白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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フィンラルさんが開けてくれた空間魔法の穴から次々と子供たちが駆け出してくる。
子供が行方不明になったと訴えていた親御さん達がひとりひとり迎え、抱きしめ。念の為に治療をと黒の暴牛の後に現着した医療魔道士達が待機している教会に運び入れて。
「あとは、マルコくんとマリーちゃんが帰ってきたら全員?」
「そのはずだけど……」
最後に、レベッカの弟のマルコくんと、ゴーシュ先輩の妹マリーちゃんが帰ってきて、行方不明だった子供たちが全員揃った。
ゴーシュ先輩はその少し前に、血まみれでフィンラルさんに抱えられて運ばれた。残るは黒の暴牛団員のアスタくんと、あとはヤミさんが極寒の雪山に取り残されたことになる。
空間魔法を繋げて迎えに行けないかと思ったりもしたけれど、肝心のフィンラルさんに「ちょっと流石に休憩挟まないと無理……!」と言われてしまってはどうしようもない。
子供たちを守って敵と戦っていたという教会のシスターさんと並んで治療を受けているゴーシュ先輩の、彫像のように青白い横顔をチラと見て、再び表に出る。
しんしんと降り続く雪は山から流れてきている。
見上げた先には、魔力混じりの白雲がぎゅっと詰まったような山冠。こんなの、普通の天候ではありえない。
「子供たちを攫った雪魔法の人は、もう下山したのに……」
この天候を創り出したと思わしき雪魔法の使い手は今、しょぼくれた顔をして申し訳なさそうに教会にいる。にも関わらず空は荒れたまま。これは、想像を絶する魔力が渦巻いている時に出るものだと、師匠の力を通してわたしは知っている。
山中に現れた敵の中に、白衣を身にまとった、頭のおかしい光魔法の使い手がいたとフィンラルさんは言っていた。
ヤミさんが負けるはずもないけれど、とんでもなく強く、魔力も底が分からないほどだったとも。
間違いなく、最低でも団長クラスの敵。
「もどかしいけど、決着が着くまでは、わたし達が行ってもヤミさんの足を引っ張るだけなんだろうし……」
「そうね……、……ん?」
「うん?」
ノエルちゃんが遠く空を見上げる。山とは逆の方角に目を凝らし、ぱっと見開いた。
「ノゼル兄様?!」
「えっ!」
遅れて目を凝らし、魔力を探る。確かに王都で感じたものと同じ膨大な魔力がある。ノゼルさんと、あと確か碧の野薔薇の団長の魔力。残る知らない魔力は酷く鋭利で物騒な気配がしたけれど、これは魔法騎士団の試験の時に感じた気がする。
問題は、3つの魔力全てがヤミさんに勝るとも劣らないものであること。
「増援に、団長が3人も……?!」
驚愕しているうちに遠い空からみるみる近づいたのは、銀翼を広げた大鷲と、その上に乗る3人の団長達。
堂々とした佇まいと国の隅々にまでなと顔を知られている団長達の到着に周囲の町民から安堵の声と喝采が同時に上がる。
「通報を受けて来た。黒の暴牛の竜よ、ヤミの奴はどうした? まさか酔い潰れていないだろうな」
「あ……ヤミさんは、先に到着していた団員ふたりを追って山の中に入り、敵と交戦中です」
数少ない女性団長でありながら、両側にいるふたりに勝るとも劣らない視線鋭い碧の野薔薇の団長、シャーロット・ローズレイさんに聞かれ、ドギマギしながら答えてしまった。なんとなく言い方がキツい気がする。
じ、と注がれる視線は3人分。示し合わせたように、銀翼の大鷲団長、ノゼルさんが一歩進み出た。
「黒の暴牛の竜、我らを乗せて山中まで運べ」
「えっ」
なぜ、と顔に出ていたからか、苛立ちの顔と丁寧な説明がなされた。
「私の魔法は水銀魔法。極寒の雪山も飛べるが、それは通常の天候の中でのこと。魔力を含んだ雪が降る中では動きが鈍る」
「だからわたしが運べ、と?」
「そうだ」
平地にある町までは水銀魔法で作った大鷲で来れたけれど、これより先は難しい、と。
「(ヤミさんがアッシー2号って言ってたのはこのことだったんだ)」
納得しつつ、ヤミさんノゼルさんの魔法に詳しいんだなと少し感心する。後に「昔やたら喧嘩してたからな」と言われて複雑な気持ちになるのだけれど。
「分かりました」
竜になる。目を閉じて、スイッチを切り替えるように。
目を開ければ視点は高く、厳しい眼差しをした団長三人を今度は見下ろす形。
「……本当に、魔導書もなしになれるのだな」
「え?」
「いや」
目つき鋭くわたしを見上げていたノゼルさんはふいと目を逸らし、さっさと背中に飛び乗ってきた。残るふたりも何の躊躇もなく続く。今更かもだけれど、鱗で覆われた竜の背中に乗るのって怖くないのだろうか。
「行くぞ、暴牛の竜。この国に仇なす者を取り逃すわけにはいかん」
「―――はい!」
羽ばたく。魔力を含んだ雪が翼に羽根に絡んで重たいけれど、構わず、力の限り。
一気に飛び上がる風きり音の中。町に残るノエルちゃんの叫び声は、不思議とはっきり聞こえた。
「ちゃんと帰ってきなさいよ!」
うん、と吠えた返事を置き去りに地を蹴り、遠く、高く飛び上がる。
空へ。
舞い上がった先、分厚い白雲の下すれすれを平行に飛ぶ。町に張り付くようにそびえる複数の低山、その遥か上を悠々と。
目指すのは、山頂からなだらかに雪が積もる灰色の山のひとつ。
身もすくむ魔力が柱のように立ち上る場所だ。
「……洞窟で戦闘中だと聞いていたのに……」
「恐らく天井が崩落したのだろう。が、ヤミの魔法ではああも綺麗に切り取れはしない」
それは異様な光景だった。
鳥の目とも言える上空からの視点でも、あまりに綺麗に円形に切り取られた山の一部。
露出した岩山の中に、真っ白な衣を身にまとったまばゆい魔力の持ち主と、それぞれが怪物のようなどす黒い魔力を内包している三人の敵。
敵が矛先を向けているのは―――ヤミさん。
「降ります」
背中で、何か指示が聞こえた気がしたけれど、それを聞くより早く翼を翻し、風きり音を聞いたから、何も聞こえなかった。
急転直下。空から山地へ。ぽっかり空いた空洞の中心、刀を振るうヤミさんの元へ、真っ直ぐに、星のように落ちる。
「チッ」
剥き出しの岩肌に全身で落ちた衝撃で、粉砕された石や雪の粉塵が舞う中。
三方向からの攻撃を受け止めるつもりでいたわたしの視界を覆ったのは、茨の魔法と、切り裂きの魔法、そして水銀の魔法が背中を起点に半円状に広がる光景だった。
四つん這いになった姿勢で、お腹の下からヤミさんのいつも通りの声を聞く。
「……あ〜あ、もう少しでオレの何かが覚醒しそうだったのに……なにしてくれんのこの腐れ縁団長共」
「面白そーな戦いやってんじゃねーかヤミぃぃ、ちょっと混ぜろや……!!」
団長同士、よく知る古馴染み同士の軽口(軽口?)が飛び交っていたので、姿勢をそのままにぐるりと後ろを振り向く。ヤミさんが戦いながら庇っていた、まん丸した闇の防御魔法があったはず。何人かその中にいたみたいだったけれど……。
「アスタくんはそこに……、……なんでフィンラルさんとゴーシュさんまで? さっきまで教会にいたはずじゃ?」
「ゴーシュにせがまれて、俺が空間魔法繋げました……」
恐怖にか安堵にか震えているフィンラルさんの告白で明らかになったのは、わたしが遥か上空を苦労して飛んで団長さんたちを運んでいる間に、空間魔法でひょーいと飛び越えられたらしい事実だけだった。流石にちょっとつねりたくなった。竜の爪でやったらバラバラになりかねないのでしないけど。
でもまたこの先輩方は無茶をして! と口を開きかけた時だった。
この場に不釣り合いな音が、竜の耳朶を叩いた。
「……ソフィア……」
それは、花のように優しい声だった。
一瞬遅れて、それが白い衣を着た光魔法使い手、恐らく敵首魁と思しき人物が発したものだと気づく。気づいても信じられず、思わず凝視する。
それくらい優しくて、柔らかくて。
そう、例えるなら、ユリウスさんがわたしを呼ぶ時のような。
そんな声音で。
「相変わらず、君は……綺麗だね……」
「は、」
わたしは今は竜だ。恐ろしいとか、怖いとかなら聞き飽きたが、綺麗となると、それこそユリウスさんか師匠くらいしか言ったことない。
そのひとは、ボロボロの姿のまま。
言葉を無くす竜に手を伸ばし、ゆっくりと、まばたきした。
見つめ合う瞳の中に、わたしが映る。
見つめ合う瞳の奥に、柔らかな、心が見える。
「かわいい、いとしい、僕の―――ソフィア」
なにを、と問う前に、3人の団長達が動いた。
呼応するようにヤミさんへ矛先を向けていた黒い魔力の敵方が飛び出す。
「動くなよ」
お腹の下からヤミさんの声がする。わたしに向かっての言葉だと、不思議と分かった。
「はい」
ヤミさんを下に、アスタくんとフィンラルさんとゴーシュさんを背中に庇っているわたしは、動くわけにはいかない。そう分かっているのに。
目が逸らせない。敵であるはずの、フエゴレオンさんの腕を奪った奴らのひとりのはずの、とろりとした光の宿る蜜色の瞳から。
わたしはこの目を、知っている。