白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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久しぶりにユリウスと一夜をすごしたソフィアは、耳をくすぐる感触に寝ぼけまなこを無理やりこじ開けた。まだ薄暗い部屋の中、わたしをくすぐるものはなんだ、と。
暗がりでも分かる紫の瞳が、お月様みたいに微笑んでいた。
「やあ、ソフィア」
くちびるに息がかかる距離で、ユリウスが優しく笑っていた。
「っ?!!」
のを、起き抜けに至近距離で目撃してしまったソフィアが飛び起き、ついでにすってんころりんとベッドの中で転がってしまったのは致し方ないことで。
目をまん丸に見開いたユリウスが遅れて起き上がり、言葉もなく動転する妻に小さな声をあげて笑いだしたのには、さしものソフィアも遺憾の意を表明したいと強く思った。
が、寝起きのためか残念ながらろくな言葉が思い浮かばなかった。
「びっくりした……!」
「いやあこんなに驚くとは思っていなくてね」
ぜんぜん悪びれない、むしろ悪戯に成功した少年のような笑顔を浮かべて、ユリウスはソフィアの乱れた頭を大きな手でやんわりとすいた。
「おはよう、ソフィア」
「……おはようございます、ユリウスさん」
まだうるさい心臓に手を置いたまま朝の挨拶を交わしたソフィアの薔薇色の頬に、ひとすじの髪が流れ落ちた。
珍しくゆっくり出るらしいユリウスと一緒に朝ごはんを食べたソフィアは、自室で身支度を整えたあと、同じように身支度を整えていたユリウスの部屋をおとずれた。
やりたいことがあったからだ。
「ユリウスさん、失礼します」
「うん? どうしたんだい、ソフィア」
ローブの下の身支度だけ整えた状態のユリウスを見てうなずいたソフィアは、前もって協力をお願いしていた使用人から深紅のローブを受け取る。ソフィアの身の丈と同じくらいありそうなそれを引きずらないよう工夫して持つのは2度目だ。
驚き顔だったユリウスは、ソフィアのやりたいことを察してほころぶように笑った。
「今日はソフィアが着せてくれるのかな?」
「ダメですか?」
「大歓迎さ」
背もたれのない椅子に腰かけたユリウスの背中にそっとローブを被せる。まっしろなファーが頬に当たってくすぐったい。
意外としっかりした肩口から前に手を回して、金の徽章と留め具をつけて整えれば、いつものみんなの魔法帝だ。
そのみんなの魔法帝の後頭部を少し上から見つめられる特別の時間に、ソフィアはきゅうっと胸の奥が切なくうずいた気がした。
「できたかな?」
「できたけど、もう少しこのままで」
「ええー、昨日あれほどマルクスくんに迷惑をかけないようにと言っていたのに?」
「ふふっ」
わざとらしいユリウスの声に思わず笑い声をこぼして、大きな背中に抱きついた。
少しこわい。同時にそれを上回るユリウスへの気持ちに心臓を蹴飛ばされながら、おそるおそる口を開く。
「だいすき」
「……」
恥ずかしさをこらえ懸命に振り絞った言葉に、抱きついてもこゆるぎもしなかったユリウスの体が揺れた。
その振動が波のようにソフィアの胸を大きく揺らす。早鐘のように忙しない心音がどうかユリウスの耳に届かないようにと願い、ぎゅっと目をつむった。
ら、突如、腕の中の体温が消失した。
「えっ」
「じゃあまた夜に会おうねソフィア! いってきます!」
気がつけばユリウスはドアの向こう側に立っていて、いってらっしゃいを言うひまもなく駆けて行ってしまった。
一泊遅れて、時間魔法で瞬間的に移動したのだと気づいたソフィアは、開いた口を閉じることも忘れて呆然と立ちつくした。
こんなのってあり?
そんな一幕のあとで黒の暴牛に帰ったものだから、ソフィアのテンションは地を這うようだった。
エントランスのソファーで膝を抱えて暗雲を背負っている。カビが生えそうだわとノエルは思った。
「ちょっと、朝っぱらからどうしたのよ」
「あ〜、昨日この子いなかったでしょ? きっとまた旦那のところで何かあったのよ」
同じくエントランスのソファーに腰掛け、こちらは陽気に酒瓶を開けていたバネッサは笑い混じりに答えた。ついでソフィアの細い肩にしなやかな腕を回す。
「ほらもう、後輩に気を使わせてどーすんの! 元気だしなさいよ〜」
「バネッサさんがちゃんと服を着てくれたら元気だします」
「じゅうぶん元気そうね」
ローブにワインレッドの下着姿のバネッサに密着されても顔色ひとつ変えずに言い返したソフィアに、今度はバネッサが口をとがらせた。
1年前は顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたというのに、可愛げが減ってしまった。誰が減らしたのかというとバネッサなのだが。
とはいえノエルにこれ以上の心配をかけてしまうのは嫌だったソフィアは、にこりと笑ってみせた。
「ごめんね、夫といろいろあって」
「お、夫……っそれなら、まあ、仕方ないわね」
「えっ! ソフィア先輩、結婚してたんすか?!」
「してたんす」
ほんのり頬を染めるノエルの後ろからの大きな声の疑問に、ソフィアはつられながら頷いた。証拠にと左手薬指の金の指輪を見せれば、キラッキラした眼差しが返される。
「結婚……オレもいつか、シスターと……!」
「シスターさん? 教会の?」
「はいっ!」
教会のシスターは聖職者だから結婚できなかったはずではと思ったが、アスタがあまりにも真っ直ぐに夢見てるので、何も言わないでおくことにした。たしか職を辞して結婚することも可能だったはずだし。
その時だ。つっ込みを放棄したソフィアの代わりと言わんばかりに、どこからともなく飛来した一羽の小鳥がアスタの頭の上に降り立ち、突っつき始めたのは。
「あれ? お前はたしか……ってあだだだだ!」
「アンチドリだ、珍しい」
「かっ、かわいい」
目つきの悪いその鳥は情け容赦なくつついたあと、満足したのか飛び立ち、今度はソフィアの頭にぽすんと降り立った。
とても羨ましそうなノエルの視線が突き刺さる。とはいえ無理やり掴むのも可哀想だと、アンチドリを放置したソフィアの耳に、アスタの執念を煮詰めたような声が届いた。
「うおおおお! シスターと結婚するためにも、がんばるぞおおおお」
「それとこれとは話が別な気が……」
腕立て伏せを始めたアスタにやんわりつっ込むと、頭上のアンチドリがため息を吐いた気がした。鳥だからそんなはずないのに。
やがてマグナとラックが騒ぎながら上の階から降りてきた。どうやらプリンを食べるマグナにラックが絡んでいるらしく、このふたりは飽きないなあとソフィアはのんびり構えていた。
「誰がわざわざプリンをやるか! 離れろ!」
「いいじゃないひと口くらい〜」
「てめーのひと口がひと口で終わった試しがあるか!!」
マグナはラックから逃れるようにアスタの上に座ってプリンを食べ始めた。筋トレ中のアスタの背中にである。
だがアスタは気にもとめず―――むしろ負荷があったほうがいいみたいなこと言ってる―――腕立てを続行している。
実際にラックは突然楽しくなくなったのかマグナに絡むのを止めたので、大正解な行動ではあったが。
ふと、斜め後ろから不穏な気配のマナを察知したと同時に、ソフィアの頭からアンチドリが飛び立ち、アスタの灰色の髪にぽすんと着地した。
「……ノエルちゃん? なにしてるの?」
「べっ、べべべ別になにもしてないわよ!」
こっそりソフィアの頭へ手を伸ばそうとしている体勢のまま固まるノエルに、アンチドリが好きなんだなあとほっこりした。このアンチドリ目つき悪い感じだけど。
ソフィアからの生あたたかい目線にぐぬぬとなりながらもアンチドリを追い求められずにいられなかったのか、ノエルは今度は筋トレしているアスタの頭にとまる小鳥へと手を伸ばすべく、しゃがんだまますすすっと移動した。
その動きを見ていたソフィアの視界のはしで、ラックがまだ中身の入ったバネッサの酒瓶をくすねた。
珍しく飲むのかと思いきや、ノエルとは逆方向から、つまりマグナの背後にあるソファーに音もなく乗り込み、美味しそうにプリンを食べるラックの頭めがけて酒瓶をかたむけ始める。いたずらっ子の所業だ。いつもの事だけど。
「(すごいしっちゃかめっちゃか)」
エントランスで筋トレするアスタの背中でプリンを食べるマグナの頭に酒をかけようとするラックと、筋トレで揺れるアスタの頭頂でくつろぐアンチドリに触れようとじりじり指を伸ばすノエル。
ソフィアはもう何も言うまいと目をそらした。ある意味、黒の暴牛っぽい光景でもあったし。
「はい注目〜」
そんなだんらんの中に投げかけられたヤミの一言に、全員が瞬時に振り向いた。黒の暴牛においてヤミの言葉は絶対だから。それが何をしている最中であろうとも。
「ついさっき新しい魔宮が発見されました」
一瞬の静寂。次いで、爆発したように驚きが広がる。
「魔宮んんんん?! マジっすかヤミさああん」
「うおおおおお!」
叫んだアスタは、次の瞬間には疑問符を飛ばした。
「魔宮ってなんですか?」
「えっ」
「マジかてめえええ?! 魔宮も知らんのか?!」
ちなみに魔宮とは古代の遺物が眠る古墳あるいは遺跡であり、強力な古代魔法やその使用方法、希少な魔道具が財宝と共に眠っている。
一方で悪用を防ぐためか盗難防止のためか、凶悪な罠魔法が仕掛けられていることが多く、危険性の高さから調査は魔法騎士が行なうようになっている。
とはいえ魔宮はそうほいほい見つかるものでもなく、現在発見されているもののほとんどが調査済みなため、新しく発見された魔宮の価値は計り知れない。
「特に今回の魔宮は非友好国との国境近くに出現した。奴らに奪われないためにも、より確実な任務遂行が望まれる」
「や、ヤミさんがすごい仕事してる……!」
「オレはいつだってちゃんと仕事してます」
振り幅が激しいだけとは本人談だ。
ともあれ、かつて文明のレベルそのものを変えてしまうような魔法や、最強の魔法が見つかったこともある魔宮を放置する手はないので、魔法騎士団で調査するようお達しがあったということらしい。
目をかがやかせたアスタが勢いよく挙手する。
「オレに行かせてくださああい!!」
「おー行ってこい小坊主。つーか魔法帝の旦那がてめーをご指名だ」
「え」
「あ」
ぴらっとヤミが見せた紙には確かにアスタの顔が描かれていた。
まさかの大抜擢に動揺したあと、感激に涙まで流しはじめたアスタに、ソフィアはそっと目をそらす。それをヤミが視線で追いかける。
「なんか知ってる?」
「闇市で変身ぶらりしてたところを、ちょっと」
「あのおっさん……」
呆れ混じりのため息をこぼすヤミだったが、まあ昔からかとそれだけに留めた。
「あとは……あー、新人ふたりと、ラック行ってこい」
「えっ、私?!」
「あはははは! 魔宮かあ、楽しみだなあ!」
あたふたするノエルとわくわくするラックに、燃え上がるアスタ。サポートする感じの人が混じっていないの大丈夫かなあと心配するソフィアだったが、ふと気づいた。
「あの、国境近くまで誰がアスタくんとノエルちゃんを運ぶんですか?」
「僕の箒に3人はキツイかな〜」
「じゃあドラ娘はアッシーな」
「えっ」
どうやらやぶ蛇だったらしい。
とはいえフィンラルもいない今、たしかに人ふたりを運ぶなら箒より竜のほうがいい。
ということで参加決定したソフィアだったが、今回の魔宮は入り口もせまいらしく、役割はあくまでアッシーのみ。入ろうとして魔宮壊すなよとまで釘を刺されてしまった。
「薬草もった? 明かり用の魔道具は忘れてない? ハンカチとティッシュは?」
「ぜんぶ持ってます!」
「そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「ソフィアは相変わらず硬そうだね、やっぱり一度ヤってみたいな〜」
竜の姿で地面に伏せったままアスタ、ノエル、ラックが背に登っていくのを見届けたソフィアは、まるで母親のような心配をしながら。
「それじゃあ、飛ぶね」
ひと息に大空へと飛び立った。
目指すはダイヤモンドとの国境近く。
鬱蒼と木々がおいしげる中にたたずむ未知の遺物、魔宮。