白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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1週間ぶりに帰った黒の暴牛アジト。そのエントランスに雪崩込むように入ると同時にみんな思い思いに寛ぐ。
ソファーにどっかり座り込んだりお酒を飲んだりパンを山ほど出して爆食いしたり。自由すぎる。
「はーっ、疲れたぁぁ〜〜!」
「みなさまお疲れ様でしたぁぁぁ!!」
「あんたが一番ボロボロじゃないの」
「大仕事の後のお酒はまた格別ねぇ〜〜!」
かく言うわたしもやっと人心地ついた思いだ。とりあえずお茶でも淹れるべくお湯を沸かしにキッチンに引っ込む。
とっときの茶葉缶を開けて匂いを確かめる。紅茶とシトラスのいい香り。ポットに茶葉を入れてカップを並べて。
お湯が湧くまでの僅かな時間。エントランスから聞こえる元気な声は大好きなんだけど。
「(みんなと過ごすのも好きだけど、1週間も離れてるとユリウスさんに会いたいな……)」
はっ、と気がつけばしゅんしゅんとヤカンから湯気が上がっていた。慌てて火を止めてポットにたっぷり、カップに少しずつ、お湯を注いで数分待つ。
カップのお湯を捨てて、ポットから紅茶を注ぐ。くゆる華やかな湯気と紅茶の匂い。
今夜は王都に帰ろう。木製のトレーにカップを並べながらそう決意を固めて、エントランスに戻ったわたしの耳に飛び込んできたのは。
「魔法帝に報告に行く。チャミ公、捕虜持って付いて来い」
「美味しいもの出ますか?!」
「出ん」
えっ、と振り向くもヤミさんはこっちを見なかった。なので慌てて近くのテーブルにトレーを置いてヤミさんに駆け寄る。
「フィンラル空間頼む」
「美女いますか?!」
「おらん」
ふと魔法帝側近の顔ぶれを思い出す。確かに女性はほぼ居なかった。じゃない。
「ヤミさんわたしも……」
「お……オレも行きたいっすーー!!」
「お前マジで元気くんだな。そういや任を受けた時、お前もいたな。来い来い」
両腕上げられないアスタくんに塞がれ最後まで言えなかった。今度こそはと全力で声を上げる。
「ヤミさんわたしも連れてって下さい!!」
「あー」
気の進まなさそうな返事に慌てる。あーってなんだ、あーって。やる気なさそうに首の後ろをかいてないで教えて欲しい。
「ちゃ、ちゃんと大人しくしてるので!」
「……まあいいか。いいよ」
なんだか凄く気乗りしない様子のヤミさんを不思議に思いながら準備して。
アジトのエントランスで、フィンラルさんが開けてくれた空間魔法の中に飛び込む。
思えば王都に行く時は自分で飛んで行くことが多かった。フィンラルさんの空間魔法で来るなんて初めてなんじゃないかな、と新鮮な気持ちで整った石畳に着地。
すぐ横に降り立ったアスタくんが整然と居並ぶ建物、道の奥、遥か頭上に霞む王城を見上げて口を開けっ放している。
「相変わらずバカデカ広ええええ」
「うるせー」
「そのうち慣れるよ」
黒の暴牛のローブを羽織っているのに―――いやだからかもだけど―――ジロジロ見てきていた貴族っぽいひと達がヤミさんを見た途端に全力で顔ごと逸らしてく光景に苦笑しながら、わたしも王城を、いや魔法騎士団本部を見上げる。もう楽しみだ。
「はいお疲れフィンラルくん。オレ達が戻るまで遊んでていーよ」
「えっ」
「え゛ええ酷い! マジでアッシーくん!」
あっさり別行動宣言したヤミさんにビックリした。本当に酷い。
でもショックを受けてたフィンラルさんはちょっと考えた後すぐ気を取り直し、「そいじゃ後ほどっ!」とヤミさんに言うやいなや駆け出した。そして近くにいた女性をナンパし始めた。
「……」
「……王都に来て、わざわざナンパ……」
そして秒でフラレていた。この流れ、ラクエでも見た気がする。
ヤミさん共々みんな何も見なかったように王都の道をさっさと進んだ。
魔法騎士団団長のヤミさんが居たからかどこを通るにもフリーパスだった。
誰に止められることも案内されることもなく魔法騎士団本部に着き、なんなら魔法帝の執務室までさくさく進む。周りもだけどヤミさん自身が馴れた様子で進んでいくのでわたしとアスタくん、チャーミーさんは大きな背中をひたすら追いかけ。
執務室前の扉を開いたヤミさんを先頭に中に入れば、机で書類仕事中のユリウスさんが薄く微笑んだ。
「待っていたよ。まずはヤミの報告から聞こうか」
「はい」
丁寧な言葉遣いのヤミさんに愕然とするアスタくんとチャーミーさん。それにちょっと苛立ってそうな雰囲気のまま、ヤミさんが海底神殿での出来事を報告する。
海底神殿にはノエルちゃんの魔法で行ったこと。
白夜の魔眼の襲撃があったこと。
敵幹部の3つ目と異様な魔力のこと。
幹部は死亡、4人の部下は捕虜にしたこと。
魔石は無事に回収できたこと。
黒の暴牛に死者はなく、主な損害はアスタくんの両腕なこと。
「なるほど……3つめの眼、か。とりあえず遺体は解剖に回し、生きている白夜の連中は尋問にかけてみよう」
「うす。ほいじゃ魔石」
魔石がヤミさんからユリウスさんへ無事に手渡され、やっと任務が終わった。
「ご苦労だったね。聞いているだろうけど、ラクエで戦った騎士団員に多数の死傷者が出た……彼らも浮かばれるだろう」
ラクエ。王貴界きってのリゾート地に白夜の魔眼幹部の襲撃があり、迎撃した騎士団員が壊滅したらしい。最終的にヤミさんが倒したあの野人が海底神殿に来る直前に起こした惨劇だと。
黒の暴牛アジトに帰還する前にラクエの荒れた砂浜で聞いた話だ。思わず目を伏せる。
「君たち黒の暴牛はひとりの死者も出さずに今回の重大な任務を全うした。素晴らしいことだ……!」
「(でもきっとヤミさんやノエルちゃんが新しい魔法を覚えなかったら、アスタくんやバネッサさんやフィンラルさんが死に物狂いで頑張らなかったら……みんな死んでた)」
魔法帝としてのユリウスさんの言葉に自然と頭が落ちる。敬意からではなく自己への思う所から。
「本当に……立派な魔法騎士団団長になったね、ヤミ」
「……いやオレもう28なんで恥ずかしいから止めて」
「あぁ、ごめんごめん」
気安い会話に少し驚く。仲良しだと聞いていたけどここまでとは知らなかった。
羨む気持ちで見上げた先、ヤミさんは神妙な顔をしていた。
「自分が正しいと言いたいならば、そのやり方で進んだ先の実績で示せ。ユリウスの旦那……あんたが言った言葉だ」
そんな事を言ったのかと驚くと同時に、言い回しこそ違えどもしかしたらわたしも同じことを言われていたのではと気づく。
「前にも言った通り、オレはただ証明しただけだ。あんたは正しかったって。そして……オレが間違ってなかったってことは、こいつらが証明してくれた」
こいつら。そう言われながら肩を叩かれたアスタくんは痛みに悲鳴をあげたけどヤミさんはさっさと背を向け下がってきた。ひどい。
何故かわたしの頭をぽんと撫でたヤミさんに首を傾げてしまった。わたしは多分、ヤミさんの証明にはならないと思うんだけど。
「アスタくん……またひとつ、実績を積んだね」
ユリウスさんの大きな手が優しくアスタくんの肩に置かれる。
「君はまた一歩、魔法帝に近づいた……! これからも期待しているよ」
「は……はいっ!」
力強い激励にアスタくんは打ち震えていた。
珍しく頬まで染めている姿を微笑ましく思っていたら。
「あ、あのののの魔法帝……! ひとつおおおおおお願いがありましててててて……!」
「何だい?」
「さっ……サイン貰っていいですかっ?!」
「ふ、ふふっ」
思わず吹き出した。そんな崖から飛び降りるような勢いで言うことがそれ。見ればユリウスさんもずっこけてる。腰大丈夫かな。
ヤミさんはヤミさんでユリウスさんが使ってた羽根ペンをアスタくんの顔に向けてる。
「よしオレが書いてやろう顔面に」
「ぎゃああああやめてぇぇぇ」
「てめーオレにも緊張しろよ」
「あははっ」
「先輩お助けぇぇ」
わたしの背中に回り込んだアスタくんにヤミさんが舌打ちする。元からそんな真面目に顔にサインするつもりはなかったんだろう。多分。
さっきずっこけていたユリウスさんは大丈夫かなと視線を泳がせて―――凍りついた。
「ところでヤミ、この子は君の子供かい? いつの間にこんな大きな子を」
「なんか美味しいものくれよ」
「違う」
トンチンカンなことをチャーミーさんに言ってるのはいい。美味しいものをねだってるチャーミーさんも別にいい。
でもユリウスさんがチャーミーさんを抱っこしてるのは許せない。わたしだって抱っこして欲しいのに。1週間ぶりなのに抱っこどころか近づけもしないというのに。ずるい。胸がモヤモヤする。
「……」
「せ、先輩、なんか気配がめっちゃ物騒なんすけど……」
「別に」
「ほ、ほら、チャーミーパイセンちっちゃいから子供扱い慣れてますって! ヤミ団長の娘扱いは初めて見たっすけど!」
「うん」
「う……うぉぉ……」
ヤミさんに目配せされたけど無視する。ユリウスさんから飛んできた物言いたげな眼差しもわざと気づかないフリする。アスタくんは申し訳なくなってきたので怒ってないよと軽く背中を叩いておく。
「(これじゃわたしが子供だ……)」
何も言わず何もせず、斜め下の床を睨むしかない。惨めだ。
不意に中空に魔法が開く。通信魔法。マルクスさんだ。
『お取り込みのところ失礼します魔法帝―――!』
「どうした? マルクスくん」
『かねてよりダイヤモンド王国と小競り合いのあった国境付近の町キテンに、ダイヤモンドの一部隊が攻撃を仕掛けて来たようです!』
「この大変な時に……」
『通信魔法で現場の映像を送ります!』
マルクスさんが映っていた通信魔法は、まるっきり違う景色を映し出す。
「これは……」
見えたのは街ではなく青空だった。渡り鳥さながらに群れなし向かってくる数十もの魔道士が絨毯や箒に乗っていて、先鋒の何人かは自身の魔法で飛んでいる。
ダイヤを身につけているその誰もが並々ならない使い手だと一目見て分かった。
「なっ……何ですかこの数はぁぁぁぁ!!」
『警護をしていた魔法騎士団員は……ほぼ壊滅してしまいました……!』
ラクエでの報告と荒れた砂浜の様子を思い出し、口に苦いものが広がる。普通の街があんな目にあっているのだ。今、まさに。
そしてきっとこれは魔法帝にとっては日常なんだろう。
「いつものちょっかいではないようだね……それに、この軍勢を率いている彼らは八輝将の3人だ……!」
「……! 何ですか?! 八輝将って!」
「ダイヤモンド王国最強の8人だ。クローバー王国での魔法騎士団団長みてーなもんだな」
「え゛ええ?! それって激ヤバじゃ……」
フエゴレオンさんやヤミさんみたいなひと達が大挙して押し寄せているとなればまずただでは済まない。何より。
「キテンって確か大きな街で、あそこが落ちたらあの辺一帯が危なくなるんじゃ……」
『はい……キテンは国境防衛の要! ここを落とされるとダイアモンドに一気に侵略されやすくなってしまう……!』
そんな要衝に配備されるような魔法騎士がもうやられているという事実にゾッとする。特に何が出来るわけでもないのに焦りが募る中、マルクスさんが尚も声を上げる。
『あっ……?!』
「何だぁぁ?! 今度はどうしたキノコヘッド!」
「(キノコ……)」
『また……彼らです……!』
景色が移り変わる。
青空ではなく、魔法障壁の張られた街へ。
ダイヤではなく、よく知るローブを纏う魔法騎士達へ。
『ここ数年、国の危機に逸早く駆けつけ、圧倒的な活躍で最強の団へとのし上がった……金色の夜明け団!』
「ゆ……ユノーー?!」
「(ウィリアムさん……!)」
颯爽と駆けつけた金色の夜明け団の精鋭達。その中に見覚えのある顔を見つけて思わず声を上げかけたのを堪える。
魔法障壁と外壁を破砕しながら侵攻してきたダイヤモンドの魔道士に真正面から当たったのは、アスタくんと同じくまだ新人のはずのユノくんだった。涼し気な顔した彼は特に無茶をすることなく繰り出した極大の風魔法で敵を纏めて吹っ飛ばしてしまった。
精霊の力を借りた風魔法で敵が一掃され、市民の避難が終わったキテンの道が映る。ふと横を見ればキラキラ目を輝かせたユリウスさんの姿。
「あれが風の精霊……生で見たい……! また随分と強くなったようだねユノくん!」
大変な戦況のはずなのに相変わらず珍しい魔法に目がない様子につい頬が緩む。……どうしたって、ユリウスさんが嬉しそうにしてるとわたしも嬉しい。
「金色の夜明けが駆けつけてくれたものの、敵は八輝将が3人いる上、あの数だ……まだ援軍を向かわせたいが今すぐあの場に向かえるのは………」
「オレも行きましょうか? ユリウスの旦那。確かあの町、フィンラルが行ったことあったはず……」
かつてない働き者な発言に正直言うと驚いた。確かにヤミさんが直行するならそれが一番だろうけど。
「ヤミ……! 君が行ってくれるのなら助かるよ! もしかしたら陽動の可能性もあるから私は迂闊には動けない……国王もいるしね」
「別にいーっすよ、今オレなかなか無敵だし。ちょっと気になる奴も……いるしね」
「(気になる奴?)」
さっき映ったダイヤモンドの魔道士に知り合いでも居たのだろうか。頭を搔くヤミさんは詳しく話さなかった。
「あ、くそフィンラルもここまで付いて来させりゃよかったあの野郎」
「自由行動させたのヤミさんじゃないですか……」
「ヤミ団長!!」
両腕を骨折しているアスタくんが上がらない腕の分までと言わんばかりに全身全霊の声を上げ、ヤミさんだけでなく全員の耳目を集めた。
「俺も連れてって下さい! 逃げ遅れたひともいるだろーし……」
「ダメだ、てめーみてーな大怪我人は足手まといだ。連れて帰れドラ娘」
「えっ」
突然話を振られたわたしと即答で却下されたアスタくんが思わず目を見交わす。確かに両腕が折れてて唯一の武器も使えないひとは戦場に連れて行くべきではない。でも。
「……でも」
食い下がろうとしたアスタくんを止めるようにチャーミーさんが手を伸ばす。そうして珍しく、というかわたしも初めて見るくらい真剣にヤミさんを見上げた。
「チャーミーパイセン……」
「先輩として私が同行して守ります……! それなら……いいでしょう?!」
「チャーミーさん……! わ、わたしも同行します!」
「お前ら……」
ガラにもなく感動に打ち震えてるヤミさんの声にはなんか含みがあった気がしたけど。
結局、ヤミさんはアスタくんを連れて行く決意をした。
「しょーがねー! 付いて来やがれバカ野郎共! フィンラル呼び出すぞ」
「ラジャーっす!」
「はーい」
アスタくん、チャーミーさんに続いて広い背中について部屋を出る。
振り返ればユリウスさんは微笑ましげな顔でわたし達を見ていた。わたしひとりに向けたものじゃない。黒の暴牛みんなに向けられたものだ。
だから、ちょっと迷ったけど何も言わずに扉をくぐった。
別に拗ねてるわけじゃない。
魔法騎士団本部から出たヤミさんは王都の入り組んだ道からあっという間に目当ての場所に辿り着いてしまった。
綺麗に着飾った女性ふたりに笑顔で声をかけていたフィンラルさんの後ろにずしずしと近づいていく。両肩にしがみついているアスタくんとチャーミーさんも含めて悪魔みたいな雰囲気で。
「いやあ〜君達、可愛いね〜! 君達に似た美しい花が咲く丘があるんだ。どう? オレの空間魔法でちょっと小旅行しに行かない?!」
「あの、フィンラルさん……後ろ……」
フィンラルさん越しに大魔神ヤミさんを見て真っ青になってるお嬢さん方に同情から思わず声をかけたけど、特に意味はなく悲鳴をあげて逃げられてしまった。
「ちょ……何してくれるんすか〜?!」
「うるせー、つべこべ言わずとっととキテンって町へ連れてけや」
「え゛っ?! 今日はオフなんじゃ……?!」
そういえばラクエをたつ前にヤミさんがみんなに休みをくれていたなと思い出す。急ぎの報告からの緊急事態なので仕方ないけれど。
「お前にオフなんて存在しねーんだよ、死んだ時それがお前のオフなんだよ」
「(理不尽の権化……)」
流石に可哀想すぎたので手短に説明する。3人の圧が―――特に、本当に何故かチャーミーさんの圧が―――凄かったから急いで。
「なるほどキテンにダイヤモンドの襲撃が……! い、行きたくな、」
「おら早く空間出しやがれフィンラルこの野郎」
「カツアゲ?!」
「フィンラル先輩お願いしゃぁぁぁぁ!!」
「らあああああ」
「うわああああ」
「ああ……」
何の意味もなかったけれど。