白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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三対の信じられない規模の大魔法が炸裂し合う雪山の洞窟の中。
天井がぽっかりと開いているおかげで見える曇天の下、戦力の拮抗にちりりと背中の鱗が痺れた。
変幻自在の魔法に対抗する茨魔法。
獰猛な魔法に対抗する切り裂き魔法。
炎の精霊使いに対抗する水銀魔法。
味方は全員現役の大魔法騎士。にも関わらず、状況は五分五分。
鱗の表面を撫でていく魔力の鋭さに、わたしでは割って入れないと悟り、牙を食いしばる。
不気味なのは、敵首魁の眼差しだ。
ヤミさんに向けていた憎悪と侮蔑の塊のようなそれとはあまりにかけ離れた、慈愛とも呼べるそれ。
戦闘中の仲間にすら向けられない視線が、わたしだけに注がれている居心地悪さと共に、どうにも落ち着かない気分にさせられる。
「間違っても飛び出すなよ」
「う……わ、分かってます」
お腹をコンコンとノックしながらのヤミさんからの釘刺しに、頷き応える。お腹と背中に庇っているのは動けない味方だ。ここで踏ん張るのも大事な役割だと。
じっと、耐える。
天変地異のような戦況が、五分五分のまま永遠に続くかに思われた頃。
「……ん?」
ふとお腹の下で魔力の気配。見下ろせばヒィコラ言いながら空間魔法を繋げるフィンラルさんと、黒い魔法の中に消える我らが団長。
あんぐり顎が落ちる。普通に消えた背中を追うようなマネはせず顔を上げて、思った通りの場所から落ちている白刃と体躯に吠えたけらずにいられなかった。
「ヤミさんわたしには動くなって言ったくせにーー!」
白衣を身に纏う敵首魁の真上。真っ直ぐ振り下ろされるであろう刀は過たず首を狙っている。
―――師匠に戦いを習っていなければ見えなかっただろう。敵がカウンターするべく構えた光魔法と、それを打ち消し本体までも打ち払ったアスタくんの黒剣。
それらを目を見開いたまま、ただ、見た。
「あー、うっかりうっかり」
「その言い方だと絶対確信犯じゃないですか!」
はしたなくも、あんぐり口を開けてしまう。慌てて振り返れどアスタくんはいない。そりゃそうだ。敵のすぐ近くにいるんだから。
ちゃっかり飛び出していた団長ヤミさんと鉄砲玉ことアスタくんにクワッと口を開く。確かに、確かに動けないゴーシュさんと直接戦闘が不得手なフィンラルさんを守ることは大事だけど、だけど!
すごい戦力外通告されたみたいで傷つくんですけど、ヤミさん!
「アスタくんまで!」
「先輩すみません! 我慢できなかったです!」
「潔いけど無理したのでダメです!」
「うぐっ」
上下に動く尻尾が瓦礫を砕いていると分かっていても止められない。フィンラルさんが「ヒェッ」と言っていてもだ。
守ろうとしたのに。わたしの後ろにいれば安全なのに。アスタくんも、ヤミさんも!
アスタくんの頭まで撫でて褒めるヤミさんというとてもレアな景色に羨ましさから唸り声まで出てしまう。「ソフィアちゃんのその焼きもち、どっちに向けたものなの……?」正直どっちも羨ましい。
あとは残る三人の敵を倒すだけ。それも団長達が済ませてしまうだろうと、油断した。
膨れ上がり洞窟中に満ち満ちた光魔法の気配は、アスタくんの剣が直撃した、肉の薄い、敵首魁の体から発せられた。敵がザワついている。かけられていた封印魔法が解けてしまった、と。
「なぜだ……なぜ貴様がその魔導書を……なぜ貴様が……断魔の剣と、宿魔の剣を……その剣は……あの方のモノだ……!」
「え……?」
うわ言のような呟きの中心から、まるで弾ける寸前の風船のように魔力が膨れ上がり洞窟の中いっぱいに広がる。このまま破裂してしまえばこの辺一帯が吹き飛ぶだろう。
「ず〜っと何をわけの分からんことを……このクソボロの魔導書もクソボロの剣もオレのだっっ!! 変な言いがかりつけんなこのイカレ野郎ぉぉーー!!」
「アスタくん、そんなこと言ってる場合じゃ……!」
自分の魔導書と剣に文句をつけられたと感じたらしい後輩の怒りももっともだけど、言い返された敵首魁はそれが聞こえる状況かももう怪しい。
煌々と光る濃密な魔力が白い人を丸く包み込んでいる。小さな太陽のようなそれが臨海に達すれば―――想像もしたくない。
団長達の魔法も通じない。切り裂く魔法も吸い込まれるように消えてしまった。
「……どうして」
視界が白く染まる直前。
迷子の子供のようなか細い声が、あらゆる喧騒を抜けてわたしに届いた。
「どうして、そばにいないの。どうして、そいつらの味方をするの。どうして、僕の、……、どうして……」
独白ではなかった。悔恨でも。泣き言でさえ。
「……ソフィア」
悲しくて寂しくて傷つき泣き疲れた、あまりに可哀想な、ひとりぼっちの子供のような後ろ姿が、見えた。
「(どうして。なんで、わたしを見て、そんな、ことを)」
疑問は声にならず。
ただ目の前で三人の敵が首魁に大掛かりな封印魔法を施すのを見守ることしか出来なかった。
全てが白い光に包まれ、視界が晴れた後。
首魁がいた場所には氷塊に似た巨大なマナの塊とその中心に閉じ込められた白衣の敵がいた。
長い年月を経て琥珀の中に閉じ込められた虫のようだと思った。
「ちょっと頑張りすぎたねリヒトくん……ゆっくり休もう」
「……リヒト?」
それが首魁の名前かと、何の気なしに呟いた。それだけのはずだったのに、さっきまで飄々とした雰囲気を崩さないまま団長と渡り合っていた実力者は、こちらを振り向いた。
テスト問題を間違えた子供を見るような目で、わたしを、見た。
「あー、そこの……竜の子さ。君だけはこいつの……リヒトくんのこと、リヒトって呼ばないでくんない?」
「え、」
何もしていないのに果てしなく嫌われているのだろうか、いや確かにわたし魔法帝の妻だけど。
固まるわたしに、いやー難しいなと、気だるげなその人は後ろ首をかく。
「ただ、オレからの懇願。お願いっつっても今は聞いて貰えないだろうが……まあ、気が向いたらでいいからさ」
じゃあね、とひらりとその人が手を振ると同時。
マナの巨大な塊ごと運ぶ空間魔法が開き、敵が撤退していく。
「うちの大将の具合が悪いから、今日はここで帰らせてもらうねー」
「今回は我々の敗北だ……! だが次に会う時はお前たちに真の絶望を味わわせてやろう……!」
「その時が、あなた達の最期……」
各々が好き勝手に言い捨て、あっという間にその姿は空間魔法の黒の中に消えた。
「我ら白夜の魔眼は……常にお前達を見ている……」
まるで脅すような不気味な言葉を残して。
撤退した彼らを見送り、アスタくんは勝利の雄叫びを上げて、ヤミさんはタバコをふかして、フィンラルさんは嬉し泣きをしてるというのに。
わたしは棒立ちになっていた。
「(なんでだろう……嬉しくない)」
敵なのに。王都を襲い、フエゴレオンさんの片腕を切り取り、今また子供たちを攫いアスタくんとヤミさんを傷つけた敵のはずなのに。
わたしは彼らを憎む気持ちが湧かなかった。
彼らを撃退した喜びがなかった。
どうして。なぜ。
「ソフィア先輩……」
困惑しきりのわたしの鋭いつま先に、アスタくんの手が触れる。
帰りましょう。掛けられた言葉に、うん、と頷くので精一杯だった。
そうして魔法を解いて人の姿に戻って、手を引かれて―――引いていた手がゆっくりと落ちていくのを慌てて引っ張る。
「えっ?!」
「うおっ、危な」
筋肉の塊みたいなアスタくんはあまりに重くて、倒れ込むのをわたしが支え切れるはずもなく。慌てて駆け寄ってきてくれたフィンラルさんと一緒になんとか踏みとどまる。聞こえたのは静かな寝息。……疲れて眠っちゃったのかな。
「流石に限界だったか……しょうがねー、連れてってやれフィンラル」
「オレ?!」
「あ、わたしも手伝いま……」
不意に懐で軽快な音楽が鳴った。通信魔道具だ。掛けてきているのは、ほぼ確実にマルクスさん。一気に血の気が引いていく。
「(なんでこのタイミングで……!)」
フィンラルさんとゴーシュさんの怪訝そうな視線が刺さる。ちょっと遠くからは他の団長達の視線も。なんで出ないの? って。
わたしも出なきゃとは分かっている。分かってはいるけど、でもなんで魔法帝側近のマルクスさんと通信魔法してるのって聞かれたらちゃんと答えられる自信がないし、何よりうっかりユリウスさん関連の話をされたら色々バレてしまう。
どうしようどうしようと焦るわたしの懐にずぼっと手を差し込んだヤミさんが、すごい無造作に通信魔道具を抜いて開いた。
「あっ」
「もしもし黒の暴牛でーす」
『えっ?!』
通信魔法越しにマルクスさんが狼狽えているのが分かる。でも流石と言うべきか、すぐさま取り繕ってヤミさんと話し始めた。
白夜の魔眼の首魁と幹部を退けたこと。倒れたのはアスタくんだけということ。
『……実はそのアスタくんの力を借りるため連絡しました。治療も請け負うので、もしよければそのまま魔法騎士団本部に運んでもらえないでしょうか』
「えっ、アスタくんを?」
『はい』
すぱーっと紫煙を吐いたヤミさんはわたしを見下ろす。
「今のアッシーくんじゃ王貴界までは無理だろうからな。ドラ娘、頼んだ」
「そ、それはいいですけど……」
『もう一つ伝達が。その場にいる団長達も至急本部に招集するようにとの事です』
「あ?」
「えっ」
『それではお待ちしています』
しれっと言ったマルクスさんは、片眉を上げたヤミさんはもちろん遠くで反応した三人の団長達に一切反応することなくあっさりと通信を切った。
通信を切ったマルクスさんに聞きたかったけれど聞けないまま寝息を立ててるアスタくんを見る。マルクスさんが力を借りたいと言ったということはつまり、魔法帝からの呼び出しってことだ。
「(アスタくんに何させるつもりなんだろう……?)」
首をひねるも、ヤミさんは面倒くさそうな顔して通信魔道具を返してくるだけだった。
「箒持ってくんの忘れてたしな……ドラ娘、いっちょ王貴界まで頼むわ」
「はーい」
竜になり、アスタくんを両手でそっと持つ。支えきれないと思っていた体はこの姿で見ると思いのほか小さく見えた。さっきまであんなに頼もしかったのに寝顔は子供みたいにあどけない。
ヤミさんが声をかけた他の団長達はそれぞれ通信魔道具で部下達に指示を出して。
そうしてわたしの背中に団長が四人乗ることになった。
「それじゃあ、飛んでもいいですか?」
「おう」
「ソフィアちゃん、気をつけてねー!」
ふらつくゴーシュさんを支えてるフィンラルさんが足元から手を振り気遣ってくれるのに頷き、羽を広げる。洞窟に残った人達を回収して町まで空間魔法で送る大仕事が残ってるのに優しい人だ。
硬い岩の地面を蹴って大きく開いた天井から飛び立ち、雪が白白と照らす山の上を通り越す。一路王貴界へ。