白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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マルクスさんの咳払いが室内に広がる。
「それで、王家からの白い結婚への追及については如何するおつもりで?」
「追及もなにも、夫も妻も承知の上での婚姻生活ですと答えれば充分だよ」
ユリウスさんは、ね? と隣りに座るわたしをちらと見た。わたしは思わず目を逸らした。
……違うんです、怖いとか嫌とかそういうんじゃないんですただ恥ずかしいんですだからユリウスさんを睨まないでマルクスさん!
「あ、あの、白い結婚って、そんなにダメなことなんですか?」
「んんっ……いえダメとかそういう話ではなくてですね」
「国の中枢がソフィアに子供を産んでほしがっているだけだから、気にする必要はないよ」
気を使っていたマルクスさんが、さらりと言い放ったユリウスさんにギョッと肩を揺らした。
「ユリウス様?!」
「こうなっては隠しても意味はないだろう?」
「それは……そうですが……」
正直何を言っているかよく分からないが、立派な大人ふたりで何かをわたしに隠し続けてきたことは分かった。そしてそれが今明かされようとしていることも。
「わたしがドラクーンの血を引いているからですか?」
「そう。国王は、預言者の血を取り込むか、もしくは時間魔法と合わせて、より完璧な魔法の使い手を作りたかったらしいよ」
まるで他人事のように語るけれど、時間魔法の使い手はこの国にひとりしかいない。しかし現実味の湧かないわたしもまた、ふぅんと流してしまった。マルクスさんは萎れた青菜のような顔色だ。
「それなのにわたし達が白い結婚のままだったから、業を煮やしてあんな事をした、と」
「まあ、ヴァーミリオン家もシルヴァ家も一蹴したらしいんだけれどね。フエゴレオンが抜けた直後だからいけると思ったんだろう。今頃、王城は大変な騒ぎになっているはずだよ」
一瞬だけ師匠の顔がよぎったけれど、あの人は普段人里にいないから王城にはいないだろう。いないことを切に願う。
「もちろん、魔法騎士団としても抗議するつもりですが……」
言い淀むマルクスさんに、あんまり効果はないんだろうなあと察する。
顔の割れていないはずの魔法帝夫人誘拐。人違いで招いてしまいましたで躱されそうな気もするけど、どうだろう。
もしも証人であるレオくんの立場が悪くなるのなら、そんなに強く抗議しないでほしい気持ちもある。
「わたしなら大丈夫です。結果的にはレオくんに助けられて無事でしたし」
「……承知しました。しかし今後は、呼び出しにはよりいっそうお気をつけ下さい」
「そうですね。じゃあ今度からは、マルクスさんから通信があったらユリウスさんについてのクイズをして正解したらお話することにします」
「そうですね、それでいきましょう」
「えっ、私のクイズをするのかい?」
目をぱちくりするユリウスさんが、このふたり一番の話題なのだから仕方ない。
それでは、と前置いて、マルクスさんが話を締めにかかる。
「奥方様は今後、通信魔道具での通信にご注意を。私から連絡差し上げる時はなるべく通信魔法を使いますね」
「よろしくお願いします」
「(それならクイズはしなくてもいいんじゃないかな……?)」
ふと、疑問が浮かび、それはそのまま口から滑り落ちた。
「それにしても、なんだか物々しい雰囲気ですね」
「王都が、ですか?」
「ここが、ですね」
何気なく口にしたそれは、言葉にした途端に形を持ったみたいに、しっくりきた。
こことは、魔法騎士団本部、のつもりだったし、マルクスさんも「襲撃から警戒レベルを上げていますので」と頷き返事してくれたのだけれど。
ユリウスさんだけは、深い紫の瞳でじいっとわたしを見つめた。
熱も甘さもないそれは、先程までのユリウスさんとまるで違う。
心の奥底を覗き見、探るような、そんな目で。
「ユリウスさん……?」
不安を隠しきれていない、我ながら恥ずかしい震えた声に、ふと濃い紫の眼差しが緩む。
「さて、ヤミも心配していたことだし。そろそろ黒の暴牛に帰ろうか」
「あ、はい」
頷けば、魔法帝側近の、扉の空間魔法を操る人がパッと現れた。合図を待っていたかのようだと思いながら扉をくぐる。ユリウスさんはきっとこれから仕事なのだろう。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
扉をくぐる間際、振り返り手を振れば、ユリウスさんはいつも通り振り返してくれた。
だから安心して空間魔法の黒の中に飛び込む。
「(ユリウスさん、まだ何か隠し事してた……?)」
一抹の不安も、魔法帝なのだから、と飲み込んで。
―――竜になり空を飛んで黒の暴牛に帰ったソフィアは、リビングの惨憺たる状態に口の端を引き攣らせた。
ソファで酒瓶を抱えたバネッサさんと、
と、見事などんちゃん騒ぎ。
酔っ払いの群れの中、いつも通りのテンションで手を挙げたのは我らが団長ヤミさんだけだった。
「おーす」
「ただいまです。なんかこう、一気に日常に引き戻される感じがありますね。安心します」
「コレ見て安心すんのはやべーわ」
すぱすぱタバコをふかしながらそう言うヤミさんもほろ酔いなのか声がほんの少し緩んでいる。ちなみに今の時間帯は夕方である。ドン引きである。
とりあえず掃除をと、散らかる酒瓶とゴミを片付けようとしたが、へべれけのバネッサさんに絡め取られかけたので慌てて自室へと逃げ出した。
笑い声やガラス瓶の割れる音が、遠く静かなはずの一人部屋にまで響いてくる。
「……お風呂はいって、寝よう」
そうだそうしよう。幸い、どんちゃん騒ぎの中にアスタくんもノエルちゃんもいなかった。きっとどこかに出かけているのだろう。
今日はなんだか色々あって疲れたし、もういいやと寝支度を済ませたソフィアは、早々にひとり用のベッドへ潜り込んだ。
あくる朝。団にひとつしかない固定の通信魔道具がけたたましいベルの音を奏でた。
これは全魔法騎士団に向けての緊急の連絡くらいでしか鳴らない。ベッドから跳ね起き、慌てて降りたリビングでは、ヤミさんがなんて事ない顔して受けていた。
響いたのは、騎士団本部からの通達。
『―――繰り返す。黒の暴牛ノエル・シルヴァより魔法騎士団本部へ通報あり。平界ネアンの町にて山間への児童誘拐あり、黒の暴牛団員が追跡中とのこと。近隣の魔法騎士団には応援を要請します。繰り返す―――』
ふすー、と紫煙と吹きながら、ヤミさんは呆れ顔だ。
「なんで休暇やったのに巻き込まれてんのあいつ」
「えっ、えー……」
それは、運がないというか、本人たちのトラブル体質に起因していそうというか。
「……ネアンか」
「わたし達が一番近いですよね。ヤミさん、行きましょう」
「あー……アッシーくん起こすか」
「え」
太い首がそうしたように振り返れば、広がっていたのは酔っ払いの死屍累々。ノエルちゃんの緊急要請にもピクリともしてない酔っぱらいの仲間たち。正直ちょっとだけイラッとした。
ヤミさんはその中から唸り声をあげるフィンラルさんを選んで叩き起した。文字通り。
青白い顔でフラつきながら立ち上がった、いや立ち上がらされた空間魔法の使い手は、ショボショボした目と口でボヤきながらも黒い穴を開けてくれた。
「あの……ソフィアちゃんに連れて行ってもらえばいいんじゃ……?」
「てめー行ったことあるっつってただろ。なら空間魔法のが早い」
「ふぇぇん……」
「フィンラルさん、大丈夫ですか?」
「ううう、ソフィアちゃんにみっともないとこ見せたくないから頑張る……」
「……」
激しく今更なのでは、と思ったけど、なんだか可哀想になってきたので口に出さずにそっと背中を撫でてあげた。
筋骨隆々なヤミさんが通れるくらい大きな黒い空間魔法をくぐれば、雪化粧された街並みが広がっていた。ひやりと頬を撫でるのは身震いするような冷たい風。チラつく雪。踏みしめたはずの地面からは、ぎゅ、と雪を踏み固めた感触と音が上がる。
「……え?」
黒の暴牛アジトからそこまで離れていないはずなのに、あまりに違う気温と気候にギョッと戸惑う。後ろからのしのしぎゅむぎゅむ歩いてきたヤミさんも「うお寒っ」と肩を抱いていた。薄着だから見ている方も寒い。
「雪降るって言ってたっけ?」
「言ってなかったと思いますけど……」
「つーかなんか妙だな。魔法か?」
「ぽいですね。魔力が含まれてます」
自然現象にしてはやけに綺麗すぎるまっさらな雪に、天候をも操るような魔法の使い手がいるのかと眉をひそめる。ヤミさんは後ろ頭をかいていつも通りだった。フィンラルさんは寒さ以外の理由でも震え上がっていた。
「とりあえず、ノエルちゃんを探さなきゃ……」
「ソフィア!」
噂をすればなんとやら。真横から飛びつかれたソフィアは目の前でぴょんと跳ねたツインテールにほっとしつつ、もうひとつの元気な頭が見えないことが気になった。
「ノエルちゃん、怪我はない?」
「私はないわ! ただ、アスタとゴーシュが敵を追いかけて行って……」
「それどこらへん?」
のしっと現れたヤミさんにノエルちゃんは軽く驚いていた。分かる。わたしも、現場で働いてるヤミさん見たことない。
「あっちの山の中らしいんだけど……」
「フィンラル」
「はいはいっと」
街から登山道が見える白雲立ち込める山を指さしたヤミさんに、阿吽の呼吸でフィンラルさんが穴を開ける。黒い空間魔法はきっとあの山の中に繋がっているのだろう。他の空間魔道士が同じことをできるかは知らないけれど、フィンラルさん、本当にすごい。二日酔いなのに。
くるりとわたしとノエルちゃんの方を振り向いたヤミさんは、煙草を挟んだ指二本で指差ししてきた。
「まずは子供の救助最優先。ノエ公は公共の屋内に避難所作っとけ、医療魔道士が後から来るだろうから待機させとくこと。間違ってもこっち来させんなよ」
「はい!」
「ドラ娘はこっちの増援が来たら連れてこい。んで、敵の増援が来たら何とかしろ」
「お留守番じゃないですか!」
「味方の増援は確実に来るからどっちかってーとアッシー2号だな」
んじゃ行ってくる、と軽く言いおいたヤミさんと、ヤダなー行きたくないなーと背中で語るフィンラルさんが消え。
しかし空間魔法はそのまま。
きっと子供がここから避難してくるのだろうと待機しながら、ノエルちゃんに疑問を投げかける。
「確実に来る増援……?」
「黒の暴牛の誰かかしら」
「みんな酔い潰れてたからそれはないと思う」
じゃあ誰が……?
顔を見合せ首をひねったふたりの頭上に、他団の団長が3人纏めて降ってくるまで、残り十数分ほど。