白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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海底神殿の人達に手当てされ、黒の暴牛にと広い客室を宛てがわれた。フィンラルさんの魔力が回復する明日まで地上に帰れないからそれまで休んで行くことになったからだ。
わたしは鱗が剥がれた場所が擦り傷になっていただけで済んだけど、重傷のひともいて。
その筆頭であるアスタくんが部屋を抜け出すのを見つけたわたしはその背中を追いかけた。
「お花摘むの?」
「おわあっ?! ってソフィア先輩」
バキバキに折られてグルグルに包帯を巻かれた両腕でなんとか野花を摘もうとしている姿に、見かねて思わず声をかけたら飛び上がって驚かれた。
「ダメだよ、怪我してるのに無理したら」
「うす……」
申し訳なさそうにしながら、それでも首から吊っている腕で花を摘もうと頑張る姿に横から手を出す。呆気なく手折れた小輪をアスタくんの辛うじて動く指に渡せば照れくさそうにされた。
「手伝うね」
「あっ……ありがとうございます!」
「ううん」
薄々察していながら、理由を聞かないまま海底のあちこちで地上にはない花を一緒に集めて回る。
何輪か摘んだ後、少し迷ったような顔をしたアスタくんと一緒に神殿へ向かう。大きく開いた壁穴の向こうには先客がいた。
天地を裂くように刻まれた一本の刀傷、その真ん中で白い布を被って横たわる遺体。それに向かって片手を軽く上げている。ヤミさんの故郷の弔いだろうか。
火口を上向けて立てているタバコからくゆる煙はいつものヤミさんのにおいがした。
「どうした? 小僧、ドラ娘」
「あっ」
秒でバレた。コソコソと後ろから様子を伺っていたのを切り上げて前に出る。
「いよっ! 流石ヤミ団長! 氣でバレバレですね?!」
「どうした? って聞いたよな? 質問に答えろぶっ飛ばすぞ」
「氣?」
「なんとなく察知する技術。オレが小僧に教えた」
「いつの間に……」
そういえば戦ってる時に妙に勘がいい事があったなと思い返し納得する。その横でアスタくんはへらっと笑った。
「いや明日には海底神殿から帰ると思うと探検したくて」
「元気くんかお前」
「わたしはアスタくんの付き添いをと思って」
「探検してたら、何やら綺麗な花を見つけまして……」
アスタくんの指に摘まれた何本もの花を見下ろし、ヤミさんが目を細めた。
花を束ねて添えるのを手伝う。屈んだアスタくんは石で固定したタバコの少し手前にそれを捧げた。
遺体は白い布の向こう。足先しか見えないそれを前に、それぞれが何かを考えているような沈黙が漂う。
口を開いたのはアスタくんだった。
「オレ、こいつらの事は許せねーっす。……でも」
言葉を探すような、悩むような、一瞬の間。
「……何のことか分かんねーけど、こいつらにもどうしても許せねー何かがあったんだなって……あそこまで……憎むくらいの何かが……」
「憎む……」
見下ろし、対峙した時のことを思い出す。人間を憎悪し、禍々しい魔にその身を染め、口にしたのは怨嗟と絶望と―――わたしの名前。
ほんの数時間前の出来事なのに、何年も前の事のような感覚がするのは何故だろう。
「本当は……こいつが一番、絶望してたのかなって……」
「アスタくん……」
「お前……バカだよな?」
「え?!」
しんみりした話をしていたはずなのに。
ヤミさんはまさかの確認をアスタくんにした。
「バカだよな? って聞いてんだ、質問に答えろぶっ飛ばすぞ」
「え゛っ?! はいっ! バカっす!」
「そんなに力いっぱい認めないでアスタくん!」
全然関係ないけどなんか悲しくなった。
ヤミさんはアスタくんの頭を優しく撫でた。きっと昼間戦っていた時と同じ理由で。
「バカはんなこと深く考えなくていーんだバカ。お前はお前の夢だけ追ってりゃいいんだよ」
ヤミさんは穏やかな声音で諭すように伝える。
「今はな」
「わ゛っ」
「あっ」
そうしてあっさりとアスタくんの額のバンダナを目元まで下ろした。手が使えないのになんて事を。
「うおおお見えない戻せない! ヤミ団長、両腕折れてんすよ?! 俺!」
「いじめっ子みたいなことしないで下さい!」
慌ててアスタくんのバンダナを引っ張り上げる。
ヤミさんはというとさっさと立ち去るところで、大きなはずの背中が遠ざかっていた。もう、と腹を立てるわたしとは逆に、アスタくんは毛ほども気にした様子はなく。
ただ静かに花を、野人を見ていた。
ゆっくりとわたしを振り向くまでは、少しの時間だった。
「そろそろ戻ります」
「うん」
「ありがとうございました!」
「大丈夫だよ、これくらい」
そう返しながら。
アスタくんの為だけにここに来たわけじゃない自覚があったわたしは、後ろめたい気持ちで目を逸らした。
「(白夜の魔眼はわたしの名前を知っている……けど、このひとはそれだけじゃなかった)」
名前を呼ばれただけじゃなかった。忘れたのかと詰られて、……他のみんなとは違い、手加減されたようにも思う。
「(わたしは隠されて育った。結婚した後からは外に出られたけど、このひと達と知り合ったりはしてない……どうして……)」
影を引きずるようにその場から離れる。
アスタくんは物言いたげにわたしを見て。優しいから、何度か堪えて。
「ソフィア先輩」
「うん?」
雪山と、洞窟と。二度も敵に並々ならない声音で呼ばれた名前をなぞったアスタくんは、真っ直ぐな目でわたしを射抜いた。
「オレは先輩がめちゃくちゃいい人だって知ってます。だから全然気にしてないし、絶対疑わないです!」
「アスタくん……」
どこまでも真っ直ぐな光のような言葉に胸が震える。
「ありがとう……でも、魔法帝になるなら疑うのも大事かもしれないって出来事がついこないだあった気がする」
「うっ」
紫苑の鯱団長の裏切りは記憶に新しい。言葉に詰まり、うーんうーんと二の句を必死になって考えてるアスタくんに思わず笑ってしまった。
「嘘だよ。わたしは、魔法帝は仲間を最後まで信じ抜いてもいいと思う」
「……はいっ!」
覚悟を改めたように強く頷いたアスタくんと並んで、宛てがわれた客間に戻る。不思議と気分は晴れやかになっていた。
―――海底神殿で一泊したあくる朝。
出立の準備を整えた黒の暴牛を見送るためにと海底神殿のひと達が集まってくれた。
「それじゃ、色々ありがとなっ!」
「また来ておくれよ! その時は盛大に宴を!」
朗らかに応じた大司祭の後ろには人集りが出来ていて、前列には神殿魔道士のひと達がいた。義足を付けた兄と、喉に包帯を巻いたままの妹も含めて全員が。魔法では治らなかったのかという落胆と、命があってよかったという安堵がない混ぜになる。
バネッサさんが横向く。そこには手のひらに喋る綿を持ったチャーミーさんがいた。
「チャーミー、捕まえた白夜の奴らは大丈夫そう?」
「うーん何か叫んでる……出て来れないみたいだし、大丈夫そーです」
「おいお前それ超すげー拘束魔法なんじゃねーのか?」
「そーなのですかね?」
会話を聞きながら、そういえば普通の拘束魔法は小さくして持ち帰りやすくしたりなんて出来ないようなと思う。見た目のせいか全然凄そうな気がしないけど。
「よう」
「昨日の……」
海底神殿最強の男の妻だと名乗ったそのひとは、仮面の下に隠していたかんばせを綻ばせた。
「世話になったな、お前らが居なかったら全滅してただろうよ」
「こちらこそ助かりました」
「あんたも私と同じ、負けられない理由があるんだったな」
不思議と師匠を思い出すそのひとは拳を突き出した。
戸惑うわたしに誇らしげに笑いながら。
「二度と負けるなよ」
「……はい!」
鱗のない手を握り軽くぶつける。懐かしさすら感じるそのひとに手を振り別れ、みんなの輪の中に戻っていく。
果てない天井を仰げば複雑に揺らぐ海色が降り注いでいた。
「(色々あったけど、夢みたいに綺麗な所だったな)」
フィンラルさんが開いた空間魔法を通り、行きとは比べ物にならないほど安全にラクエへ着き、黒の暴牛のアジトに帰った。