白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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通りの中央。尾を振り払い、腕を薙ぎ、死体の雑兵をひたすらに倒しながら、ソフィアは動揺を隠せずにいた。
突如、王都の各所で膨れ上がった空間魔法の魔の気配と、入れ替わるように消えた大きな魔力の持ち主たち。それはつまり、国の守りの要であり味方である魔法騎士団の団長副団長クラスの人達がごっそり居なくなったことを示していた。
優勢になりかけていた戦線は逆転。魔法騎士団の主力に守られるはずだった民衆に襲いかかる屍人達と、逃げ惑い食い殺される人々、十にも満たない人数で防衛戦を強いられる自分たちだけが王都に残っていた。
「(イライラする)」
五も十も纏めて壁に叩きつけ、地に踏みつけ、それでも切れ間なく死体の鯨波を作られながら、ソフィアはたったひとつの突破口をちらと見る。死体を操るなんてレアな魔法、操っているのはきっとひとり。そのひとりを倒せばこの悪夢は終わる。
問題は、ソフィアはその術師と思しき敵から遠く距離があること。かつ、執拗なほどの猛攻と雑兵を向けられているせいで、その場からほとんど動けていないことだ。
「(これすっごく、イライラする!)」
フエゴレオンさんはこちらを視界に収めたままアスタくんの元へ行った。アスタくんの近くにこの状況を作り出していると思わしき術師がいたから。紅蓮の人はいつの間にか強敵相手にノエルちゃんと共闘している。遠く感じる風魔法も大きな魔法をぶっぱなしたかのような爆発的魔を感じる。誰も彼もみんな死力を尽くしているというのに。
なのにソフィアは群がられ、飛び立つことすらできず、故にそこから動くことさえままならない。
「なんで、こんなに、数が多いの! もう!」
まんまと足止めさせられている。恐らく敵の狙い通りに。それが何より腹立たしい。
腹の奥底から唸り声が上がる。それは怒りだとか、憎しみだとかに似た、あまりに野蛮で凶暴な衝動。
ここにいるやつ全部、ぶっ飛ばしたい。
してもよかったのかもしれない。恐ろしい屍人と恐ろしい竜とに怯え、声もなく震え上がる逃げ遅れた民衆がこの場にいなければ。
見捨てられない。見殺しにできない。どんなに怖がられても、嫌がられても、守らなければ。
わたしは、魔法騎士団だから。
例えアスタくんを助けに行きたくて仕方なかったとしても。
「(頼みますよ、フエゴレオンさん!)」
尻尾で屍人を石畳に叩きつけ、返す動きで民家を崩して道を封鎖し敵進路を潰しながら、ただただ祈った。
嫌な予感がしていた。ずっと、ずっと前から。
王都が襲撃され、団長クラスの魔法騎士団員達が空間魔法で飛ばされ、味方は少なくジリジリと追い詰められながらも途絶えることのないそれを、ソフィアは後輩に何かが起こるのではと思っていた。
それさえも、紅蓮の獅子王団長フエゴレオンが居れば未然に防げるのではと思っていた。実績に裏打ちされた地位への信頼。生まれた時からユリウスに培われてきた価値観。
それらが一瞬で、ひっくり返る。
「(あ、敵が止まった)」
始まりは統率の取れていた屍人達の動きが、糸の切れた人形のようにぴたりと一斉に止まったこと。術師を誰かが倒したのだろうと判断し、安全確認をしてから宙に飛び上がったソフィアは空から見た。
広場で膝をつく術師と思しき男。その目と鼻の先で空間魔法に呑まれる、フエゴレオンの姿を。
「え?」
咄嗟に身を翻し、滑空する。アスタくんが空間魔法を展開した別の術師を抑えている。誰の拘束も受けていない死霊の魔法を使う男の上に滑り落ちるように降りて―――悲鳴が上がったが気にならなかった、どうせこれくらいじゃ死なないだろうし―――声を上げる。
「ノエルちゃん、紅蓮の人! 近くに! まだ終わってない!!」
その叫びを合図にするように、空間魔法が人一人分の大きさで展開される。
影から染みでるように、あるいは吐き出されるように崩れ落ちたのは豊かな赤毛の男性。たった一分ほどの間に血にまみれた姿に変わり果てたそのひとは。
「ふ、えごれおん、さん」
紅蓮の獅子王団長は、右腕を根元から失い、瞳孔すら開いたまま、意識を消失していた。
駆け寄ってきたノエルちゃんが衣服を裂いて止血しようとしている。体を上向けさせれば、あまりにか細い呼吸が聞こえた。心音もまだ辛うじてある。でも、投げ出されたフエゴレオンさんの魔導書が端から崩れ落ち、綿毛のように空気に返っていくのが止められない。
「ノエルちゃん、これ、魔導書が、どうしよう」
「っミモザがいれば……!」
ここに、回復魔道士はいない。探しに行こうかと悩むも、足下から聞こえた声にソフィアは文字通り踏みとどまる。
「正しき心だあ……!? オレはいつだって自分の心に正直に生きてるぜ……! あの世でほざいてなフエゴ、」
「うるさい」
「ぐふっ」
ズシンと踏み直して術師を沈めたソフィアは、死に体の実兄を前に呆然と立ち尽くす紅蓮の人を見て、ボロボロのアスタを見て、これじゃ動けないと歯を食いしばった。
「あるいは、ノエルちゃんが王城に残ってる回復魔道士の人を連れてきてくれれば……」
屍人の補充はもうない。とはいえまだ魔力コントロールに難が残るノエルちゃんを、まだ他に敵が残っているとも分からない広大な王都に一人で走らせるのは、あまりに不安すぎる。
どうしようかと悩めたのは一瞬。アスタくんが空間魔法の使い手に向けて振りかぶった剣が止められ、辺り一体に尋常じゃない魔力とローブを被った複数の人影を認めるまでの間。
「情けない……」
咄嗟に翼を広げ、ノエルちゃんとフエゴレオンさん、紅蓮の人を羽の内側に入れると同時に魔法が刺さる。植物魔法の枝葉は威力こそヴャンジャンスさんの足元にも及ばなかったが羽根の隙間に根を張り双翼に絡みついた。
「うぇ……!」
「あの方からの報を受けて来てみれば……このような者共を相手に、情けない……」
這いずる感触に怖気立つ間もない。氷柱を押し当てられているような冷たい魔力の気配と、明確な殺意。
「これで……形勢逆転だなぁぁ……!!」
「うるさい」
「ぐっ」
イキリ倒そうとしてた足元の術師を改めて踏みつければ、周りから舌打ちが響いた。どうやら助けに来たらしい。仲間だからか、利用価値があるからか。
「(どちらにしても、わたしはまたここから動けない)」
守れない場所にいるアスタくんを気遣い、視線をやれば、彼も丁度、こちらに意志を向けていた。
目線は敵を睨んだまま。流血の止まらない自身の体に魔法を殺す反魔法の剣を素早く当てて。
「オレはまだ戦えます……! 見ていて下さい……!」
アスタくんは、奮い立った。
「こちとら、生まれた時から逆境なんだよ……! 何人来ようが、何が起きようが、全部跳ね除けてやらあ!!」
吠えたけるアスタくんに向けられたのは、頭がおかしくなったかと嘲笑いながらの攻撃魔法。彼はそれをコマのように回転して本当に全部を弾き落としてみせた。有言実行。いつもの通りに。
とはいえ一対複数。それも相手は手練。
「……ノエルちゃん、拘束魔法は」
「で、できないわよ!」
「ん……」
加勢してあげたい。しかし距離があり、尾の先端さえ敵に届きそうにない。動こうにも、足下の術師を逃がす訳にもいかない。このどさくさに紛れて、空間魔法の使い手がアスタくんの手の届かないところに潜んでいると思えばなおのこと。
多勢に無勢のアスタくんをハラハラ見守っていれば、翼の内側が暖かく燃えた。
炎魔法。あまり知らないはずなのによく知っているような気さえするそれは、羽根に絡みつき蔓延っていた根さえ燃やし尽くし消えた。繊細な魔力コントロールの持ち主が誰かなんて、聞くまでもない。
「紅蓮の方、行けますか?」
「問題ない。それとオレの名前はレオポルドだ、レオと呼べ!」
一瞬フエゴレオンさんを見て、炎を両手に彼は翼の内側から飛び出して行った。アスタくんの元へ。背中合わせに、互いを補い合うように敵を倒すため。
「兄上をあのような目に遭わせたお前らを、オレがのさばらせておくわけが無いだろう! オレも混ぜんか、我がライバルよー!!」
「おう! 勝手に混ざれ混ざれ!」
アスタくんを助けるように、決して許せぬ巨悪と対峙するように。集中攻撃を避けながら時に浴びながら、ふたりは何一つ臆することなく折れることなく、剣を舞い、炎を弾けさせ、食らいついていく。
2対5。熟練の魔道士でも避けるだろう状況にいながら、疲れを知らない子供のように。
痺れを切らした敵が魔導書を開き、用いたのは、それぞれ樹木と風の魔法。
ノエルちゃんが慌てて向けた水の防御魔法は根に吸い取られ消えた。絶句する気配をすぐ側に、ソフィアは一瞬だけ目を閉じ。
「(フエゴレオンさんに、怒られそうだけど)」
動いた。
拘束のない翼でほんの一呼吸。竜の足でほんの3、4歩。その間合いにいた魔法を蹴散らしアスタくんとレオくんを貫こうとした風魔法を翼に受ける。衝撃に体が揺らぐ、久しぶりの感覚に歯を食いしばりながら。
「ソフィア先輩!」
「大丈夫! わたしも加勢する!」
背中から翼の先端まで、攻撃魔法を受けた鱗と羽がジンジン痛む。でもそれくらいなんてことない。反撃を、と駆け出すより早く。
魔法の気配。自分が飛ぶよりも速い接近。そんな芸当、ユリウスさん以外にできるはずもないのに、その気配は、複数の魔力で丹念に編まれていた。
頭を振り仰ぎ見たものは、太陽の中から飛来してくる鋭い銀色。
「魔法騎士団……!」
同じように天を見ていた敵が憎々しげに呟いたと同時に、大きな銀色の塊が落ち、水風船のように弾け、解けた。
中から現れたのは、空間魔法で王都から飛ばされたはずの錚々たる面々だった。