白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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急ぎ帰宅して着替えをして、慌てて引き返した星果祭会場。
何故か猛獣のごとき魔力を放出している師匠が魔力感知に引っかかったので急行すれば、紅蓮の獅子王のローブを纏い、団員達を背後に率いた師匠―――メレオレオナ・ヴァーミリオンが確かにそこにいた。
ただし伸ばした何本もの獅子の手が鈴なりに騎士団員をとっ捕まえている。ヤミさんにシャーロットさん、ノエルちゃん、さっき帰ったはずのアスタくんとユノくんまで。凄い。
「わぁいっぱい。お久しぶりです、師匠」
「莫迦弟子か。丁度いい貴様も来い」
「みなさんも連れて行くんですか?」
「ああ、連行する」
ああこれ強制がつく連行だ。瞬時にそう悟ったけど悲しいかな、この人を止められる人類は存在しない。
ノエルちゃんに助けてとかいろいろ言われたけどそっと首を横に振る。
「一度捕まったらもう無理なので諦めよ。ね?」
「ちょっとぉぉーー!」
逆らえるならヤミさん辺りがとっくに逃げ出してるはずなのに大人しくぶら下がってるのでつまりはそういう事だ。
そうして焔のような髪をなびかせた師匠の引率の元、到着したのはクローバー王国から少し外れた場所。
強魔地帯、ユルティム火山。その登山道―――道なんて全く見えないけど師匠がそう言うのなら他のルートよりはマシなんだろう、多分―――で呆然とする紅蓮の獅子王団員とその他の前で女獅子が大きく吼える。
「さぁ行くぞ!! 糞莫迦共ぉーー!!」
「はーい」
合わせて手を挙げさっさと竜に成ったわたしに顔見知りがみんな怪訝そうな愕然とした顔を向けてきた。そこまで。
師匠に慣れているわたし以外の士気の低さを見てか、とても丁寧なこの場所の説明が入る。
「ここは強魔地帯のユルティム火山。地中不覚に強大な魔を帯びた火山帯があり、溶岩が常に噴出している。普段は人が近づけるような場所ではない」
見渡す限り黒岩の荒地が広がり、その上を赤赤とした溶岩が噴水よろしく活発に打ち上がり流れてくる場所は現時点でも人が近づく場所に見えないが。
「だが……なんと山頂には滋養強壮に良い素晴らしい温泉があるらしいのだー! どうだ?! ワクワクしてきただろう?! さぁ! 山頂まで行くぞ!!」
「あ、温泉に入りに来たんですね」
「最初からそう言っているだろう」
「わたしは初耳でしたよ」
「そうか。よし登れ」
相変わらずだこの人。
久しぶりの師匠節にから笑してたらギロリと鋭く睨まれたので慌てて火山へと体を向ける。羽を広げて飛べば―――まるで炎の中へと突っ込んだかのような熱気が肌を舐め上げた。
「(暑っ! そりゃ師匠の魔法よりはずっとマシだけど……)」
ため息をつけば濃密な炎の魔が肺から体内を満たすような場所。師匠がわたしをこういう場所に連れてくるのは珍しくないけど、久しぶりだからか全身に鉛が着けられたように酷く重くて翼が言うことを聞かない。
そんな低空飛行をしていたからか、ずしっと背中に何かが飛び乗った。見ればヤミさんがはーやれやれとヤンキー座りでタバコを吹かしている。活火山地帯で喫煙なんて普通しない。
「バックレた所で追いかけられんだろうな……」
「絶対地の果てまで追ってきますよ」
「しゃーねーな。つかドラ娘は熱くねぇの?」
「そりゃちょっとは暑いですけど……」
「ちょっとかよ。どんな鱗してんだこれ」
コツンと背中の竜鱗をノックしたヤミさんの腕スレスレに極大の火球が飛んできた。振り返らなくても誰が打ったか分かる凶悪な魔力。
「チンタラしてないでさっさと行かんかぁぁぁーー!!」
「ひぇっ、はい!」
「チッ」
舌打ちしたヤミさんと軽やかに跳んできた碧の野薔薇団長シャーロットさんが頭上を飛び越えていく。こっちは竜の羽で飛んでいるにも関わらず、だ。飛来する噴石を苦もなく切り捨てながら山頂へ悠々と向かう姿は流石団長のひと言。
汗ひとつかいていないのは気の所為じゃなく、体にピッタリと魔力の膜を纏っているからそれで全身を守っているからなんだろう。特殊な魔法でもない限り前に本で読んだマナスキンという技術が必要になるはず。
「(アスタくんとノエルちゃん、大丈夫かな……引き返そうとしたら師匠の拳が飛んでくるだろうから振り返れないけど……)」
「追いついた」
「ん? あ、ユノくん」
横からかけられた涼やかな声。炎の柱がいくつも上がる空で竜と並走できるような風魔法の使い手ユノくんは、何故か目的地の山頂ではなくわたしを見つめていた。
「……熱くないのか?」
「暑いけど、これくらいなら平気だよ」
「そうか……凄いな」
「ふふ。でしょ」
ユノくんはそれっきり沈黙した。代わりに風の精霊シルフ……じゃない、ベルちゃんがたくさん喋ってた。全部ユノくんに向けてのものだったからわたしは口出ししなかったけど。ユノくんは全く返事してなかったけど。
「……ソフィア」
「うん?」
「結婚、してたんだな」
「うん。相手が相手だから、誰にも言えないんだけど」
「それは……」
何か言いかけたユノくんは、それを一回飲み込んだように見えた。爆発するような火山の音に混じって聞こえた問いかけは風にさらわれ消えてしまいそうなほど小さかった。
「……あんたは今、幸せか?」
わたしはそれに、キョトンとしてしまった。
ユノくんがそんな事を聞いてくるなんて思いもよらなかったからだ。
「幸せだよ」
「なら、いい」
「うん。うん?」
よく分からないまま首を傾ければユノくんは笑った。珍しい。アスタくん以外の前でこんなに鮮やかに笑ってるところ、想像もつかないのに。……いやわたしユノくんのことそんなに詳しくないけども。
変わったことを聞きたがる人なんだなぁとユノくんを不思議に見ていたら―――ちょうと思い浮かべたアスタくんの声が後ろから聞こえた。
半ば悲鳴のそれに思わず振り返り、目を疑う。
「えっ、アスタくん飛ん……?!」
魔力のないはずのアスタくんは真っ直ぐ飛んできていた。反魔法の剣を握る右腕から頭にかけて黒く変色し、右側頭部からは角まで生えている。どう考えてただ事じゃない。
新しい力。新しい反魔法。その可能性が高いのに、酷く不安になる姿。
そんなアスタくんはぐんぐん迫ってくる。もう少しで追いつきそうなユノくんに笑って。
「着いた」
「え、あっ」
気がつけばもう山頂。マグマ溜りになっている頂きのすぐ横、黒い岩にわたしとユノくんは並んで着地した。
その頭上を流れ星のように飛び越えたアスタくんは―――放射線を描いてマグマに突っ込んでいく。
「アスタ……!」
「ああアスタくん?!」
「ぶわあああ!! マグマに突っ込むぅぅぅーー!!」
慌てて助けに行こうとして、突如燃え上がった獄炎の魔力に足と羽を止める。自然の魔ではありえない猛々しいそれが誰から放たれてるかなんて見なくてもわかる。
流れ星の、いやアスタくんの軌道が山から師匠へと切り替わる。
「どおおおお逃げて下さいぃぃいーー!!」
「逃げろ……? 莫迦者、獅子において狩りをするのは雌だぞ!!」
自分目掛け真っ直ぐ飛んできた反魔法の剣の切っ先を前に師匠は獰猛に笑った。そうしてあっさり空中で剣を避け、無防備だったアスタくんの横っ面に拳を叩き込み岩場にぶっ飛ばした。
繰り返すが、飛んでいたアスタくんの剣を避けて真後ろから追いついてぶん殴ったのである。
「師匠、相変わらずわたしより人間捨ててる……」
「あの人、あんたの師匠なのか……」
「うん、ちっちゃい頃から……悪い人ではないんだけど……」
半ば引いてるユノくんから憐憫の籠った眼差しが送られてくる。悪い人ではないんだ、本当に。ただ竜のわたし以上に人外じみて強いというだけで。
師匠はアスタくんの事が気に入ったのか見所があったのか将来食いでがある男になると踏んだのか、言葉をかけていた。
「少しは己のことが分かったようだな。だがまだまだだ……!」
「……はいっ!」
「よし! それでは温泉に入ることを許すーー! 服を脱げぇぇぇぇ!!」
「師匠!!」
わたしは師匠の所にぶっ飛んでった。
なんか体の前の方を抑えてるアスタくんに慌てて真に受けないよう言って、師匠に冗談でもなんてこと言ってるんだと猛抗議した。
結果、頭にゲンコツされた。
「理不尽!」
「温泉が湧くのは日没からだ。冗談に決まっているだろう」
「だったらもうちょっとふざけて言って下さいよ! めちゃくちゃ鬼気迫る服を脱げでしたよあれ!」
師匠にプンプン怒るわたしをアスタくんがまぁまぁと宥める。
「それより先輩、竜の姿のままなんですね」
「人の方に戻っちゃうとここ暑すぎるんだもん……」
「なんだ、魔導書を受け取ってもまだ人の方は魔法ひとつ使えんのか」
「そもそも魔導書が全く反応しないので……」
わたしの言葉にピク、と反応しかけた師匠だったけど、ちょうど登頂してきたノエルちゃんとレオくん碧の野薔薇のひと、数人の紅蓮の獅子王の団員に全員が目を向けたので続きは話さなかった。
「よし、辿り着いたぞ我がライバル達よーー!!」
「ちょっとソフィア飛んでくのは反則でしょーー!!」
「え、ご、ごめん……?」
高笑いしてアスタくんとユノくんを指さすレオくんと、首が痛そうにわたしを見上げるノエルちゃんをはじめ、全員汗だくだった。環境のせいもあるだろうけどマナスキンが難しかったんだろう。
それにしても火口付近とは思えない元気さだ。尻尾をゆらんと振って空を見上げた。
日暮れにはもう少し時間がかかりそうだ。
「これで全員じゃないですよね」
「日暮れまでここで待つ」
「はーい」
それなら、と尋常じゃない登山でヘロヘロになってるノエルちゃんを引き寄せるように支えれば、珍しくピッタリくっ付いてきた。お腹に頬寄せたノエルちゃんのふたつに束ねられた銀髪がプルプル震える。
「なによこれ……ひんやりする!」
「え、そうなの?」
「これもソフィアの魔法?」
「特に何かした覚えはないんだけど……」
頬ずりしそうな勢いのノエルちゃんを止める。仮にも竜鱗、めちゃくちゃ硬いんだから柔肌に傷くらい簡単につきかねない。
一応、時間切れなのか反魔法を使ってないアスタくんにも涼しいらしいよこっち来る? と声掛けたけど。
「いえ! 流石にそれはダメだと思うので我慢します!」
「めちゃくちゃ汗だくなのに……具合悪くなる前に言ってね」
「あざす!」
全力で固辞され。
少しずつ熱気が落ち、風が吹き、過ごしやすくなる夕刻が過ぎ。その間にもバラバラと紅蓮の獅子王の人達が到着するも全員は揃わないまま。
やがて、腕組みして道なき山道を見下ろしていた師匠が舌打ちした。
「ようやく揃ったか」
ああ、あれは遅いという意味だなと察し、内心で合掌する。
山道を何人かの紅蓮の獅子王が這う這うの体で上がってくるのが見えた。