白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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案内書とはいえ、実質は国王からの登城命令である。
慌てふためき通信魔道具でマルクスさんに確認したところ、ユリウスさんの所にはそんなの来ていないらしい。どうやら魔法帝たる夫を飛び越え、妻だけに来いという手紙を送ったらしい。なんてこった。
マルクスさんはその時、従わなくていいです、黒の暴牛で待機をと言い残して通信を切ったのだが。
しばらくして。再び通信魔道具が繋がった時には、白い顔色をして、さっきとまるで違うことを口にした。
『大変申し訳ありませんが、至急、王都に来て頂いてもよろしいでしょうか』
「それは大丈夫ですけど、マルクスさんなんか怒ってます?」
『いいえ。なにも』
また何かやらかしたのかなあとソフィアは頷いた。
軽く身支度して、ラックさんとマグナさんが帰ったからかどんちゃん騒がしいホールを避けて外に出る。ヤミさんに言うべきか悩んだけれど、まあいいか話し中だしと、誰にも何も言うことなく。
竜になり、単身、王都へ飛んだ。
魔法を解き、人になってから徒歩で王貴界に入ったソフィアは、こんな短時間で出入りするのは初めてだなあと遠い目で霞む王城を見やった。
最初に向かったのは魔法騎士団本部。入り口をくぐってすぐの場所に居たのは、ひたすら恐縮するマルクスさん―――ではなく、見たことのない側近の人だった。
服装から魔法帝側近であること、また何回か見かけた事があったこと。
そして何より私服姿で顔を隠していないわたしに向かって「魔法帝夫人ですね」と言ったことから、マルクスさんの使いの者だと思い、頷く。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
「……マルクスさんと、ユリウスさんはどこに?」
「お部屋でお待ちです」
こちらに、と示されたのが、本部の中でもあまり向かわない部屋だったことへの違和感。
だからと、何気なくかけた問いかけ。
その答えの不自然さに、ついて行こうとしていた足を止めた。
「ユリウスさんが、わたしが来るのをただ部屋で待っている、と?」
「今はおふたりとも手が離せないのです。お急ぎを……」
じり、と後ずさる。
ふたりとも騎士団の重鎮だ。もしかしたら本当に手が離せないのかもしれない。
「夫人」
「……まず、魔法帝の控え室に行きます。道は知ってるので案内はいりません」
「道中には貴女のことを知らない常勤の者もいます。止められますよ」
「その時は、後で迎えに来てもらいます」
「夫人。ワガママはおやめください」
息を止め、踵を返す。
マルクスさんが、こんな物言いをする部下を抱えるわけない。ましてや魔法帝の妻だと知っておきながら。
「(昨日襲撃されたばっかりなのに、王都どうなってるの!)」
舌打ちと足音が追いかけてくる。早い。ラックさんよりも。
どうしよう。竜になるか。ここでなって大丈夫か。
一瞬の迷い。足はそのまま駆けていたのに、あっという間に手を掴まれ、引っ張られる。咄嗟に掴んだカーテンは留め金を弾きながらあっさり手の中に落ちてきて、引き止める力にはなってくれなかった。
竜になる。それより早く、黒い空間に引きずり込まれた。わたしはこれを知っている。空間魔法だ。
過ぎったのは、襲撃された時のフエゴレオンさん。
「(わたしも、同じように……?)」
ゾッと背筋が凍る。
その間に、どこか知らない大きな広間に放り出された。
掴まれていた手を遮二無二振りほどき、手の中のカーテンを被り、逃げ出す。
逃げ出した。つもりだった。
「表をあげよ」
「(……え?)」
白亜で作られた円形の広間の中央。まるで舞台にひとり取り残された子供のような格好のまま、顔さえ上げられなくなり、カーテンを掴んだまま固まる。
だってこの声は。
「……余が顔を見せよと言っているというのに! 夫が夫ならば妻も妻よ!」
「(なんで、国王陛下がいるとこに……?! ううん、問題はそこじゃない)」
鏡のように磨かれた床を見つめたまま唾を飲む。繰り返すが、私服のまま。ドレスもない、ヴェールもない、団服さえ置いてきてしまった。被っているのはカーテンだけ。
なのになんで、どうして、わたしだけなのに、ユリウスさんもいないのに、どうして。
「魔法帝夫人、ソフィア・ノヴァクロノ」
なんで、陛下がわたしのことをご存知なの。
「そなたとユリウス・ノヴァクロノの夫婦は白い結婚であるとの密告があった」
白い結婚?
首を傾げそうになり、慌てて踏みとどまる。いけない。魔法帝夫人だと知られているのだから、迂闊な真似はできない。
とはいえ怒涛の失礼を相手に、本音を隠すのは難しかった。
「そなたはまだ若い。老いたユリウスが夫では、不満のひとつやふたつもあるであろう」
「いえ特に……」
「安心せよ。白い結婚であるならば離婚もできる」
「いや離婚するつもりは……」
「離婚後の再婚先も余が世話してやろう」
どれだけ人の話を聞かないのか。イラッとしながら、もう竜になって帰ってしまおうか、いやそれは流石に不敬にあたるだろうか。そう悩んでいる間に、広間に唯一あった大扉が両側に開く。
「……急なお呼び出しはやめて頂きたいのですが、陛下」
「よく来た、レオポルド・ヴァーミリオン」
「(えっ)」
カーテンをますます深く被る。よく知っている声だ。昨日たっぷら聞いた声なのだから、そりゃそうだ。
うんざりした気配を隠しもせず歩み寄ってきたレオくんは、二歩ほど離れた所で膝を下り、国王に礼をしながらこちらを見た。誰だこのカーテン被り女と思われてるに違いない。
「それで、こたびはどのようなご要件でしょうか」
「うむ。レオポルド、そこの女を妻に迎えよ」
「?!」
「……は?」
そこの女、と顎で示されたわたしは空いた口が塞がらなかった。離婚を承諾していないし再婚するかについては聞かれてもいない。こちらの意向なんて聞く気すらないんだと、やっと気づく。
レオくんがぽかんとしているのがせめてもの救いだった。
「こちらの女性は」
「魔法帝の妻のソフィアという。生家はドラクーンであるゆえ、王家に迎えるに相応しい」
「重婚は違法です」
「心配するな。白い結婚だったが故に、これから離婚する。さすれば重婚になるまい」
「……そうなのか?」
こっそりと、国王に聞こえない声量での問いかけに、首を横に振る。なにが、そうなのか、なのかは分からないけれど、国王の言うこと全部が的外れだったから。
「ふむ、なるほど。兄上が言っていたのはこの事だったか」
「(え? フエゴレオンさん?)」
思い出す。そういえば、襲撃の直前の食事会で確認されたんだったか。
「(フエゴレオンさんにも、納得して結婚してるのかって聞かれたっけ)」
国王とだいぶ違う聞き方だったけれど。
「陛下!」
思考に沈んでいるわたしを引っ張り戻したのは、凛とした、レオくんの強い声。
「このレオポルド・ヴァーミリオン、嫌がる女性への無理強いに加担する気は毛頭ございませぬ!」
「なっ……!」
「失礼!」
レオくんに手を掴まれる。ついさっき知らない人にされた事と同じはずなのに、全然嫌じゃなかった。
「逃げるぞ!」
わざわざ広間中に響く宣言をしてわたしの手を引き、立ち塞がる近衛兵も、閉まっていた大扉も、炎魔法と力ずくで強引に突破するその姿は、なるほど師匠の弟さんだと思うと同時に、フエゴレオンさんを彷彿とさせて。
見ず知らずのカーテン女を庇い逃げ出す背中は、頼もしかった。