白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
まだほの暗い早朝にソフィアは揺り起こされた。
ここは夫婦の寝室。入れる人間は限られている。だから肩を揺さぶる大きな手の持ち主が誰かなんて、聞くまでもなくすぐ分かる。
眠い目をこすりこすり開けば、ぼんやりとした金色の輪郭が浮かび上がった。
「……まだねむい」
「僕も」
顔では笑いながらも、ほら起きて、と抱き起こす手に容赦がない。
寝ぼけまなこで身支度して、並んで朝食をとって、歯磨きして。
今日はアスタくんとノエルちゃんを連れて暴牛に帰ります、とか、一緒に過ごしたいけど仕事いっぱいありそうだから屋敷には帰りませんね、とか、なんてことない話をしているうちに、あっという間に玄関先。
「ソフィア、ほら、行ってきますは?」
「……行きたくないって言ったら、怒りますか?」
ユリウスさんは、困ったような、でも少し照れくさそうな顔して笑った。
「怒りはしないけど、アスタくん達が困っちゃうんじゃないのかな」
「ゔぅ〜〜っ」
ご尤もである。後輩を困らせるのは本意じゃないから、ユリウスさんのお腹めがけてハグをして、仕方なく玄関をくぐる。
遅れて屋敷を出たユリウスさんは微笑ましそうな声だ。
「いってらっしゃい、気をつけて」
「ユリウスさんも、いってらっしゃい」
緑溢れる庭に出て少し、ちら、と後ろを振り返れば、ユリウスさんはもうどこにもいなかった。玄関の扉が閉まるところ。
ほんの一瞬ですぐに居なくなってしまう。
「……わたしのいってきます、ちゃんと聞こえたのかな」
寂しいとも少し違う気持ちで独りごちて、首を振る。今度こそ前を向いて屋敷の門扉をくぐり、外へ出た。
今日は王貴界でアスタくんとノエルちゃん、それにチャーミーさんと落ち合う約束をしている。
3人が泊まった騎士団本部での集合はわたしが拒否した。万が一誰かに「魔法帝夫人そっくりだな」と思われたら大変だからだ。主にマルクスさんの胃が。
ノエルちゃんの大きな水の魔力の気配を探り探り、綺麗な王都の道を歩く。襲撃から一夜しか経っていないのに、ボコボコだった石畳も崩れた民家もほとんどが直されたり撤去されている。
魔力が少ない人間ばかりの平界や恵外界ではこうはいかないと大声で話し合う貴族と思わしき女性たちの会話に背を向けて、川沿いを駆ける。
「(あれは誰に対しての言葉なんだろう)」
モヤモヤしていたからか。制御されていない水の魔力のすぐ近くで突発的に噴出した風の魔力に鼻を鳴らして、次いでこちらにまで及ぶ突風の余波に、思わず笑ってしまった。
これほどの風の魔法を操る人は、王貴界も平界もひっくるめて、ひとりしか知らない。
「あれ? やりすぎた」
「お前いきなり何やってるんだユノーー!!」
「ふ、ふふっ」
駆けつけると同時に繰り広げられたコントのような会話に笑いをこらえきれなかった。笑い声に振り返った金色の3人と、川を挟んで向こう岸にいる暴牛の3人に合点がいく。ユノくん、きっとアスタくんにちょっかい出したんだろうな。
「ごめんなさい、笑ってしまって」
「いえ、……その」
「?」
金色の中で最初に声を出したのは、意外なことにユノくんだった。正直驚いた。ミモザちゃんも少し驚いて口に手を添えている。
「昨日、あんたの戦うところを初めて見た」
「あ、そっか。前は魔宮から運ぶだけだったから」
黒の暴牛以外の人からは、それこそ魔法騎士にも怖がられてきたから、ユノくんにも怖がられるかなと身構える。
「また、戦うところが見たい」
「え……?」
ユノくんは、真剣そのものだった。わたしと同じ琥珀色の瞳がキラキラして。
痛いほどの眼差しが、真っ直ぐにわたしを捉える。
「あ……ええと。そのうちで、いいのなら」
「ああ。楽しみにしてる」
素っ気ないひと言だけを残して、ユノくんは背を向けて歩き出してしまった。「なんだ今のは?!」と困惑の叫びを上げるクラウスさんと、申し訳なさそうに礼儀正しい一礼をしたミモザちゃんがその後ろに続いて、建物の間に間に3人の背中が消えていった。
「(楽しみ? わたしが、竜が戦っているところを見るのが、ってこと?)」
川の向こう側で名前を呼びながら手を振ってくれるアスタくんに手を振り返して、橋を渡って合流するまで、ユノくんの言葉が頭を離れなかった。
「ユノくんて変わってるね」
「え、なんか言われたんですか?」
「竜のわたしをまた見るのが楽しみだって言ってたような……?」
無事に会えたアスタくんに話題を振ったところ、反応に困ったような、虚無を感じる表情をされてしまった。
チャーミーさんから美味しいお菓子を貰い―――これから飛んで消費するのでカロリーは考えないことにした―――昨日よりうんと元気なノエルちゃんにツンツンされながら王都を抜ければ、あとは魔法を使って団のアジトまでひとっ飛び。
日の登りきった昼前には無事に帰りついた。
「ただいまー!」
「おかえり〜。あんた達、大変だったわね〜」
翼をたたんで人の姿に戻ったソフィアは、真っ直ぐバネッサに向かっていった。真昼間からワインボトルを直飲みしているだけあって、すっかり出来上がっている。でもいつも真っ先におかえりを言ってくれるのもこの人だ。
「あれ? マグナさんとラックさんは?」
「任務に行ってるわよ。珍しいでしょ」
「喧嘩じゃないのなら、本当に珍しいですね」
いつも仲良く追いかけっこしたりプリン勝手に食べたり炎と雷の魔法の応酬をしているふたりを思い浮かべ、深く頷く。
バネッサさんが爆笑したが、だって、いつだってあらゆる理由で喧嘩しているふたりなんだ。一緒に任務に行くなんて話を聞くのは初めてかもしれない。
そんなこともあるんだなぁと感心しながら、既にチャーミーさんのいるキッチンに入る。王都で食べ歩きをしていたはずの彼女は既に今日何食目かのご飯を作っていた。
「ソフィアもなんか食べる?」
「いえ、紅茶でも淹れようかなと思って。みんな飲む?」
「飲みます!」
「の、飲んであげてもいいんだからね!」
アスタくんとノエルちゃんのほのぼのする返事に微笑ましいものを見る目を向けてしまう。バネッサさんもヘロヘロと右手を上げて、その奥からヤミさんのごっつい手が上がるのも見えた。
見えたけど、王都に行く前のヤミさんを思い出し少し躊躇ってしまう。
「(ヤミさん、賭博に行くためにアスタくん達の付き添い断ってたんだよね……)」
黒いつんつん頭にジト目を向けながら淹れた紅茶は美味しくないかもしれない。分かっていても止められなかった。
並々と紅茶の注がれたティーカップを配りがてらヤミさんを睨みつけたわたしは悪くないと思う。
「……え、ちょ、なに」
「別に」
「ドラ娘が反抗期……?」
ツンとそっぽ向いてバネッサさん、アスタくん、ノエルちゃんにも配る。チャーミーさんにはキッチンで手渡し済みだ。
ヤミさんは、おっかねーの、とカップを持ったままどこかに行ってしまった。別にそこまでいじめるつもりはなかったのだけれど……。
「ありがとうございます! 先輩の紅茶、すげー美味いっすよね!」
「ふふ、ありがとう」
大事そうに上品に飲んでくれるノエルちゃんと、美味しそうにいちいち感動しながら飲んでくれるアスタくんと、一緒にティータイムでもとソファに腰掛けた時だった。
つい、と窓から一通の手紙が舞い込んだ。
「え……?」
ひらりひらりと風に舞う木の葉のような軌道を描いたそれは、三人の真ん中にふさりと落ちて、ピクリもしない。
「手紙?」
「この辺って、民家ないっすよね?」
「ないはずだけど……」
四角い便箋は汚れひとつない、不自然なほど真っ白。風に乗って流れてきた、にしても変だと、眉間に皺を寄せて、拾い上げる。
ひっくり返して驚いた。
『to ソフィア・ドラクーン様』
「わたし宛て……?」
「ええっ?!」
正確には旧姓だが、瑣末なことだろう。なにせ“ここにドラクーン家の血を引くソフィアがいる”と知っている以上、差出人はただ者ではない。
なんだなんだと覗き込んでくる後輩に宛名書きを見られるわけにはいかないと―――特に王族のノエルちゃんはドラクーンの名前を知っている可能性が高い―――懐に隠し、立ち上がる。
「知り合いからかもだし、お部屋で見てくるね」
「大丈夫ですか?」
「うん」
心配半分、本当に知り合いからか疑い半分。そんな目をするアスタくんは意外と鋭い。
逃げるようにバネッサさんの糸魔法で守られた女子部屋のゾーンへ駆け込み、自室に入ると同時に扉を施錠する。
懐の手紙に心当たりはない。しかしヤミさん以外の人の目に触れさせる訳にもいかない。こんな事をするような人はユリウスさんの側近にはいないはず。
「(これ、ヤミさんに見せなきゃ)」
開ける気も中を確かめる気もさらさらなかった。
とりあえず置いた机の上。手紙が独りでに動き出し、勝手に剥かれる果実のように中身を露出させるまでは。
接着された紙が剥がれる時特有の軽やかな音が次々と部屋に木霊する。扉の鍵を開け、逃げ出そうとしながら白い便箋から目を離せなかったわたしは、鮮やかな金色のインクでしたためられた文字を、その手紙の差出人名を見てしまった。
「……え?」
アウグストゥス・キーラ・クローバー13世。
現国王陛下の直筆書名入りの謁見案内書だった。