白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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王宮に来るのは結婚式以来のわたしは、レオくんが一体どこを走りどこを逃げているかも分からないままひた走った。
やがていくつかの宮を抜け、緑鮮やかな庭園の傍の廊下に出た頃、追い立ててきていた足音が消え。
レオくんは、油断なく周囲を警戒しながら足を止めた。
「撒いたわけではないだろうが……小休憩する。ヴァーミリオンの宮城まではまだ距離があるからな」
「は、」
いと続けそうになった声を堪える。レオくんは黒の暴牛のわたしを知っている。いくら頭からカーテンを被っているとはいえ、声を出せばバレてしまう可能性は高い。
「魔法帝夫人の、ソフィアと言ったか」
頷く。
「騎士団に所属しているとは知らなかったな」
思わず振り向く。今日初めて真正面から見たレオくんは、ふふんと得意げに笑った。
「バレないと思ったか?」
「……むしろ、なんで分かったんですか?」
「なんとなくだ。同じ名前、昨日会った時と同じ雰囲気、声。ならば紐付けで考えてもおかしくないだろう」
その通りだ。ならもういいかとカーテンを外そうとした手は、他ならぬレオくんに止められた。
「追っ手はまだいるだろう。被っておけ。……いや、被っていて下さい」
「レオくん、言葉遣いは昨日と同じでいいです」
「いいだろう」
昨日と打って変わって、今日のレオくんはとても、静かだ。そして冷静だ。
フエゴレオンさんの事があったからか。一皮むけたような横顔と、昨日までなかった額の印。ヴァーミリオン家特有の、王を志す者の焼印。
「レオくん、国王陛下がなんであんなことをしたのか、分かりますか?」
「逆に聞くが、貴様は分からないのか?」
「全然」
じ、と少しだけ見下ろされる。探るような眼差し。隠すことはないと見つめ返せば、ふいと逸らされた。
「ドラクーンの血筋が欲しいのだろう」
「血筋?」
長くなるから、歩きながら話すぞ、との前置きに頷けば、レオくんは諦めたように息をついた。
ゆっくりと進み始めた背中についていく。その背中越しに語られたのは、知らないことばかりだった。
そも魔法とは、両親の特色を色濃く受け継ぐことが多い。
水魔法のシルヴァ家、炎魔法のヴァーミリオン家といったふうに、一族にほぼ単一の魔法が継がれるほど、血筋による影響があると言われるのが一般的だ。
水魔法と鋼鉄魔法の間の子であるノゼル・シルヴァが水銀魔法の持ち主であるように、ふたつの魔法が混ざってひとつの魔法となるパターンもある。
共通しているのは、血筋による魔法の形。
「ソフィア、貴様は祖母についてどれぐらい知っている?」
「昔すごい預言をしてたってことくらい……」
「ああ。ドラクーンの預言者は、政治のみならず、戦争にも多大な功績を残した、偉大な魔法帝のひとりだ」
「……え?」
魔法帝、とは。
「現魔法帝から二代前だ。……知らなかったのか」
頷く。少し、同情するような目を向けられた。
ユリウスさんもマルクスさんも、そんなこと少しも言わなかったから、だから、知らなかった。
「現国王はその血を王家に欲しいのだろう。ドラクーンの預言者はひとりしか子を残さなかったから、血筋がひどく細いしな」
「だから、ユリウスさんと別れさせて、レオくんに、と?」
「……まあ魔法帝が気に入らんのもあるのだろうが……」
とにかく、とレオくんは軽く咳払いした。
茂みの向こうには、どこかで見たような景色。ヴァーミリオン家好みの様式の庭園に、やっと安全な場所に着いたのだと、ほっとするわたしの手を取り先に茂みを跨いだレオくんに続いて、茂みを超える。
「オレに聞くよりも、帰ってから魔法帝に詳しく聞いた方がいい」
「うん、色々ありがとうございます。……あ、そうだ」
「なんだ、オレで分かることなら答えるぞ」
「白い結婚って、なに?」
「……、……知らん」
レオくんは、冷や汗をかき目を逸らし、あからさまな嘘をついていた。
「……本当に知らない?」
「し、知らん」
「……ふぅん」
「ししし、知っていたとしても、婚姻しているのならば、そういうことは夫に聞くものだ!」
そういうものなのだろうか。血筋についてとか色々と答えてくれたのに。それとも、これだけはダメな理由があるのだろうか。
内心で首をかしげながら、通信魔道具で連絡を取るレオくんを見る。自分が連絡しようかと提案もしたが、カーテンを被ったまま連絡すれば魔法帝自らが飛んで来そうだと止められた。流石にそこまでされないと思う。
「マルクス殿がすぐ来るそうだ。暴牛で待機をと伝えた奥方様がなぜ、と驚いていたぞ」
「え? わたし、マルクスさんと通信魔道具で連絡取ってこっち来たよ……?」
「なんだと?」
しばし悩んだレオくんは、王族らしからぬ鋭い舌打ちをした。
「恐らく変身魔法の類だろうが……汚いことをする」
「えっ、あのマルクスさん偽物だったの?!」
「魔法帝の側近が貴様を単身で国王の元に送るとは思えん」
「それは、そうだけど」
確かに、そう考えれば辻褄は合うけれど、とモヤモヤする。
つまり今回の出来事はわたしの失態ということになる。ユリウスさんに合わせる顔がない。
気落ちするわたしに気遣ってか、レオくんはなんて事ない雑談を振ってくれた。優しい人だ。フエゴレオンさんや、師匠と同じく。
「追っ手は諦めたようだな。ここまで来るのなら、相手をしてやろうと思ったが」
「レオくんより強い近衛兵っているの……?」
「いないな!」
今の断言すごい師匠の弟っぽいな、とソフィアは思わず拍手した。恥ずかしそうに止められてしまったが。
大きな扉の形をした空間魔法で現れたマルクスさんは、わたしを見るなり絶句した。カーテンを取るのを忘れていたと思い出し、慌てて外すが、もう遅い。
「ご、ごめんなさい、マルクスさん」
「奥方様が謝罪する必要はありません!」
「いや、だって今回のは、たぶんわたしが騙されたせいだし……」
「騙された……?」
マルクスさんが説明を求めて目線を投げたレオくんは、そんな事よりも、と腕組みした。
「一刻も早く魔法帝の元へ帰った方がいい。オレがいれば黙らせてやるが、ヴァーミリオン家とて一枚岩ではないのだからな」
「ああ、その通りだ……レオポルド殿、助かった。礼はまた改めて行なう。それと、今回のことは内密に……」
「分かっている。元より、オレとて不義の片棒を担ぐ気は毛頭なかったからな」
ハッと息を飲んだマルクスさんが、レオくんと手短な会話を交わしながらわたしの手を掴み、引っ張る。いつもならしないだろう所作に戸惑うけれど、このマルクスさんは間違いなくマルクスさんだろうと魔力の気配でわかる。ただ急いで空間魔法の中にわたしを入れようとしているだけで。
草の上でたたらを踏みながら空間魔法に入るその間際。振り返れば、レオくんは当然のことをしただけのような顔をしてそこにいた。
「レオくん、本当にありがとう! 色々ごめんね!」
「気にするな! その代わり、次に会った時は手合わせしろ!」
マルクスさんがギョッとしたけど、わたしは愉快で仕方なかった。
「うん!」
魔法帝の妻と知って、暴牛の竜だと知って。
その上で手合わせを挑まれたことが、ただ嬉しくて堪らなかった。