白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
見知った顔ぶれが現われ、安堵しながらもさっきまで自分がいた場所を見やる。
そこに屍人を操る魔法を使う術師が忽然と姿を消していたことに気づいて、ひっそりほぞを噛んだ。仕方なかったとはいえ。
「バカな! あの距離をこんなにも早く!?」
「不本意の極みだったが、全員で協力し戻ってきた……超複合魔法、とでも言うべきか」
さらりと言う金色の夜明け団の人だったけど、多大な魔力を支払ったせいか軽く息切れをしていた。協力したことへの悪態や憎まれ口を叩きながらも疲労を隠せないメンバーが多い中、冷ややかな面持ちを崩さない銀翼の大鷲の団長、ノゼルさんは、何事もなかったかのよう。
「だが我ら9つの魔法騎士団は、ただ一つ、クローバー王国の平和の為にある……!」
主戦力が戻ったと見るや、慌てて空間魔法の術師が出てきた。相手は援軍を含めても7、対してこちらは疲弊しているとはいえ無傷で10は残っている。うち団長が2人。勝てるわけがない。
「このまま戦えばただでは済まない……退こう」
「そう急くな……」
敵全員に展開されようとした空間魔法、機先を制するよう天から降り注いだのは鉛色の雨だった。水滴よりなお早く降り注ぐそれはノゼルさんの水銀魔法。
―――水銀魔法“ 銀の雨”。
避ける場所なんてない。当たったが最後だろうそれに対し、敵が繰り出したのはよく分からない怪物だった。
「と、トカゲ……?」
大きい、わたしと同じくらいはあるだろうトカゲに何かが注射されたと思ったら、トカゲは、いとも容易く銀の雨を全弾その身のうちに吸収してしまった。
「え、」
「ノゼル兄様の魔法を……?!」
動揺が広がるたった一瞬、たったの刹那に、トカゲはアスタくんに手を伸ばし、水銀と同じように“ 吸収”してしまった。
「しまっ……!」
「我らは白夜の魔眼」
慌てて手を伸ばす。すぐ追いつく。すぐ手が届く。そのすぐを、空間魔法は待ってくれない。
「クローバー王国を滅ぼす者だ……!」
爪先が触れたのに。トカゲの手ごと毟り取れば、取り返せただろうに。
あらゆる魔法を手を間に合わせない素早さで敵は黒い魔力の中に消え失せた。後には敵の影も形もなかった。もちろんアスタくんも。
ただ、爪先へ空間魔法を掠めたわたしの血痕が地面に残っただけ。
「アスタくん……!!」
羽を広げる。屍人に群がられ、植物に侵されたそれはボロボロだったけど、どうってことない。飛べればいい。アスタくんの所まで行ければいい。
それしか頭になかった。ノエルちゃんが足に抱きついてくるまで。
「ダメよソフィア! 貴方だって怪我してるじゃないの!」
「でもアスタくんが攫われたのに!」
「せめて手当てしてから……!」
「ダメだ」
横から口を挟んだのは、ノゼルさんだった。ギクリと硬直したノエルちゃんを庇うように翼を畳む。飛び立つ場合ではなくなってしまった。
「今は王都の護りを固めるのが先決だ、敵があれだけとは限らない。あのような者に割ける時間も魔力も無い」
「……!」
あのような者呼ばわりに堪らず開きかけた口は、向けられた鋭い眼光に黙らされる。
「ものを言うのは自らの肩書きを自覚してからだ」
「うぅ……」
戦闘中にフエゴレオンさんに言われたことを思い出す。ひとりで前に出るなと。魔法騎士団員として来たのだからと反論した以上、言い返せるわけもなく。
魔法を解き、大人しくする。ほっとしたノエルちゃんが、ミモザちゃんを慌ててフエゴレオンさんの所に引っ張っていくところを見守りながら魔力を探るも、空間魔法や魔法による破壊の残滓しか拾えない。
唇を噛む。これじゃあ、アスタくんがどこに連れて行かれたか分かるわけがない。
「アスタくん……フエゴレオンさん……」
片腕を根元から失っていること、失血が多すぎることから、自分の応急処置では限界が近いとミモザちゃんは言った。医療棟に連れていき、より高レベルな医療魔法術を受けなければと。
「フエゴレオンさんの片腕を拾った方がいれば、あるいはくっ付くかもしれませんが……」
「空間魔法で連れ去られて、帰ってきた時にはこの姿だったから……」
この場で随一の回復魔法の使い手が肩を落とした。ああ、きっと、もう戻らないのだろう。
指揮を執るシルヴァ家を横目に、もう一度竜の姿に戻る。まだ受けたダメージがそのまま残っていたから見た目に痛々しいかもだけれど。
「ミモザちゃん、フエゴレオンさんへの回復魔法はそのまま。ふたりとも抱えて運ぶよ」
息を飲み、すぐさま頷いたミモザちゃんをひょいと片腕に抱える。ミモザちゃんの魔法の花籠に包まれたフエゴレオンさんはより慎重に、なるべく動かさないように。
飛ぶつもりはなかったけれど、背中にノエルちゃんが引っ付いたのでびっくりした。
「ノエルちゃんも来るの?」
「もしまた敵が出たら、私が防御してあげるわ!」
少しだけ、気持ちがゆるんだ。
「うん、お願いします。……レオくんは?」
「民間人の被害が酷いから、残るって」
「そっか……」
ふと後ろを見る。お兄さんのことが心配で仕方ないだろうに、自身も酷い傷を負っているのに、騎士団としての自分を優先した。小さくも大きい紅蓮の背中だけが見えた。
「(すごいなぁ)」
視線を切って、王城に向ける。重傷者を抱えたまま飛べはしない。崩れた民家の横を、ひび割れ砕けた石畳の上を、歩いて行く。
ふと。
「(そういえば、ユリウスさんはどこにいるんだろう。絶対、民間人を守りに出てくると思ったんだけど……いなかったような?)」
もしかして王城に詰めているのではと半ば期待しながら登城したが、そこにはマルクスさんしかいなくて―――色々な手配がとても早かったので助かりはしたけれど―――コソッと耳打ちしてもらったのは、「ユリウス様が姿を消していますので、くれぐれもお転婆なさらないようお願いします」というどうにも手遅れ感の強い釘差しで。
フエゴレオンさんを治してもらっているあいだ、医療塔及び周辺施設の警護という名目で拘束されたわたしとノエルちゃん、ミモザちゃん。
遮断されていた通信魔法の回復、障壁魔法の展開、王都外からの騎士団の戦力補充を終えて、王都内に今すぐの危険因子がないことを確認した騎士団のメンバーと合流する頃には、もう日が傾きかけていた。
もう大丈夫だろうという金色の夜明け団の人の言葉を聞いたらもう、辛抱できなかった。
「ノゼルさん。戦力が揃ったのなら、アスタくんの捜索に行っていいですね?」
「貴様が、か?」
「はい!」
当然そのつもりだった。飛ぶ速さにも、魔力感知にも、自信があった。
だのに見上げた細面の団長は、呆れたという表情を隠しもせず冷徹に現した。
「肩書きをもう忘れたか」
「魔法騎士としてなら……」
「もうひとつあるだろう、貴様には」
ある。でも、そんなの関係ないはずだと噛み付こうとしたのに。
凍てついた眼差しが注がれ、動けなくなる。
「それさえ忘れ、襲撃してきたばかりの敵に向かうだけしか能がないというのなら、相応の鎖に繋がれ檻に入れられるべきだ」
魔法帝の妻になったのだろう。納得して婚姻を結んだのだろう。
自由にならないことを歯噛みするなど、今更だと。
その通りだ。分かっている。分かっていても、嫌だと思った。
「……なら、魔法帝なら、アスタくんを見捨てると?」
ノゼルさんの切れ長の目が、不快そうにより細める。ユリウスさんならまず味方を助けに行く。自身の力をもって。それを重々分かっているからこその表情に見えた。
「ノゼルさん、」
「ノゼル兄様、私も行くわ!」
「私もですわ!」
ノエルちゃんが、ミモザちゃんが、両側から腕にくっつく。え、と間抜けな声しか出なかったのをどう捉えたのか、ふたりはそれぞれにしっかと言い分を言葉にした。
「何を話してたか知らないけれど、敵のところにソフィアひとりで行かせるわけないじゃない!」
「それにアスタさんも心配ですし、動くなら早い方がいいですもの」
「ノエルちゃん……ミモザちゃん……」
ダメと言われてもこのままわたしを連れてアスタくん探しに行きかねない王族女子ふたりに、ノゼルさんは眉間のシワをいっそう深くした。金色の先輩方がさてどうしようかと顔を見合わせている。
捜索隊を出す。それはつまり、味方を敵地に送り込むようなものだと理解している。その上で、アスタくんを追うと決めていた。
だから、時間魔法でパッと現れたユリウスさんが、小脇にほぼ無傷のアスタくんを抱え、敵のひとりまで拘束しているのを見た時は、本当に何が起きたか全く分からなかった。
「えっ?」
「まっ、魔法帝……?!」
「と、敵……それに……アスターー?!」
「や……やぁみなさんお揃いで」
なんとなく気まずそうなアスタくんという超レアな生き物は、ユリウスさんにそっと降ろされこちらに歩いてきた。本当に五体満足だ。かすり傷ひとつ増えてないのではないかというくらい。
ノエルちゃんが、クラウスさんが、ミモザちゃんが、それぞれに言葉をかけ、ハグをしていき。
「あの〜先輩、流石に苦しいっす……」
「うるさい」
「敵踏んでる時も思ったんすけど、ソフィア先輩も口悪くなる時あるんで……っうぐふ」
ギチギチに抱きしめるの刑に処した。もちろん竜の姿で。
鱗がぁああ〜と悲鳴が上がった気がするが気にしない。あわよくば団長2人から襲撃事件について報告を受けているユリウスさんの意識が少し向いたらいいなと思わなくもなかったけどチラとも向かなかったから拗ねているわけではない、断じて。
これはアスタくんへの愛ある刑です。先輩愛ゆえです。
「無事でよかった……」
「っ」
生きた心地がしなかった。その気持ちを腕に込めれば、すんません、とか細い声が返されたので、仕方なく、許すことにした。
団長達からの報告を聞き終わったユリウスさんは、神妙な顔をしていた。
「フエゴレオンほどの者が、いつ目覚めるとも分からない状態とは……これは私の誤算だった……」
「いえ……我々の未熟さ故です」
魔法帝さえ居れば被害はもっとずっと小さかっただろう。でもそれでいいはずがない。王城には魔法帝に次ぐ実力者である団長が3人いてこの結果なのだから。
「魔法帝。確認したところ、フエゴレオンが身につけていたペンダントがなくなっていたそうです。それが奴らの狙いだったのでしょうか……?」
王城に傷はなく、王も無事。魔法帝に至っては動向すら掴めていなかった様子の敵の狙い。
フエゴレオンさんから奪っていったものは、片腕と、ペンダント。
「奴らは一体、何者でしょうか……?」
「ふむ。話を聞くに、王国に恨みを持つ者達のテロリスト集団のようだが……そんな単純な話ではないようだ」
詳しくは後で捕虜に聞こう、と未だ時間魔法の拘束魔法の中にいる敵を一瞥して、ユリウスさんは、みんなを見た。神様みたいに。
「魔法騎士団に求められることは一つ……王国の平和だ。その為には我々は全てをかけて戦い続けよう」
クローバー王国の平和の為。無辜の民のため。
静かに離れたノゼルさんもきっと、同じ気持ちで。
「(わたしも、ヤミさんも、同じ)」
目を伏せる。今回守れなかった人達の姿を、焼き付けるように。
今回出来なかったこと、出来たこと。全部忘れないために。
「我々も、もっと強くなります……!」
強さが欲しい。力が欲しい。敵を倒す力が、味方を守る力が。
そんなふうに思うのは初めてだった。