瞬の出来事だった。
眩しすぎる光に閉じた目と、大きすぎる音にふさいだ耳が開放されたときには、道の真ん中に黒く焦げた傘が転がっているだけだった。
「明寺?明寺っ!」
どれだけ叫ぼうと返事はない。なぜなら少女が消えてしまったからである。
傘はただ、響く叫び声を聞いていた。
涙や汗といった青春を象徴するものではなく、雨の雫である。
少女は手に持った傘を眺め、開くのをやめた。まだ小降りで耐えられそうだったからだ。
一方、隣で歩く少女の友人は慌てた様子である。
「私、傘持ってきてない!」
「私の傘使う?」
「いえ結構。これくらいの雨、ものともしないのが私です」
「まだ小降りだもんね」
いわゆる閑静な住宅街。そこに響くのは二人の声だけ。鳩もそろそろ鳴くのをやめ、サラリーマンはとっくに電車の中だ。
二人の通う中学校は、この先の大通りに出てすぐにある。二人は大通りを目指し、迷路のような路地を歩いていた。まだ通い始めて数ヶ月だが、この時間も日常と化している。
「ねね、雨強くなってきてない?」
先ほどは、ぽつぽつと地面が斑点を作る程度だったが、今となっては、アスファルトが一面黒くなっている。
「そうだね、そろそろ傘さそうかな。入る?」
「ううん。耐える!」
「何意地張ってるの」
ついに遠くから雷の音が聞こえてきた。少女はそれでも傘に入らない友人を見ながら、ゆっくりと歩き続けた。
1歩踏み出すごとに雨が強くなっていくのが面白い。瞬く間に、視界が霞むほどの大雨になっていた。
もうさすがに諦めただろう。少女が友人のほうを見てみれば、友人はにこりと笑った。
「走るよ!」
そう叫んだかと思えば、彼女は既に三軒も先の家の前にいる。少女は慌てて追いかけるが、傘が邪魔になりうまく進めない。
「待ってよ!なんで走るの?速い!」
「だって濡れるから」
ここは住宅街。無論店など建っていない。だから、雨宿りする屋根もないのである。傘を持っていない場合、走って雨を回避するのが最も有効な手段だ。あくまでも傘を持っていない場合、だが。
「傘入りなよ!」
「これくらいの雨平気だよっ!」
「どしゃ降りだよ!」
小降りだったはずの雨は、今や道の上を川のごとく流れている。雷は鳴り止まない。
少女の友人は、雨を楽しんでいるみたいだ。少女は着いて行けなくなり、歩みを止めた。片方の足を水溜まりにつっこんで。雷は大きな音を立てている。
「大雨ではしゃぐなんて、子供みたい」
少女は完全に諦めて、いつもより、ゆっくり歩くことにした。風が傘に当たって、歩きづらい。走ったせいで制服がびしょ濡れだ。雷は空を明るく染めた。
少女の友人は走り続けていたが、少女の気配が無くなったことに気がつき、歩みを止めた。
大通りの入口には、小さな電気屋がある。少女の友人は、そこで屋根を借りることにした。それにしても、遅い。途中で転んだりでもしているのだろうか。雷がうるさくて、足音も聞こえない。
少女の友人は諦めて、こちらへ向かっているはずの傘を迎えに行こうとした。雷が光ると同時に、音が鳴った。
「おーい、早く早くー」
雷が光ると同時に、音が鳴った。
一瞬の出来事だった。
眩しすぎる光に閉じた目と、大きすぎる音にふさいだ耳が開放されたときには、道の真ん中に黒く焦げた傘が転がっているだけだった。
「明寺?明寺っ!」
どれだけ叫ぼうと返事はない。なぜなら少女が消えてしまったからである。
傘はただ、響く叫び声を聞いていた。
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