白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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貴族の令嬢としての正装を身に纏うのは久しぶりの事だった。
とはいえユリウスさんと寝てたのを叩き起されて寝ぼけている間に侍女達の手で整えられたからわたしのした事は立つこととコルセットに耐えることだけだったんだけど。
「なんかこう……結婚式を思い出しました……」
「目的地はこれからだから、頑張って」
「はい……」
眠い目を擦りたいのを我慢して右手をユリウスさんに手を引かれ、左手に小さなバッグを提げて。まだ朝靄の残る王都の片隅にある、昨日約束をしたという生家の庭に足を踏み入れる。
玄関先でわたし達を出迎えてくれた父は恭しく一礼した。
「ようこそいらっしゃいました」
「(おかえりなさい、じゃないんだ……まあ、わたしもここが家とは思えないんだけど)」
立ち入れるのはわたしだけ。何よりどうしても外せない仕事があるから、ユリウスさんはここまでだ。エスコートしてくへていた腕からそっと離れる。
離れる間際。密やかな低い声が耳朶を掠めた。
「もし何かあったら僕の名前を呼んで」
「ぇ、」
紡ぎかけた驚きの声を飲み込んだのはユリウスさんが昨夜となんら変わらない笑みを浮かべていたからだ。魔法帝の表情。それなら、わたしもまた迂闊な振る舞いは出来ない。
自ら一歩踏み出し、きちんとカーテシーをする。
「本日はわたしのお願いを聞いて下さり、ありがとうございます」
「どうぞお気になさらず」
「ドラクーン殿、妻をよろしくお願いします」
「ええ、もちろん。私の娘でもありますから」
そっと盗み見たユリウスさんは、わたしが見たことのない、冷たい微笑みをたたえていたから危うく飛び上がる所だった。
そんな顔をするなんて知らなかった。いや、もしかしたら戦場ではこんな表情もするのかもと思い至って。
「(このひとは……わたしの父は、ユリウスさんがそんな顔をするほどのひと、ってこと……?)」
つばを飲む音がやけに大きく聞こえた。それでも。
「(呪術について調べる必要がある……アスタくんの腕を治す方法が、もしかしたらあるのかもしれないんだから)」
意を決して屋敷に足を踏み入れる。背後で重苦しい音を立てて鉄扉が閉まれば、もう外の音は聞こえなくて、ユリウスさんの姿も見えなかった。
「どうぞこちらへ」
「はい」
顔を上げて、先を行く背中を追いかける。
石造りの屋敷は凍りつくような底冷えが酷く、足元から震えが立ち上るほどだった。不慣れなヒールの靴だからだけじゃない。
「(さむ……)」
「女性にはお辛いかと思いますが、どうか辛抱ください」
父であるはずのドラクーン家当主から掛けられる言葉は酷く他人行儀だ。繊細な刺繍の薄い絨毯をずいぶん歩き、屋敷の中央に差し掛かった頃。
不意に現れた横道。その先に広がる地下への階段に、ギクリと足が止まった。
「この先に代々受け継いできた書庫があります」
「ここ……どうしても降りなきゃダメですか?」
「古い魔法がかかっていて、書庫から本は持ち出せないんですよ」
ネズミ色の石を積んで作られただろう地下への入り口がぽっかり口を開けて待っていた。その手前で涼し気な顔をしている父が先に降りてしまう。危ないことなんてない。そのはずなのに。
足が震える。理由は寒さだけじゃない。
「(怖い……っ)」
父が階段下からじっと見上げてくる。その手に魔法道具の明り取りを持っているというのに、父より少し先は塗り潰したような黒だけが広がっていた。
暗がりではない、闇が。
「どうしました?」
「い、いえ……」
「お帰りになりますか?」
無意識に後ろへ後ろへと下がっていた足が止まる。ここで帰ってもきっとユリウスさんは何も言わない。誰も怒らない。
でもそうしてしまったら、アスタくんの腕を治す可能性をわたし自身で握り潰すようなものだ。
渾身の力を振り絞って前へ踏み出す。たったそれだけの事が息が乱れるほど大変だった。
「行きます」
「……んっふふ、よろしい」
足音を石の壁に響かせ降りていく明かり。一段ごとに気温が落ちていく気がする石段を小走りで降りて追いかける。
地下を1階分降りた頃。現れた扉は古めかしい木目の扉だった。鍵一本で開く簡単な鉄の施錠を開く父の背中におかしい所はない。でも、この扉はなんだか変だ。
「(ユリウスさんでも知らない門外不出の呪術についての知識を、こんな見つかりやすくて突破しやすい部屋に置いてるの?)」
「さあ、どうぞ」
あっさり開いた錠を外した手が軋みをあげる扉を押し開く。息が白くけぶる気さえする寒さを噛み殺して、扉の内側、部屋の中に入った。
部屋は壁一面に本棚と蔵書が敷き詰められた小部屋だった。見た限り、アジトのエントランスと大きさは変わらない。ただ地下へ地下へと掘り進めているようで真ん中は床がない。
瀟洒な手すりから下を覗けば風の唸り声が前髪をさらった。床は見えない。ほんの少し下の階層以外はやはり絵の具でべっとり塗り潰したような黒ばかり。
じっとりと、背中に汗が滲む。
「身を乗り出し過ぎれば落ちますよ」
「っ、」
本来は、竜になれば飛べるから平気のはず。そのはずなのにわたしは素直に身を引いた。迷惑をかける訳にはいかないというより、本能的な恐怖に体が逃げた。
「ここにある本は全て先代当主、あなたの祖母にあたるソフィアの生家から持ってきたものです。しがない呪いの家は未来視の娘をひとり輩出したがために栄え、滅んだ……因果な話です」
「滅んだ……?」
「私とあなた以外の血が途絶え、断絶しているのですよ」
「は、」
手近にえる本の皮が張られた背表紙を撫でた父は、足元に明かりを置いた。そうして戸口に立って微笑んだ。笑っているはずなのに少しも安心できない笑みだった。
「私は用事があるのでこれにて失礼します。本についてですが、持ち出しと汚染は禁止されています。閉じたら怖いでしょうし、扉は開いたままでいいですよ。用が済んだなら私への挨拶や施錠など気にせず帰っていいですからね」
「あ……ありがとう、ございます」
「いえ。探し物が見つかるといいですね」
まるで心にもない言葉だった。靴音を鳴らし去っていった父が消えても、戸口をじっと見つめたのは寂しいからとか怖いからとかじゃなかった。
わたしと父を残し家系が断絶するなんてこと、本当にあるのだろうか?
「(ダメ……今日はそのために来たんじゃない、頭を冷やして。ちゃんと探すんだ)」
頭を振って本棚を見やる。ぼんやりと色濃い影を縁どり浮かび上がる背表紙。見たこともない文字の刻まれたものが多い。公用語で一部分だけでも読めたのは5冊に1冊くらい。少なすぎる。
読める背表紙の中、『―――が及ぼす人体への影響』と書かれた本がそれっぽかったので抜き取り、開く。最初っから人体解剖とか内臓についてとか書いてあって吐き気と目眩がしたのをぐっと飲み下す。
呪いについての記載もあった。呪いとは魔法と似て非なるもの。主に人ならざるものが振り撒く厄災であること。治療はほぼ不可能で、呪いをかけた術者の息の根を止めるのが一番手っ取り早いけれど、死んでも解けない呪いもあるし、死ぬことで完成する呪いもあること。
「(これがアスタくんの受けた呪術かな……厄介すぎる……)」
のんびり本を読んでいる場合ではないし読んでて気持ちのいいものでもないので次々ページをめくる。
現代にも残っている呪術はかなり威力が低いらしい。そっちの解呪の仕方についてはいくつか載っていたけど、肝心の古代の呪術についてはあまりに情報が少ない。なぜなら使い手がもう生きていないから。
「(じゃあ、なんで白夜の魔眼は古代の呪術なんてものを使えたの? そんなに古くから生きている……ようには見えなかったけど)」
長命な生き物にも見えなかった。なんならわたし達と何ら変わりなくすら見えた。あの3つ目が開くまでは。
考えても頭がこんがらがるばかりで訳が分からない。ダメだ、わたしじゃそもそもの知識が足りない。
「(持ち出し禁止……なら、書き写しはいいかな……?)」
そっと顔を上げる。誰の気配もない。相変わらず部屋の隅にある暗がりが色濃いだけ。
持ってきていたバッグを開き、取り出した簡易筆記具と紙を床に、膝をついて本の内容を書き写す。
密やかな羽根ペンの音と、時折ページを捲る音だけが部屋に満ちる。ここに来て初めての考え事をしない時間。
ふと、この屋敷に着いてからの違和感のひとつに気づく。
「(そういえば、こんなに大きな屋敷なのに使用人の気配すらない)」
道中ですれ違わなかっただけなら、そういう偶然もあるだろう。でも気配や、そう、臭いがしない。香水の匂い。洗剤の匂い。布の匂い。花の匂い。食事の匂い。どれほど気を遣っていても人間が生活していれば染み付くだろうにおいがここには少しもない。
変だ。父というひとも、この部屋も含めた屋敷全部が変だ。
「(さっさと調べて、早くここを出よう)」
呼吸ひとつするのにもなるべく音を出さないよう気をつけて文章を紙に書き記していく。
―――それを何冊繰り返しただろう。本棚の前で何度目かの本の物色をしている最中、思い出したようにお腹が鳴った。
「(あ、……そういえば、何時だろう)」
ここに時計はない。まさか時計ひとつ見当たらない部屋に案内されると思ってなかったから持ってきてもいない。地下だから窓もなく空の様子も伺えない。まるで牢屋のよう。
お腹が空いたのを我慢くらいできる。本の持ち出しは出来ないのだから、もう少し粘った方がいい。頭ではそうと分かっているのに、一度意識したらこの部屋はあまりに奇妙だ。
明かりは手元にある。部屋に敷き詰められているのは呪術について記されているとはいえ本ばかりだ。ネズミや虫もいない―――合致する血縁以外の侵入を許さない場所。
それが何故こんなにも怖いのか。戦場でもないのに足が震えるほど怯えてしまうのか。その答えが、不意に腹に落ちた。
「(ああそうだ、ここは……澱んでいる)」
一度気づいてしまえば気づかなかったフリなんて出来なかった。
長年空気を通さなかった部屋特有のにおい。それだけじゃない。この部屋は、この屋敷は、いつからか何もかもが停滞し、その場でぐずぐずに腐り落ち、白骨を晒すまで放置されているような、墓地よりなお悍ましい奈落の底のようなにおいがする。
何の理由もない。言いがかりのような、ただの妄想と言っていいそれが頭から離れない。
「(もう帰ろう)」
本を棚に戻し紙と筆記具を乱雑にバッグに詰め、明かりを手に書庫から出る。真冬の廊下よりも寒い階段を影を踏むように駆け上がる頃には息が切れていた。黒の暴牛のアジトでどんなに動いても息切れなんてしないのに。
明かりを消し、床に起きながら階段下から目が離せなかった。さっきまで居た場所だというのに二度と戻れる気がしない。
無理やり目線を切ったわたしは朝来た廊下を逆走するように早歩きした。
鉄扉をこじ開け玄関から出れば、空は端が淡く赤に染まっていた。もう夕暮れが目の前だ。そんなに集中していたのか。自覚がなかった……だけの、話なのだろうか。
重苦しい音を立てて再び閉まった扉を振り返る。結局、朝に父と会った以外は誰とも会わなかった屋敷を。
身震いしたわたしは足早に人の行き交うへ出て、急ぎ足で騎士団本部への道を辿った。
約束をしていたわけじゃない。もしかしたら仕事で席を外しているかもしれない。それでも今すぐ顔を見たかった。
「(ユリウスさん)」
あの柔らかな暖かさに触れたかった。
騎士団のローブも家に置いて、ただの淑女の格好をしていたから門前払いされると思っていた。
でも本部の入り口にはマルクスさんだけか待ち構えていてわたしを迎え入れてくれた。
「お疲れ様です、奥方様。その、顔色が優れないので先に医師を……」
「いいです。すぐユリウスさんと会わせて下さい」
「……はい」
一礼したマルクスさんに先導されて魔法帝の執務室へ向かう。いつもと違う靴音がやけに響く廊下は夕焼けですっかり赤く染め上がっていた。
「ユリウス様、いらっしゃいました」
「どうぞ」
マルクスさんが開けてくれた扉に半ば飛び込む。大きな執務机の向こうで夕日を背に立ち上がっていたユリウスさんは何もかも知っていたようで、飛びついたわたしを危なげなく受け止めてくれた。
首に齧り付くようにぶら下がるわたしの腰を支えてくれたユリウスさんに、その温度に、やっとひと心地ついた。
「おかえり。結局、僕は呼ばなかったね」
「……っ、呼んだら、問題になってたでしょ」
「そうだね」
さらりと大変なことを言う。マルクスさんが扉を閉める音を合図に離れようとして、やんわりと手を取られた。
「ユリウスさん?」
「冷たいね」
「ああ、何でかすっごく寒かったので……」
「寒かった? ドラクーンの屋敷がかい?」
「はい」
まるで冷蔵庫に居るみたいな寒さだったし、ユリウスさんが手のひらで溶かしてくれている指先の冷たさからもそれは伝わってるはず。難しい顔をしていたユリウスさんはわざとらしく微笑んだ。
「それじゃあ、報告を聞こうか」
「あ、はい。書き写してきたのでそれを」
「あの家の書物は持ち出し禁止のはずでは……?」
「書き写し禁止とは言われなかったので」
顔を引き攣らせたマルクスさんの問いに答えれば頭を抱えられてしまった。どうしたんだろう。不思議がりながらユリウスさんに書き留めた紙を渡せば、ものすごく苦笑いしていた。
「……順調に、黒の暴牛に染まっていってるね」
「え、そんな。ヤミさんほど酷くはないと思うんですけど」
別にルール違反をしたわけではないし。
真剣に訴えかけたけれどユリウスさんもマルクスさんも目を合わせてくれなかった。酷い。
呪術について書き付けた紙をユリウスさんが見ている間。
マルクスさんはわたしをソファーに座らせ毛布で包み、温かいミルクティーをサーブして部屋から出て行った。少しだけわたしを案じるようなお顔のまま。相変わらず優しいひとだ。
しばらくして。わたしに特に質問するでもなく確認し終わったらしいユリウスさんは、珍しく大きなため息をついた。
「恐らく、禁術魔法が関わっている」
「……禁術魔法? 古代の呪術じゃなくて、ですか?」
「ああ、言い方が間違っていたね。両方関わっている可能性が高い。問題はどちらも使い手がとっくに失われていることなんだけど」
そこでユリウスさんの声が途切れた。わたしのバッグの中で通信魔道具が鳴ったからだ。取り出し、思わず声が出る。
「え、黒の暴牛から……? あの、ユリウスさん」
「もちろんいいよ」
「すみません」
魔道具を開けば出たのはヤミさんだった。通信魔法だとまばらな無精髭が妙に目立つ気がするそのひとは、いつも通りな様子だ。とてもわざわざ通信魔法を使うほどの用事があるようには見えない。
「もしもし、どうしたんですかヤミさん」
『小僧の両腕が治った』
「え?」
思わず顔を上げる。ユリウスさんも口を開けて呆気に取られていた。聞き間違いじゃないらしい。魔道具に顔を戻す。
「治った? アスタくんの腕が? 今日一日で、いったいどうやって……」
『知らん。どうも魔女王ってのに治してもらったらしい。旦那には後でレポート出すからそれ読んで』
どうやらユリウスさんの所に居る前提で掛けてきたらしい。また顔を上げば、うんうん頷いていた。それでいいらしい。
それにしてもだ。魔道具を握る手に力が篭もる。
「アスタくんの腕、本当に治ったんですね? ちゃんとどっちも動くんですね? ……剣を、また握れるんですね?」
『そんな気になるなら戻ってくれば』
ごもっともだ。思わず噴き出したわたしとは逆に、ヤミさんはやや目を細める。笑顔じゃない。やや人相悪く。
『ユリウスの旦那巻き込んでそうだから連絡したんだけど……なんか危ないこと調べてた?』
「あ、はい」
『連絡して正解だったわ』
今まさにドンピシャだ。ヤミさんは勘がいいけど、最近特に鋭い気がする。
『ほんじゃまそんなわけで』
「はーい。連絡ありがとうございます」
『ん』
あっさり通信が切れる。暗くなった通信魔道具には着飾った姿のままのわたしが映っている。
ユリウスさんがこちらに歩いてくる足音が聞こえる。わたしは魔道具についた水滴を拭おうとして、……ダメになって、祈るように両手で握りしめてしまった。
「良かった……!」
アスタくんの腕が治った。誰がどんなふうに治療したか知らないけど、もう何でもよかった。良かった、アスタくんがまた剣を振るえる。魔法帝になる夢を諦めずに済む。本当に、本当に良かった。
次から次に涙が溢れて止まらないわたしの隣りにユリウスさんが腰を降ろした。揺れるソファーの上でぴったり寄り添って、頭を撫でてくれる。
その手のひらは、暖かな陽だまりみたいだった。
わたしが落ち着くまで寄り添ってくれたユリウスさんの懐で頬ずりした。腕の中にぴったり収まるようにしているわたしに、穏やかな声が密やかに独り言を零した。
「魔女王か。彼女ほどの魔女なら古代の呪術で負った傷も治せるんだね」
「魔女王……?」
「クローバー王国の外にある魔女の森の長だよ。強魔地帯にあるし誰でも森に入れるわけじゃないから、謎に包まれているんだよね」
「そうなんですね……」
今日は知らないことばかり知る日だ。
ひとしきり泣いた後だからか、どうにも熱っぽい息をつきながら。なんとなく浮かんだ疑問を特に何も考えないで一緒に吐き出す。
「それにしても、使い手のいないはずの古代の呪術も使えるなんて……白夜の魔眼はいったい何者なんだろう……」
「……」
いつも疑問には何かしら返事をくれるユリウスさんらしからぬ沈黙。どうしたのかと、居心地よく寄りかかっていた体から背中を浮かせて顔を上げる。
「ユリウスさん……?」
薄藍色に染まる空を背にしたユリウスさんは、少しだけ困ったように微笑んでいた。