白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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扉の空間魔法を抜けた先。広がる濃霧と草地の奥にそれは浮遊していた。濃密な魔に包まれた魔宮。
「あれがグラビト岩石帯、白夜の魔眼のアジト……!」
「そもそも強魔地帯に足を踏み入れる者はそうはいない。その上、魔法で霧に紛れ見えなくなっていたとなれば、そう簡単に見つからないわけだ」
「よく見つけられましたね」
何気なく呟いた感想に、師匠はニヤニヤしながらノゼルさんを見た。
「それを読んで探索させたわけか、銀翼の大鷲団長」
「……たまたま魔宮を探らせていたら、奴らのアジトだと判明しただけのこと」
「(銀翼の大鷲が発見したんだ……)」
ノゼルさんの態度は謙遜と言うには妙に歯切れが悪いけれど。
「ほぉ、それで団長自らやって来たのは何故だ……? ん?」
「……」
虐めてるというより、弟の反応をからかう意地悪い姉のようだ。仲良いのかもしれない。ノゼルさんは全力で否定しそうな気もするけれど。
「無駄話は終わりだ。この距離ならば例の魔法いけるな」
「……御意」
ノゼルさんに命じられ、金色の夜明けのシレンさんが岩石創成魔法で魔宮の模型を創り出す。
透けて見える入り組んだ内部、なにより薄く光る魔力の多寡で実力者の居場所も分かる。凄い魔法だ。
「なるほど、どこからでも入れるアリの巣のようだな。侵入しやすいではないか。上級魔法騎士レベルの魔力の奴がチラホラいるな」
「(上級……レオくんくらいの魔力持ちが何人もいるんだ……)」
「中心の広い空間に高魔力の者がいる……こいつが頭のようだな」
一際光輝く中心の魔力。
それに目を細めた師匠は王撰騎士団に指示を出す。わたしは光から目が離せなかった。
「5組に分かれて突入する。空間魔道士はここで待機」
かくして即席チームが結成された。こういう事をする為の試験だった気がしてきたけど、なんとなくユリウスさんの趣味が色濃い試験だった疑惑が未だに拭えないのは何でだろう。
ノゼルさんは、自団の人と金色のシレンさん、翠緑の蟷螂のキノコ魔法の人。
リルさんは、自団の雪魔法の人と紅蓮の獅子王の砂岩魔法の人、碧の野薔薇の翼の魔法の人。
キルシュさんは、ノエルちゃんラックさん紅蓮の獅子王の……試験だと瞬殺されてよく分からなかった人。
師匠は問題児と称したアスタくんとゾラさん。
わたしは、ユノくんミモザちゃんクラウスさん硝子魔法の使い手の、金色の夜明けチームに。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼む!」
「ソフィアさんが本気で戦うところを見るのは初めてなので、楽しみですわ」
「そんなに強くないと思うんだけどね……」
少なくとも他のチームは団長もしくは副団長がいることを思えば層が薄い気がする。金色はみんな強いから不安はないけれど。
「(ユノくんとクラウスさんいるし、わたしは穴あけ担当かな)」
試合を見た感じ、攻撃魔法の威力も凄いけどフォローが上手い人が多い印象がある。逆にわたしは竜の姿になるしか能がないので攻撃を頑張ろう。
到着して僅か数分での突入と殲滅。電撃作戦の指揮を執る師匠が、最後の激を飛ばす。
「行くぞ、作戦はお前らには特に必要あるまい! 手当り次第叩きのめしながら中心部を目指せ。各々―――好きなやり方でやれ!!」
好きなやり方で。
念の為、挙手して発言する。
「魔宮を壊しても?」
「負けなければ、何をしても構わん」
「分かりました!」
それなら得意だ。ほっと胸を撫で下ろす。
竜になりながら金色の4人を振り返る。
「わたしが先行してもいいですか?」
「分かった。援護は任せろ」
「はい!」
ユノくんの心強い返事に笑って、飛ぶ。
魔宮に取り付くまでに蜘蛛の巣みたいに引っかかったのをちぎり捨て、分厚そうな岩を思いっきり殴りつければ存外脆くて、一発で穴が空いてしまった。
そのまま両手を差し込んで内側から広げつつ中に頭から入る。濃密な魔と罠。魔宮の空気を嗅ぐのは二度目だけれど、前にダイヤモンドと争奪戦した所よりも魔が濃い気がする。それに、懐かしい匂いも。
何でかなと首をひねっていれば、後ろから師匠の大声が聞こえた。
「ボヤボヤするな! 数時間もすれば我が莫迦弟子が魔宮を瓦礫の山にするぞ!!」
「「えええぇぇ?!」」
「そこまでしません!!」
発破をかけるにしてもあんまりに言い草に反論しながら全身で中に転がり込む。通路の奥にはちょうど絶句している魔道士。纏っているローブは嫌という程知っている。
細めた竜の目に震え上がっても、もう遅い。
「お邪魔してます。そこ、通りますね」
「ひっ」
悲鳴をあげる暇もなく腕をなぎ払えば、壁ごと爆散した。瓦礫の中から生えた足がピクピク震えてる。
「(まあ……死んでないだろうからよし!)」
足を跨いで四つん這いのまま階段を登っていく。竜の姿のまま。狭い場所は周りを壊しながら。
終わる頃には穴だらけ瓦礫だらけ崩落だらけだろうけど、師匠が参加してるから遅かれ早かれだ、うん。
後ろから金色の人達の声が聞こえる。走って追いかけてくれているらしく息が荒い。申し訳ないけど、こういう奇襲は時間勝負だって昔師匠が言ってたから……。
「おい、さっき罠にかかっていたぞ!!」
「痛くないから平気! です!」
「そういう問題か?!」
特にクラウスさんがあれころ心配してくれるのが何だかくすぐったい。
でも本当に攻撃も罠も毛ほども痛くないので気にせず壁に突っ込む。ドンガラ響かせ広がる部屋、突然出来た通路、慌てふためく魔道士。気にせず腕を振り下ろし、尻尾を振り回す。
そんなわたしの頭上を軽やかに飛び越える人が、ひとり。
「ユノくん!」
「オレも前に出る」
「え、でも……」
正直、中心にいる強そうな人と戦う時に頼るつもりだった。
そう続けようとして。
「いいから、見てろ」
慣れない体温が優しく額を撫でて。返す手のひらで起こした竜巻で、正面にいた白夜の魔眼を数人纏めて吹っ飛ばした。
思わず感嘆の吐息が零れる。竜の口だけど。
「凄い……」
「ぼやっとしてると置いてくぞ」
「あ、はーい」
ローブを翻し、風魔法ですいすい進んでくユノくんの背中を慌てて追いかける。
そこからは、探索の魔法を使うミモザちゃんの支持する方向へわたしとユノくんが交互に先陣を切って―――クラウスさんと硝子の人が取りこぼしを全部片付けてくれるから本当に前しか気にせず突き進んで―――少しずつ変わる魔宮の様相に、やっと意識が行く頃にはもう中心が近かった。
倒した白夜の魔眼のひとりが、息も絶え絶えに言う。
「無駄だ……何を、しても……我々は……もうすぐ生まれ変わる……真の……姿に……!」
「真の姿? 何を言っているのだ……?」
まるでタチの悪い宗教のようだ。いや、そのものだったのかもしれない。この人達にとっては形のない寄る辺だったのかも。所業を考えれば到底許せないのだけど。
でも。
「真の姿って、人じゃなくなるってこと……?」
「少なくとも、ソフィアさんみたいな感じにはならなそうですわ」
「ミモザちゃん時々容赦ない絡みしてくるよね」
黒の暴牛の人でももう少し気遣う所を容赦なく言及されてちょっと嬉しかった。密やかに化け物と言われるのはもうしょうがない。実際、人ならざる姿そのものだし。
本当に他意はなかったらしいミモザちゃんは、壁を見上げて眉根を寄せる。
「何なのでしょう? この壁の模様は……奥に行くほど増えている……?」
「まるで根を張ってるみたい……ごめんなさい失言でした」
「いや、分かるぞ」
ウィリアムさんの、キテンでの世界樹魔法から連想してつい転がり落ちた言葉に慌てて口を噤むも、クラウスさんは同意してくれた。あれは魔力を吸い上げて木に集める魔法だった。
ならこの壁を這う不気味な模様も、奥に、中心に魔力を集めていることになるのでは?
それになにより、耳の岬に引っかかる不思議な気配がある。
弱々しく、微かで、でも無視できない。
懐かしく、恋しく、胸を震わせるこれは……なんだろう。
「音……?」
勢いよく振り向いたのはユノくんだけだった。
「ソフィアも聞こえるのか」
「え……ユノくんも?」
「ああ。何かは分からないが、聞こえる……」
「私は何も聞こえませんわ……」
「オレも聞こえない」
「私もですね」
ミモザちゃんもクラウスさんも硝子魔法の人も聞こえない。
わたしとユノくんは聞こえるけれど何かは分からない。
気味の悪さを堪えて奥へ奥へと突き進む。
一部屋進む事に、ユノくんの風はより鋭さを増した。
「悪いがお前ら程度じゃ、もうオレは止められねー……!」
自身からだけじゃない、一帯の魔を掌握し、あらゆる場所から風魔法が牙を剥き、あらゆる敵を吹っ飛ばしながら辿り着いた最奥に繋がる通路。
そこで足が止まりかけた。危険なものは何もないはずなのに、本能が警鐘を鳴らす。
「……この音は……」
とくとくと、脈打つようなそれ。やっとはっきり聞こえたそれに鱗が震えた。それは―――鼓動。
この先で、何かが鼓動を刻んでいる。魔宮から魔力を集める、高魔力の何かがいる部屋の中からそれが聞こえる。どう考えても嫌な予感しかしない。
それでも踏み込んだ。この先にこそ用がある。
きざはしを駆け登る。ミモザちゃんが最後の警戒を促す。
「あそこが中心部です! とてつもない魔ですわ……! 皆さんお気をつけくださいーー!!」
「今は誰が相手でも、負ける気がしねー……!」
狭い通路を抜け、広い部屋に出る。その一歩手前。
ぱきん、と、割れる音。
「ソフィアさん?」
同じ目線のミモザちゃんが心配そうにわたしを見ている。いつの間にか竜ではなく人の姿になっている。こんな敵地のど真ん中で。
早く戻らなきゃ。なのに視線が動かない。世界が止まってしまったよう。
「ソフィア……?」
ユノくんが怪訝そうにわたしへ視線を向けている。
その後ろに煌々と光る球体からクラウスさんも硝子魔法の人も目を逸らせないままでいるというのに心配してくれている。
右手の小指。ウィリアムさんから贈られたおもちゃの指輪。
紫色の硝子玉。大好きな瞳の色。
それが、真っ二つに割れている。
口が、ひとりの名前を意図せず紡いだ。
「ユリウスさん」
呟いたと同時。部屋が真っ白な光で照らされる。それは部屋の中心から。光球の中にいた、白い白い人から放たれた光。
その、光の人がゆっくりとまぶたを上げ。
世界が黒く塗りつぶされ、視界が白い光に染まって。
暗転。―――意識が落ちた。