白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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暗い夜が明け、朝が来て。
ノエルちゃんと身支度をしてアジトのエントランスに降りる途中、バネッサさんと合流して、チャーミーさんの羊のコックさんから軽食を受け取って。
ほとんどみんな揃ってるからめちゃくちゃ騒がしいいつものエントランスで食べていれば。
「王撰騎士団選抜試験に出る人ー」
朝イチから仕事するヤミさんという激レアな存在がやってきた。
エントランスで同じく朝ごはんを食べていたアスタくんとマグナさんとラックさんが飛びつくように挙手してる。ついでに「はいはいはーい! 出ます!」と叫んで頭を掴まれてもいた。今日も元気だ。
その横でソワソワしているのはフィンラルさんだ。直接戦うイメージはないのだけれど、どうしたのだろう。
「ソフィアも出るんでしょ?」
「うーん……わたしは、出ないかなぁ」
「「「えっ?!」」」
バネッサさんにうりうりと頬をつつかれながら返事したら、何故かあっちこっちから驚愕の声が上がった。何故。
特に勢いあるアスタくんとノエルちゃんが瞬時に詰め寄ってくる。
「えええぇぇソフィア先輩ぜったい選ばれますよ! 出ましょうよ!」
「そうよ一緒に出なさいよ!」
「ええと……」
正直に言うと出たい気持ちはある。あるけど、ユリウスさんにダメって言われてるので絶対にダメなのだ。
どうしたものかと悩む前に、ヤミさんがふたりの頭にチョップした。
「はい無理強い反対。強制参加じゃねーし、好きにしろ」
「ありがとうございます」
なんとなく察してくれてるらしいヤミさんがちらとわたしを見たあと、面倒くさそうに用紙に記入しながら離れてく。今頃他の団でも同じように希望者募ってるのかな。
「(ユノくんとレオくんは間違いなく出るだろうな……ミモザちゃんはどうだろう、回復魔法だけなら厳しそうだけど……)」
「ソフィア〜」
「わっ」
突如、寄りかかるように肩を抱かれてびっくりした。
原因のバネッサさんはぴらっと一枚の紙を見せてくる。
「ちょっとこれ一緒に行かない?」
「これ……任務?」
「そ。だーれもいないからって、回ってきたのよ〜」
「え?」
ほぼ全員いたはずでは。
けれど顔を上げて見回せば、わたしとバネッサさん、まだ羊のコックさんから供給を受けては食べてをしてるチャーミーさん以外の誰もいないエントランスが広がっていた。
「1週間後の王撰騎士団選抜試験に向けて特訓するからってみんな出てっちゃったのよ」
「なるほど……あれ? フィンラルさんもいましたよね?」
「フィンラルも選抜試験に出るらしいわよ〜」
「それは……」
つまり、いつも逃げ腰だった姿とはちょっとひと味違うフィンラルさんがいたという事だ。キテンでの弟さんとの口論を思い出して思わず口元が緩む。
「(本気で戦うフィンラルさんが見られるかもなんだ……楽しみ)」
「そんなわけで、居残り組で任務片すわよ〜」
「はーい」
しなやかな指先が摘んでいた紙をはいと差し出されるままに受け取れば、何枚か重なっていたそれがかさりと乾いた音を立てた。
「……なんか多くないですか」
「文句は団長に言いなさいよ〜」
多分だけどゴーシュさんとかにも回した上でこれだけの任務が残ってるんだろう。仕方ないとため息をついて立ち上がる。
バネッサさんとあちこち回って、任務の紙の束をやっつけ終わる頃には日が暮れていた。ひとつひとつは簡単だったにも関わらず、だ。
アジトの前で背中から降ろしたバネッサさんと揃って大きなあくびをする。竜の姿のまま。
「ふわぁ、疲れたわ〜」
「ですねー……」
そのまま人の姿に戻ろうか悩んで、ふと首をもたげる。
遠く山に落ち始めたばかりの夕日が木々もアジトも一色に染め上げていく。それはまな裏を焼くような美しい赤色―――血の色。
「(血? なんでそんな、物騒な連想を……)」
ぶんぶんと首を振る。
心配そうな顔をしてわたしを待ってくれていた優しい魔女におとがいを向ければ、お酒のにおいがする指先が鼻先をよしよしと撫でた。まるでわたしがこれから何を言うか知っているみたいに。
「今日は、王都の家に帰ります」
「それがいいかもね。気をつけるのよ」
「はい!」
ぽん、と軽く叩いた手が離れてひらりと振られる。
「おやすみ〜」
「おやすみなさい、バネッサさん」
アジトに入るでもなく、わたしを見送ってくれるバネッサさんに手を振り返して両翼を広げる。
飛び上がった空は風もなく穏やかで、心地よくて。
なのに全身を染めあげる夕焼けの色が気持ち悪い。
「(何かおかしい)」
違和感を抱え込んだまま身を翻し、いつも辿っている王都への空路をひた翔けた。
日が沈み切る前に辿り着いた屋敷に、ユリウスさんはまだ帰っていなかった。
用意された夕食にはユリウスさんが帰ったら一緒に食べるからと手をつけず、先にお風呂で身体を清める。任務でついた土埃は泡とお湯で全て落とした。そのはずなのに。
夫婦の寝室で、わたしは自分の手の匂いを嗅いでいた。
「(石鹸と、薔薇の匂い)」
腰掛けたベッドの上で転がる。清潔なシーツ。自分の体からは石鹸の匂い。髪からは薔薇の香り。いつも通りのはずなのに。
なのに、違和感が拭いされない。
「(今日の任務……? ううん、その前。起きたあと……? 違う、それよりも前……)」
うと、とまぶたが落ちてくる。まだ眠くない時間のはずなのに。飛び回って疲れたのだろうか。いや、それくらいで疲れるはずないって自分で分かっている。
じゃあなんでこんな、誘われるように―――思考はそこで途切れた。四肢がベッドにだらんと投げ出される。
―――白い手のひらが鼻先を撫でてくれるのが好きだった。
わたしの口にヤギ乳で湿らせた布を押し当て、どうにか飲ませようとしてくれた。甘い味がして好きだった。
生まれた時から白い光のあの子と同じくらい大きかったわたしを、あの子は甲斐甲斐しく面倒を見てくれた。
まるで生まれた時から一緒にいた双子のように。
『君が―――の竜だね』
生まれてすぐに会ったあの人は、なるほど生き別れの兄弟みたいにそっくりだと笑った。特に目が似ている、と。
あの人は、あの子に尋ねた。本当に私が名付けていいのかい? と。
あの子は、―――さんにお願いしたいです、と真面目そうな顔をして言った。
『琥珀の瞳、螺鈿の鱗、純白の羽。爪も牙も新雪の色をしている。聡明な子だ。君は今日生まれたばかりなのに、もう私の言葉を理解しているね?』
言葉はよく分からない。でもたくさん褒めて貰えた気がした。人ではない鳴き声で返事したわたしに、いい子だねと大きな手のひらが触れる。
その人からは不思議な匂いがした。草花にはない、金物のにおい。
『そうだね……君の名前、ソフィアなんてどうかな。古い言葉で知恵という意味なんだ』
知恵。その言葉の意味を知らないまま鳴いたわたしの額に、その人の額が触れる。
『知恵の名を持つ竜よ。あなたの行く先に幸多からんことを』
それはあの子が用意できる中でも一番の祝福だったのだと。
知らないまま、わたしはその言葉を額に刻んだ。
日々は穏やかに、緩やかに過ぎていく。
生まれたばかりだからと、みんなも食べていた肉は与えられなくて。でも時々こっそりパンの切れ端をちぎって分けてくれた。小麦の匂いがして好きだった。秘密だぞと白い光のあの子は言っていたけれど、バレていたと思う。
あの子はよくわたしに乗って遠くへ行きたがった。朝と、昼と、夜。未熟な羽で飛べない竜の背に乗って、草原を駆けていくだけの時間を何度も繰り返した。
『あれが人間だ』
ある遠駆けの日。道の向こう、微かに見える丘の下で土を耕している親子を指さし、わたしの背に乗るあの子は言った。
人間。白い光のあの子とは違う生き物。村にはいないもの。魔力が少なく、魔にも愛されていない生き物だとあの子が言っていたもの。
あの子が、少しだけ嫌っているもの。
『あいつらはソフィアよりずっと弱い。でも、絶対に食べるなよ』
食べるなよ。そう言われて初めて、自分のつま先をじっと見たように思う。
鋭い爪だ。猛禽、いや猛獣のようなそれは、魔法が上手に使えない相手の体なんて容易く引き裂いてしまうだろう。
そしてあの子は、それだけはしないでとわたしに願った。
『あいつらは好きじゃない……けど、そんなの見たくないから』
あの子はわたしの額を撫でて、背中を叩いた。帰るよの合図。踵を返す。後ろは振り返らないまま四つ足で駆けていく。
どうしてあの子がわざわざ人間の話をしたのかを知ったのは、すぐの事。
『はじめまして。あなたがソフィアね。私は―――というの』
柔らかな花の匂いをするその人は、金物のにおいがするあの人に連れられてやって来た。
あの子はいい顔をしないまま、わたしの撫で方を花の匂いの人に教えていた。習ったとおりに鼻先へ触れた指先は花びらのように柔らかかった。
『綺麗……それに、とっても優しい子。会ったばかりの私にも触らせてくれるのね』
柔らかな腕が頭全部を抱きしめて、花の匂いがふわりと顔を包み込む。腕の中。ふと、花とはまた違う匂いがした。
すん、と胸元より下に鼻先を向ける。白い光のあの子にはない膨らみを花の匂いの手が愛おしげに撫でている。そこから、花とは違うふたつの匂い。
『分かるの? ふふ、あなたの弟妹よ。血の繋がりはないけれど、あなたと同じ場所で育つの』
弟妹。人間のお腹の中でまだ眠っているふたつの匂い。
ほら、と花の匂いがわたしをお腹にそっとくっつける。
『ね、聞こえる?』
とくとくと頬に伝わる心の音。白い光のあの子と同じ音。
うん、と小さく鳴こうとして。
鼻を突く血の臭い。頬をぬるりと濡らしたものがまな裏で明滅する。引こうとした頭は花の手のひらが抱きしめたまま離してくれない。
『帰りたいの』
かつて花の匂いを纏っていた白い手が、カラカラに干からびわたしの顔を撫で上げた。血の臭いはもはや、むせ返るような死臭に変わっている。
枯れ枝の指が信じられない力でわたしを上向かせる。落ちくぼんだ顔の中、がらんどうに開いた眼孔の奥は黒い黒い黒い黒い黒い―――あなたは、
「ソフィア」
―――ユリウスさんの声。手のひら。
頬を包むその手の温かさに安堵し吐き出しかけた息が詰まってむせ返る。まるでさっきまで死んでいたように肺が痛い。
咳き込むわたしを抱き上げ膝に乗せた手のひらが、背中をゆっくりと叩く。胸の音が同じリズムで耳朶を叩く。
温かくて、ほっとする。まるで子供の頃に戻ったみたい。
「落ちついたかな。酷くうなされていたけど……」
「あ……大丈夫、です」
そうだ、ユリウスさんが帰ってくるのを待ってたんだった。
ちゃんと起きようと胸板に手を突いて、けれどユリウスさんはわたしを抱く手に力を込めた。離すまいとするように。
「ユリウスさん……?」
訝しむ声は魔法帝のローブに吸い込まれてしまった。大人の男の人の力で抱きしめられて息が苦しい。そのはずなのに、この上なく幸せだった。
魔法帝としての装束も解かないまま、言葉もなく感情をぶつけるように抱きしめられることがこんなにも幸せだなんて初めて知った。
きっと他の人を知らないまま生きていく。
「(ユリウスさんのにおい)」
胸いっぱいに満ちる匂いに、意識が端から溶けていくよう。
うなされていたと言っていたから悪い夢を見ていたんだろうけれど、元より朧げだったそれは完全に吹き飛んでしまった。
やがて腕の力が緩んで自由の身になって。
でもわたしはユリウスさんの膝の上にいたまま。
「怖い夢を見たのかい?」
「それが、よく覚えてなくて……あ、でも」
「うん?」
「そういえば昨日の夜も悲鳴をあげたみたいで、起こされましたね……?」
とんとんとあやすように背中を叩いていた手が止まる。
「昨夜の夢の内容は?」
「そっちも覚えてないんですよね……」
元から夢はあまり見ないから気にしてなかったけれど、何かおかしいのでは?
身を固くしたわたしの頬に手を添えたユリウスさんの、額がわたしの額にこつんとぶつかる。
吐息がかかる近さ。直に触れる熱。
子供にするような触れ方だと分かっているのに、顔から全身まで一気に火がついたよう。
喋られたらもうダメだった。
「熱はないみたいだけれど……ソフィア、明日からこちらで僕と寝ようか」
「ひゃい……」
情けない子犬のような返事に怪訝そうな顔をしたユリウスさんの白い頬に一拍置いて紅がさす。小娘だろうわたしと同じ恥じらい方をする姿にいっそう胸が苦しい。
「ご、ごめん!」
「あ……っ待って」
慌てて離れていこうとした首に腕をかけ制止する。きっとここでそれを許したら今夜はもう寝かしつけしかしてくれないと分かっていたから、羞恥をかなぐり捨て、ねだる。
「き、キス、してください」
「えっ」
「……ダメなら、いいです」
純粋な驚く声に思わず一歩引いてしまった。少しでも嫌だと思うなら別にいいのだし。そんな時もあるだろうし。
でもユリウスさんはひと呼吸してから、わたしの鼻先にその高い鼻を擦り寄せて。
本当にいいのと聞くように、潤みを帯びた紫水晶の瞳がわたしの目を覗き込んで。
わたしはそれに、まぶたを降ろして返事して。
「(あ、)」
呼吸が重なる。溶け合う唇の温度な心地よく吐いたそれさえ飲み込まれ。何度も何度も角度を変えて、口を食まれる。
ぬるり。力の入っていなかった歯列をやんわり割って入ってきた分厚い舌はわたしの舌先を優しく舐めて、次に歯を上から下へと、丁寧に丁寧に舐めて、すすって。
「(あ、あ、どうしよう……はしたないのに……、きもちいい)」
無意識に出ていた鼻にかかった悲鳴ごとごくりと飲み下す音。唇を伝って聞こえたそれは酷く淫猥で。
てっぺんから溶けてしまったんじゃと思うくらい、頭が全部熱い。額も、目も、鼻も、頬も。口の中はきっともうドロドロになってしまっている。
なのに。縋り付いた先、ユリウスさんが纏っているのは魔法帝のローブだ。
「(みんなの魔法帝だけど、今だけは……ううん、この部屋でだけは……)」
手触りのいいそれの上で身をよじる度、言葉にできない高揚感で手足が痺れた心地さえする。
「(わたしのユリウスさん……)」
今はわたしの為にわたしの中にいるユリウスさんの舌を舐めれば、絡みつくように舌へと吸い付かれる。じゅるりと響いた下品な音。背筋が震え上がったのは、気持ちいいから以外の理由だ。
こんなユリウスさんを知るのは、わたしだけ。
「っは……」
「んぅ、ぁ……」
ユリウスさんがわたしの口から舌を抜いた時、ずるりという音が聞こえそうだった。
唾液でベタベタに汚れたわたしの口周りを丁寧に舐め取る唇。はふはふと息をしながらじっと見つめた先、焦点が合わなくなっても分かるほど濃くなっている紫の瞳に訴えかける。
「(もっとして)」
紫が、細まる。
嫌なわけではない。でも何かを堪えるように自制で雁字搦めになっているようなその目は苦しげですらあった。
可哀想なのに。もうやめてあげた方がいいのに。
ぞくりと胸を震わせたのは全く違う感情。
「(もっと欲しい)」
不思議と思い出したのは、遠慮なく襲ってしまえとそそのかす師匠の言葉。そもそも夫婦なのだからとも言っていたし。その通りだし。
首に回していた腕に力を込める。一気に縮めた距離。困り果てた顔をしたユリウスさんは、わたしから顔を背けてまで逃げようとはしなかった。
「(ここで逃げたらわたしが傷つくとか、考えてそうなお顔)」
「ソフィア、今日はもう遅いし……」
「や」
駄々っ子みたいな返事をして顔を引き寄せる。さっきまでわたしの口を好き勝手してたとは思えないほど穏やかな苦笑。む、となってしまったわたしは真実まだ子供なんだろう。
「(襲う……)」
それがどういう事か、ちゃんと考えられた事はないけれど。
今はただもう一度キスしたかったから。
だからと今度はわたしからユリウスさんの唇にゆっくり、ゆっくり、震えながら、重ねるように口付けて―――お腹の音が部屋に鳴り響いた。
「え」
「あ……」
ふたりの間で聞こえたそれは、間違いなくわたしのお腹から。そういえば夜ご飯、まだ食べてないんだった。
さっきまでの熱とはまるで違う、焼け付くような羞恥が頬を染め上げた。ユリウスさんも口抑えて横向いて震えてるし。笑うなら声あげて笑ってよ。
「……笑ってくれていいんですよ、ええ、色気ないなって自分で思いましたもん」
「い、いや、そのっ、ふ……っき、気にする事はないよ、うん」
笑いを堪えたユリウスさんは深く息を吐いて、わたしをベッドに降ろした。すり、と近づいてきた白皙のお顔。耳のすぐ横でリップノイズ。
「僕も少し食べたいから、貰ってくるよ。待ってて」
キスされた耳を押えて絶句するわたしを置いてユリウスさんはそそくさと部屋を出ていってしまった。
真横にぱったり倒れ込んで半開きのドアの向こうを呆然と見つめる。
「(なんか……凄いことした気がする……)」
遅れてやってきた恥じらいに全身が痺れて動けなかった。
胸がうるさくて、いっぱいで。吐いた息がまだ熱っぽい。
「(……別に……何もなくても、今のままでいいのかも……)」
師匠の言葉はすっかり忘れる事にした。
やがて帰ってきたユリウスさんと一緒に軽く食事して、湯浴みに行く広い背中を見送って。
今度こそ寝落ちせずに帰ってくるのを待っていたわたしに、少しだけ申し訳なさそうに、でもちょっとだけ嬉しそうに微笑んだユリウスさんと一緒にベッドに入った。
「おやすみ、ソフィア。良い夢を」
「おやすみなさい、ユリウスさん」
優しい声になるべく優しく返事して、目をつむる。
今度は何の夢も見なかった。