白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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ところ変わって騎士団本部の広間にて、テーブルに豪奢な料理が並び給仕が甲斐甲斐しく飲み物を配る中、黒と金色の若手6人は一部を除いて縮こまるように立ち尽くしていた。
慣れたように談笑を交わし料理に舌づつみを打つ周りは、紅蓮の獅子王団長や銀翼の大鷲団長、碧の野薔薇団長をはじめとする、そうそうたる顔ぶれで。
何故こうなった。そう顔に書いたまま参加しているクラウスにソフィアは同情しつつも、自分なんて魔宮攻略に参加すらしていないのだけどいいのかなあと思考の片隅でぼやく。
つい先ほど行われた戦功叙勲式。規定の星を取得した、つまり実績を積んだ騎士団員の等級を上げる式に魔法帝ユリウスの好意で6人は参加した。と言うより見学した。
その後、戦功叙勲式のあとの食事会? ねぎらいの席? にまでお呼ばれしてしまい、魔法帝に言われては拒否するわけにもいかず参加しているわけだが。
「うぐ。周囲からの視線が痛い……」
ユリウスが席を外してからというもの、6人に向けられる視線があからさまにトゲトゲしくなった。
それもそのはず、この場は国でも選ばれた魔法騎士にのみ用意されたはずの席。にも関わらずぽっと出で末端の6人が当日いきなり飛び入り参加だ。そりゃ厳しい視線も飛んでくる。
ソフィアとしては、そんな席に新人を置いていくほどのユリウスの用事が気になるが。同時に隣りで真っ青なまま固まっているノエルもとても気になる。
「ノエルちゃん、大丈夫?」
「……別に」
いつもの跳ねっ返りも元気がない。つられてしょんぼりするソフィアの耳元に、理由を知っているミモザが口を寄せた。
「ノエルさんは、お兄様方と……その、仲があまり……」
その視線の先には銀翼の大鷲の団長ノゼル・シルヴァと、今日昇給を受けたネブラ・シルヴァ、ソリド・シルヴァがいる。
ノエルがはじめて黒の暴牛アジトに来た日を思い出す。王族のお姫様とは思えないほど少ない手荷物だけ持って、誰も彼も敵みたいに王族であることを主張していたあの日を。
薄々勘づいてはいた。けれど実際に目にして、家族でもこんなに邪険にされることもあるのだと、ソフィアは少し悲しくなる。
同じ空間にいるのに声すらかけに来ないほど。
「そっか……話してくれてありがとう、ミモザさん」
「呼び捨てでも構いませんよ?」
「じゃあ、ミモザちゃん」
春の日向に咲く花のように笑うミモザに笑い返して、ソフィアはそっとノエルに寄り添った。
「ノエルちゃん、食べたいものはない?」
「……甘いデザート」
「しょっぱなからデザートなんだ……」
言われて並ぶ料理を見回すも、近くのテーブルは軽食や肉類ばかりで、甘いものはなかった。どうやらテーブルごとに違う料理を並べているらしい。
「うーん、近くにデザートないみたい。ちょっと取ってくるね」
「……ありがとう」
ノエルの反応はとても弱々しかった。
まだ何もとってきてないのにお礼を言われたソフィアは少し不安を感じつつも、近くにはアスタやミモザもいるからと離れた場所にあるテーブルまで足を運んだ。
デザートも置いてあるテーブルはノエル達から少し距離のある場所にあった。
旬の洋梨を使ったタルトや繊細な飴細工で飾られたプリンを取ったソフィアは、品よく足音を立てて歩み寄ってくる赤髪の偉丈夫に気づき、姿勢を正してそちらを向いた。
紅蓮の獅子王団長フエゴレオン・ヴァーミリオンは、威風堂々とした中に貴公子らしさを感じさせる物腰でうやうやしく礼をとった。
「お久しぶりです、魔法帝夫人」
「?!」
今のソフィアは黒の暴牛の一団員として素顔をさらして参加している。
慌てて周囲を見回すも、他には誰もいない。
「周りに聞こえないよう話しております。ご安心を」
そう言って口の端を上げた獅子に、あ、今の顔ちょっと師匠に似てると、思考の片隅で思った。そういえば師匠の弟さんなんだったとも。
「改めて、ご成婚おめでとうございます。なかなか挨拶する機会がなく、遅くなりました」
「い、いえ。わたしもその……あまり、表に出ておりませんので」
こういう時はどうしたらいいか、ユリウスもマルクスもいない事実にぶわっと冷や汗が吹き出る。せめてヤミさんがいて欲しいとも。なんでギャンブルに行っちゃったんだあの人。
一方、声をかけた途端ガチガチに緊張したソフィアに、声をかけた側のフエゴレオンもまた戸惑いを隠せなかった。
あの姉上の弟子を年単位で続けた上、ユリウス殿に嫁いだというから、豪胆な性格かと思っていたが。どうも違ったらしい。
「失礼を承知でお尋ねしたい」
「あ、はい?」
「ユリウス殿との結婚生活にご不満は?」
「な……っ」
本当に失礼な質問に絶句するソフィアを、焔を思わせる眼差しで見下ろして、フエゴレオンはなおも失礼を重ねる。
「親子ほども歳が離れていれば何かとあるでしょう。特にご夫人は、結婚と同時に魔法騎士団員にもなっていらっしゃる。同年代と交流するうちに、ユリウス殿よりも良い方に巡り会うこともあるかと……」
「お言葉ですが!」
魔法騎士団長を相手に声を荒らげる黒の暴牛の少女という図に一瞬視線が集まるも、フエゴレオンの一瞥に揃って目を背ける。まるで興味がないように。もっと見応えのあるものへと視線を戻すように。
ソフィアは、笑い声以外でこんなにも声が出るのかと、こんなにも制御出来ない感情が自分にもあるのかと、驚きながらまなじりを決した。
だって、こんな、聞き捨てならない。
「不満なんてありません。年の差なんて誰よりわたしが分かっています。それでも、わたしが結婚したいと思ったから、ユリウスさんと結婚しました」
なにより、師匠の弟がこんな人だなんて、ガッカリだ。
「それと、あなたにそこまで言われる筋合いはありません……!」
声を押し殺すように、周りに聞こえないように、それでもしっかりと自分の意見を物申したソフィアに、フエゴレオンはふと目元を緩めた。
なるほど、やはり姉上の弟子だ。
「おっしゃる通り」
「……えっ」
「いや、失礼。ご夫人を試したかったわけではないのですが……結果的に、そうなってしまった」
あっさり非を認めたフエゴレオンと、目を白黒させたソフィアは、少しだけ見つめあった。
「……先ほどの言葉は、わたしを試すためですか?」
そんなに魔法帝の、ユリウスの妻として疑われているのかとショックを受けるソフィアに対し、フエゴレオンは首を横に振った。断じて違う。
「試すためではないです。ただ……確認したかった」
「確認?」
「ええ」
フエゴレオンの、焔のような眼差しが横に逸れる。視線の先を追いかけたソフィアはフエゴレオンと同じ髪色をなびかせる同年代の姿に、昨年の星果祭を思い出した。
たしか名前は、レオポルド・ヴァーミリオン。師匠と目の前の紅蓮の獅子王団長の弟。
「これで心置きなく断れる」
「なにを……」
わたしへの問答と彼になんの因果関係が? そう聞こうと開いた口は、次の瞬間、あんぐりと開いたままになる。
「他の奴らと変わらねぇじゃねーか……!」
少し離れたテーブルの上に、アスタが立っている。
食事会の席で、土足で、テーブルの上に、である。
ソフィアの顔から血の気が引いた。
「相応しいとか相応しくないとか知るか。見とけよオレは必ず……」
相変わらずの大きな声で何かを言おうとしたアスタを、砂の魔法が覆い隠す。どうやら近くにいる金色の夜明け団の人の拘束魔法らしい。
だがあれでは意味がないだろう。ソフィアは今まで話していたフエゴレオンに断りを入れるのも忘れ、駆け出した。
視線の先、やはりと言うべきか砂魔法の拘束はアスタの剣によりあっさり破られていた。
「黙らん! いいかコンチクショー、俺は必ず実績を積んで……」
実績。さっきユリウスと話した時に頻出した言葉。その重みを、必要性を理解した上で、アスタは高らかに告げた。
「魔法帝になって、お前ら全員黙らせてやる!!」
そう、威勢よく啖呵がきられると同時。
アスタの頭上に黒のローブを翻し舞い上がったソフィアの、人のままの拳が、勢いよく振り下ろされた。
ゴッッ! と石に岩をぶつけたような鈍い音が広間にこだまする。
「い"っ?!」
「こらー!」
まるで子供を叱り付けるシスターみたいにぷんぷん怒るソフィアが床に着地する中、アスタはテーブルの上で頭をかかえた。ゲンコツを食らった頭頂部がじんじんと痛む。マジで痛い。
少し離れたところで見ていたノエル達はもちろん、その場に居合わせた全員が呆気に取られた。
「なんで止めるんすか先輩!」
「アスタくんがテーブルに乗ってるからです!」
「……えっ? テーブル?」
たしかにアスタはテーブルの上に立っていた。全員を見渡すため。全員に宣言するため。
「テーブルの上にあったご飯は?!」
「え」
「ご飯、そのまま床に落としたでしょ!」
落とした。というか落ちた。アスタがテーブルの上に乗ったときの衝撃で。
「ご飯を粗末にするのはダメ! です!」
言うことはもっともだ。正直、下民がどうのシルヴァ家の面汚しがどうのと言ってた周りのやつらよりよっぽど納得いくし、やべーことしたとアスタは反省しなくもなかった。
しかし。しかしだ。
「先輩、そのためだけにオレはゲンコツされたんですか……」
「何言ってるの! ここにチャーミーさんがいたらもっと大変だったよ!」
「たしかに!」
「納得してる場合じゃないでしょ、バカスタ……」
兄や姉に出ていくよう言われ泣きそうになっていたノエルも、この展開には気が抜けた。というか色々諸々アホらしくなった。
最初は他の団の人と揉めてたから怒ったのかと思った。まさかのご飯を粗末にするな路線だとは夢にも思わなかった。
一気に気が抜けたのか、張り詰めていた周囲の殺気にも似た敵意が緩むのをノエルは肌で感じた。
が、それが気に入らない人もいる。
「ふざけるなよ……!」
冷気にも似た水の魔力に振り向いたソフィアは、怒気を隠そうともしないソリド・シルヴァの姿を認めて、目を細めた。