白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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王撰騎士団選抜試験までの約1週間、昼は任務をして夜はユリウスさんと過ごした。その間、うなされたり悲鳴をあげたりして起こされることは一度もなく。
気のせいだったかのように何事もないまま選抜試験の日がやってきた。
「ドレス着て試合を見るのってなんか変な感じしますね……」
「国王も観戦されるからね」
朝イチから髪を結いメイクをし、刺繍の美しいドレスを着て、分厚いヴェールを被る羽目になったわたしはユリウスさんにエスコートされながら思わず小声でボヤいた。
コロッセオの形をした集合場所の片隅。小窓から見下ろした先には続々と集まってくるのは自団のローブを身に纏った魔法騎士団の団員達。見知った顔もちらほら混ざってる。
「(黒の暴牛からはアスタくん、ノエルちゃん、マグナさん、ラックさん、フィンラルさん。よかったみんな遅刻せず来てる。後は金色の夜明けのユノくん、ミモザちゃん、クラウスさん、……フィンラルさんの弟さん)」
個人的な好悪は持ち込むべきじゃないので、そっと目を逸らす。
逸らした先にはまだ何もないのに妙に張り切っている国王がいた。今回は国主体の選抜試験だから臨席されるとは聞いていたけれど、うん、何も言うまい。
どうせヴェール越しなんだからバレないだろうと目を閉じかけた。察したように、大きな手のひらが差し出される。
「それじゃあ、行こうか」
「はい」
ユリウスさんの手に手を重ねて建物の影から抜け出るように、見晴らしのいいバルコニーへとわたし、ユリウスさん、マルクスさんが揃って進む。
抜けるような丸い青空の下。ユリウスさんだけ一歩前に出れば、全員の視線と三つ葉の敬礼がその一身に集まる。……一瞬だけ、わたしに視線が集まったのは気のせいだろう。
「みんなよく集まったね。じゃあ王撰騎士団選抜試験を始めよう!」
「試験説明は余からしよう。何しろロイヤルじゃからな! ロイヤル!」
王撰騎士団の命名、意外と気に入ってるんだろうか。
ユリウスさんと並ぶように意気揚々と前に出て王笏を掲げる後ろ姿になんとも言えない気持ちになる。好きじゃないけど、なんか憎みづらい人だ。嫌いではあるけど。
「試験内容は……チーム対抗、魔晶石破壊バトルトーナメントであ〜〜る!!」
騎士団員からあがったのはどよめきだった。気にした様子もなく国王は人ほどの大きさの魔晶石をその場に出す。
「壊すのはこの魔晶石じゃ! ルールは簡単! エリアに配置された自軍の魔晶石を守りつつ、先に敵軍の魔晶石を破壊した方が勝利となる!」
ほんとだ簡単だ! と耳慣れた歓声が聞こえた。アスタくんの声はよく通るから……。
「破壊できず制限時間の30分が来た場合は破壊した度合いが高い方の勝ちじゃ。え〜この方式を取った理由は……あ〜、ん〜、え〜と……」
「対白夜の魔眼戦では様々な団が協力して戦う必要がある。その際に必要な協調性や、ただ力押しで戦うのではない戦略性を測るのにこの試験が最適な方式だと考えた」
「(理由、それだけじゃないんだろうな……)」
そっと目配せした先でマルクスさんが頷いた。やっぱり。ユリウスさんが考えたんなら、色んな魔法が見れるからとかかな。
「では早速チームを発表する!」
ユリウスさんの声を合図にマルクスさんが魔法を使い、3人ひと組、12のチームが一覧で空中に表示された。基本的に団のくくりはなく、みんなバラバラになってる。見覚えのある名前で組んでるとこも多いけど。
アスタくんとミモザちゃん、ユノくんとノエルちゃん、ラックさんとクラウスさん、フィンラルさんとレオくん辺りがなんかもう既に面白い。
「(いいなー……)」
ふ、と影がさす。鳥じゃない。人影。
「すみませ〜ん、遅れました〜」
知らない男の声。咄嗟に見上げるより先にユリウスさんはわたしの身体を軽く突き飛ばして、マルクスさんの所へと逃がした。
速い。誰より何より、ユリウスさんが。
「っ」
「ま、オレらの魔法帝なら、少しの遅刻くらい許してくれるよね?」
さっきまでわたしが立っていた場所のすぐ後ろに落ちた、いや着地した痩身の男の人。
侵入者じみた登場の仕方だったけど、彼に肩を組まれたままのユリウスさんは普段通りの顔をしているから大丈夫なんだろうきっと。
それよりむしろ、その妙に癖のある外見と口調に違和感を抱く。
「(白夜の魔眼じゃない。けど、魔法騎士っぽくもないような……?)」
「ザクス・リューグナーです。よろしく」
その人は、回したままの腕でユリウスさんの肩をバシバシ叩いた。酔っ払ったヤミさんがアスタくんに絡んでる時みたいな馴れ馴れしさだ。
「いや〜、道すがらに困ってるお婆さんがいたんで、魔法騎士団として助けてたら遅くなってしまいましたすみません」
「そうか……! お婆さんは無事かい?」
「ええもうピンピン」
「(ユリウスさん……)」
流石にもう少し人を疑ってもいい気がした。ユリウスさんっぽいと言えばそうなんだけども。
わたしを受け止めたまま静かに腕を伸ばしたマルクスさんの堪忍袋の緒が先に切れた。
「離れろ無礼者」
「え」
伸ばした手の先から魔力の塊が集まり、一瞬で男の人、いやザクスさんに放たれた。結構な大きさの光球をひらりと躱した痩身が下へと降りていく。
「おいおい危ねーな、いきなりどういうつもりだよ」
「貴様がどういうつもりだー!!」
「遅れて来た上、何という不遜な態度……!」
「魔法帝は姐さんが認める数少ない男なんだぞー!」
「魔法帝に何してんだー!!」
「(アスタくんまで……珍しい……)」
降り立った先にいた魔法騎士達から非難轟々だったけれど。あのアスタくんまで怒っているのは珍しい。
当の本人は「まぁまぁみんな落ち着いて」と宥めるばかりで、毛ほども気にした様子はないけれど。
「あ、そーか。みんな魔法帝を尊敬してるんだもんね。けどオレは別に尊敬してねーから、お前らの価値観をオレに押し付けんじゃねーよモブ共」
「(めちゃくちゃ煽ってる時のヤミさんみたいだ……)」
既視感これかなぁと複雑な気持ちで荒れ模様の階下を横目に、マルクスさんにお礼を告げてユリウスさんの横へゆっくり戻る。
「手荒にしてしまったけれど、大丈夫だった?」
「大丈夫です。ユリウスさんこそ、痛めたりは……」
「これくらい平気だよ」
わたしを気遣った後、ユリウスさんはコロッセオへと視線を向けた。騒がしいその輪の中心にはザクスさん。いつの間にやら紫苑の鯱のローブを羽織っている。
不思議なのは、ユリウスさんの眼差しが見た事のない色を帯びていたこと。
「(ユリウスさん……?)」
「すみませぇぇぇん!! オレこいつと同じチーム嫌っす!」
「まぁまぁ、同じ魔法騎士団員同士、仲良くしよう。それよりみんなチーム確認は済んだかな?」
どうも渦中のザクスさんと同じチームに組み分けられたらしいアスタくんの苦情をさらりと流す頃にはいつも通りのユリウスさんだった。気のせいだったのだろうか。
下で魔法騎士達がそれぞれチームごとに固まる。それは色とりどりのローブがシャッフルされていくようだった。
「では試験のステージに移動しよう! コブ、頼んだよ!」
「かしこかしこかしこまりました〜!」
「(あ、空間魔法のひと)」
ユリウスさんに呼ばれて出てきたのは見覚えのある人。大きな扉で開く空間魔法には度々お世話になってる。今回も同じく。
国王が先に扉をくぐり、次いでユリウスさんに手を引かれてくぐった先には人工的な足場。あらかじめ建てておいたのだろう。
空間魔法を通ったから全然違う場所に出るのは知っていた。
けれど、その景色に思わず口が開いた。
「(広い……!)」
「これが魔晶石破壊バトルトーナメントのステージーー!! 広っっ」
後からやってきたアスタくんの叫びに危うく頷きかける。今は黒の暴牛として来てるわけじゃないのに。
とにかく広大な土地には、それぞれ岩場、森林、湖畔、神殿跡、砂地、盆地、高台と、どう考えても人が魔法で作ったと思しき多彩な環境がみちっと詰まっている。
「様々なエリアがあるこのバトルステージで皆それぞれ思う存分、力を発揮してくれ! そして事前に抽選で決めたトーナメント表はこれだーー!」
「(ユリウスさんテンション高い……魔法いっぱい見られるからだろうなぁ……)」
真横でウキウキしてるユリウスさんが空中を示すと同時に今度はトーナメント表が出てきた。マルクスさん大忙しだ。
「(ええと、……あれ? ノエルちゃんの対戦相手のソリドって、まさか)」
シルヴァ家の次兄の名は確かソリド・シルヴァのはず。戦功叙勲式でのやり取りを鑑みるに、仲良しとはとても言えない関係だったはず。
「(大丈夫かな……)」
「バトルの勝ち負けが試験の合否に直結するわけではないが、勝ち上がっていくほど実力をアピールできる。せっかくだから皆、是非優勝を目指してくれ」
いつの間にか国王じゃなく完全にユリウスさんが仕切ってる声が高らかに響く中、わたしは緊張しきってるノエルちゃんを窺い見ることしか出来なかった。
「それでは1回戦始めるよ〜!」
「あっ、オレ達第1試合だ!」
初戦はアスタくんとミモザちゃん、そしてザクスさん達が出るらしい。
観覧席から遠く離れた高台を挟んで両チームが対峙しているのが少しだけ見える。
試合開始直前でもう目のキラキラが抑えきれてないユリウスさんから、通信魔法越しに最後の説明が告げられる。
「対戦相手への攻撃はあり、ただ当たり前だけど相手を殺しちゃいけないよ。上級回復魔道士はスタンバイしてるから存分に戦ってねーー!!」
上級回復魔道士の言葉にふと振り返れば、オーヴェンさんをはじめ何人もの魔道士がいた。気が付かなかった。
国王はなんか文句を言っていた。誰も気に止めてなかったけど。
次のユリウスさんの言葉に慌てて前を向く。
だって仕方ない。
「それでは1回戦第1試合、始めーー!!」
「(すごーく不謹慎だけど……ちょっとだけ、ワクワクする……!)」
こんなふうに楽しく戦闘を見る機会なんて、そうそうないんだから。