白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
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窓から差し込む朝日のまぶしさに目覚めたソフィアは、隣りから聞こえる小動物のような寝息に少しの錯覚と、違和感に振り向いた。
すうすうと眠るノエルにちょっと笑んで、起こさないよう静かにベッドから降りる。身震いするほどではないけれど肌寒い。
温かい紅茶でも用意しようとキッチンまで行くことを決め、軽く身支度を整えたあと、昨夜ほったらかした茶器を手に扉をくぐった。
……いくらユリウスさんの夢を見たあとの寝起きだからって、間違えかけたのは失礼すぎると、後ろめたく思いながら。
「おはよー、ソフィア」
「バネッサさん、おはようございます。今日は早いですね」
「昨日は誰かさんがちっとも構ってくれなかったんだもの」
「えっ、わたしのせいですか」
めずらしく朝イチから廊下でばったり出会ったバネッサと一緒にキッチンへ行き、竈に火を灯しヤカンをかければ、紅茶を淹れるのだと見抜かれ、私も私もーとねだられた。
もともと多めに淹れるつもりだったので、はーいと返事しながら、ラム酒の小瓶を紅茶と一緒に戸棚から手に取る。ちょっとだけ入れればバネッサ好みの味だ。
しゅんしゅんと鳴るヤカンの取っ手を、ミトンをはめた手で慎重に持ち上げる。茶葉を散らしたポットの中にお湯をそそいだら、あとは待つだけの静かな時間。
そのあいだにチャーミーが降りてきた。
「おっ、ふたりとも早いね! おはよー!」
「おはようございます、チャーミーさん」
「おはよー」
チャーミーは挨拶もそこそこに羊のコックさんを召喚し、朝ごはんの支度という名のキッチン戦争がはじまったので、ポットとカップとラム酒を手にそろりと離れ、バネッサと一緒に食堂へと移る。
ポットの中でしっかり踊っていた色鮮やかな紅茶を、白いカップに注ぎ、ティースプーン半分のお砂糖とラム酒をひとたらし。
「はい、どうぞ」
「ありがとう! ん〜っ、いい匂い」
お酒ばかり好むバネッサが、笑顔でティーカップをかたむけてくれるこの時間が、ソフィアは大好きだ。
ラム酒を入れないストレートをチャーミーに渡したあとで、自分のぶんと、更にもう1杯カップにそそぐ。
匂いに誘われてやってきた小動物のために。
「おはよう、ノエルちゃん。紅茶にお砂糖はいる?」
扉の隙間から出てきた寝ぼけまなこのノエルは、こくりとうなずいた。
朝食を済ませたソフィアは、仕事の予定はないけれどヤミもまだ起きてきていなかったので、とりあえず掃除と洗濯をすることにした。有り体に言うとやることがなかった。
魔道具で綺麗にした洗濯物を物干し竿にかけ、はためく白いシーツごしに青空を見上げたソフィアがいい天気だなーとか思っていたときだった。バネッサが飛びついてきたのは。
「ソフィア〜!」
「わっ」
よろめいた体でなんとか踏ん張ったソフィアは、自分の背中からふわりと香ったムスクに苦笑いを浮かべた。この綺麗な人はたまにこうして子供みたいに振る舞う。
「バネッサさん、危ないです」
「買い物いくから、ちょっと乗せていって」
「……もう」
ハートがつきそうな茶目っ気たっぷりの言い方に負けて、ソフィアはたしなめようとした態度を引っ込めた。代わりに、ん? と首をかしげる。
「わたしがアッシーしなきゃいけないほど買うんですか? それにフィンラルさんは?」
「フィンラルは仕事〜。あと、あんたじゃなきゃダメな理由があるのよ」
ほっそりとした指がちょいちょいとバネッサの後ろをさす。身を乗り出し覗き込んだソフィアは、なるほどとうなずき、洗濯カゴを片付けるため歩き出した。
待っていたのはアスタとノエル。魔力なしとコントロール力なしのふたりは、箒に乗れないので移動手段がない。そこでソフィアに白羽の矢が立ったのだと。
竜のソフィアの飛行ならアジトからあっという間の距離にある、城下町キッカ。町はずれに降り立ったソフィアの背から飛ぶように降りたアスタは、目をキラキラ輝かせていた。
お上りさん全開のアスタに若干引き気味のノエルは、王族の割りには街慣れしているなあとソフィアは思う。自分が初めて来た時はもっとこう、すごいキョロキョロした気がするのだが。
「とりあえず市場に行きましょ」
「あ、そうですね」
今日、城下町キッカに新人ふたりを連れてきた理由は、ふたりの初給料が入ったからだ。食と住居が保証された黒の暴牛での給料の使い道は、ほとんどの者は買い物だ。中にはギャンブルとか妹への貢ぎ物に消えている人もいるけど。
というわけで今日は新人の買い物に付き合うつもりでいたソフィアは、人の姿でうーんと笑った。
「すっ……すっげええ〜!」
行き交う人々を見ただけでアスタのこのリアクション。なんだかほっこりするけれど、お上りさん全開すぎて変なものを売りつけられそうで怖くもあるなあと、箱入りのソフィアは思った。
現に屋台の果物を見ては歓声を上げ、魔道具店の軒先で杖や短剣の値段を見てはテンションを上げている。こうも無邪気に喜び続けられるのはむしろ凄いことのような気がしてきた。
「アスタくん、はぐれないようにね」
「うすっ!」
肩からかかる黒の暴牛のローブがあれば、喧嘩を売ったり絡んだりするような人はいないだろうけれど、念のため目を離さないようにソフィアは気を引き締めた。
なにせアスタとノエルは自分が乗せなければアジトにも帰りつけないのだ。バネッサは箒さえあれば帰れるのだが。
そう考えると、魔力がまったくないのも、魔力が有り余りすぎてコントロールできないのも、どちらも本当に大変だ。
「とりあえず基本的な薬草と消耗品の魔道具の補充からね」
「はい。というわけでアスタくん、こっちおいで」
「はいっす!」
バネッサがよく行く馴染みの店に顔を出して、いつも持っている薬草を紹介がてらにいくつか購入してくれたりする中、明かりを灯すタイプの魔道具を触ったアスタは、ふと首をひねった。
「ソフィア先輩はこういうの買わないんすか?」
「基本的にお仕事のときは竜になるし、竜になると薬草とか魔道具は触れないから……」
「なるほど!」
それこそ新人のころは持ち歩くべきか悩んだ必要最低限の薬草も人にあげてしまった。なのでソフィアの荷物はいつも軽い。
恥ずかしげに答えたソフィアと、普通に納得してなんか要らないものを見始めたアスタに、ノエルの手に薬草を握らせていたバネッサが声をかけた。
「めぼしいもの買ったら次はとっておきの場所に案内するわ」
「バネッサさん、酒場はダメですよ」
「さすがにあんたたち連れては行かないわよ」
驚きの信頼の低さだが、アジトでのバネッサの振る舞いを知るソフィアとしては冗談でもなんでもない、マジな釘刺しだった。最近では団長のヤミよりも絡み酒のターゲットになっているから困る。
いつの間に購入したのか、いくつかの酒瓶をかかえたバネッサが案内してくれたのは、人も扉もなにもない寂れた袋小路だった。
「とっておきの場所って……」
「ここただの路地裏じゃ……?」
……いや、何もないように見せかけて、かすかな魔力の残滓がある。魔力感知が得意ではないソフィアは、嗅ぎ取れない残り香を捕らえるようにすんすんと鼻を鳴らした。
ちなみに、魔力感知ができないアスタとコントロールができないノエルは、バネッサの案内先とソフィアの奇行にきょとんとしている。バネッサはたまらず噴き出した。
「こっちよこっち」
そう言ってバネッサがひょいと手を入れたのは、みっちりとレンガの詰まった頑丈そうな壁のど真ん中。
ソフィアとアスタとノエルが目をむいて驚く顔を見て、うふふと笑いながらするんとバネッサの姿が壁の中に消えた。
「え゛っ?!」
「き、消えた……?」
マジマジと壁を見たアスタがバネッサが消えたところに手をつこうとした、ら、するんと手の先が消えた。それを見てやっと合点が行く。
「壁の中に道があるんだ……!」
「そうよ、早くいらっしゃい」
顔だけ出したバネッサに導かれ、アスタ、ノエル、ソフィアが壁の中に足を踏み入れる。
明るい表通りから一転、薄暗く少しホコリの匂いさえするこの道の通称は。
「闇市」
それって魔法騎士が入っていいところなのかとソフィアは思った。とはいえ蛇の道は蛇とも言うし。
いやでもこれは、と道に布をしいてそこに商品を並べただけの露店をチラと見て、ちょっと眉間にシワを寄せる。
あれ、ずいぶん前に取引に制限がかかった魔道具だったような気が。
「ちょっと危険だったりするけど、効果がすごいもの置いてるのよ〜」
見知った店員と軽やかに挨拶を交わすバネッサに、常連なのかな……となんとも言えない気分になりながら、キラキラした目を輝かせて今にも駆け出しそうなアスタにくっついとく。ほっといたら迷子になりそうだ。
一方で、道に入ってからずっと言葉を失っていたノエルに、バネッサが声をかける。
「あら驚いた? 王族や貴族は毛嫌いして近寄らないものね」
「つまり、知ってる人は知ってるんですね」
「そうよ。ソフィアも来たのははじめて?」
「はい」
たぶんこの道は、本当は良くない。でも必要なところなのだろう。だからきっと上の人達は黙認しているのだろう。おそらく。
そう結論づけたソフィアは、でも値段の桁がおかしい気がするなあと露店を白い目で見ながら、ぐいぐい進むアスタからはぐれないよう気をつける。ここが闇市とは思えないほど大きな声を上げ力強く進むので、めちゃくちゃ目立ってはいるのだが、念のため。
やがて少し進んだ先、ざわめく一角にアスタが首をかしげる。
「んお? あそこすげー賑わってるな」
「あ、本当だね」
ふたりでのこのこ近づき、ボロ布がかかったその場所の奥を覗き込む。
円卓でカードを持つ人たちや、回る魔道具に玉を転がす人たち、はたまたひとりきりで謎の箱に向き合う人もいる。カードはアジトでヤミやマグナと一緒にやることもあるので分かるが、玉転がしや箱はなんなんだろうとソフィアもまた首をかしげた。
タバコを吸う人が多いのか、明かりに霞がかるほど煙たいそこには、この道の中で一番人が集まっていた。
「あそこは賭博場よ、あなたたちにはまだ少し早いわね。素人はほどほどにしとかないと身を滅ぼすわよ」
「やったことあるみたいな口ぶり……」
「ふふ。それは、ひ、み、つ」
ぱちんとウインクされたソフィアは頬を染めて顔を逸らした。別にドキドキしたとかそんなんじゃないけど、バネッサは時々こういうことをする。そしてそれがなんとなく恥ずかしい。別にやめて欲しいとかそういうんじゃないけれど。
そうして顔を逸らした先には、翡翠の蟷螂のローブを身につけた男の人と、その対面に座るおばあさんとがカードで勝負をしていた。
どうやらめっちゃ勝っているらしいおばあさんの手元の袋財布はパンパンで……いや違う、大事なのはそこじゃない。
思わず二度見したソフィアは、目をこすってもなお見える見覚えのあるおばあちゃんに、この上なく怪訝な顔をした。
「ワシには未来が見えるんじゃよ」
なにやってんだあの人。
そんなマルクスの声が聞こえた気がした。もちろん幻聴だが。